223 名前:1/5[] 投稿日:2011/12/08(木) 22:42:55.55 ID:73cZ6cmY0 [6/10]
- 男がエッチな事に興味があるのかどうか知りたくなったツンデレ その6
一瞬、二人が顔を見合わせる。それから友香が、いかにも意外そうな顔つきでボクを
見て聞いてきた。
『ダメって……悠。何がダメなの?』
『何がダメって、そんなの……だって、それ以上スカート短くしたら、見えちゃうかも
知れないし……』
自分の言葉に恥ずかしさを覚えつつも、ボクは懸念を口にする。しかし当の葉山さん
は、あっさりと言ってのけた。
『別に、私は平気だけど』
『へ!?』
さすがに驚いてボクは葉山さんを見る。葉山さんは顔に笑みを張り付かせたまま、し
かしボクの様子に慌てて言葉を付け足す。
『ううん。別に好んで男の人に下着を見せる趣味がある訳じゃないけどね。でも、事故
で見えてしまう分にはある程度は仕方のない事だし、調査の為には、少しは体も張らな
いと。それに……』
チラリ、と周囲を見てから、僅かに顔を俯かせて、葉山さんが付け加える。
『他の一般生徒ならともかく、相手は別府君だから…… 仮に見られたとしても、許せ
るもの……』
その、何だか照れたような言い方に、ズガンと頭を殴られたような衝撃を受けて、ボ
クは立ち尽くす。そのボクの目の前で、悪ノリした友香がさらにとんでもない提案をして来る。
『いっその事、葉山さんさ。勝負下着着けて来れば? 別にワザと見せる必要は無いけ
ど、もし見えた時に別府君がどんな顔するか、見てみたくない?』
すると葉山さんが嬉しそうな笑顔を見せて、ポンと両手を叩いた。
『それ、いいかも。私、ちょうどこの間可愛らしい下着を買ったの。淡い水色でフリル
が付いていて、お尻がキュッと引き締まってすごく色っぽく見えるの。それ、着けて来ようかな』
友香も満足げにうんうんと頷く。
『着けて来なよ。それだったら、あの朴念仁の別府君だってさすがに――』
『ダメ!!』
224 名前:2/5[] 投稿日:2011/12/08(木) 22:43:19.93 ID:73cZ6cmY0 [7/10]
友香の言葉を遮り、思わずボクは大声で叫んでしまった。さすがに教室中の話題が一
瞬、ピタッと止まる。視線が集まるのを感じ、ボクは慌てて、声を潜めて周囲を無視す
るように二人に話し始める。
『そ、そんな色仕掛けダメだってば。絶対それ、見せる前提でやってるでしょ? そん
な、自分を犠牲にするような事をやっちゃダメだってば』
何とか本心を気取られないように、ボクは必死で理由付けをする。実は単なる嫉妬だ
なんてバレたら、大恥もいい所だ。
『あら? 別に私は見せる前提なんて、そんなつもりはないわよ。ただ、もしかしたら
見られてるのかも……って、そう考えるだけで、恥ずかしくってドキドキしちゃうけど』
両手を頬に当て、ポワンとした表情の葉山さんを指差して、友香も言う。
『だって。本人、やる気満々なんだし、別にいいと思うけど』
しかしボクは首を横に振ると、断固として言った。
『良くないってば。絶対良くない。だって、葉山さん彼氏だっているのに……それなの
に、好きでもない人に対してそんな事するなんて、やっぱり不謹慎だと思う』
『じゃあ、悠は好きな人相手になら、そういう事してもいいと思うの?』
友香が何気なしな様子で聞く。この問いに、まともに答えてしまったのがボクの失敗だった。
『そ、そりゃあその……いいって訳じゃないと思うけど、でも好きな人相手だったら、
まあその子の勝手って言うか、好きな人に可愛く見られたい、色っぽいなって思われた
いって気持ちはあったっていいと思うから……二人っきりとかそういう所なら、別に口
を挟む権利もないと思うってだけで……』
その時、友香と葉山さんが、スッと目配せを交わすのにボクは気付いた。しかし、そ
の意図が何なのか気付く前に、葉山さんが立ち上がって、ボクの手を握った。
『分かったわ、委員長』
握った手をごく自然に胸の辺りまで持ち上げ、葉山さんがウンウンと頷く。
『わ……分かったって……何が?』
呆気にとられて聞くと、葉山さんは真剣な眼差しでボクを見つめて言った。
『何がって……決まってるじゃない。今、委員長が言った事よ』
彼女は、うつむいて頭を振る。その大げさとも言える仕草に飲まれつつ、ボクは頷く。
『あ……いや、その……分かってくれたんなら、いいんだけど……』
225 名前:3/5[] 投稿日:2011/12/08(木) 22:43:45.53 ID:73cZ6cmY0 [8/10]
何だか、奇妙な胸騒ぎがしていた。何だろうか。この間違った方向にどんどん突き進
んで行くような気分は。葉山さんがバカげたお色気作戦を思い止まってくれるなら、そ
れに越した事はないはずなのに。
しかし、葉山さんの次の言葉で、その答えはすぐに出た。
『仕方ないわ。委員長がそこまで言うのなら、私……涙を呑んで、この役を委員長に譲るわ』
『え――?』
ボクが呆然としている間に、友香もウンウンと頷きながら話に入ってくる。
『そうよね。ゴメン、悠。あたし達が考えなしだったわ。やっぱり、好きな人が他の女
の子に色目使われるような行為をされるなんて、我慢ならないわよね』
『頑張って、委員長。委員長がやれば、きっと別府君も、興奮して目が釘付けになると思うわ』
ボクは二人を交互に見つつ、慌てて拒否しようと口を開く。
『ちょっ……ちょちょちょ、待って、待ってってば。ボク、自分でやるなんて一言も言っ
てないんだけど……』
『あら? だって、好きな男の子相手なら問題ないんでしょ? だったら、委員長が一
番適任だと思うんだけど』
『だからっ!! ボ、ボクは別府君の事なんて――』
いつものごとく、否定しようとするも、最後まで言い切る前に友香に遮られてしまう。
『はいはい。それはもう聞き飽きたってば。で、どうするのよ?』
『どうするって、何がよっ!!』
憤慨しつつ聞き返すと、友香はしれっとした顔で言った。
『何がって、誰が別府君を誘惑する役をやるかって話。葉山さんがダメなら悠しかしな
いじゃない。あたしは葉山さんでもどっちでもいいんだけど』
すると葉山さんも頷いて言った。
『私は元々、やる気十分だったけど、委員長がやるんだったら、譲るしかないかなって。
でも委員長がやらないなら、私がやるわ』
『ちょっと待ってよ。それはやっぱり――』
ダメだと言おうとして、友香に手で待ったをかけられる。
『選択は悠次第なのよ。やりもしないくせに、葉山さんを邪魔する権利なんてないと思
うんだけど。どうなの? やるの? やらないの?』
詰め寄られて、ボクは狼二匹に追い詰められた子羊のようにすくみ上がる。
226 名前:4/5[] 投稿日:2011/12/08(木) 22:44:08.04 ID:73cZ6cmY0 [9/10]
『大丈夫よ。別に、特に何かする訳じゃないわ。ただ……そうね。スカートをほんの6
センチほど短くするだけだから』
『6センチって、それじゃあ見えちゃうじゃない!! そんなのダメ!! 絶対イヤだってば!!』
思わずスカートを押さえてボクはイヤイヤと首を横に振る。すると友香がむしろ呆れ
たようにボクを見て呟く。
『つーかさ。今更スカート丈が膝上ってむしろ長過ぎでしょうが。それくらい短くした
方がちょうどいいのよ。悠は』
確かに、友香も葉山さんもボクよりは短いスカートを履いている。かといって、ボク
がそれに合わせなければならない道理はない。
『そんなの人の勝手でしょ? 大体そこまでする必要なんてないと思うんだけど』
そう文句を言うも、二人から同時に首を横に振られてしまう。
『ダメよ。男の子を誘惑するには、やっぱりそれなりにエッチな事も必要なの。胸やお
尻や太ももはね。女の子の武器なのよ』
葉山さんがこんな事を言っているのを知れば、狂喜する男子は多いだろうな、と何と
なく思う。こんな彼女に好かれている彼氏さんは幸せ者なのだろう。きっと。
『大体ね。あの朴念仁が正常な男子の思考を持ってるかどうか調べるのに、普段どおり
のカッコじゃ意味がないじゃない。それともアンタ。まさかそれで、別府君を落とせる
とか思ってるの?』
何気に酷い事を言われたが、確かに明らかに地味なボクが、普段の格好でちょっと色っ
ぽいポーズをしたところで、彼は毛ほどにも感じないだろうし、そもそもそんな演技が
ボクに出来る訳もない。
『で、委員長。どうする? やる?』
葉山さんがもう一度、ボクに問い掛ける。更に友香もズイッと身を乗り出して聞いて来た。
『さあ。ラストクエスチョンよ。やるの? やらないの? ハッキリ答えないと、葉山
さんにやって貰うからね。どうする?』
二人に迫られ、困惑して頭が混乱したボクは、ついに自棄になって言ってしまった。
『わ、分かったってば!! その……ボクがやればいいんでしょっ!! もう……分かったよっ!!』
227 名前:5/5[] 投稿日:2011/12/08(木) 22:44:53.98 ID:73cZ6cmY0 [10/10]
すると、二人ともパアッと嬉しそうに笑みを浮かべて顔を見合わせると、今度はボク
を見て言った。
『さすがは委員長。私……委員長って大人しそうだけど、やるときはやる女の子だって
思ってたわ』
『悠も成長したわよね~。前だったら、絶対やらなかったのに。サポートは全力でやっ
てあげるから、大船に乗った気でいなさい』
はしゃぐ二人を前に、ボクは取り返しのつかない間違いをしたのではないかと、早く
も後悔の念に苛まれたのだった。
続く
最終更新:2011年12月13日 21:42