21 名前:1/4 :2011/12/10(土) 20:31:13.71 ID:g+h3QWRr0
  • 男がエッチな事に興味があるのかどうか知りたくなったツンデレ その7
『やっぱり……やるなんて言わなきゃよかった……』
 スカートの裾を押さえつつ、ボクは屋上へと階段を上がる。あの後、放課後に行われ
た作戦会議で、ボクがやるなら図書室よりも屋上の方がいいだろうという事になったの
だ。何故なら、別府君は毎日昼休みは屋上で昼寝してるから、図書室よりもシチュを作
りやすいし、アクシデントも起こりやすいだろうと言うのが、二人の意見だったから。
『あああ……もう。二人して、勝手に話し進めちゃって…… もしかして、ボク……嵌
められたのかなぁ……?』
 まさか二人が、こっそりハイタッチしていたなんて知る由もないボクだったが、どう
にもそんな思いがして仕方なかった。
『しかも、履いてくる下着まで指定されちゃって……ああ、もう……まだ始まってもい
ないのに、恥ずかしいしスースーするし……ヤダもう……』
 とはいえ、二人はしっかり監視してるし、今更引き返すなんて出来ないのだ。ため息
を一つついて、ボクは重い鉄のドアを開けて、屋上に出る。途端にビュッと風が舞い、
ボクは慌ててスカートを後ろ手に押さえる。
『キャッ!? もう……止めて欲しいな、こういうの……』
 誰ともなしに毒づくと、ボクは別府君が寝てる裏手の影に回った。そこでは自前のダ
ンボールを布団代わりに、気持ちよく昼寝をしている別府君がいた。彼を起こしに来る
事自体は何度もある事なので、努めてボクは普段どおりに彼を起こす事にした。
『別府君』
 呼びかけてはみたものの、僅かに身じろぎするだけで別府君はすぐにまた、体勢を戻
して寝入ろうとする。そこでボクは、毛布代わりのダンボールを手で持ち上げてどかす
と、そのまま揺さぶった。
『ちょっと。人がせっかく起こしに来てあげてるんだから、起きなってば!! もう!!』
 すると、もう一度体を動かし、別府君が頭を上げて薄目を開ける。
「……何だよ…… 頼んだ覚え……ねーぞ、全く……」
『いいから起きなよ。副委員長が寝坊で授業に遅刻じゃ、カッコつかないんだからね』

22 名前:2/4 :2011/12/10(土) 20:31:35.37 ID:g+h3QWRr0
 立ち上がり、睨み付けてボクはそう言って彼を急かす。すると、別府君は仕方無さそ
うに目を擦り、傍に置いていた携帯を手元に引き寄せて時間を確認する。それから体を
起こすと、恨めしそうにボクを見上げた。
「何だよ。まだ予鈴まで15分もあるじゃねーか……」
 ボクは腕組みをしてジロリと上から別府君を睨み付けるように見下ろすと、不満気に
言い返した。
『15分なんて、寝てたらあっという間に過ぎちゃうんだからね。大体、起きれた所で眠
い頭でボーッとしてたら、授業なんてまともに頭に入って来ないじゃない。ほら。起きて起きて』
 しかし、ボクの促しにもかかわらず、別府君は座ったまま、何故かボクをジッと見つ
めていた。
『ちょっと。どうしたの? ボクに何かおかしなトコでもあるの――?』
 聞いてから、ボクはハッと気付いた。別府君の前に立ってからは何となくいつもの調
子になって起こしていたけど、今のボクはいつもより遥かに短いスカートを履いていることに。
「……いや。別に、何でもねーよ」
 よっこらせとダルそうに立ち上がる別府君に、ボクは前に立ち塞がって詰問するように言った。
『……ちゃんと言って。おかしな所があるのに、直さないままじゃ却って恥かくのボク
なんだから。変に気を遣うとか止めて』
 自分で聞いておきながら、恥ずかしくて仕方が無かった。本当なら、知らないなら知
らないままでいた方が良かったけど、もし気にする風の仕草があったらキッチリ追求す
るようにとの友香からの指令が出ているのだ。もっとも、それに律儀に従ってしまうボ
クもボクなのだが。
「いや。だからおかしな所なんて何も無いって。気にするなよな」
 いつものように、困ったような口調で別府君が答える。しかし、その答えでは納得が
行かないボクは、さらに追求する。
『ウソ。だったら、あんな風にボクを見つめたまま固まったりしないでしょ? ちゃん
と答えないと、ここからどかないからね』
 すると別府君は、困ったように頭を掻くと、視線を逸らしてため息を一つついた。
23 名前:3/4 :2011/12/10(土) 20:31:56.04 ID:g+h3QWRr0
「ホントにおかしな所はねーよ。ただ、いつもとちょっと雰囲気が違ったからさ。ただ、
それだけだ」
『雰囲気が違うって、何が?』
 ここまで来た以上は、キチンと答えてもらわないとボクも収まりがつかなかった。別
府君は、チラリと視線を動かし、それから答えた。
「いや……ただ、その……よくよく見たら、いつもより短いスカート履いてるからだなっ
て、気付いたんだよ。それだけだ」
 やっぱり、ちゃんと気付いてくれてたんだ。ドキドキしつつも、ボクは顔を背けてか
らワザとらしく言ってみせる。
『フーン。別府君も、そういう所はちゃんと見るんだね』
 スカートを押さえつつ横目で別府君を睨むと、彼はうんざりした顔で肩をすくめる。
「どうせそう言われるだろうと思ったから言わないでおこうと思ったのによ。別に単に
変わったなって思っただけで、他に特に何もねーよ」
 あっさりとそう言われた事で、何だか却ってボクはムカッと来てしまった。人がこん
なに恥ずかしい思いでミニスカート履いて来てるってのに、何も無いとか言われると、
心にズシッと重い物を乗せられた気分になる。
『あっそ。別に興味なんて無いって事か。まあ、そりゃそうだよね。フンだ』
 気持ちが言葉に乗って、そのままに表れてしまう。別府君がもう一つ、ため息をついた。
「全く、何でそこで怒るんだ? 意味わかんねーよ」
 別府君が呆れるのも無理はないと思う。確かに、どっちに転んでも怒られるんだから、
理不尽極まりないとしか言いようがないし。ただ、エッチな目で見られれば心のどこか
では嬉しさも感じてしまうのだが、興味ないと言われると女の子としてはかなりショックなのだ。
『意味分からなくて結構。どうせボクなんて可愛くもないし色気もないし、ただの地味
で……その、貧相なもやし女でしかないんだから』
 自棄になって、自虐の言葉を連発するが、途中で訳わかんなくなって、ただ適当にダ
メそうな言葉を思いつきで言った。そんなボクを、別府君が不機嫌そうな困ったような
顔で見ながら、小さく反論の言葉を呟く。
24 名前:4/4 :2011/12/10(土) 20:32:33.21 ID:g+h3QWRr0
「俺……一言もそんな事言った覚えはないけどな。何でそこまで一人で飛躍させるんだよ」
『言ってなくても、態度に出てるもの。別府君は鈍感だから気付いてないかもしれない
けど、相手からすれば、簡単に分かっちゃうんだからね』
 そう言い返して、ボクは別府君を睨んだ。するとその時、上着のポケットに入れた携
帯が振動する。隠れて見てる友香達からだ。早く作戦を進めろという催促だろう。けれ
ども、こんな状況でどうすればいいかなんて、皆目検討も付かない。
「ま、そう思うなら好きにしろよ。どのみち、違うと言っても聞かないんだろうから」
 そう言うと、スッと歩き出し、そのままボクの傍を通り過ぎる。ボクは慌てて声を掛けた。
『ちょ、ちょっと待ってよ。どこ行くの?』
 すると、別府君が足を止めて答えた。
「教室に戻るだけだよ。その為に起こしたんだろ?」
 逆にそう聞き返されて、ボクは一瞬言葉を失う。確かにその通りなのだけど、それだ
けじゃ友香達から後でものすごく文句を言われてしまう。そしてまた、携帯の振動が響
く。急きたてられるような気分で、ボクは答えた。
『……まだ、少し時間あるでしょ? ちょっと、その……付き合ってよ……』
続く
最終更新:2011年12月13日 21:47