96 名前:1/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:00:39.04 ID:e8auVd540 [6/16]
  • ツンデレに将来結婚したらどんな夫婦生活を送りたいか聞いたら

「フゥ…… ただいまぁ……」
『お帰りなさいませ、タカシ様。孝宏様のご結婚式への出席、お疲れ様でした』
「いや、もう……緊張したよ。親族とはいえ、基本的に知らない人ばかりだしさ。それ
でも、別府家の御曹司だって事で、挨拶は引っ切り無しに来るしさ」
『成人なされてから、初めての結婚式への列席でございますからね。それに今日は、旦
那様も奥様もご出席なされなかったのでしょう?』
「ああ。親父は海外出張だし、お袋も別の財界人のパーティーに出席だからね。結果と
して名代みたいな形になっちゃってさ。顔も知らない従兄弟の友人と何人も挨拶を交わ
すだけで、もううんざりだ」
『情けない事を。それがタカシ様の仕事みたいな物でしょう。この程度で音を上げられ
ておられるようでは、将来別府家の当主なんて務まりませんよ』
「愚痴だけなら親父だってこぼすさ。とにかく疲れた。着替えて来るから、お茶の準備
しておいてくれ」
『かしこまりました。それでは、早速準備致しますので、早めにリビングにお越しくだ
さいませ。あと、礼服は、クローゼットに仕舞わずに外に掛けておいて下さい。明日に
でもクリーニングに出しますので』
「了解。やれやれ……やっと落ち着けるか……」


 ズズ……
「フゥ…… 美味い。披露宴での豪華な料理やドリンクよりも、芽衣の淹れてくれたコー
ヒーの方がよほど美味いな」
『タカシ様。一流ホテルのシェフが腕を振るった料理よりも私程度の淹れたコーヒーの
方が美味しいなど有り得ません。お世辞も度を越すと、白々しく聞こえて却って不快に
感じますよ』
「そりゃあ、単純に比べてみればそうかも知れないけどさ。けど、人の感覚の問題もあ
るし、何より食事には場の雰囲気が大事だからな。盛大なパーティーで出される食事な
んて食べた気がしないけど、家の誕生日パーティーで出る料理の方が美味いのと同じ事で」

97 名前:2/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:01:01.64 ID:e8auVd540 [7/16]
『本家の料理長はかつて帝国ホテルの総料理長まで上り詰めた人じゃないですか。私な
んかと一緒になされては困ります』
「だから、腕の問題じゃないって言いたかったんだけど…… でも、まあ芽衣も少しは
自分の腕を誇りに思ってもいいと思うよ。何といっても、そんな一流シェフの食事で育っ
た俺が、美味いって言える料理が作れるんだからさ」
『さて、どうでしょうか。今のお話を伺うに、タカシ様の舌は当てにならないと思われ
ますので、果たして他の方に食べて頂いてお褒めの言葉を頂けるかどうかは微妙ですね』
「むぅ…… まあ、確かに俺の舌は芽衣の料理に馴染んでいるからな。だから、芽衣の
料理が一番だと思えるのかも知れないけどな」
『なっ……!? 何をバカな事を……そ、それはその……私だってメイドの端くれであ
る以上はその……仕える主人の好みに合う料理を作るのは当然であって、だからその……
ど、努力している訳で、そんな……』
『(ああ、もうどうしよう……私の料理が一番舌に馴染んでいるとか言われたら嬉しくて……
何か、別の話題にしないと褒め殺されて、気持ちが顔に出ちゃうかも……)』
「分かってるよ。カロリーや栄養分の計算から好みの味や焼き加減、固さに至るまで、
ちゃんと俺の事を見て努力しているんだなって事くらいはさ。もうかれこれ5年は二人
で暮らしてるんだしね」
『ですから、私は仕事だって言いたかっただけです!! そ、それよりタカシ様。その……
結婚式そのものはいかがでしたか? お料理の話や、タカシ様の世渡りベタさ加減のお
話はともかくとして』
「え……? あ、ああ。良かったよ。孝宏君も幸せそうでさ。お嫁さんもとても美人で、
ウェディングドレスが良く似合っていて、まるでどこかの国のプリンセスみたいな感じ
だったな。お色直しで着た、淡いブルーのドレスが、すごく印象に残ってる」
『そうでございますか。それは孝宏様も、さぞお喜びの事でしょうね』
「ああ。大学時代の後輩なんだって。今日はおしとやかにしているけど、普段はもっと
気が強くて、間違いなくこれから尻に敷かれるって笑って話してたよ」
『使用人の分際でこのような事を申し上げるのは何ですが、孝宏様もタカシ様程ではあ
りませんが、頼りないところがございましたから。しっかりした女性であれば、ご両親
も安心なされるのではないでしょうか』


98 名前:3/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:01:21.85 ID:e8auVd540 [8/16]
「それはあるかもな。昔、うちに遊びに来てた時に5歳も年下の芽衣にいいように使わ
れてたからな。俺と二人で」
『こっ……子どもの頃の話を、今ここでほじくり返さないで下さい。そもそもあれは私
もタカシ様もまだ幼稚園に通っていた頃の話ではないですか』
「アハハ。懐かしいよね。そういえば、孝宏君にも聞かれたよ。芽衣は元気かって。も
う何年も家には顔出してないのに、芽衣の事はしっかり覚えてるなんて、余程印象に残っ
てたんだろうね」
『もうお止め下さい。女性の過去の失態を笑い話のネタにするなんて、いくら主従の関
係であっても失礼に値しますよ』
「別に失態って事じゃないと思うけどなあ。無邪気で可愛かった頃の思い出話ってだけでさ」
『タカシ様にはそれでいいかもしれませんが、いくら幼かったとはいえ、主筋の親戚の
方に無礼を働いたなど、使用人の娘としてはあるまじき事です。別府家は旦那様はじめ
鷹揚な性格の方が多いので父も特に咎め立て無く終わりましたが、場合によっては厳罰ものです』
「相変わらず堅苦しいな、芽衣は。いい加減芽衣だって二十歳を超えたんだから、もう
そういう原則だけじゃなくて、現実を見て柔軟な物の考え方をしてもいいと思うんだけ
どな。そんな考え方じゃ、彼氏一人作れやしないぞ」
『なっ……!? あ、当たり前ですっ!! タカシ様の専属メイドとしてお仕えしてい
る以上、彼氏を作るなんて以ての外です。絶対に、絶対に有り得ません』
「ほら、これだ。もちろん、男に嵌まって仕事を疎かにするようなら困るけど、プライ
ベートとの線引きをキッチリ作ったうえで、自分の時間を持つのは重要だと思うぞ」
『仕事以外の事にまで口出しをするのは、例えタカシ様であろうとも、余計なお世話と
言わざるを得ません。それとも何ですか? タカシ様は私が彼氏を作った方が良いと、
そうおっしゃるわけですか?』
「別にそこまで言っているわけじゃない。ただ、物の例えで言っただけだ。まあ、気に
障ったなら謝るけどさ」
『謝罪など必要ありません。大体、例え話にそういう事を持ち出す事自体が、タカシ様
が日頃私の事をどうお考えになっておられるのかが知れようと言うものです。でしたら、
どのみち反省なさらないのですから、意味はありません』
「やれやれ。手厳しいな、芽衣は。ちょっと一言言っただけで、十は言い返されるし」


99 名前:4/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:01:41.86 ID:e8auVd540 [9/16]
『それはタカシ様が、使用人としての分を超えてでも注意しなければならないような失
礼な発言やくだらない発言をなされるからです。思いつきでおしゃべりをなさるようで
は、タカシ様の方こそたくさんの良縁を破談にしそうで心配です』
「はいはい。以後気をつけるよ。全く、これじゃあ孝宏君と変わらないな。彼も、式の
間の雑談の時すら、お嫁さんにいろいろ言われてたからなあ」
『本当に従兄弟同士、無駄なところだけ似ていらっしゃいますね。別府家の次期当主と、
足元を支える従兄弟の方がだらしないようでは、使用人として先が思いやられます』
「大丈夫だよ。孝宏君のお嫁さんはしっかりした方だし、俺にも芽衣が傍に付いていて
くれるからね」
『んなっ!? ななななな……何をおっしゃるんですかっ!! し、使用人を孝宏様の
奥様と同列に語るなど、あ、有り得ませんっ!!』
「まあ、ただの使用人ならそうだろうけど、芽衣は俺にとって公私共に大切なパートナ
ーだからな。親父にとっての芽衣の親父さんがそうであるように」
『そ、それはその……確かにそうと言われれば……って、でもそのやはり同列に語るべ
きではありませんし……そ、それにその……た、大切なパートナーだなんてそういう言
い方は、あの、その……ひ、人が聞いたら誤解を生むような発言は慎んでくださいっ!!』
「何で? 実際そうじゃないのか? この先どうあろうと、芽衣は俺の傍にいて支えて
くれるんだろ?」
『そ、それはそうですが、でも、あの……』
「何?」
『い、いえっ!! な……何でもないです……』
『(そんな言い方されると、まるで私がタカシ様の妻になったような…… って、私、何
考えてるんだろう…… もちろんタカシ様はそんなお気持ち微塵も持たれていないはず
なのに…… あああ……でも、心臓がドキドキして収まらない……)』
「それにしても、あの二人はどんな新婚生活を送るんだろうな。何だかんだ言って、い
いカップルのように見えたし、幸せな家庭が築けるといいけどなあ」
『へっ!? ししし、新婚生活だなんて何を言ってるんですかっ!! 私はそんな事微
塵も考えておりませんし、そもそも身分が違いますし、だからその、あの……あり得な
いと言うか……って、はい?』


100 名前:5/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:02:03.39 ID:e8auVd540 [10/16]
「また、ボーッと何か違う事考えてたな? 芽衣は。俺はあの二人がどんな新婚生活を
送るのかなって話をしてたんだが」
『い、いえその……ちゃんと聞いておりましたよ。私は。そもそも、今、またとおっしゃ
いましたよね? 一体どういう意味ですかそれは。私がまるで始終ボーっとして、人の
話も聞かずに自分の考えに没頭していたと、そうおっしゃりたい訳ですか?』
「い、いや始終とは言わないけどさ。でもまあ、時々は……あると思うぞ」
『しっ……失礼な事をおっしゃらないで下さい!! た、確かに一度や二度はありまし
たよ。で、でも時々なんて程回数多くありません!! た……たまにです……』
「じゃあ、何であんな事言ったの? 微塵も考えていないとか、身分が違うとかさ。孝
宏君のお嫁さんは大学の後輩とはいえ、お父上は西美府市の市長さんだからね。立派に
釣り合い取れると思うし」
『そ、それはですね……えーと、その……』
「どうしたの? 一体何でそんな事言ったのか聞いてるんだけどさ」
『ううううう…… その……たっ……たまたま、今はちょっと他の事を考えてしまった
だけです!! そんなに意地悪そうに追求しなくたっていいじゃないですか!! タカ
シ様ってば、たまに自分が優位に立つとそうやって得意気なお顔をなさって…… 大嫌いです!!』
「分かった分かった。これ以上は追求しないって。また、芽衣に女の子の心の中を覗く
のはプライバシーの侵害だとかなんとか怒られるしな」
『当たり前ですっ!! タカシ様は無神経で無遠慮に過ぎるんです。私だって……女な
んですから』
「ちゃんと理解してるよ。だから、今日はそこまで聞かなかったろ?」
『嘘です。そもそも、理解してくださるなら、あんな意地悪な質問はなさらないはずで
す。使用人だからって、何でもしていいとか思わないでください』
「それこそ微塵も思った事ないけどな。小さい頃からずっと一緒に居て……まあ、芽衣
が修行してた頃はほとんど会ってなかったけど、それでも二人でここに住み始めてから
もう4年以上経つのに、未だに俺の事を理解してくれてないのか?」
『無論、仕える主人の事ですから、キチンと理解しております。お調子乗りで、私をか
らかう事が大好きで、断りもなく勝手な行動をなさって…… 本当に手の掛かる方だって』
「ハァ…… やれやれ。将来、芽衣の旦那になる人も、こういう苦労を味わうのかなぁ……
だとしたら大変だ」

101 名前:6/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:02:23.84 ID:e8auVd540 [11/16]
『なっ……!? 何を失礼な事をおっしゃっているんですか!! それはタカシ様が性
格が悪くて自分勝手だからで…… そもそも私は結婚なんて致しません!! 生涯タカ
シ様に仕えるのは、私の義務です』
「でも、芽衣の親父さんだって結婚したから芽衣が生まれたんじゃん。それとこれとは
別の話だろ? お屋敷に入れば同居したって問題ないし、芽衣が結婚しても仕事を続け
られる環境なんていくらだって作ってみせるぞ」
『し、しかし私は、その……』
「分かってるよ。今は考えられないならそれでいい。けれど、ちょっと興味も出たし、
聞いてみるけどさ。もし芽衣が結婚するとしたら、どんな夫婦生活を送りたい? 少な
くとも、俺との生活は理想ではないよね?」
『そ……それはその……当たり前ですっ!! こんな手の掛かる人と、仕事以外でなんて……』
「じゃあ、芽衣の理想の結婚生活を教えてみてよ。別に何がどうって訳じゃなくて、雑
談としてさ」
『し、しかしそんな事急に言われたって……考えた事も……』
「そんな事ないだろ。女の子なんだし、現実的でなくとも、一度は考えるものじゃない
のか? 俺に不満があるなら、尚更だろ」
『……そ、それはその……どうしても答えなければならないものなのでしょうか? ご
命令なら従いますが……』
「いや、別にいいよ。俺が聞きたいだけだし、芽衣が答えたくないならそれはそれで」
『何か、タカシ様はよくそういうおっしゃり方をなされますが、私は嫌いです。いかに
もその、気を遣ってますよ的なアピールされているみたいで。聞きたいなら聞きたいで、
ただそれだけおっしゃって頂ければいいのに』
「だって、イヤイヤ言わせるのは好きじゃないから。それは好奇心よりも優先させる事
だと思ってるし」
『それがズルイと言うんですっ!! 私はタカシ様の専属メイドですから、タカシ様が
こうして欲しいとおっしゃられれば、それが命令であろうがなかろうが、満たさねばな
らない義務があるのに……』
「だったら逆に素直に答えればいいんじゃないか? どのみち答えるなら、命令かどう
かなんて聞く必要ないんだし」


102 名前:7/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:02:44.24 ID:e8auVd540 [12/16]
『うっ…… べっ……別に聞いたって構わないじゃないですかっ……!! むしろ逃げ
場を無くして頂いた方が、気持ち的には楽ですし……』
「分かった。芽衣がその方がいいと言うのなら、命令という事でいいよ。まあ、芽衣が
嫌な時は命令だろうと拒否するだろうからね」
『し、失礼な…… タカシ様の使用人である以上は、いかなるご命令であろうと、それ
はその……従う覚悟は出来ております』
「どうかな? まあいいや。じゃあ、どうしても嫌だと言うんじゃなければ、教えてくれ」
『……か、かしこまりました。私の理想の結婚生活で宜しいんですよね?』
「ああ。急がなくて良いよ。じっくり妄想してから答えてくれれば」
『妄想って……へ、変な言い方しないで下さいっ!! 私はその……至って健全な考え
しか致しませんから!!』
「最近は妄想って結構普通にテレビとかで女優さんも使うけどなあ。ちょっと自意識過
剰な気もするけど、まあいいや。とにかく考えながら話して」
『わ……分かってますっ!! とはいえ、何から考えて良いのか……』
「そうだね。じゃあ、一つ一つ質問するから、それに答えていく感じで良いかな」
『分かりました。タカシ様がそうおっしゃるなら、良いように』
「じゃあ、そうだね。まずはどんな家に住みたい?」
『そうですね……少々、お待ちいただけますか?』
「ああ、いいよ。ゆっくり考えな」
『(私の旦那様……私の好きな人は、タカシ様しか考えられないから、恐れ多い事だけれ
ども、でも……もし、主人とメイドじゃなくて、違う出会いだったとしたら……)』
『そうですね。都内……でしたら、やはり都心に近いマンションでしょうか。ただ、だ
とすれば、郊外に別荘というか、別宅を持つのもありですね。都心の空気は、あまり良
くはありませんから』
「(へえ。意外と贅沢なんだな。まあ、別府家でずっと過ごしていれば、根本的な金銭感
覚とか、多少ズレていても仕方ないけど)」
「ふうん。でも、何で都心に近い方がいいの? 別に首都圏だったらそんなに不便でも
ないし、周辺の県の方が安くない?」


103 名前:8/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:03:05.78 ID:e8auVd540 [13/16]
『それは、一応住まう場所にも相応の格がございますから。仕事などでタ……いえ、そ
の、旦那様がどこに住んでいるか聞かれた時に、埼玉や千葉よりも赤坂や青山の方が箔
が付きますでしょうし。それに、仕事上も都内に住まいがあった方が都合が宜しいかと
思いましたので』
「まあ、そりゃそうだろうけどね。で、別荘ってのは?」
『それは、いくら気を遣って緑を部屋に置いたりしても、どうしても都心に住んでいれ
ば息が詰まりますでしょうから、週末くらいは空気が綺麗で広々とした景色の広がる環
境の良い場所で過ごした方が宜しいかと思いまして。それに、子供が出来れば、尚更都
会に閉じ込めておきたくはありませんし』
「なるほどね。じゃあ、子供の話が出たところで、結婚したら何人くらい子供は欲しい?」
『こ……子作りって……何を考えているんですかっ!! タカシ様のスケベ!!』
「いやいやいや。行為はともかくとして、子供が欲しいと思う気持ちはまた別だろ? そ
れとも芽衣は子供は欲しくない?」
『い、いえっ!! 決してそのような……あの、その……こ、子供は欲しいですけど……はい……』
「で、それなら何人くらい欲しい? 一人いれば十分? それとも、大家族の方がいい?」
『私は……そうですね。子供はたくさん欲しいですね。男の子は最低二人……女の子も
一人はいた方がいいですし、出来れば4人か5人は……』
「へえ。芽衣が子供好きとは知らなかったな。あんまり子供と戯れてる姿を見たことな
かったし」
『それは、機会に恵まれていなかったからだけです。それに、特に子供は好きでも嫌い
でもありませんが、たくさん子供を作れば、それだけ家の発展にも繋がりますし』
「家の発展……ねえ。まあ、うちみたいなのは意識しなくちゃいけないけど、芽衣はそ
こまで考えなくても、自分が欲しいだけでいいんじゃないかな?」
『――っ!? え、えっと、その……そ、それはそうですけど……それに、大勢いた方
が、家族は賑やかでいいじゃないですか。ねえ』
「まあ、それはそうだな。それに芽衣は子育てスキルも高そうだから、多少多くても立
派にこなせるだろうし」
『そういう事をおっしゃっていては困ります。ちゃんと、タカ……だ、旦那様にも手伝っ
ていただかないと。時間の許す範囲で家庭の事も見ていただかないと、困ります』


104 名前:9/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:03:28.26 ID:e8auVd540 [14/16]
「なるほど。芽衣は家庭的な旦那さんがいいんだね。しかし何か、俺が芽衣に説教され
てるみたいな言い方だったな」
『そっ……!! それは、その……い、一般論としてですね……そもそも、それはタカ
シ様にも通じる事ですし。将来、その……ちゃんとした身分相応の女性を娶られる訳で
すから……』
「はいはい。我が身のこととして、肝に銘じることにするよ。他に、旦那さんにはどん
な事を望みたい?」
『そうですね…… 出来れば、接待などのお付き合いがない限りは、ちゃんと帰って来
て夕食を家で食べていただけたらいいな、と思います』
「それは、好きな人とは、出来る限り長い時間一緒にいたいという事かな?」
『べっ……別にそういう訳ではありません!! ただ、夫の夜遊びが家庭崩壊に繋がる
例は枚挙に暇を得ませんから。そうならないように注意していただかな……いただける
ようにです』
「芽衣らしい堅苦しい理由だなあ。もう少し、結婚生活を楽しめるような理由があった
もいいと思うけどな」
『か、かたっ…… 家の事を思って、そう考えているというのに、性格が堅苦しいなど
と言われては、ハッキリ言って心外です。訂正なさって下さい』
「分かったよ。そう怒らなくても。ただ、芽衣はうちしか見てないから、ついついそう
いう考えになっちゃうかも知れないけど、もう少し世の中の夫婦はそこまで考えずに、
自分達の幸せを優先でいいんじゃないかな?」
『そっ……それはまあ、その……そうですけど……』
「でもまあ、良いんじゃないかな。芽衣の手料理は美味しいから、きっと毎日食事に間
に合うように早く帰って来てくれるさ」
『だと、いいんですけどね……』
「大丈夫だって。ということは、休日も一緒に過ごしたいんだ」
『それは、そうなりますね。一緒にお買い物して……時にはちょっと寄り道したりとか、
時々サプライズで色々な所に連れて行って貰えたり……そう出来たら、幸せです』
「結婚しても、週末は夫婦でデートか。それはいいと思うな。理想の夫婦のあり方って感じで」
『べ、別に理想の夫婦とかってそんなんじゃ……ただ、その……』
「ただ、何?」

105 名前:10/10[] 投稿日:2011/12/12(月) 02:05:02.14 ID:e8auVd540 [15/16]
『い、いえ。何でもありませんっ!!』
『(タカシ様はお気付きでないかも知れませんけれど……これって、今のタカシ様との生
活をそのまま続けて行きたいから……だけなんですけどね……)』
「そっか。大体分かったよ。ありがとう。それにしても、芽衣と結婚出来る旦那さんは
大変だな。この理想を全部叶えるとしたら」
『そんな、大変だなんておっしゃらずに、全部やっていただかないと困りますよ。タカシ様』
「へ? 俺が? 何で?」
『――――っ!!!! しまっ…… い、いえその……わ、私の理想なんて至極一般的
な事でしかないのですから、タカシ様も、その、あの……将来結婚された時にはこの程
度の事くらいはして頂かないと、とそういう意味で、だからあの……けけけ、決してそ
の……あの…… わ、私はもう仕事に戻らないと!! お茶の後片付けもしないといけ
ませんし。正直、タカシ様とのくだらないおしゃべりで、随分と時間をロスしてしまい
ましたから。そ、それでは失礼致しますっ!!』

「(……芽衣は、どんな旦那を想像して結婚生活を考えたのかな? かなり、高収入でな
いと叶えられない感じだったけど………… もしかして……いや、まさか、な…… しかし……)」

『あ、危なかった……最後の最後でうっかりボロを出しちゃうなんて…… 話してるう
ちに、ついつい妄想が広がって……つい…… でも、タカシ様とそんな結婚生活が送れ
たら…… ううん。それは叶わぬ夢だもの。私は、生涯タカシ様付きのメイドとして、
お傍に仕えていければ……それだけで十分、幸せだから……』


終わり
最終更新:2011年12月13日 21:52