91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/30(金) 19:15:55.94 ID:oXmgcewg0 [2/7]
「ふぃ~食った食った」
食べはじめてから数十分後、俺たちの前にはほとんど空になった鍋だけが残っていた。
「ごちそうさまー。……まあ、コウジが作ったにしては美味しかったわね」
そう言うまりも、言葉通りと言うべきか、言葉とは裏腹にと言うべきか、満足そうな表情を浮かべている。
「そりゃあ良かった……はー、鍋食った後、こたつで横になれるってだけで、日本に生まれてよかったって気になるなあ……」
「まったく、コウジは呑気なんだから……食べてからすぐ寝ると牛になっちゃうわよ?」
まりの奴に見下ろされながら、ごもっともなお叱りを受ける。これでは、どっちが年上なのだかわからない。
少しムッと来たので、軽くからかってやれ。
「じゃあお前も一緒に寝て牛になるか?」
「は、はぁっ!? いっ、いいい一緒に寝るとか、なに馬鹿なこと言ってんのよ?!」
思った通り、いつもの生意気げな態度から一変して、頬を朱に染めながら目を白黒させるまり。
問題は、からかった本人である俺自身が、そんなまりを見て動揺しちゃっているところである。
「な、なに、赤くなってるのよっ、ば、馬っ鹿じゃないの……!」
「う、うるせい、お前だって真っ赤だっつうの……!」
お互いに黙って睨み合うが、言うまでもなく、まりも俺も赤面したままであり、まったくもって格好がつかない。
(ええい、何でもいいから、なんか空気を変えられるもんはないか……)
「あっ、そうだ」その時、俺の脳裏に閃くものがあった。というか、今の今まで大事な物を忘れていた。
「な、何よぅ……?」
また、さっきみたいにからかわれるのを警戒しているのか、まりからは、疑うような視線を向けられる。
「良いから、ちょっと待ってろ」
言って、俺は自分の部屋から、綺麗にラッピングされた小さめの箱を持ってきた。
「そ、それって、もしかして……?」
まりは、期待と驚きの入り交じったような目を、その箱と俺の顔の間で行ったり来たりさせる。
俺は、そんな子供みたいなまりに微笑みを漏らしつつ、クリスマスプレゼントを差し出した。
「ああ、お前が気に入ると良いんだけどな……」
「あ、開けても良いの?」プレゼントを受け取ったまりが、恐る恐るといった様子で問いかけてくるもんだから、またもや思わず微笑んでしまう。
まったく、いつもの生意気なまりは、一体どこに行ったんだか……。
「もちろん、そのために買ってきたんだからな」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/30(金) 19:16:49.80 ID:oXmgcewg0 [3/7]
「じゃ、じゃあ、開けるからねっ」
中の物が、万が一にも傷ついたりしないように、丁寧に包装を破るまりを見ていると、知らず俺まで緊張してしまう。果たして、俺の選んだプレゼントをお気に召してくれるだろうか。
そうして、箱の中から現れた物。それは……
「こ、これ、マフラー……?」
「お、おう……いや、ほら、お前、ちょっと前まで使ってた奴、古くなったから捨てたって言ってただろ? だから、この冬はそれ使ったらいいんじゃないかって……」
俺が、まりへのプレゼントとして選んだのは、目にも鮮やかな明るい赤色のマフラーだった。
しかし、まりがただじっと、それを見ているもんだから、俺は不安になって口数が多くなってしまう。
(あちゃー、こりゃあ、やっちまったかなあ……)
「あー、気に入らないんだったら、それは返品して、また別の奴に……」
「い、いいわよっ……」
「へ?」
「だっ、だからっ、これで良いって言ってるの!」
「いや、でも……」
「だ、だってさ、こ、これ、コウジが私のために選んでくれたんでしょ……?」
「あ、ああ、まりだったら、やっぱり明るい感じの色かなぁと思って、いろいろ見比べてみたりはしたけど……」
「だ、だったら、これで良いわよ。ま、まあ、その、コウジにしては悪くないセンスだと思うし?」
「……つまり、気に入ってくれたと?」
「そ、そういうわけじゃないけどっ! わざわざ選んでくれたものを受け取らなかったりしたら、いくらコウジ相手でも失礼だと思っただけだしっ! ……って、ああもう、なににやけてんのよ!」
「いや、お前だって、さっきから超にやけてるし」具体的には、『コウジが私のために』云々のあたりから、いつもの、にへって感じの笑いが、顔に張り付いていた。
「へっ!? う、嘘っ、にやけてなんかないもんっ。……に、にやけてなんかないけど、こっち見ちゃ駄目だからね!」そう言って、俺のあげたマフラーで口許を隠してしまうまりが、可愛くて仕方ない。
(ああチクショーっ、認めないようにしてたけど、やっぱ俺、こいつのこと好きだ……!)
とうとう、自分の気持ちを理解しだした俺は、意図的にまりから顔を背けて、言う。
「ま、まあ、今日はそれ巻いて帰るといいさ。デザインだけじゃなくて、実際に暖かいかどうかも考えて選んだしな。……さーて、渡すもん渡したし、鍋とか片付けるかなっと」
「ま、待ってよ」
こたつの上の鍋へと向き直った俺を、まりが呼び止める。
「ん? どうした?」
「わ、私からも、その……ぷ、プレゼントがあるんだけど……」
「お、マジかよ? もしかして、そのデカイ紙袋の中か? 俺はてっきり、オセロとかボードゲームでも持ってきたのかと思ってたんだが……」
俺は、言いながら、まりがもってきた、やたらと大きな紙袋へと目をやった。確かに、最初から気になってはいたのだ。
「ま、まあ、プレゼントっていうか、プレゼントの一部っていうか……」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/30(金) 19:17:53.56 ID:oXmgcewg0 [4/7]
「一部……?」なんだそりゃ?
「う、うん……ちょっと、準備してくるから、待っててね……ぜ、絶対見ちゃ駄目だからねっ」
「あ、おいっ……」
そんな、さっきと似たようなことを言って、まりは止める間もなく、廊下へと出ていった。
「何だってんだ一体……?」
準備する時間が必要なプレゼントとは何なのだろう。しばらく悩んだが、ちょっと待てばそれもわかるだろうと思い、とりあえず鍋や茶碗を流しへと運ぶことにする。
そして、こたつの上がだいたい片付いた頃、
「お、お待たせっ」
そんな声と共に、廊下と居間を繋ぐドアが開いた。
「お、ようや――」
言いかけて、絶句する。
「な、なに黙ってるのよ……なんか言いなさいよ……?」
「……えーと、髪、下ろしたんだな」とりあえず言えたのは、それだけだった。いや、確かにいつもツインテールとかいう髪型にしているまりが、髪を下ろしているのは珍しいのだが……
「そっ、そんなことより、もっとなんか言うことあるでしょ?!」
いい加減、引っ張るのは止めよう。まりの今の格好を端的に言い表すのなら、そう……
「み、ミニスカサンタ、か……」
この時期、色んなキャンペーンやらでよく見る、あの衣装である。さりげなく、俺がさっきあげたマフラーまでしていて、頬がにやけてしまうのが、止められそうにない。
そんな俺の様子には気づかずに、まりは落ち込んだように俯いてしまっている。
「や、やっぱ、似合ってないかな? ぅ、そ、その、友達が絶対似合うって言うから、借りてきたんだけどさ……へ、変だよね、やっぱり……」
「いっ、いや、全っ然変じゃないぞ!? ただ、可愛すぎて、言葉が出てこなかっただけだ!」
なんだか不安そうで、泣きそうなまりの表情を見て、慌ててフォローする。いや実際、奇跡みたいに可愛いし。
ただその、すらっとした生足が、惜しげもなく露出していて、物凄く目のやり場に困る、という難点はあるのだけど。
「よ、良かったぁ……にひひ、まあ、私なら何着たって似合うなんてわかりきってたけどねっ。……で、でも、その、あ、ありがと……」
「お、おう……なかなかインパクトのあるプレゼントだったぜ……」
「……あ……ううん、違うの……」
「? 何がだ?」
「だ、だから、これを見せるのがプレゼントじゃないの……」
「えっ、じゃあ何が……?」
さっきまで、何か決心を決めかねているようだったまりが、今、顔を上げ、俺の目をしっかりと見つめる。その目は、少し潤んでいて……それでいて、どこか強い意思を宿し、輝いているように見える。
94 名前:終わり[] 投稿日:2011/12/30(金) 19:18:47.17 ID:oXmgcewg0 [5/7]
「わ、私……」
「へ?」
「ぇ、えっと、だから、その……わ、私がコウジへの、ぷ、プレゼント……」
「…………へ?」
まりがプレゼント? 俺への? つまり、だから? ……駄目だ、混乱しすぎて、まるで考えがまとまらない。
黙り込んでしまった俺に、まりは今にも泣き出しそうに潤んだ瞳と、真っ赤に染まった、その天使みたいな顔を、しっかりと向けたまま告白を続ける。
「だ、だから……わっ、わた、私は……こ、コウジの、ことが、す、好き、なの……」
「……はは、あーそうか、キスの時みたいなジョークだろ、これ? まったく、年上をあんまり……」
「ち、違うもん!」
「っ、まり……」
「じょ、冗談とか、嘘じゃ、ないん、だからっ……! わ、私はっ、ずっと、ずっと前から、コウジのことがっ――」「まり!」
「ぇ、ぁ……? こ、こう、じ……?」
気づけば……気づけば、俺は、まりを抱き締めていた。もう誤魔化すこともできないくらいに、自分は、まりのことが好きなんだと、このときようやく俺は自覚したんだ。
「ごめん……ごめんな、まり。冗談ってことにして、誤魔化そうとしてたのは、俺の方だ……。俺も、俺も、まりのことが好きだ、大好きだ……!」
「ぅ、うわぁあああぁん、コウジぃっ」
滅多に泣いたりしない、気丈なまりが、まるで子供のように涙を流しながら、俺に体ごと抱きついてくる。何故だか、俺まで泣いてしまいそうだ。
「コウジ、コウジ、コウジぃっ! い、いっつも、酷いことばっかり言ってたけど、でも、でも、ホントはコウジのことが好きなのっ、大好きっ!」
「ああ……ああ、俺も大好きだよ、まり。……本当にごめんなぁ、こういうのは、やっぱり男から言わないとダメだよなあ……」
「ううん、いいよ……こうして、ちゃんと好きだって言えたもん……コウジからも好きって、言ってもらえたんだもん……。……だから、ねえ、コウジ……私と付き合ってくれるなら、ちゃんと形にして……?」
そう言って、まりはゆっくりと目を閉じる。
俺は、高鳴る胸をなんとか抑えて、ゆっくりと、まりの愛らしい唇へと、自分のそれを重ね合わせた。
それは、時間にすれば、きっと二秒と経っていなかっただろうが、俺にとってはまるで永遠のように感じられた。
「コウジっ、大好きっ!」
長くて短いキスの後、まりは感極まったように、再び体ごと抱きついてくる。俺は、それを抱き返して、また、好きだと囁きながら……いつもみたいに優しく、頭を撫でてやるのだった。
ただし今度は、教え子でも、年の離れた幼なじみでもなく……他の誰よりも可愛らしくて愛しい、たった一人の恋人に対して。
最終更新:2011年12月31日 15:10