73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/31(土) 23:20:57.49 ID:37ms1DYM0 [11/13]
「ねえコウジー、なんで紅白見てんのー?」
「ん、ああ、うちは毎年紅白だからなあ。違うの見たいなら、チャンネル変えてもいいぞ?」
今年も残り数時間となった今、俺は、ほんの数日前、晴れて恋人同士となったまりと一緒にテレビを眺めていた。
「んー……まあ、うちで録画してるから別にいいや」
「……なんだそりゃ」
「あっ、そ、そんなことよりさ……」
「どした?」
見れば、まりは何やら思いついたような顔をしている。
「そっちにさ……行っても良い?」
「えっ? ……っておい」
こちらが答える間もなく、まりは唐突にこたつの中に潜り込んでしまい……
「にへへ、やっぱりこうすると、もっとあったかいねっ……ちょっと狭いけど」 俺が入っている方から出てくると、俺の方に背中を預けたのだった。
「ったく、俺は座椅子じゃないぞ……」
「何よぅ、ホントは嬉しいくせにっ。素直に嬉しいって言いなさいよね!」
まりの顔は、大体俺の顎の下辺りに来ているので、どんな表情をしているかは見えないが……その弾んだ声から察するに、いつもの生意気な笑顔を浮かべていることだろう。
(しかし、年上として言われっぱなしなのは癪だな)
「何言ってるんだか。お前がやりたいからこうしてるんだろ?」
「ちっ、違うわよっ! そ、そーじゃなくて、えと、寒いからよ、寒いから! べっつに、コウジとくっつきたいわけじゃないんだから……!」
告白してきたときは、あんなに素直で可愛かったのに、いつの間にやら通常営業である。いやまあ、こういうまりも、可愛くないわけではないけど。
「あーはいはい……」
「むぅー、何よ、むかつくわね……!」
「……別に、こうしてるのが嬉しくないだなんて言ってないだろ」
「にぇっ!? ……え、えっと……ば、馬鹿コウジ、初めから、そう言いなさいよねもう……」
「自分から言わせといて、照れるなっての……」
そう軽く笑いながら、おそらくは赤い顔を隠すために俯いたまりの頭を優しく撫でてやる。
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/12/31(土) 23:23:26.98 ID:37ms1DYM0 [12/13]
「……ん、もっと……」
「はは、今度は甘えんぼうか?」
「な、何よぅ……甘えちゃ、ダメなの……?」
「い、いや、駄目じゃない、けど……」
駄々をこねる子供みたいな、まりの台詞に、知らず声が上ずってしまう。
「にひひ、コウジだって、やっぱり照れてるじゃない……自分から撫でといてさ」
「ったく……お前は相変わらずだな」
まるで、懐いてるのに、そうでない振りをする猫のようだ。こういうのを小悪魔とでも言うのかもしれない……困ったことに、たまに天使みたいに見えてしまうけれど。
「むぅー、それ、どういう意味よ?」
「なんでもねーよ……お、次、水樹奈々か」
「話そらさないでよ、もー…………にひひ、ねーコウジ」
「なんだよ」
「にひ、あのさ、えっとさ……こうしてると、なーんか、いかにも恋人同士って感じだよね……?」
「……そう、だな」
俺の答えを聞き、まりは微かに体を震わせたかと思えば、強引に体をこちらに向けた。驚いて何も言えない俺の視界に、すっかり赤くなったまりの笑顔が映る。
「……にへへ……コウジ、私のこと、好き?」
「……今更、それを聞くか」
「ねー、どうなのよぅ?」
「……好きだよ、決まってるだろ」
「にひひっ、私もっ」
言うが早いか、まりは俺の胸に飛び込んできた。勢いを受け止めきれず、俺たちは抱き合ったまま倒れ込んでしまう。
「……紅白見れないじゃねえか」
「……そんなことよりさ、もっともっと、なでなでしてよ……ね?」
可愛らしく小首をかしげるまりの魔力に抗えるはずもなく……すっかり天使な小悪魔に振り回されてしまう、そんな大晦日なのだった。
最終更新:2012年01月05日 20:54