12 名前:1/4[sage] 投稿日:2012/01/28(土) 18:57:30.10 ID:4WJ8ss9Y0 [3/10]
「ちぃ~す」
『……何しに来た……この変態……』
「家に来ただけで、いきなり変態呼ばわりかよ。つか、お前こそ大晦日だってのに実家に
も帰らずにネトゲ三昧かよ」
『……うるさい……君に言われる筋合いはない…… 自分だって……帰省……してない……
くせに……』
「俺は明日帰るからいいんだよ。お前は正月休みの間ずっとこっちだろが」
『……家……帰ると……いろいろと……うるさいから……』
「気持ちは分かるけど、せめて顔ぐらい出してやれよ。親御さん、心配してんじゃね?」
『……うるさいな……説教……しに来ただけ……? なら……帰れ……』
「そう言うなって。せめてちなみにも、正月気分を味合わせたろうと思って、いろいろと
持って来たのに」
『……正月……気分……?』
「そうだよ。ほれ、年越し蕎麦だろ? あとお餅におせち。それに煮物も作って持って来た」
『……相変わらず……無駄スペックを発揮するな……君は……』
「無駄言うな。誰のおかげで時々とはいえ、ちゃんとした飯が食えてるんだお前は」
『……私は……ジャンクフードで……一生を終えるから……いいと言うのに…… ちょっ
と……料理が……出来るからといって……偉そうな態度取られると……ムカつく……』
「ほう? そういう事言ってると、これも含めて全部持って帰るけどいいか?」
『あ……ビール……一番搾り……日本酒も……くれー……くれー……』
「日本酒はお屠蘇だから明日の朝な。全く、相変わらずアルコール類には目がない奴だな」
『……最近……金麦とかしか……飲んでなかったから……本物のビール……久し振り……』
「目を輝かせるな。全く……実家に帰れば酒くらい出て来るだろ」
『むー……お酒も出て来るけど……おかーさんの……説教も出て来るから……ウザイ……』
「そんだけ心配してるってことだろ? ほれ。とりあえず駆けつけで一杯行くぞ」
『……待って……グラス……出す……食べ物は?』
「あとで蕎麦食うからさ。チーズとかサラミとかそんなもんしか持ってないけどいいか?」
『……あと……柿ピー……あるよ……食べる?』
13 名前:2/4[sage] 投稿日:2012/01/28(土) 18:57:51.07 ID:4WJ8ss9Y0 [4/10]
「相変わらずつまみ系の菓子はしっかり常備かよ。絶対体壊すぞお前」
『……無茶なダイエットで……体壊すより……好きなもん食べて……死ぬ方が本望……』
「死ぬ前に肝臓かどっか壊れて死んだ方がマシと思えるくらいの苦痛を味わうかもしれん
けどな。気持ちよくポックリ逝けると思うなよ」
『……タカシは……意地悪だ…… すぐ……そうやって……人を怖がらせるような事をいう……』
「だからそうならないように忠告してやってんだろ? まあ、まだ若いからな。今のうち
なら取り返しつくぞ」
『……フン……タカシごときの説教で……この堕落した生活からは……抜けられんよ……』
「威張って言う事じゃねーだろ。このバカ」
『……バカに……バカって言われた……ショック……』
「ほーう。せっかくいろいろと差し入れ持って来た人間に対してバカというか? じゃあ、
ビール持って帰るかな」
『ううう…… いーよ……別に……帰るなら……帰れ……最初っから……期待なんて……
してなかった訳だし……フン……』
「ウソだよ。つか、涙目で強がっても説得力ねー」
『……君じゃない……ビールが……惜しいだけだから……』
「はいはい、分かってますって。ほれ、それじゃあ注ぐぞ」
『……別に……そんなの……自分で注ぐから……いーのに……』
「手酌じゃ寂しいだろ? 最初のいっぱいくらいはさ」
『じゃあ……』
トクトクトク……
「どうだ。この絶妙な泡加減。ばっちりだろ」
『こんな事で……得意になったって……世の中の……役には立たないのに……』
「そんな事ないだろ。社会に出れば飲みの席だって結構あるだろうし。つか、そういうち
なみはちゃんと注げるのかよ」
『……別に……そんなスキル……必要ないし……それに……人に注ぐなんてめんどくさい
から……タカシは……自分で注げ……』
「ひでえ。俺だけ手酌かよ」
『……そんなの……気にする方が……間違い…… 私は……タカシが……どうしても注ぎ
たいって……言うから……注がせてあげただけ……』
14 名前:3/4[sage] 投稿日:2012/01/28(土) 18:58:11.53 ID:4WJ8ss9Y0 [5/10]
「ちぇっ。全く、冷たいよなちなみはよ。きっと中には氷のように冷たい血が流れてるんだ」
『……勘違いするな……冷たいのは……君にだけ……これでも……世間では……親切な人
で……通ってるから……』
「ネトゲの中では、だろ? そういえば、飲む前にパソコン落としとけ。せめて年末年始
はネットから抜け出して現実世界の中で楽しもうぜ」
『……えー…… クランの仲間と……年越しで……討伐に行く約束……してたのに……』
「ネトゲなんて年がら年中、いつだって出来るだろ? そりゃネトゲ社会だからって約束
は大事だろうけど、大晦日の夜から正月くらい、日本人らしく過ごそうぜ」
『……むー……それがタカシと二人というのは……その……気に食わないけど……』
「けど、何だよ?」
『……食べ物と……お酒の恩があるから……しょうがないから……一緒に過ごして……やっ
てあげてもいい……』
「何その上から目線。全く、人がせっかく大晦日から正月までをらしく過ごせるように色々
と食い物持って来てやったってのに」
『そんなのは……当然…… 食べ物も持って来ない君に……価値はない……』
「これだよ全く。まあ、とりあえず紅白でも見るか」
『……えー……紅白なんて……つまんないよ?』
「じゃあ、何か見たいテレビ番組他にあるか? ちなみが見たいってんならそっちでもいいけど」
『……特にない……っていうか……ゲームやろうと思ってたから……』
「ならいいじゃん。何ていうか、これが一番大晦日っぽい気がして。酒飲みながら出てく
る歌手に文句付けつつ、今年はこんなのが流行ったなーとか一年を振り返るのもいいかなあって」
『……勝手にすればいい…… 私は……これがあれば……満足……』
「ホントお前ってビール好きな。あんま飲み過ぎんなよ。紅白終わったら年越しそば食っ
て、それから初詣行くからな」
『……初詣なんて……めんどくさい……寒いし……ヤダ……』
「お前、罰当たりな事言うなよな。日本人の伝統行事なんだし、行っとくべきだろ。この
近くに美府神社ってあるからさ。そこ行くぞ。何気にパワースポットでもあるらしいし」
『……近くって言っても……どうせ……境内で並ぶに決まってる…… タカシは……私を
凍死させる気……?』
15 名前:4/4[sage] 投稿日:2012/01/28(土) 18:59:20.94 ID:4WJ8ss9Y0 [6/10]
「するかアホ。俺も一緒に行くんだから、そこまで寒かったら俺も死ぬわ。帰ったら暖め
てやっからさ」
『……スケベ……』
「は? 何がだよ?」
『……暖めてやるって……今……絶対タカシ……エッチな事……考えてた……』
「いや。考えてないってば。焼酎のお湯割りでも作ったろうかと、それだけだって」
『……嘘つきは良くない……ごまかしていても……ちなみさんには……お見通しだから……』
「しつこい奴だな。そもそもそんな風に思うのって、ちなみの方こそ実はエッチな事咄嗟
に思い付いたからだろ」
『な……!? だ……誰が……そんな事…… タカシなら……変な事考えそうだなって……
そう思っただけで……具体的にどうとか……考えてないし……』
「あれれ? 何かちょっと動揺してるし、実は図星だったか? からかうつもりで言った
だけなんだけど」
『う……うるさいっ!! 違うって……言ってるのに……』
「そういう事なら、ちなみの期待に応えてみますか。一緒のベッドで寝れば、倍暖かくなるし」
『……なるわけない……期待してない……入って来たら……蹴飛ばしてやる……』
「まあ、本気で嫌がられたら入らないけど、その様子なら……大丈夫そうかな?」
『……何が大丈夫なのか……分かんない…… ていうか……ニヤニヤするな……キモイし……』
「いや。ちなみの照れた顔が可愛くてさ。ついついね」
『……誰も照れてない……ていうか……もう紅白終わったし……さっさと蕎麦作って来い……』
「はいはい。それじゃ、ちょっと台所借りるぞ」
『フン……死ねバカ……』
『(……見透かされるなんて……こっちこそ……死にたい……あうぅ……)』
終わり
最終更新:2012年01月29日 23:17