44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/01/29(日) 01:30:19.63 ID:zCrRmFXv0 [2/5]
「ねえコウジー、近くのコンビニ行ってさ、肉まんでも買ってきてよ」
目の前で俺を見上げながら、そんなふざけた注文をする少女の名は、まりと言い、俺の昔からの妹分であり、家庭教師としての俺の教え子でもあり……そして何より、俺の恋人である。
ちなみに、俺が大学一年なのに対し、まりはまだ中三なので世間様にばれると割と大変なことになりかねない。その為、当然ながら付き合っていることは他人には秘密にしている。
そういう事情もあって、今日もあくまで家庭教師としてまりのもとにやって来たわけなのだが……。
「……根は真面目という初期設定はどこへ行ったのか……」
「はあ? 何をボソボソ言ってるのよ?」
「いや、その、前にも同じようなこと言った覚えがあるけど、そりゃ家庭教師の仕事じゃないだろうが」
そもそも、今日はもう家庭教師としての仕事は終わってるから、やはりそんなことをやらされるいわれはないのである。
「むぅー、ケチっ。……あ、じゃあさ、彼女としてのお願いならどう?」
得意気な顔でそんな提案をするまりに、軽く怒りを覚えながら、そのやわい頬を引っ張ってやる。
「いひゃっ、ひょっと、なにすんのよコウジっ」
「お前にとって、彼氏は下僕並みの存在なのかコラ」
「うっ……そ、そーいうわけじゃないけどさ……だって、その、肉まん、食べたかったんだもん……」
「だからって、俺に買いに行かせることはないだろ……と言いつつ、俺もちょっと食いたくなってきたな。昼飯少なめだったし」
「あっ、じゃあさ、ゲームで負けた方が二人分買ってくることにしない?」
「ゲーム? しりとりとかか?」
「そんなありきたりなのじゃつまんないでしょうが、馬鹿コウジっ」
「……じゃあどんなゲームだよ」
「にひひ、それはね~」
いつもみたいに生意気そうに笑いながら、まりが持ってきたのは……
「いや、プレステのテトリスってのも十分ありきたりだろ……」
「うっさいわねーっ、しりとりより全然マシでしょうが!」
……別に、何やろうが、俺としては良いんだけどさ。
ただ、あぐらかいてる俺を座椅子代わりにして座るのは、女子中学生とはいえなかなか重いのでやめてほしい。……いやまあ、女の子らしい甘いシャンプーの匂いとか、色々役得はあるけども。
「んぅ? どうかした? コウジ」
「あ、いや、何でもないってっ」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/01/29(日) 01:31:11.29 ID:zCrRmFXv0 [3/5]
「? そう?」
あと、顔が触れ合いそうな近さで、こっちを見上げてくるのはなかなか心臓に悪いのやめていただきたい。ちょっとした理性のピンチである。
「――それじゃあ、先に三回負けた方が、二人分の肉まん買ってくるってことで、良いわね」
と、話し合いの結果、そんな感じのルールに決まった。
「おう、負けても文句なしだぞ?」
「にひひっ、私がコウジに負けるわけないでしょ!」
で、結局。
「そんな……私がコウジに負けるなんてっ」
どう考えてもフラグでした本当に……という感じである。実際、かなり惜しかったのだが、まあ負けは負けだ。
「じゃ、ほら、お金は俺が二つ分出してやるから、さっさと行ってこい」
「むぅ~っ、勝ったからっていい気にならないでよね! コウジに負けるなんて、何かの間違いなんだからっ。帰ったらもっかいやるわよ!」
「わかったわかった」
まあ、まりが優秀なお陰で勉強の方は大分進んでるし、これくらいの息抜きは良いだろう。
そんなことを考えながら、外に出る準備をするまりを見ていると……
「あ、そのマフラー……」 まりがしていたのは、明るい赤色のマフラーだった。――それは、俺が去年のクリスマスにプレゼントしたものだ。
「えっ、あ、こ、これは……べ、別に、前使ってたの捨てちゃっただけだから! 気に入ってるとか、コウジに貰ったから使ってるわけじゃないんだからね!」
と、そんなことを口では言っているけれど……普段、まりがどれだけ天の邪鬼かを考えれば、本音なんて丸わかりなわけで。
「いや、気に入ってもらえて嬉しいな、うん」
「だっ、だから違うって言ってるでしょっ、馬鹿コウジ! ……に、ニヤニヤしてんじゃないわよっ、もう!」
顔を真っ赤にして、そう怒鳴るまりは、とても生意気だというのに可愛いと感じてしまうのは……やっぱり俺がまりに心底惚れているからなのだろう。
「……んじゃ、やっぱり俺も行くかな」
「へっ? なんでよ? コウジが勝ったのに……」
不思議そうに小首をかしげるまりに、俺は答える。
「だってさ、まりは俺のクリスマスプレゼントを大切にしてくれてるのに、俺が貰ったものを大切にしないわけにはいかないだろ?」
その俺の言葉の意味を、まりはしばらく飲み込めないようだったが……。
「なっ、なに気障なこと言ってるのよ! 全然似合ってないんだからっ、馬鹿コウジ! ……も、もう、ホント馬鹿なんだからコウジは……」
ぶつぶつ文句を言いながらも、まりの顔は、きっと照れ臭さのせいで、さっきよりもずっと赤く染まっていて、さらに言うと、明らかに頬が嬉しそうにゆるんでいた。
「……な、なに笑ってるのよっ! ほ、ほらっ、さっさと行くわよ!」
そんな風に、怒ったように話すまりに、腕を抱き抱えるようにして引っ張られながら……どんなに雪が降っていても、こいつと一緒ならきっと暖かいに違いない、と思う俺なのだった。
SS見せたイラストが趣味の友人がなんとまりを描いてくれました
なぜペルソナを召喚してるのかは俺もわからない
最終更新:2012年01月29日 23:25