30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/17(土) 23:24:58.90 ID:H0MoeHZe0 [8/9]
※男ツンデレ注意
「ほら、カナタ君。こっちだよ、ホワイトデー用のお菓子売り場は」
『分かってるから、手ぇ引っ張んな。つか、何でいつの間のかお前が一緒に来てんだよ』
「いやあ。少しでもカナタ君に協力してあげようと思ってさ。同じ女子に聞いた方が、
どういうものが喜ばれるか分かっていいでしょ?」
『そんくらい自分で決められるって。あと、いい加減手を離せ。ウザイ』
「そんな事言っちゃって、照れてるんでしょ? いいんだよ。私の手だったら、好きな
だけ握ってても」
『だから離せって言ってんだろ。ていうか、何さりげなく手を組み替えようとしてるんだよ』
「え? こうやって、指と指を絡めあった方が、しっかり握れるんじゃないかなって。エヘヘ」
『ほう。なら絶対離すなよ』
ゴキッ!!
「いっ!! いたいいたいっ!! 捻っちゃダメ、ダメだってば」
『いや。たまには変わった手の握り方も面白いだろうって思っただけだ』
「ウソだよ。絶対、手を離そうとしないからって無理矢理引き剥がす気だったんでしょ
う。もう……女の子に乱暴する男子は嫌われるよ?」
『余計なお世話だ。だからこそ、チョコくれた女を粗雑に扱わないよう、こうしてお返
し買いに来てんじゃねーか。それくらい言われなくたって分かってらあ』
「だったら、その……私にもその優しさを少しでも分けて下さい……」
『お前は別。というか、いっそ近寄って来なくなればせいせいするんだけどな』
「またまた。そんな事言ってるけど、いなくなったら寂しく思ったりするんでしょ?」
『じゃあ試しにいなくならせてみるか? 一ヶ月くらい入院でもさせれば、さぞかし静
かで快適な生活が送れそうだしな』
「待って待って。それはシャレにならないからダメだってば!! 分かりました。手を
繋ぐの諦めるから、だからせめて傍に置かせて」
『全く仕方ねーな。追い返すのもめんどくせーし、仕方ないから一緒に来るのだけは許
してやるけど、騒がしくすんじゃねーぞ』
「はーい。で、カナタ君はホワイトデーに何をあげるつもりなの?」
『考えてない。まあ、クッキーでもあげりゃいいんじゃねとは思ってるけどよ』
「そんな安易な考え方じゃダメだよ。女の子はみんな手作りにせよ、買って来た物にせ
よ、カナタ君に気に入って貰えるように、工夫を凝らしたチョコを渡してるんだから、
カナタ君だって、それなりに心がこもって見えるような物を返さないと」
『そんな事言っても、女の好みなんて知らねーし、そもそもどんな菓子が美味いかなん
てのも分からねーし。俺が甘い物嫌いだってのは知ってんだろ?』
「ほら。そこでわたくしめの出番ですよ。美味しいスイーツ売ってる店もたくさん知っ
てるし、カナタ君のために、どの子がどんなスイーツが好きかってのも、ちゃんと調査
済みなんだから」
『そんなもん、よく調べたな。ほとんどお前だって知らない女子ばかりなのに』
「女子の人脈を甘く見てはいかんですよ。まあ、逆に言えばカナタ君がお返ししなかっ
たり、適当に済ましたなんて噂話もあっという間に広がっちゃうわけなんだけどね」
『これだから女って奴は…… まあいい。変に適当なもの買うよりは、お前の調べたメ
モの方が当てになりそうだからな。今回ばっかりは利用させてもらうぞ』
「やたっ!! えっへへー。何気に苦労したんだよ? 相手の子に私が暗躍してるって
バレちゃったら効果ゼロどころかマイナスになっちゃうからね。知られないように苦労
して、あちこちから情報集めたんだから」
『何だよ。その恩に着せようとするような言い方は』
「え? そ、そんな事ないってば。私はカナタ君の役に立てれば、それでもう十分だか
ら。ただその……ねえ? 一言くらいお褒めの言葉を頂いてもいいんじゃないかなーなんて」
『別に頼んだわけじゃねーし。勝手に押し付けて来られたものがたまたま役に立ちそう
だったってだけで、褒めなきゃならん理由なんてない』
「そんなぁ。カナタ君てば冷たいよ」
『別に俺はお前がいなくたって全然構わないんだからな。グズグズしてるようなら置いてくぞ』
「ちょ、ちょっと待ってよ。ていうか、そっちじゃなくて地下のお菓子売り場行かないと」
『は? ホワイトデー用特設売り場は向こうじゃないのか?』
「ダメダメ。ていうか、普通のスイーツコーナーで買ったお菓子にラッピングして貰っ
た方が絶対いいってば。それに、当たり前のクッキーやチョコじゃ対応出来ない子もいるしね」
『うわ。めんどくせー。もういいや。お前に任せる』
「ラジャ。でも、ちゃんと付いて来てね。一人でお使いするのは切なすぎるから」
『分かってるよ。つか、正直な話、信用はしてないし。目を離すと何すっか分からんしな』
「ううう…… 何だろう? せっかくカナタ君と二人きりで久し振りのショッピングだっ
てのに、このどことなく空虚な気持ちは」
『思い込みだって自分でも自覚してるからじゃねーの。勝手について来られただけで、
目的果たしたらすぐ帰るだけだし。ていうか、ゴチャゴチャしゃべってる暇があったら、
早く最初の店に連れてけ』
「分かったよもう…… カナタ君てば、せっかちなんだからぁ」
『そういう言い方してると、殴るぞコラ。無駄な時間を使いたくないから、手っ取り早
く済ましたいだけだ』
「はいはい。じゃあ、最初は3年の坂本さんの分からね。で、C組の兵藤さん、G組の
山口智美ちゃんにD組の別府さん。で1年の町田さんと佐藤祥子ちゃんと。全部で6件
回らなくちゃいけないから大変だね」
『大人しく同じもの6個買っておけば楽だったのによ……いらぬおせっかいのせいで……
っていうか、何で6個何だよ。1つ多くねーか?』
「そんな事ないってば。ちゃんと数えたもん。ほら、これメモ紙」
『見せてみろ。てか、気になってたんだが、D組の別府さんって誰の事だ? 言ってみろ』
「え? いいいいい、イヤだなあ? D組に別府って姓の女の子は一人しかあいふぇふぇ
ふぇふぇふぇ…… かふぉふふぁふぁふぁいふぇ」
『何言ってんのか分かんねーよ。ちゃっかり自分の分まで買わせようとしやがって。ど
ういう了見だ、おい』
「だだだ、だってだって。私だってちゃんとあげたじゃん。バレンタインのプレゼン
ト!! チョコじゃないけど、でもカナタ君が食べてくれたのって、むしろ私のだけだったし」
『あー、そうだよな。確か。で、俺が他の子から貰ったチョコはどうしたんだっけ?』
「えーと、それはですね。その……私のお腹の中に……」
『だよな? 人の貰ったチョコをキッチリ食っておいて、尚且つお返しまで貰おうとか、
ふてえ野郎だな』
「野郎じゃないもん!! 女の子だもん!! あと、だってだって、カナタ君がお礼を
言う時に感想言うのを困らないように、ちゃんとレポートまであげたじゃん!! だか
ら、私が食べたかったってだけじゃないよ。カナタ君のためでもあったんだから」
『俺が頼んだわけでもないし、結果的に見れば俺があげたチョコを食ったって話になる
訳だよな? ギブアンドテイクって事で問題ないだろ』
「ええー…… それはそれ、これはこれだし…… ていうか、ホワイトデーのお返し、
ちゃんと貰いたいな……」
『あのな、孝美。お返しって言うものは、やっぱり返す側の本人があげたいっていう気
持ちがあって、初めて価値が出るものだろ?』
「うん。まあ……そうだと思うけど……」
『で、俺はお前にお返しをしたい気持ちが全く無い。以上だ』
「酷い!! 酷いよカナタ君。酷過ぎだよ。心にも言葉にも、全くと言って良いほど温
かみがないよ。むしろ氷点下だよ!!」
『別にお前に暖かい言葉を掛ける理由も無いからな。そういう訳だから、お返しは諦め
ろ。いいな?』
「ガクッ…… 自分はお返し貰えないのに……他の子のお返しを一生懸命選んでた私って……」
『イヤならいいんだぞ。お前のメモ書きだけで十分役に立ちそうだからな。というか、
傍にいつまでもいられるとウザイから帰れ』
「そんな殺生なっ!! 用が済んだらポイだなんて悪魔の所業だよ!! お願い。一晩
で良いからお傍で仕えさせてください!!」
『何で一晩になってんだよ。そういう誤解を生む言い方は止めろ。あと縋りつくな。胸
を押し付けるな。色仕掛けなんて使おうとしたら、絶対追い返すからな』
「むー…… じゃあ、止めたら、帰んなくてもいい?」
『追い返す手間が面倒だからな。付いて来るくらいなら認めてやる。けど、騒いだりペ
タペタくっ付こうもんなら、即置いてくからな』
「えっへへー。照れてるんだね、カナタ君てば。もう、可愛いんだからわたっ!!」ビシッ!!
『だからそういう無駄口叩くなって言ってんだろがっ!! 次に変な事言ったら、絶対
置いてくからな』
「はぅぅ……ガチデコピン痛いよぉ……もうちょっと手加減を……」
~買い物終了~
『疲れたぜ……』
「お疲れ様、カナタ君。お勤めご苦労様。大変だったね」
『他人事みたく言いやがって。この疲労の原因の8割方はお前のせいだろが』
「えー? それはいくらなんでも言い掛かりだよ。私、何にもしてないし」
『嘘付け。店を回るたびにこれも美味しそうだとか、形が可愛いとか、ついでにこれも
買おうよとか大騒ぎしやがって。あんだけ騒ぐなって言っておいたのによ』
「だ、だってだって……美味しそうなスイーツ見てるとついつい騒ぎたくなっちゃうの
は女子の性と言うか…… でも、あれでも我慢したの!! もうホントに、食べたくて
食べたくてたまんなかったんだから」
『うっせーよ。店員にまで、彼女へのホワイトデーのお返しにどうですかとまで言われ
て、超迷惑したんだからな』
「え? ウソ? そんな事言われたの? わわわ、私とカナタ君が恋人同士に見えるな
んて超嬉しいんだけど」
『俺は迷惑だったっつってんだろ。そんなキラキラした顔すんな。ウゼェ』
「いーの。カナタ君が冷たい態度取るのは慣れっこだし、他の人にそう思われたってだ
けでもう十分」
『ハァ…… そうかよ。一人で勝手に盛り上がってろ。つか、何でお前が俺の部屋にま
でちゃっかり上がり込んでんだよ。そう言えば』
「え? だって、かさばるからって一つの紙袋にまとめて入れちゃったし、そしたらカ
ナタ君、どれがどの子へのプレゼントだか、分かんなくなっちゃってない?」
『そんな訳ねーよ。お前の助けなんて借りなくたって俺一人で……ちゃんと……わか……
わか……かんねーな……』
「でしょ? 綺麗にラッピングして貰ったから、中身見えないし。私なら、お店のロゴ
だけでちゃんと中身覚えてるから、ふせんに名前書いて、付けてあげるよ」
『チッ。またしてもお前に頼らざるを得ないのか。分かった。とっととやって、そした
ら帰れ。すぐ終わんだろ?』
「えー。そんな早く追い返そうとしないでよ。私だって疲れてるんだし、休ませてよ。
出来れば一緒にカナタ君のベッドで添い寝―とか。エヘヘ……」
『よし、分かった。そんなに疲れてるなら、俺が寝かせてやろうか? 出来れば一生目
を覚まさない方法でな』
「ちょっ……それ殺人だから!! 窒息させるとかなし!! なしで!!」
『チッ…… まあいい。もういいから早くやってくれ。騒いでたら余計疲れた……』
「はーい。えーっと、これが坂本さんの分……っと。で、これが山口智美ちゃんの分で、
これは……町田さんか。みんな強敵だなぁ。カナタ君。流されちゃダメだからね」
『何の話してんだよ。意味分かんないぞ?』
「えーっと……えーと…… その……万が一そのね。いい雰囲気とか、作られたとして
も……って事で……」
『そんなの心配する必要ないだろ。俺が誰と付き合おうが、お前には一切関係ないんだからよ』
「そ……そんなぁ……今の言葉はさすがに胸に刺さるよ……」
『へたり込んでる暇あったら、さっさと終わらせろ。そして帰れ』
「え、えーとね。それが……」
『何だよ? 何かあったのか?』
「うん。えっと……一つ、多いみたいなんだけど?」
『何? そんな訳ないだろ。ちゃんと一人分ずつ、順番に買ったはずだぞ?』
「う、うん。そのはずなんだけどね……何でだろ? やっぱり6個あるし……」
『お前、もしかして勝手に袋に紛れ込ませたりしてねーだろうな?』
「それじゃあ万引きじゃん!! いくら私だってそんな悪い事しないってば!! 大体、
ちゃんと包装されてるんだから、ありえないよ」
『なるほどな。じゃあ、どうやっていつ紛れ込んだんだよ?』
「そんなの分かんないよ。むしろ私は手提げ袋持ってなかったし、カナタ君が気付かな
いのに、私が気付く訳ないじゃん」
『そんなムキになって否定すんなって。でも、俺だって分かんないんだからさ』
「ホントに? 実はカナタ君がこっそり一個余分に買ったりとかしてない?」
『ハア? 何で俺がそんな事するんだよ。意味分かんないだろ?』
「だって、それしか考えられないもん。ていうか、今思い出したけど、一度カナタ君と
はぐれた時あったし」
『へ? そんな時あったっけ。何かずーっと傍でごちゃごちゃうるさかった印象しかないけど』
「あったよ!! 私が寄る予定のない店で、新作スイーツに見とれてたらいつの間にか
いなくなっちゃって。探すの大変だったんだから」
『あれはお前の方から迷子になったようなもんだろ? それに俺だって探したんだし、
結局最後に見つけたの俺だし。そんなこっそり買ってる暇とか全然無かったし』
「ホントに~? あれだけあげないあげないって言っちゃったから、買いづらくなった
とかじゃなくって?」
『ねーよ。つか、お前こそこっそり買って忍び込ませたりしてないだろうな?』
「……そんな切ないことしないよ…… ホワイトデーに、自分で買ったお菓子を自分に
プレゼントさせるなんて、痛過ぎて……」
『お前ならやりかねないと思ったんだけどな。全く、ホントにいつ紛れ込んだんだろう
な? さっぱり分かんねーよ』
「で、この余ったお菓子どうするの? ねえ」
『……何だよ? その期待感に満ちた顔は……』
「え? いいいいいいやだなあ。私そんな顔してないってば。いいいたって普通だってば」
『仕方ねえな、クソ。欲しけりゃやるよ』
「ホントに!? い、いいの?」
『どーせ余りもんだからな。けど、くれぐれも言っとくけど、決してバレンタイン菓子
のお返しじゃねーからな。あくまで余ったものをくれてやっただけだから、一言でもそ
ういう事を口にしたら、即取り上げてお袋に渡すから。いいな?』
「もう…… どうしてそこまで否定するかなぁ。お返ししたくても返す人もいない男子
だっていっぱいいるのに」
『うるせー。人の事なんて知るか。とにかくそれは、絶対お返しじゃないから、それは
理解しとけよ。いいな?』
「そんな何度も言わなくたっていいってば。とりあえず、開けていい?」
『何でここで開けるんだよ。家帰ってからにしろ』
「だーって、早く見たいんだもん。いいでしょ? 開けるくらいなら。それとも、開け
ちゃマズイ理由でもある?」
『チッ。分かったよ。好きにしろ』
「エヘッ。それじゃあお許しが出たところで早速……おおっ!?」
『何だよ? 変な声出して』
「だってだって。これ、私が前から食べたいって言ってた、京都美風堂の和チョコだよ。
何気に結構他の子のよりもお高いものだし」
『そんなの知らねえってば。俺が買ったもんでもないし』
「んっふふー♪」
『何だよ。肘で小突くな。うっとうしい。あとそのニヤニヤ顔も止めろ』
「何でもないよー。えっへへー」
『変な勘繰りしてんじゃねーだろうな? ホントに、知らない間に入ってたんだからな。
だから、食中毒とか起こしても文句言うなよ?』
「そんな訳ないもん。絶対美味しいよ。確信してる」
『その根拠はどこから出て来るんだか。まあ、俺の知ったことじゃないけどな』
「あのさ。カナタ君」
『何だよ。わざとらしく声潜めやがって。普通にしゃべれ』
「んふっ。出来れば、来年はちゃんと素直に渡して欲しいな。14日の日に」
『だっ…… だから言ってんだろが!! 俺じゃねーって!! いい加減にしろよなこ
のくそアマ!!』
「だーって、このタイミングで、私が食べたがってたお菓子が一つ余分だなんて、他に
考えられないもん。カナタ君は絶対認めないだろうけど、私だって絶対そうだって信じ
ちゃうんだから」
『クッソォ…… いいか。テメーが勝手に妄想するのはともかく、友達とかにしゃべり
まくるんじゃねーぞ。そしたら二度と半径5メートル以内には近付けさせないからな。
いいか?』
「分かってるってば。カナタ君って、ホント照れ屋さんだよね。かーわいい。あはっ!!」
『……調子乗ってんじゃねーぞコラ。殺す。絶対殺してやっからな』
最終更新:2012年03月29日 17:54