30 名前:16[] 投稿日:2011/05/19(木) 23:15:59.42 ID:B9I2MQRH0 [5/9]
ボクっ娘ことアキラ編
「ボクは男の子になりたいんだっ!!」
アキラは唐突に叫んだ。俺は面と向かってそんな事を言われたもんだから、驚く以外のリアクションをするのは、今の俺の脳内スペックを超えているので出来ない。
「は、はぁ?」俺は精一杯の言葉がこんな言葉だった。アキラとは高校入学して同じサッカー部に入部して、ゲーム仲間として話はしていたが、半年間の付き合いだが唐突にそんな事を言われても困る。
「ね、ね。タカシはボクが女の子だって思う?」アキラは薄い胸に手を当て、必死に聞いてくる。
だが、思春期真っ盛りの俺にはアキラを男の子として見るなんてのは不可能でして、それでも恋愛対象ってのもなんか違う気がするんだよな……
「いや、お前は髪は短いけど顔立ちからすれば女の子だろう。どう見たって」俺はごく普通の返答をした。
アキラは口を半開きにして呆けてしまった。何をそんなに思う必要があるのか、俺にはサッパリ分からん。
「くそっ! じゃあタカシ! ボクと……ハグをしろっ!」ばっと手を広げるアキラ。…………って待て待て!
 なんでそうなる!「違うだろ! お前はそんなことして何になりたいんだっ!」「男の子になりたいんだ!」「だが断る」「なんでさっ!」
「お前は男にはなれない」「…………~タカシの分からず屋っ!!」そう言ったっきり俺はアキラと話さなくなった。
それから一週間が経った後、サッカー部で他校との合同練習があった。その時俺は運悪く水筒も飲み物も全て家に忘れて、のどがカラカラだった。
知らない学校だから水道の場所も分からないし、どうしていいのか分からず、眩しすぎる太陽の下、俺はミイラのように乾燥した口を天に向けていた。
すると、天から滴が垂れてきた。雨ではなく、そこにはアキラがペットボトルを俺に差し出していたのだ。「……飲みなよ」
俺は、多少気まずい雰囲気ではあったが水分補給より勝るものはなかった。
「ありがとう!」
少しずつ大切に飲んでるときに俺はふと気がついてしまった。
「これって……間接キス、だよな?」
そう言うとアキラははっとした顔になり
「な、なに考えてんだ! この変態タカシ!」
「お前は男になりたいんじゃなかったのか? 男同士ならこういうのもアリだと思うがな」
そう言うとアキラは
「アキラなんかボクは知らないからなっ!」
と言って去ってしまった。今ではとても良い思い出でもある。

ふぅ……
最終更新:2011年05月21日 00:54