61 名前:16[] 投稿日:2011/05/20(金) 00:39:21.07 ID:jZIxDi780 [4/16]
「少し昔の話をいたしますわね……」と、感慨深い言い方で私は重い口を開く。
私の名前は神野りな。神野食品の会長の孫、父は神野食品の社長。そしてもちろん私はその一人娘という立場。
成績はいつも偶然高かった。小学校の頃はそれで周囲からの期待の視線が痛かった。
(私はそんなデキる娘ではありませんのに……)
近寄る男は全てバックにある神野食品が目当て。中学の頃はそれで散々な目に遭いました。
いつしか私は世の中の男全てを嫌いになっていましたの……
でも、彼だけは違った。偶然同じクラスだった別府タカシだけは。


62 名前:16[] 投稿日:2011/05/20(金) 00:40:00.61 ID:jZIxDi780 [5/16]
最初はとても失礼な奴でしたのよ?
私の顔を見るなり
「お嬢様もコンビニには来るんだな」
ですって!
信じられませんわ! 全く!
だから私は言ってやりましたの!
「し、庶民が気安く話掛けないで下さいます? 私はあくまで仕事のためにここまでやってきましたの。勘違いしないでくださいませ」
と、極めて平静な声で言ったら
「それがなければ可愛いのになぁ……」
と言いやがりましたの!
そう、別府タカシは何も考えずにこちらの事に口出ししてくるから困ったものですわ!
だけど、そんな彼を意識するようになったのは『あの時』……


63 名前:16[] 投稿日:2011/05/20(金) 00:40:33.10 ID:jZIxDi780 [6/16]
私は紙パックのミルクティーをそのまま飲んでいた時、別府タカシが突然やってきて
「それ……俺のミルクティーなんだけど?」
と、指差して言ってきましたの。
私としたことが、こんなミスをするなんて、と心の底から自分の過ちを反省しました。
すると、別府タカシが少し困った顔をしながら
「これって……間接キスだよ、な?」
と言ってきて、私は目眩がしました。
間接……キス?
なぜ頬を紅潮させますの?
なぜこちらを向きませんの?
そんな仕草をされますと私……
「ち、調子に乗らないでくださいますっ!? 私はあなたのことなど一寸たりとも意識したことなんてありませんのよっ!?」
と、気がつけば墓穴を掘っていた。
私は耐えきれず、廊下に出ました。
少し思い出にふけっていると、隣で『彼氏』であるタカシが
「そんなこともあったっけ?」
と言いやがりますの。
全く、少しは覚えていてほしいものですわ。
これほど男性を信じられるようになったのは、初めてなのだから……
最終更新:2011年05月21日 00:56