49 名前:1/5[] 投稿日:2012/05/14(月) 00:03:00.33 ID:4cYl2Cds0 [2/7]
  • 寝ているツンデレの浴衣がはだけて大変危険な状態になっていたら ~後編~

「は……?」
 キョトンとする俺を、かなみは鋭く睨み付けた。
『い……一回で理解しなさいよっ!! 何回も言うの、恥ずかしいんだから……』
「いや。だけど支えるって言ったって風呂の中までは――」
 言い返す俺の口を、かなみの手がベチッと音を立てて塞いだ。
『とやかく文句言わないのっ!! と、とにかく風呂まで連れて行ってよね!!』
 立ち上がろうとするかなみに手を貸す。もしかしたら文句言われるかもと思ったが、
かなみは素直に支えられるばかりか、自分から俺の肩に手を回して来た。
「それじゃ、行くぞ。歩けるよな?」
 かなみの様子を窺いつつ促すと、かなみはコクリと頷いた。
『大丈夫。ちゃんと歩けるし。ただ、ちょっとおぼつかないから、アンタに肩借りてる
けど、ほとんど平気なんだから』
 それに頷き、俺はかなみを支えつつ歩き出す。といっても、言葉どおりかなみの足取
りは、意外にしっかりしていた。一度女子の部屋に寄ってタオルを取る。再び俺にしが
みつくかなみに、試しに聞いてみた。
「あのさ。何気に傍に付いてれば、一人で歩けそうじゃないか?」
『ダメ!! 万が一転んだら危ないって言ったの、タカシじゃない。最後まで責任持っ
て連れてってよね』
 仕方ないから、再び肩を貸す。まあ、かなみは俺に縋って来るなんてそうそうある事
じゃないから、役得だと思っておくかと、そのまま廊下を歩き風呂に向かう。女風呂に
向かおうとした俺を、かなみが押し止めた。
『……違う。そっちじゃないってば』
「はい?」
 かなみを見ると、手を差し出し、案内板を指差していた。そこに書かれていたのは、
露天風呂(混浴)の文字。
「お、おい? 混浴って……」
 驚いてかなみを見ると、うなじを真っ赤にしながら顔を伏せていた。

50 名前:2/5[] 投稿日:2012/05/14(月) 00:03:24.27 ID:4cYl2Cds0 [3/7]
『だ、だってその……風呂場でも、滑っちゃうかも知れないし……だけど、タカシを女
風呂に入れるわけに行かないじゃない。だから、見せたいとかそういう訳じゃなくて、
仕方ないと言うか……その……』
 途中で言葉を切り、顔を上げて俺を見る。
『そ、それとも……その、嫌だとかじゃ……ないわよね?』
 そんな言い方されたら、理性も星の彼方へ飛んでしまいそうだ。それほどにかなみは
可愛かった。俺はかなみを思わず抱き締め、その耳元で囁いた。
「そんな訳ないだろ? 嬉しいに、決まってるじゃん」
 すると俺の腕の中で、かなみが身じろぎした。そして、何故か不安げな瞳で俺を見上
げると、その理由を質問して来た。
『……それって……女の子なら誰でも嬉しい? そ、それとも……』
 その先は言葉に出来ず、かなみはうつむいた。俺はかなみの両肩を優しく持って体か
ら離すと、わざと気まずそうに視線を逸らす。
「そりゃ、女の子からそんな事言われたら、どの子だって動揺しちゃうさ」
 その答えに、かなみの顔が強張るのを見て、俺は溜めるのを止め、急いで続きを口にした。
「けれど、かなみから言われるのは、特別だ」
 かなみの顔から険が消える。そして、俺の腕を片手で掴むと、もう片方の手でいきな
りつねり上げた。
「いって!! 何すんだよ!!」
 不意の暴力に抗議すると、かなみは俺を睨み付け、それから掴んだままの手を引いて
自分の体で抱きついてきた。
『ホント、エッチなんだから。バカ……』
 そう言ったかなみの表情には、心からの安堵の表情が広がっていたのだった。


 次の朝。酒を飲んだ次の日特有の倦怠感に悩まされ、布団からなかなか出られないで
いると、かなみから突撃された。
『タカシーッ!!』
「おわっ!!」

51 名前:3/5[] 投稿日:2012/05/14(月) 00:03:47.70 ID:4cYl2Cds0 [4/7]
 いきなり布団の上にダイブされ、俺は驚いて起き上がる。
『ちょ、ちょっと来なさいよ。早く!!』
 まだ寝ぼけまなこの山田と友子を残し、かなみは俺を廊下に引っ張り出す。そして窓
に俺を押し付けると、俺を挟み込むように両手をベチッと窓につけて、それから顔を上
げて俺を睨んだ。
『そ、その……昨夜のこと……』
 かなみの顔が真っ赤なことから察して、どうやら露天風呂でのあれやこれやはキチン
と覚えているようだった。俺はわざととぼけたフリをして答える。
「昨夜の事……? 何だっけ?」
『ま……まさか、覚えてないのっ!?』
 今にも噛み付かれんばかりだったので、俺は慌てて首を横に振る。
「いやいやいや。あんなドリームな体験、忘れるわけないから。あたっ!!」
 かなみの拳が左脇腹を直撃し、俺は痛みに顔をしかめた。チラリとかなみを見ると、

恥ずかしさからか、ブルブルと震えている。
『ドリームな体験とか言うな!! 全く……』
 うん。どうやら照れ隠しなようで、怒っているわけでは無さそうだ。
「で、昨夜の事がどうしたんだよ? わざわざ廊下に引っ張り出して、何言いたいんだよ?」
 そう質問すると、かなみはしばらく何かに耐えるようにうつむいて震えていたが、や
がて顔を上げると、縋るように俺に言った。
『み、みんなには内緒だからね!!』
「はい?」
 思わず聞き返すと、僅かに苛立ちを見せて、かなみはもう一度繰り返した。
『だからっ!! 他の友達はもちろん……あの二人にも、絶対言っちゃダメだから
ね!! 分かった?』
 どうやら、朝起きて、真っ先に昨夜のことが思い出されて、恥ずかしくなってそれで
特攻して来たらしい。わざわざ今こんな事を言うのも、勢いに任せてなのだろう。かな
みの気持ちは理解出来たが、俺はまたしても、ちょっと意地の悪い気分になってしまった。
「うーん…… どうしようかなぁ?」
 わざと悩む俺に、かなみは憤る。

52 名前:4/5[] 投稿日:2012/05/14(月) 00:04:13.57 ID:4cYl2Cds0 [5/7]
『何でそこで悩むのよ!! 分かったって言えばいいでしょ? まさか、人に言いふら
すなんてしないわよね? あたしが、その……あんなだったとか……』
 焦ってるかなみもかなり可愛い。俺はそんなかなみに、ニコッと笑って答えた。
「いや。約束してもいいんだけどさ。それにはやっぱり条件が必要かなって」
『じょ、条件って……何よ?』
 俺の提案に、赤い顔をしたまま、やや不安げな面持ちで見つめてくるかなみの顔に、
俺は顔をそっと近付けて耳元で囁いた。
「うん。昨夜みたいにさ。その……また、二人きりの時に甘えて来るなら……誰にも言
わないって約束するよって」
 顔を離すと、かなみの顔は耳たぶから首の付け根まで、全てが紅色に染まっていた。
『バカッ!!』
 そう罵り、かなみは俺を窓へ突き飛ばす。
「あだっ!!」
 背中と頭を打ち、痛みに悶える俺の胸に縋り付き、かなみは俺に悪態をつき始めた。
『スケベ!! 変態!! あんな事しろだなんて……ホント、アンタってばエッチ何だ
からぁ……ふぇええええんっ!!』
 俺はかなみの背中に手を回し、ポンポンと優しく叩きつつ、もう片方の手でそっとそ
の頭を撫でてあげたのだった。


終わり

53 名前:5/5[] 投稿日:2012/05/14(月) 00:05:17.17 ID:4cYl2Cds0 [6/7]
~おまけ 二人が風呂に行こうとした時の友子~

『ん……あれ? タカシとかなみ……? どこ……行くんだろ? もしかして……逢引
の予感……? 山田ぁ……追うわよって……ふぇっ!?』
『な、何で私……山田と一つの布団で……? もしかして、酔っ払って、無意識のうち
に引き込んだ……とか?』
『……………………』
『(ど、どうしよ……二人、追い掛けなくちゃ……でも……)』
『……………………』
『まあ、いいか…… 二人きりにさせてあげよっかな』
『うふふ……♪』ギュッ……

もちろん、起きてから山田が袋にされたのは言うまでもない事実であった。
最終更新:2012年05月15日 00:46