11 名前:1/5[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 22:34:19.87 ID:dSV0nrdw0 [2/8]
(自炊)男の前でだけ素の自分を見せるツンデレ
ピルルルル……ピルルルル……
「あれ? 何だ? 電話か?」
『ああ、すまない。オレの電話だな。ちょっと待ってろ。すぐに出るから……あった』
ピッ。
『もしもし、鷹橋ですが……ああ、先輩ですか。はい……はい…… シフトの交代ですか?
いいですよ。ええ、明日は私、特に用事はありませんから。大丈夫です。…………そんな、
お気遣いとか結構ですから気にしないで下さい。その代わり、私が用事ある時は真っ先に
先輩にお願いしますので、はい。はい。了解です。それじゃあ、失礼します』
ピッ。
『……えっと、木曜日と月曜日のシフトが交代……と……』
「……へぇ……」
『何だ、別府。人の事をジロジロと眺めたりして気持ち悪い奴だな』
「いや。初めて聞いたんだけどさ。玲緒って、いつから自分の事を“私”って言うように
なったんだ?」
『何だ、知らなかったか? 大学に入ってからずっとだが。まあ、お前と一緒にいる時に、
他の人と会うような事は無いからな。変に勘違いされるのも鬱陶しいし』
「鬱陶しいのかよ……って、まあそれはいいや。しかし、高校までは学校でもずっとオレ
で通してたじゃん。一体どういう心境の変化で?」
『どうもこうもあるか。その……単に面倒臭くなっただけだ。人から変わった目線で見ら
れるのがな』
「へぇ。高校の時までは、いちいち人の目線を気にして言葉遣いを変えていられるか、なー
んて言ってたお人がねえ」
『やかましい。からかいたいだけだったら、もう相手にしないぞ』
「スマンスマン。別にからかう気はないけどさ。ちょっと興味本位で」
『……お前に好奇の対象にされたと思うと、虫酸が走るな……』
「何を言ってるんだ。俺はいつだって玲緒の服の中身がどうなっているか、興味津々で見
て――って、ちょっと待て!! コーヒーを頭から掛けようとするな!!」
『全く…… 相変わらずお前のアホさ加減には付き合っていられないな』
12 名前:2/5[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 22:34:40.87 ID:dSV0nrdw0 [3/8]
「そう言いつつ、毎週必ず、この喫茶店で話し相手になってくれる玲緒が大好きだよ」
『――っ!! バ、バカを言うな!! オレはここのコーヒーと店の雰囲気が気に入って
いるから通っているだけで、お前に会いに来ている訳じゃないと毎回言っているだろう?
いい加減に学習しろ』
「ああ。毎回そう言って、俺とおしゃべりしてるもんな。結果としては俺と話してる方が
時間的にも長くなってるし」
『……お前がいなければ、オレももう少し快適な時間を過ごせるんだがな。全く』
「でもさ。さっきの態度見てると、一人称だけじゃなくて性格も変えてるじゃん。だった
ら、俺と話してる方が、ストレス溜め込まないんじゃないか?」
『お前は本当に、何でも良いように考えるな。全く、ポジティブも過ぎると考え物だぞ』
「いやいや。玲緒の毒舌聞いてるとさ。キツイ事言うのはきっと愛情の裏返しなんだって、
そう思わないと心が痛むからさ」
『なるほどな。だが安心しろ。言葉どおりに受け取ってくれて一向に構わないぞ。オレは
そんなひねくれた人間では無いからな』
「……お前って本当に意地悪だよな。そんな風で、学校とかで上手くやっていけてるのか?
つか、高校ん時もあんま友達いなかったじゃん」
『お前にそう言われるのはいささか腹が立つが、まあ人付き合いが面倒だったからな。た
だ、あと4年もすれば、オレも社会人だからな。もうそろそろ、そうも言っていられない
なと思って、若干口調を変えてみたわけだ。今のところは上手くやれてはいるが、確かに
疲れるのは事実だ。確かに、ここでお前に悪口を言っている方が気楽かも知れん』
「……何か、嬉しいような嬉しくないような複雑な気分ですが……」
『オレは別に、お前を喜ばせようと思って言ったつもりは微塵も無いんだがな。むしろ、
嬉しいような気分になる方が不思議だ。まさか、悪口を言われて快感を覚えるような性癖
があるとでも言うのか?』
「いやいやいや。俺はマゾじゃないから!! どっちかといえば、エッチは攻めに回りたいですし」
『お前、オレの前でそういうセクハラ発言はするなと、いつも言っているだろう!! 今
度そういう下品な事を言ったら、本気でお前の口と鼻にカラシをたっぷり塗ったパンを詰
め込んで悶絶死させるからな』
「ちぇっ。ネタ振ったの玲緒のクセに」
『……何か不満でもあるのか? 別府』
13 名前:3/5[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 22:35:02.36 ID:dSV0nrdw0 [4/8]
「いや、何でもないです。で、どうしてそんな話になったんだっけ?」
『ああ、そうだ。お前が複雑な気分だと言ったので、オレがどこに嬉しくなるような要素
があるのか不思議に思ったと、そんな話だったな。確か』
「なるほど。つまり玲緒は俺の性格に興味があると。そう考えていいって事だな」
『ああ。確かに、興味はあるな。人として、一体どうやってこういうバカな事ばかりを考
えられる人間が出来上がるのかとか』
「そこで、顔色一つ変えずに毒舌を放つ玲緒を見てると、時々心が氷で出来てるんじゃな
いかと思うときがあるぜ」
『あくまでお前限定でなら、敢えて否定はしない。実際、そのくらいの心を持っていない
と、お前のバカさ加減に付き合うことなど出来ないしな』
「なるほど。そこまでして俺の話に付き合いたいと、玲緒はそう思ってるわけだ。いや、
光栄だなあ」
「いい加減、人の発言を自分の都合良いように解釈するのは止めろ。全く…… まともに
答える気がないなら、オレは別にそれはそれで構わないぞ。単なる好奇心程度だからな』
「分かったよ。真面目に答えるから、愛想尽かすなって」
『なら、さっさといえ。オレは別にせっかちではないが、こうもバカな発言で焦らされる
と、いい加減腹も立ってくるぞ』
「分かったよ。まあ、その……要は玲緒はさ。大学とかバイト先では性格変えてるって言っ
てたじゃん?」
『ああ。そうだ。それがどうかしたか?』
「いや。つまりさ。学校やバイト先の知り合いは、つまり素の玲緒を知らないって事だろ?
まあ、高校までの同級生とか別にしても、玲緒ってそんなに人付き合い良い訳でもないし
さ。だから、今の人間関係で家族以外で玲緒の素顔を知ってるのが俺だけって、何か得し
た気分でさ」
『……やっぱり、変わった奴だな、お前は。オレに会うたびに毒舌を浴びせられてるとい
うのに、それを得したと言える神経が凄い。やはりどこか心を病んでいるとしか思えんな』
「まあ、恋も病と言うくらいだからな。玲緒の言い分もあながち間違ってるとは言えないが」
『なっ……!! な、何をバカな事を言っている!! オ、オレはお前なんかに好かれた
いとも、好かれて嬉しいという気持ちもその……み、微塵も持っていないんだからな!!
むむむ、むしろそんなの迷惑だし、そんなの……』
14 名前:4/5[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 22:35:23.76 ID:dSV0nrdw0 [5/8]
「ふーん。そうなんだ」
『な、何をサラッと平気そうな顔で頷いているんだ!! オレはその……お前の事を全否
定しているんだぞ!! それなのに、何とも思っていないと言うのか?』
「いや、そもそも別に俺が玲緒の事を好きだとも何とも、一言も言ってないわけだが」
『なっ……!? だ、だってさっき……恋の病がどうとか言っていたじゃないか!! あ
れは何だと言うのだ!!』
「いや。例えとして恋も心の病の一種だと言っただけなんだけど、もしかしてそれを勘違
いしちゃったとか?」
『グッ…… き、汚いぞ!! そのイヤらしい笑顔は、どう見てもわざと勘違いさせるよ
うに言っただろう!! この卑怯者が!!』
「別に、そんなつもりじゃなくたって、今の玲緒の様子見てたらどうしたってニヤついちゃ
うって。顔真っ赤にして恥らったり悔しがる玲緒なんて、俺ですらそうそう見れるもんじゃ
ないんだぜ」
『黙れこのバカ!! 大体、いずれにしたってオレがお前を全否定した事実は変わりない
んだぞ? お前はそれでいいと言うのか?』
「良くはないよ。玲緒みたいな美人に真っ向から拒否されれば、そりゃ勘違いだろうが落
ち込むさ。けど、何か違う気がするんだよね」
『違う? 何が違うと言うのだ。言ってみろ』
「ま、ま。そうせっつくなって。単に、玲緒が告白を断わる時ってもっとこう冷静にさ。
済まないが、オレはお前の事に全くと言っていいほど興味がない。だから諦めて貰えない
だろうか――って、にべもない返事が来ると思ってさ。だから、あんな風に顔真っ赤にし
て、どもりながら拒絶するのって玲緒らしくない。何か違うなって」
『だ、黙れ!! オレだって女なんだから、異性から告白されれば多少なりとも動揺くら
いするさ。それが例えその……お前のようなどうしようもない男だったとしても……だ』
「さっきのは、高校時代に実際にお前が断わった時のシーンを再現してみたんだが」
『なっ……!? それで何となく覚えが――って、覗いていたのかお前? 人が告白され
るシーンを見て喜ぶなど、趣味が悪いにも程があるぞ!!』
「別に喜んでいた訳じゃないけど、気にはなったから。まあ、物凄くにべもない断わり方
に、むしろ相手の男に同情したけどな。さっきの物真似の非じゃない程に冷静だったし」
15 名前:5/5[sage] 投稿日:2012/06/08(金) 22:35:48.19 ID:dSV0nrdw0 [6/8]
『……彼には悪かったが、オレは全く付き合う気はなかったからな。だったらいっそ、後
腐れなく断わった方が良いかと、そう思っただけだ。人を冷血女のように言われるのは心外だぞ』
「いやいや。玲緒はちゃんと心の通った可愛らしい女の子だよ。少なくとも、俺の前でだけはな」
『だから、自分だけが特別みたいな言い方はよせ!! オレはただその……お前があんま
りにもバカだから、つい感情が前に出てしまうだけで、別にお前の事を特別だとか、そん
な事は全く思っていないんだからな!! か、勘違いするんじゃないぞ。いいな!!』
『(全く、あんなにも醜態を晒すとは……不覚もいいところだ…… こんなんじゃ、本当に
別府に告白されたりしたらどうなってしまうんだ…… ああ、もう、もっと精神を強くし
ないとダメだ……)』
終わり
最終更新:2012年06月17日 21:39