73 名前:1/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:33:26.02 0
お題作成機より:ダウナー、二人乗り、アイテム何でも

『……別府君……ちょっと……こっち……来て……』
「ん? 何だよ、委員長」
『……いいから……黙って……手を……出して……』
「お? 何か良いものでもくれるのか?」
 ガチャリ。
「ちょっ!? な、何だよこれ、手錠か?」
『……見ての……通りよ……そして……もう片方は……私……』
 ガチャッ。
「何すんだよ。委員長がこういうイタズラかますとは、ちょっと予想外だったぞ」
『……誰が……君相手に……イタズラなんてするか…… ちゃんと……理由が……ある……』
「理由? どんな理由だよ。正直、委員長に手錠掛けられる覚えなんてないぞ」
『……やれやれ……犯罪者はこれだから……日頃から……散々罪を重ねている上に……無
自覚とは……正直……救いようがないわ……』
「犯罪者とか酷い言われようだな。一体俺がどんな罪を犯しているって言うんだよ」
『……遅刻……サボリ……早弁……早退……これだけやっておいて……無罪とは……片腹
痛いよね……』
「アハハ。そう言われれば色々やってるわな、確かに。あまりに日常化してたから、全く
意識無かったわ。でも、誰かに迷惑を掛けた覚えは無いぞ」
『……嘘をつかないで…… 昼の放送……ジャックして……好みのヘビメタとか……流し
て……生徒の昼寝を……妨害したりしたでしょ……』
「そ、それは一回だけだし、やっぱ好きな音楽掛けた方がテンション上がるじゃん。なの
に、放送部の石頭部長が全然許可してくんなかったから……」
『……おかげで……私まで……文句言われたじゃない…… クラスの……無法者は……ちゃ
んと管理しておけと……本当に……いい迷惑なのに……』
「そっか。そりゃスマンかった。じゃあこれから連行されてお説教か?」
『……君なんかの為に……私が時間を……潰すと思う? これは……ちゃんと……実務的
な……理由だ……』
「実務的?」

74 名前:2/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:34:55.82 0
『……そう。君は……このクラスになってから……まだ一度も……掃除当番を……守った
事が無い…… だから君は……今日から一ヶ月……当番に係わりなく……毎日……教室の
掃除をするの……』
「冗談言うなよ。少しでも早く帰りたいっていうのに、掃除なんて面倒な事出来るかよ」
『……そう言うと……思った…… だからこその……これよ……』
「なるほど。手錠で繋がっておけば、俺が逃げられないとそういう事か。だが、そういう
事なら俺にも考えがある」
 ガシッ!!
『ふぇっ!?』
「こうなったら、委員長ごと抱きかかえて逃げてやる」
『……ふざけ……ないで……』
 ゲシッ!!
「あいってえ!! 膝に入ったぞ、今……」
『……私を……誘拐して……手篭めにしようとしても……そうは行かない……この変態め……』
「ぐぬぬ…… 抱きかかえられたまま蹴り入れるとは……委員長って、意外と身のこなし
素早いな……」
『……黙れ……この性犯罪者…… 立って……さっさと……掃除始めろ……』
「分かったよ、ちくしょう……」
『(一瞬……篭絡されそうになったじゃない……このバカ……)』


「ふう…… やっと終わったぞ……」
『……全く……いい迷惑だった……何で私が……別府にくっ付いて……掃除に付き合わな
きゃならなかったのか……』
「自分で俺に手錠掛けたんだろ? 自業自得だ」
『……お陰で……バケツの水に……手を突っ込むはめになったし……手が荒れたら……君
のせいだから……』
「はいはい。委員長の手が荒れるのも、身長が低いのもおっぱいがつるぺたなのも、全部
俺のせいですよ」
『……今……どさくさに紛れて……酷い事を言ったでしょ……?』

75 名前:3/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:36:22.97 0
「いえ。事実を羅列したまでですが何か?」
『……黙りなさい……事実だと……言うなら……君のせいと言うのも事実……ということ
よね……? だったら私が……今すぐ処刑してあげる……覚悟して……』
「わわっ!! 待て待て委員長。目が据わってるぞ。ガチで殺人は止めろ!! 俺はまだ
初エッチどころか彼女すらいないんだ!! まだ死にたくねえ」
『……だったら……そのうるさい口を閉じていたら……? いっそ……永遠にね……』
「それは無理。けど、手錠外してくれたら、せめて俺の声が届かないところまで行く事は
出来るぞ。つか、もう用済んだんだろ?」
『……私だって……これ以上君と一緒になんか……いたくないもの…… ちょっと待って
て……今鍵を……あれ……?』
「どうしたんだ? まさか無くしたとかそんなオチじゃないだろうな?」
『……反対側のポケットは……ない……スカートのポケットも……ない……ない……カバ
ンの中……だったかな……?』
「勘弁してくれよ。このまま外れなかったらどうすんだよ」
『…………やっぱり……ない…… 落としたの? そんな……バカな……もしかして……
ゴミと一緒に……焼却炉……とか……』
「何これ? それじゃあこのまま委員長とくっ付いたままずーっと一緒にいろってか?
飯も風呂も寝るのも」
『……そんなの……私の方こそ願い下げだが……君に嫌がられるのは……非常に心外だな……』
「いや。嫌って言うか、倫理的に拙くねって話で……」
『……で……? 君は嫌……なの……? それとも……嫌じゃない……の……?』
「あー……うん。ノーコメントで」
『……臆病者……男なら……ちゃんと答えて……』
「だって、願い下げって言ってる子に言うのもなあ。うん、まあ少なくとも嫌じゃないよ。
今はまあ、それだけにしとくけど……」
『フン…… まあいい……それで……我慢してあげる……』
「でも、どうすんだよ? 本当に外れなかったら、ずっとくっ付いたままなんだぞ?」
『……それなら……大丈夫……家にはちゃんと……買った箱の中に……スペアキーが……
あるから……』
「何だよ。それ早く言ってくれよな。だったらこんな焦る必要なかったのに」

76 名前:4/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:38:56.29 0
『……君が勝手に……妄想爆発させて……焦ってただけ……人のせいにするとか……逆ギ
レもいい所だから……』
「嘘だろ。委員長の顔も、相当焦ってたぞ。もしかしたら、自分では動揺を隠してたつも
りだったとか?」
『……むぅ……バカにしたような……目で見るな…… そもそも……君が……ちゃんと掃
除をサボらず……真面目に当番をこなしていれば……こんな事しなくて済んだのに……』
「はいはい。で、どうすんだよ? これから委員長の家に行けばいいのか?」
『……仕方ないけど……それしかない…… 君なんかを……私の部屋に上げるなんて……
ホントは……虫酸が走るほど……イヤなんだけど……』
「いや。女子が男子を部屋に上げるのが重要な事なのは分かるけど、そこまで言うか」
『……だって……君だよ……?』
「分かった分かった。まあ、やること決まってんならさっさと委員長の部屋に行って鍵外
しちまおうぜ。用が済んだら、とっとと退散するからさ」
『……そんなの……当たり前の事だから……』
『(どうしよう…… こんな形で……別府君をお部屋に招待するなんて……何の準備もし
ていないのに……)』


『……あれ? どっち……行くの……?』
「ああ。俺、チャリ通学だから。知らなかったっけ?」
『……そんな……君の通学方法とか……いちいちチェック……してないし……』
「まあ、そっか。どうする? このまま手錠つけたまま並んで歩いて委員長の家に行くの
と、自転車二人乗りで行くの」
『……どっちにしても……目立つ……よね?』
「まあな。ただ、自転車の方が一瞬で通り過ぎるから、気にしづらいかも」
『……なら……自転車にする……』
「よし。それじゃあさっさと行くか。このまんまだと人目に付くしな」
『……さっきから結構見られてるし……最悪すぎる……もう……噂になったら……君の責
任で……全部打ち消して貰うから……』
「まあ、クラスの奴らは事情知ってるし、人の噂も75日って言うから、そのうち忘れるだろ」
『二ヵ月半も……我慢しろって言うの……最悪過ぎる……』

77 名前:5/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:41:06.79 0
「で、自転車置き場に来た訳だが、手錠付けたままでどうやって乗る?」
『……そんなの……簡単……先に自転車……乗って……』
「ああ。で?」
『で……右手を……お腹に当てる……』
「こう?」
『……うん……あとは、ハンドルを横にして……ここを軸にして……こうやって回れば……
んしょ……っと……これで荷台に乗れば……よっと……』
「……随分と器用な真似すんだな」
『……当然……君より……頭いいもん……このくらい……思いついて……当然……』
「何か、随分と得意気だな」
『べ、別にそんなこと……ないし……何か不満でも……あるの?』
「いや、別に不満って事じゃないんだけどさ。ただ……」
『……ただ……何?』
「うん、まあ、こんなややこしい事しなくても、普通に右側から横座りすれば、こんな風
に密着しなくても良かったんじゃないかと」
『――!? そ……それじゃあ……不安定過ぎるから……君の運転だと……振り落とされ
るかも知れないし……しっかりくっ付いてないと……危ないじゃない……』
「分かったよ。まあ、どのみち片手運転になるから、確かに危なっかしいし、しっかり捕
まっていられる姿勢の方が安全かもな」
『……でしょう? 納得したら……さっさと出発する……』
「了解。じゃあ行くぞ……よっと……」
『よっと……とか……言うな……私が……重いみたいじゃない……』
「いや、実際おも……イタイイタイ!! お腹の肉つねらないで!! 冗談だからさ!!」
『……冗談にしても……失礼すぎる……』
「いや。マジで危ないからさ。イタズラすると、こけるかも知れないから」
『……私を乗せたまま……こけたりしたら……一生恨んでやる……』
「気を付けるよ。だけど委員長もちょっとした冗談で攻撃するの止めてくれ」
『……なら……まずは……君がその……余計な口を……閉じていろ……』
「分かったよ。校門のトコ、段差あるから気を付けろよ」
『……えっ?』

78 名前:6/7[sage] 投稿日:2012/06/16(土) 18:42:51.89 0
 ガタン!!
『ふぁっ……きゃっ!!』
 ギュウッ!!
「おいおい、大丈夫かよ。落っこちんなよ」
『むう……君が……警告するのが遅い……』
「いや。どう考えても委員長の動作がにぶ……いや、何でもない。俺が悪かった事にして
おくから、殺気は消せ」
『……今度……悪口言おうとしたら……首絞めるから……』
「別に悪口じゃないって。まあ、ちょっとからかおうとした気持ちがあるのは認めるけどさ」
『……やっぱり……私の事……バカにしてる……バカのクセに……』
「いやあ。からかうってのはバカにするばかりじゃないんだぜ。仕草が可愛くても、つい
ついそういう気持ちになっちゃったりするし」
『くっ……可愛い……とか言うな……君に言われると……気持ち悪くなる……』
 ゴスッ!! ゴスッ!!
「ちょっ!! 背中頭突きするの止めて!! あと、苦しいからもうちょっと腕の力緩め
てくれると有難いんだけど」
『……無理……運転乱暴だから……しっかりしがみ付いてないと……怖い……』
「えー、そんな事ないけどな。つか、片手運転だし、委員長後ろに乗っけてるから、いつ
もよりかずっと慎重だし」
『……これで慎重なら……普段だと……人死にが出るかも……もうちょっと……自重して……』
「そんな事言ったってなあ。ある程度スピード出してないと、却って危ないんだぜ」
『く……口答え……しないの……分かった?』
「ちぇっ。分かりました。ちゃんと安全運転します。これでいいんだろ?」
『……よろしい。人間……素直が……一番……』
「で、安全運転約束したから、もうちょっと体離してくれないか?」
『……何で……さっきからそんなに……体を……離して欲しがっている……私に……くっ
付かれるの……イヤなの……?』
「い、いやその……委員長は、いいのかなって? 俺なんかにしがみ付いてて」
『だから……信用出来ないからって……さっきから言ってるでしょ…… ホントは……君
なんかに……しがみ付きたくないんだから……』

79 名前:7/7[] 投稿日:2012/06/16(土) 18:45:10.32 0
『(ホントは……一回しがみ付いたら……逞しいし……暖かいし……安心出来るから……
なんだけど……)』
「だから、出来る限り安全運転するって。それだけは信用してくれよ」
『だから……信用出来ないし……君の答えも聞いてない…… 逆質問にだけ答えさせてお
いて……ズルイ……』
「えー。正直言えば、あんまり答えたくないんだけどな……言ったら絶対怒るし」
『……言わないと……確実に怒るけど……それでも……いいの……?』
「ぐっ…… それ言われると辛いな……」
『早く……答える…… 私にくっ付かれるの……嫌なの……?』
「い、いやその……嫌じゃないよ。全然。だから、それは気にしなくていいし、むしろ……
いや、何でもない」
『……何でもなくない。ちゃんと……続けて……』
「えー? やっぱり言うの?」
『……そこまで答えといて……中途半端は……ダメ。嫌じゃないなら……何で離れて欲し
いのか……ちゃんと言って……』
「い、いやその……そんな風に密着されると意識するっていうか……委員長の胸がさ。意
外とフニッと背中に当たって緊張するって言うか……」
『――っ!! なっ……何を考えているのよっ!! 死ね……死ね……このスケベ!!』
「ご、ごめんごめん!! 分かったから胴締めるの止めて!! 苦しいから!!」
『(私で……意識してくれるなんて…… むしろ……好き過ぎて……私が死ぬかも……)』


終わり
最終更新:2012年09月10日 21:24