308 名前:2/1[sage] 投稿日:2012/07/13(金) 07:14:51.42 0
『……ただいま』
「おっ、敬子おかえりー。遅くまで部活ご苦労さーん」
『万年帰宅部の兄さんに労われても、全く嬉しくありません――あれ? 兄さん、お母さんは居ないんですか?』
「なんだか仕事が立て込んでるらしくて、今日は帰れないってさ。
つまり今夜、俺と敬子は二人っきりって事だ、はっはっはー嬉しいだろー」
『う、嬉しくなんてないです! 気持ち悪い事言わないで下さい!』
「おおう、そんなに怒るなって。ちょっとした冗談だって」
『……冗談……じょ、冗談でも言って良い事と悪い事――ではなくてですね……兄さんの冗談は全然面白くないんです!
少しは自覚して下さい!』
「はいはい、悪かった悪かった。お詫びに飯温め直しておくからさ、着替えて来いよ」
『ええ、そうさせて頂きます。兄さんの無駄話に付き合ってるほど私も暇じゃありませんので……
あっ、前みたいに温め過ぎないで下さいね――』スタスタ
「へーい…………うーむ、小学校低学年までは将来兄さんのお嫁さんになります、とかなんて言ってくれてたけど……
今ではこの嫌われ様……これはあれか、デレツンって奴か? ……逆で来るとは、やるな我が妹――」
――ドスンッ――バタンッ! ズダダダダッ――!
『……はぁはぁ……に、兄さん! 兄さん! 兄さん!!』
「んー? まだ温め中ー、そんなに急いで着替えて――んなっ! け、敬子、どうかしたのか!?」
『へ、部屋に……私の部屋に!』
「部屋に変質者が居るのか!」
『違います! く、黒光りする……奴が出たんです!』
「なるほど、露出魔だな!」
『何でそうなるんですか! や、奴です! ゴから始まって、リで終わる――』
「何だ、敬子の部屋にゴキブリが出たのか」
『いやぁあああああ!! 名前も聞きたくなかったから、遠回しに言ってたのに! に、兄さんはバカです、大バカです!!』
「あー、そういや敬子はゴ――奴が超苦手だったな。とりあえず敬子、落ち着け」
『言われなくても落ち着いてます! 兄さんは早く奴を何とかして下さい! 兄さんはその為に居るんでしょう!?』
309 名前:2/2[sage] 投稿日:2012/07/13(金) 07:15:51.47 0
「いや、その為に居る訳じゃ――」
『兄さん、早く!!』
「……へいへい、退治しますよ……このまま敬子をバグらせたままじゃ、手に終えないしな――
敬子……腕にしがみつくんじゃない、動き辛いんだが」
『い、嫌です! 兄さんと離れていたら、奴が襲い掛かって来た時に、盾に出来ないじゃないですか!』ギュー
「何この子、酷くない? ……それでもさ……もう少しだけ緩めてくれないか?
……えーっと……胸の……感触で……別の意味で歩き難く――」
『何ぶつぶつ言ってるんですか! 気持ち悪いですよ! ……兄さん、その新聞紙をどうするつもりですか?』
「いや、叩くのに使うつもり――」
『絶対にダメです!! 私の部屋なんですよ!? 奴が死んだ部屋で過ごすなんて耐えられません!
別の方法で――あっ、そうです! 兄さんの部屋に奴を追い込みましょう!』
「……一応聞くが、それでどうするつもりだ?」
『焼き払いましょう!』
「却下しましょう」
「――よしっ。敬子ー、奴は窓からお帰りになられたぞ」
『……本当ですか?』
「うん、マジマジ。それじゃあ俺は、また飯を温め直して来るわ――」
『に、兄さん!』
「何だー?」
『…………あのっ! ……兄さん……奴の事ですが……あっ……ありがとうございました!』
「敬子、礼には及ばない。なんせ俺は、その為に居るのだからな!」
『……ふふっ、そうでしたね』
「……あ゛ー……敬子、落ち着いたか?」
『……はい』
「じゃあ…………さっさと服着ろよ? いつまでも下着姿だと風邪引くぞ?」
『へ? あっ――い、いやぁあああああ!! に、兄さんの変態!!』バチーンッ!
「ぶはぁっ! 理不尽!」
最終更新:2012年09月10日 21:51