57 名前:1[sage] 投稿日:2011/05/22(日) 17:52:47.76 ID:j/IbQHpR0 [1/3]
  • 男が読んでた本をツンデレが何故かエロ本と勘違いしたら



 日曜日はヒマだ。出かける用事もないし部活も休みだし、やることがない。
 やることがないのは妹も同じようで、TVをつけて、ろくに見もしないドラマの再放送
を流しながら、麦茶を飲んでいる。
 結局やることがない中で俺がやっていることといえば、ゴロゴロしながら読書だ。
「ねえ、ヒマなんだけど」
 あ、かなみもいたんだっけ。忘れてた。
「――ねえタカシ。なんか今、除け者にされたような気がしたんだけど?」
「滅相もない」
 視線が怖い。無駄に鋭い幼馴染様だ。
「……私も暇です。……兄さん、何かないんですか?」
 最後まで一瞥もしなかったTVを消して、こちらを向くちなみ。既に暇を持て余しすぎ
て限界だったようだ。
「あのな二人とも。俺もやることないからゴロゴロしてんの。……日曜日だし、のんびり
しようぜ」
 言うだけ言って、再び本の世界に入りこむ。
 ……ていうかこの本、意外とヤバいんじゃなかろうか? さっきから官能小説紛いな表
現がめっちゃ多い。名作だと聞いてたんだが……難しい。
「……ああもうっ、何さっきから一人だけ本なんか読んでるのよ! 私もヒマなんだ
から、ちょっと貸しなさいっ!」
「あっ――おい、ジャイアンかお前は!」
 かなみに本をふんだくられた。
 タイトルも見ないで人が読んでいたページから読み始めたことからして、本を読みたい
というよりは、構ってほしかっただけなのかもしれない。
 そしてかなみがテーブルに本をテーブルに置いて見始め、ちゃっかりちなみも一緒にな
って見ている。

58 名前:2[sage] 投稿日:2011/05/22(日) 17:53:04.57 ID:j/IbQHpR0 [2/3]
 二人がしばらく黙って読み始めて、やることもなくなったので、横になることにした。
 しかし、突如二人が声をあげる。
「んなっ――た、タカシっ!!」
「…………兄さんっ……!」
 眠りにつく直前に起こされた。
 ちゃんと暇つぶしの道具は渡したのに(つか取られたんだけだけど)……。
「何だ? せっかく昼寝しようと思ったのに……その本読んでていいから寝させてくれ」
「ば、バカ言わないでよっ! その、た、タカシ、こ、この本っ……」
「……兄さん……ひ、人前でなんて物読んでたんですかっ……!」
「はぁ? いや、普通の本だろ?」
 なぜか二人揃って真っ赤になっている。
「ふ、普通じゃないわよっ!」
「……身内の恥です……っ!」
 ――――あ、そうか。さっきちょうど官能小説スレスレのシーンだったっけ。
「二人とも、タイトル見てみろ」
「た、タイトルなんか読み上げさせるの!?」
「…………そ、そういうプレイですか……?」
「いや、別に読み上げなくていいけど…………え、てかプレイって何?」
「……ふぇっ!? ……だ、黙ってて下さい!」
 妹に怒られた。ていうか聞いたらいきなり黙れって、だいぶ理不尽だよね。
 深呼吸して気を取り直したらしい(どこに気を取り直す必要があるのかは謎だが)二人
は、本にかけられていたカバーを外し、タイトル慎重に覗き込んだ。本のタイトル読むの
を怖がっている状況は、生まれて初めて見た。

「「……『ノルウェイの森』……?」」
「ああ、有名どころだと思う」

 その後、なぜかかなみに蹴られてちなみにジト目で睨まれた。
 読書っていけないことなのか?
最終更新:2011年06月09日 21:28