335 名前:1/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:00:05.03 0
お題作成機より:双子、同窓会、浴衣(中編)

『(ハァ…… どうかしてるわよ、私は…… 二人の仲の良さに、嫉妬するなんて……)』
『(兄妹なんだもの。それも、双子の…… だから、ちょっとくらい仲が良くたって、おか
しいことなんて何もないわ。何も無いはず……)』
『(だけど、いくら双子だからって、あんな風にベタベタくっ付いたりとか出来るのかし
ら? それに、高校の時からそうだったけど、よく二人で一緒にいたし……)』
『(な、何考えてるのよ私は…… いくら何でも、血の繋がった兄妹でそんな事…… 確か
にあの仲の良さはまるでその……恋人同士みたい……だけど……でも、そんな事あるはず
ないわよ。二人とも、良識は持ってるだろうし……)』
『(だけど、ずっと二人でいれば、何かの間違いで……って、ううん。そんなはずは……だ
けど……あんな風にベタベタくっ付けるなんて……普通ならそういう関係でもなければ……)』
『(な……ないわよそんな事!! 別府君に限って、きっと……)』
「委員長、大丈夫?」
『――っ!? きゃあっ!! べ、別府君?』
【エヘヘ。孝史だと思った? 残念。律花ちゃんでしたーっ♪】
『び、び……びっくりさせないでよもうっ!! 心臓止まるかと思ったじゃない!!』
【ゴメンゴメン。でも、似てたでしょ? 孝史に】
『……そ、そりゃまあ双子なんだから似てるの当たり前じゃない。得意がるほどでもないわよ』
【えーっ。これでも声色まで似せるのは苦労したんだけどなあ。まあ、努力の甲斐あって、
髪をアップにしてさ。パッとこの声で前に出ると、結構騙されるの多いんだよねー】
『全く、律花は相変わらずくだらない事ばかりやって。そんなんだから、別府君なんかに
相変わらず子供っぽいってバカにされるのよ』
【いーじゃん。いつまでも遊び心を持ち続けるってのは、それはそれで重要な事だと思う
んだけどなぁ?】
『まあ、それは個人の考え方だし否定はしないでおくけど。で、何しにここに来たの? 私
をからかいに来ただけなら、悪いけどもう行ってくれない? しばらく一人でいたいのよ』
【ううん。それはおまけ。委員長が一人で聞こえないくらい小さな声で独り言言ってるの
を見つけて、ついからかいたくなっただけで、本当の用事はちゃんと別にあるよ】

336 名前:2/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:00:37.25 0
『なら、それをさっさと済ませちゃってよ。今は出来る限り他人に煩わされたくないの。で、何よ?』
【うん。一つ確かめたい事があって】
『確かめたい事?』
【そう。もしかして委員長って……ボクと、孝史の仲に嫉妬したりとか……してない?】
『えっ……? わ、私が……嫉妬……?』
【そう。ボク達の仲の良さに】
『……な、何言ってるのよ。そんなバカげたこと、有り得る訳ないじゃない。何で私が別
府君と律花の仲に嫉妬しなくちゃいけないのよ。意味が分からないわ』
【そっか。委員長、自分では気付いてないんだ】
『気付いてないって……何がよ?』
【だって、ボクが孝史と仲良くしてる時って、委員長いつも、怖い目でボクを見てるんだ
よ? 知らなかった?】
『……そ、それはその……血の繋がった兄妹で、ましてや双子なのに、高校生にもなって
ベタベタしてるのってどうかとは思って見てたけど、別に嫉妬なんてありはしないわよ。
それは貴女の勝手な妄想だわ』
【妄想かぁ。そっかー…… それはちょっと残念かもなぁ……】
『残念って……何でよ? 意味が分からないわ』
【だって、嫉妬だったら、それって孝史の事が好きか少なくとも気になってるって事じゃ
ん。兄妹としては、孝史の事を好きでいてくれる子がいたら、それって嬉しくない?】
『……私には、兄弟なんていないから、分からないわよ』
【そっか。ボクは嬉しいんだよね。だって、その子は孝史の良さが分かってくれてるって
事だもん。それって素敵な事じゃない?】
『……言いたい事は分かるわ。だけど、逆に貴女は寂しくないの? 別府君の事を好きな
子がいて、別府君もその子が好きになったら、今みたいに仲良く出来なくなるかも知れな
いのよ?』
【うん。でもそれはしょうがないよ。家族っていうのは、いつか巣立って行かなくちゃい
けないし。ボクだって好きな人が出来たら、タカシよりその人と一緒にいたいって思うよ
うになるだろうし】
『律花は、その……別府君の事をどう思ってるの? まあ、兄妹だしあれだけ仲が良けれ
ば嫌いって事はないと思うけど……どういう存在って言うか……』

337 名前:3/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:01:09.98 0
【孝史の事? そうだね。好きとか大好きとか、そんな言葉じゃ言い表せないよ。孝史は
ずっと……ボクの一部って言ってもいいくらい、それくらい自然な存在かな?】
『――っ!?』
【だってボク達、卵の時からずっと一緒なんだよ? お母さんのお腹の中にいる時からずっ
と寄り添って育って来て、生まれてからも今まで、ずっと一緒だったんだもん。それっ
てもう、自分の存在の一部って言っていいと思うんだけど。お互いにね】
『そんなに大切な存在だったら、やっぱり――』
【離れたくないんじゃないかって? ううん。そんな事ないよ。そりゃあ、離れるのは寂
しいけど、でもどこにいたってボクと孝史の関係は変わらないもの。お互いの心もね。だ
から、そんな事よりも、孝史が幸せになれるんだったら、ボクはその方が嬉しい】
『そんなものなのかしら。よく分からないわ』
【そんなものなの。だから、委員長がボク達の仲に嫉妬してくれてたら、いっそ良かった
んだけどなー】
『な、何でよ!? 何でそれで貴女が嬉しがるのか、意味が分からないわよ』
【だから今言った通りなのに。だって、嫉妬するって事は、それってつまり孝史の事が好
きって事だもんね。委員長が孝史の事を好きだったら、ボク、すっごい嬉しかったんだけど】
『だから何で、私なのよ。別府君の事を好きになってくれる子なんて、別に他の子だって
構わない訳でしょ?』
【それは秘密。で、どうなの? 委員長は孝史の事どう思う?】
『何でそこでいきなり私に質問振るのよ? い、い、い……意味分かんないわよ!!』
【聞きたいから。ていうか、人にあれだけしゃべらせといて、今更自分は質問に答えない
とかないよね? あんな風に孝史との事を話したのって、今までないんだから】
『そんなの、貴女の勝手じゃない。質問されたからって、必ずしも答える義務はないんだ
から。しゃべりたかったから、しゃべったんでしょう? 私は答えたくないわ』
【えーっ。そんなのズルいよ。委員長って、そんな狡猾な人だったっけ】
『ズルいと言われようが何と言われようが、話したくないものは仕方ないでしょ? 諦めなさい』
【ちぇっ。だったら、ボクにも考えがあるよ。多分委員長も気付いてないかも知れないけ
ど、言っちゃっていいかなぁ】

338 名前:4/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:01:52.25 0
『な……何よ。まるで人の弱味を握ってるような顔して。言っておくけど、私には人に知
られて困るようなスキャンダルなんてないわよ?』
【ホントに? 多分、これ知ってるのボクだけだと思うけど、みんなに話したら多分委員
長は困る事になるけどなあ】
『ちょっと待ちなさい。言ってごらんなさいよ。そんな捏造、木っ端微塵に否定してあげるから』
【捏造なんかじゃないけどな。ま、委員長もあんまり意識してないかも知れないけど、言
われたら絶対心当たりあるから】
『うるさいわね。そんなの聞かなきゃ分からないわよ。いいから早く言いなさい。絶対、
後ろ暗いところなんてないはずだから』
【フーン。じゃあ言うね。実はさ。委員長って、孝史の事、ちょくちょく盗み見してたでしょ?】
『は……はぁ? な、何言ってんのよ!! そんな事ある訳ないじゃない。言うに事欠い
てそれ? 何で私が別府君を盗み見なんてしなくちゃいけないのよ。意味が分からないわ』
【ボクは何度も見てるんだけどな。授業中に窓の方を見るフリして、窓際に座る孝史見て
たり、体育の授業でソフトボールやってる時に、持久走でトラック回ってる孝史を守備し
ながらボーッと眺めてたり、他にもまだまだあるけど、全部言う?】
『言わなくていいわよ。それって貴女の勘違いでしょ? 私は別に、別府君を意識して見
ていた事なんて、一度だってないわ』
【あんなに見てたのに?】
『だから見てないって言ってるでしょ? しつこいわね、貴女も』
【ボクの観察眼は間違ってないと思ったんだけどなー。委員長が孝史の方を向いてるのっ
て、一度や二度どころか五度や六度でもなかったんだけど、それも全部違うのかぁ…… だ
としたら残念だなぁ】
『そうよ。全部違うわよ……って、何で律花が残念がるのよ? 意味分からないわ』
【だって、委員長が孝史の事好いてくれるならいいなーって思ってたから。委員長なら、
孝史の彼女にピッタリだし】
『なっ……何で私……なのよ? ますます意味分からないわ』
【あ、今ちょっと嬉しいって思ってない? 孝史に一番近しい人間からお似合いだって言われて】

339 名前:5/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:03:41.45 0
『思ってないってば!! だって、私と別府君なんて全くソリが合わないじゃない。彼は
明るくてお調子者でおしゃべりで活発で……私は暗いし無口でクソ真面目で…… 全く合
う要素がないわ』
【そんなのは関係ないと思うけどな。ボクなんて、全く違うからこそお似合いだなって思っ
てるし。むしろボクなんかだと、見え過ぎちゃってつまんない事もあるからね】
『……よく分からないけど、そういうものなの?』
【うん。もちろん、ケンカする時もいっぱいあるけどね。でも、子供の時はともかく、今
は何で怒ってるのか理解出来るから、そんなには長続きしないけど】
『フーン。何だかちょっと、羨ましいわね。そういう関係も』
【お? 委員長も孝史とそういう関係になりたいなって思ったりした?】
『バカ言ってんじゃないわよ!! べ、別に別府君とだなんて一言も言ってないじゃな
い!! 一般論としての話よ。あくまでも』
【大丈夫大丈夫。委員長ならきっと孝史と分かり合えると思うよ。ボクが保証するから】
『だから違うって言ってるでしょう!! 律花はもうちょっと人の話を聞きなさいって、
前から言ってるじゃない。何度言わせたら気が済むのよ』
【エヘヘ。まあ、ボクの言った事が本当か間違ってるのかは、委員長が自分の心に聞いて
みるしかないけどね。でも、たまには素直に自分の気持ちと向き合うってのも大切だと思うよ】
『……貴女にそういうお説教されるのって心外だわ。私は、ちゃんと自分の心と向き合っ
てるわよ』
【フーン。そうなんだ。もし、孝史との事でボクの助けが必要なら、遠慮なく言ってよね。
ボクは委員長だったら、応援してあげるから】
『そんなの必要ないわよ。バカ』
『(そう。必要ない……というか、頼りたくないわよ。律花に頼ってたら……弱い自分のま
まだもの。それじゃあ本当に……別府君と釣り合わなくなっちゃう。今日だけで、もう十
分、後押しして貰ってるのに……)』
【あ、あともう一つ、委員長に関して重大な事実を握ってるんだけど、これも聞いていいかな?】
『へっ……!? ま、まだあるの?』
【えっへへー。こっちは今日、たまたま見つけたネタだったけどね】

340 名前:6/6[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 05:04:14.47 0
『ネタ扱いしないでよ!! で、もしかしてまた別府君に関係ある事なの? だとしたら
私はもう答えないわよ。答えたところで、同じなんだから』
【さあ、どうかな? それは委員長の答え次第だと思うけど……】
『いいから早く言いなさい。このまま律花の胸にしまわれたままだなんて、却って気になるから』
【じゃあ聞くけど…… 委員長さ。みんなと集まる前に、先にお願い事を短冊に書いて吊
るしてたでしょ? それにさ。彼ともう少し、会う機会が増えますようにって、そう書い
てあったんだけど、彼って誰の事?】
『――っ!! 何で人のお願い事覗き見するのよ!! プライバシーの侵害よ!! 犯罪だわ!!』
【公共の物にお願い書いておいて、犯罪ってのは酷いと思う。で、誰の事? もしかして、
孝史だったりする?】
『な……な……ないわよっ!! そんな訳無いわ!! 絶対違うわよ!!』
【そのムキになる所がますます怪しいなあ。委員長ってば、本当に違うなら、何バカな事
想像してるのよ。律花の頭の中、ウジでも湧いてるんじゃないとか、そういうキツイ毒舌
かましそうだもん。それがここまで焦ってるって事は……】
『ニヤニヤするんじゃないわよ!! もう……私のお願い事なんだから、誰の事だろうが
構わないでしょ? これ以上詮索は止してよね』
【りょーかい。まあこれも、委員長が自分の心と向き合うしかないしね】
『(……ホント、参るわよ……ここまで私の心の中をむき出しにされるなんて……ずっと怖
くて、目を背けてたのに……)』


後編に続く
最終更新:2012年09月10日 21:59