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354 名前:ほんわか名無しさん[sage] 投稿日:2012/07/17(火) 00:40:42.76 0
久しぶりに百合ツン






  • ツンデレと双子コーデ

「フンフン……フーン……へぇー……」
『さっきから、何を鼻息荒くしているんだお前は。盛りの付いた牝犬か』
 ファッション雑誌を夢中で読んでいる小百合に、私は突っ込みを入れつつ呆れた視線を
送る。すると小百合がガバッと顔を上げ、私に読んでいたページを開いたまま示しつつ、
興奮気味にしゃべり始めた。
「だって美琴。見てよ、これ。すごくいいと思わない?」
 私は体ごと向きを変えて小百合に向き直ると、顔を雑誌の方に近付ける。
『何? 今流行の双子コーデ……だと?』
 声に出して見出しを読むと、小百合はうんうんと大きく首を縦に振りつつ、期待を込め
たような目で私を見つめた。
「そうなの。この間、テレビでもやってたんだけど、今は本当の双子じゃなくても仲の良
い友達同士で同じファッションをするのとか流行ってるんだって」
 これだけで十分小百合の意図を理解し、私の心の奥が僅かに疼く。しかし、そんな本能
を無視して、私はあくまでクールに聞き返した。
『ほう? それで?』
「それでって、可愛くない? こういうの。この読モの子達も実際にライブ行ったり、ディ
ズニー行ったりする時、双子コーデするんだって。いいじゃない。こうやって仲良しアピー
ルするのってさ」
 果たして小百合の脳みその中には、今どんな妄想が展開されているのだろうかと内心呆
れつつ、私は体を起こして勉強用イスに座り直す。そしてわざと視線を逸らし、興味無さ
そうに答えた。
『フン。まあ、読モなんてやってるくらいだからファッションにも明るいし、可愛いのも
当然だろう。で、それと私達と何の関係があるんだ?』
「もちろん私達もやってみるのよ。双子コーデ」
『はあ?』
 わざと呆れたような声を出しつつ、内心ドキリとして私は小百合を見つめ直した。頭の
中に浮かびかけた想像を無理に消し飛ばして、努めて冷静に小百合に聞く。
『バカを言うな。何で私がわざわざ小百合と同じ格好をしなければならないのだ。意味が分からん』
 すると小百合は、ムッと顔をしかめて私を睨みつけた。
「意味分からないって、そういう言い方することないでしょ? 美琴と仲良しアピールし
たいから、やりたいって言ってるだけなのに」
『だから何で、外で同じ服を着て、小百合と仲良しアピールなんてしなければならないの
だ。それこそ意味不明だ』
 冷たく突き放してはみても、心臓がドキドキしている事は否めなかった。たかがこんな
事くらいで動揺しているだなんて、小百合には絶対に知られたくない。
「酷い。美琴ってば、いつだってそうやって冷たく突き放すんだから。私と美琴ほど仲の
良い女の子同士なんて、なかなかいないよ」
 拗ねた顔で小百合は、上目遣いに私を見つめてくる。出来る限り小百合の姿を視界に収
めない様にしつつ、私は言い返した。
『バカを言うな。仲が良いんじゃなくて、お前が一人で私にベタベタとくっ付いて来てい
るだけだろう。明らかにお前がウチに来る方が多いじゃないか。一方的に仲良しアピール
されても、こっちがたまらないだけだ』
 すると美琴は、しばらくそのまま私を睨むように見つめていたが、やがて無言のまま小
さく震える声で呟いた。
「……美琴……そんな事、思ってたんだ……」
 私は、ハッとして小百合に向き直る。やはりあそこまでは言い過ぎだった。小百合の心
を傷付けてしまったのではないかと不安になり、急いでフォローの言葉を探して口に出した。
『いや、その……家に来ること自体が迷惑だとまで言っている訳じゃないぞ。ただその、
だな。別にそんな事くらいで特別仲が良いとか思われるのが困るというか、別に仲良しじゃ
ないと言っている訳じゃなくて、だな……』
 その時、小百合がゆっくりと立ち上がった。反射的に私は、心の中で身構える。もしか
して、怒って帰ってしまうのではないか。それとも何か文句を言われるのか。或いは、怒
ったフリをしてからかうつもりなのか。様々な憶測が頭の中を飛び交う中、小百合がゆっ
くりと顔を上げた。私を見つめるその顔は、怒っているように見えた。
「美琴ってば、いっつもそうなんだから。自分からは私と仲良くしてる訳じゃないって、
いっつも私の一方通行みたいに言って」
 不満を口にしつつ、小百合は一歩前に進んで私に近付く。何となく迫力を感じて私は身
を引こうとしたが、イスに座ったままなのでそれも出来ずに、私は慌てて小百合に対して
言い訳めいた事を口にした。
『いや、待て。私の言った事自体は嘘じゃないだろう? 実際、今もこうして私の部屋で
ダラダラしてた訳だし、別に私だって小百合が来ること自体が嫌だとか迷惑だとか言って
る訳じゃない。ただその、それで特別な関係めいた事を言われるのが……だな。ちょっと、
その、違うと言うか……』
 その時、小百合の表情が一転、笑顔になる。しかしその笑顔は、心を和ませるようなも
のではなく、むしろ別の不気味さを持っているように私には思えた。
「全く……美琴ってば素直じゃないんだから。そういう人には、お仕置きが必要ですね」
『お仕置きって……うわっ!?』
 いきなり、上から覆い被さるように、小百合が私に抱き付いてきた。小百合の上半身が
押し付けられ、頬と頬が擦れ合う。
「えっへへへ~♪ ほらほら、イヤなんでしょ~美琴はこういうのが。だからお・し・お・
き、なの」
『や、止めろ離せ暑苦しい!!』
 私はもがき、振り解こうと体を動かしたが、しっかりと私の体はホールドされ、自由に
身動きが取れなかった。
「ダメダメ。美琴がちゃんと、私と仲良しだから双子コーデしたいって言わないと、離し
てあげないんだから」
 さらに強く体を押し付けてくる小百合に、私の全身が反応してしまう。柔らかく細い、
小百合の体。私の胸に、小百合の控えめな、それでもしっかりと膨らんだ胸が押し付けら
れる。体が興奮で火照り始め、意識しないようにしても、奥の方が疼き始める。
『だ、駄目だ。そんな事を言っても、私は承諾しないぞ。お前と双子ファッションなぞ、
する訳も無い!!』
 家で着るくらいならまだしも、小百合の事だから絶対それで出掛けようと言うに決まっ
ている。そんな事はまるで……そう。恋人同士みたいだから……そんな姿を人に見られる
なんて、恥ずかしくて絶対に無理だ。
「もう。美琴の頑固さもハンパ無いなあ。じゃあ、これでどう?」
 さらに体をくっつけ、私の膝の上に腰を下ろそうとする小百合に、私は必死で抵抗した。
『バカ、止めろ。そんな体勢じゃ危ないだろうが』
「美琴が大人しく私を受け入れてくれれば、危ない事なんて何も――って、え――?」
 抵抗して体を揺らす私と、私に体重を預けようとする小百合の重みがバランスを崩した。
そのまま、私達二人はイスごと、スローモーションのように床に倒れていく。
『「――っきゃああああああっ!!」』
 二人同時に悲鳴を上げつつ、騒音とともに私達は激しく床に叩きつけられた。衝撃で、
一瞬呼吸が止まる。
『いっ……たたたた……』
 体をよじろうとするが、何故か体が動かない。一瞬体に異常を来たしたかとドキリとす
るが、すぐにその原因に気が付いた。何故なら小百合は、倒れた衝撃にも負けず、しっか
りと私に抱きついたままだったからだ。
「もう……だから大人しくしてって言ったのに……」
 すぐ目の前、鼻の頭同士が触れ合うほどに近くで、小百合が拗ねた顔で言った。私はす
ぐに体を離そうとするが、一瞬早く、小百合の脚が私の体を絡め取る。
『こ、こら止めろバカ!! 離せ!!』
「だーめ」
 甘えたような声で私の言葉を退けると、小百合は顔をわずかに私の方に近付け、鼻同士
を触れ合わせる。
「美琴がちゃんと、私の言う事聞いてくれなきゃ、離さないんだから」
 その、天使のような悪魔のような微笑に、私は一瞬、抵抗を忘れて小百合を見た。こん
な間近で体をくっ付けてそんな甘えた事を言われると、どうにかなってしまいそうだ。誘
惑を振り切るように私は首を横に振った。
『だ……ダメだダメだダメだ!! お前の言う事なんて聞けない!! こんな事で私を言
いなりに出来ると思ったらお……大間違いなんだからな!!』
 顔を背けようとしても、まじまじと私を見つめる小百合の顔に引き寄せられてしまい、
それが出来ない。小百合は少し無言で考えた後、思いもかけないとんでもない事を口にして来た。
「なら……違う方法で、私と美琴の仲が特別だって、分からせてあげようかな?」
『何?』
 その特別な方法とは何なのか? 私の脳みその中があらぬ妄想で占められて行く。いや、
まさかそんな事はないと否定する。しかし、小百合が体を起こし、起用に私を下にしてしまった。
「どうする? 最後の選択よ? 私と一緒に双子コーデをするか、それとも別の方法で、
仲を深めたいのか…… 美琴がどうしても双子コーデが嫌だって言うなら――」
『わ、分かった!!』
 その先が聞けず、ついに私の心は小百合に屈してしまう。全身の力が抜け、体が火照っ
ているのが感じられる。小百合の顔から視線を逸らし、私はせめて何とか、屈服した訳じゃ
ない言い訳を考える。
『……まあ、正直そこまで一緒の服装をするのが嫌な訳じゃないからな。ただ、変に仲良
しアピールがウザかっただけで、多少付き合って外歩く程度なら、我慢してやらない事も無い』
「またウザいとか言うし」
 上から小百合が、私を押し潰すように圧し掛かって抱き締めてくる。私は思わず呻き声を上げた。
『ぐうっ!! お、重い。どけ、どかないか!!』
「女の子に重いだなんて失敬な。これでも体重は美琴より軽いんだから」
 抱きついたまま、器用に私ごと横様に転がって、小百合は文句を言った。それからすぐ
に笑顔になって、胸に顔を埋めてくる。
「でも、ありがと。私に付き合って双子コーデしてくれるって言ってくれて。嬉しいな」
 その仕草の余りの可愛らしさに、私は胸がキューッとなってしまい、心がほだされてい
くのを抑える事が出来なかった。辛うじて出来たのは、強がりの一言を言う事だけだった。
『……お、お前がどうしてもって言うから……だから、今日だけだからな』


『……で、どうするんだ? 双子ファッションと言っても、私はお前とお揃いの服なんて
持ってないぞ? 今から買いに行くのか?』
 小百合から解放され、倒れたイスを起こしてから床に座り直し、私は小百合に向き合っ
て聞いた。しかし小百合は首を振ると、自分のバッグの傍に置いてあった紙袋を引き寄せる。
「ううん。美琴と着たい服はもう見繕ってあるの。ほら、これよ」
『どれ、見せてみろ』
 期待と不安に苛まれつつ、中を確認しようと手を出した私に小百合は大人しく紙袋を手
渡した。中から服を出して広げてみた途端、私は思わず言葉を失った。
「どお? 可愛いでしょ?」
 人畜無害な笑顔を見せる小百合に、我に返った私は思わず怒鳴りつけた。
『ふっ……ふざけるな!! 誰がこんなヒラヒラした乙女チックなワンピースなど着るか!!』
 思わず床に叩きつけようとして、辛うじて私は手を離すのを思い止まる。しかし小百合
は相も変わらず笑顔のままで、両手を組み合わせて私を見つめて頷く。
「大丈夫。美琴は自分で似合わないって思ってるかも知れないけど、絶対に似合うから。
私が保証するわ」
『フン。お前の保証など、闇金融の謳い文句よりも信用ならんわ』
 プイッと私はそっぽを向いて突っ撥ねて見せる。すると小百合は立ち上がって私の腕を引く」
「もう約束したんだから、今更反故にするのはダメだからね。ほら、とにかく立って着替えて」
『ふざけるな。お前と双子ファッションをする事自体は承諾したが、こんなヒラヒラのワ
ンピースを着るとまでは言っていない。今からでももう少しマシな服を買いに行くぞ』
 体を揺すって小百合の腕を解こうとするが、小百合はしっかりと私の腕を捕らえて離さ
なかった。普段おとなしそうに見えるくせに、こういう時はやたらと力を発揮する事に、
私は今更ながらに思い知らされる。
「ダメ。ちゃんと美琴のサイズに合わせて買って来たんだから。ちゃんとピッタリなはず
よ。それに、今から服を買い揃えに行ったら、日が暮れちゃうじゃない。それじゃあ二人
で街を歩けないわ」
『別に歩く必要など無い。というか、ゴメンだそんなの』
 小百合と二人で仲良く同じファッションで歩くなんて、想像しただけでも恥ずかしくて
身悶えしてしまうのに、実際に出来る訳も無い。しかし小百合は、意地でもそれを実行さ
せたいようだった。
「せっかく美琴と仲良しなのアピールしたいのに、それじゃあ意味が無いの。さ、着替えて」
『いや、だから何度も言っているだろう。別にお前と仲良しなのを世間にアピールする必
要もないし、したくも無いと。ただ断わるとお前がどんな暴走するか分からないから付き
合ってやるだけで――』
「もうダメ。決めたんだから」
 半ばしどろもどろに拒否する私を、キッパリとした口調で小百合は撥ね付ける。そして
私の腕を離し、さっさと自分の着る服を取り出す。
「それじゃあ私は洗面所で着替えて来るから。戻って来るまでに着替え終わってなかった
ら、おしおきペンペンだからね」
『あ、おい小百合。ちょっと待てってば!! おい!!』
 しかし小百合はもう私の制止を一顧だにせず、さっさと部屋を出て行ってしまった。残
された私は、仕方なしに手に持ったワンピースを見つめてため息をつくのだった。


「美琴。着替え終わった?」
 珍しく、小百合が廊下からドアをノックして伺いを立てて来る。姿見で自分の格好を何
度も見返していた私は、慌てて体裁を取り繕う。
『お、終わっている。入れ』
「では失礼して……」
 扉を開けて入って来た小百合の姿に、私はハッと見惚れてしまった。やはり小百合は可
愛い。しかも私のは黒一色なのに、小百合のミニスカート部分は白のレースっぽい雰囲気
である。しかし、その姿をじっくり堪能する間もなく、小百合の方が感激するように叫ん
だ。
「美琴……可愛いっ!!」
 そう叫ぶなり、つかつかと早足で私の傍にやって来ると、頭の先からつま先までをジロ
ジロと見回しつつ、うんうんと頷く。
「やっぱり私の見立ては間違って無かったわ。美琴ってば、普段オシャレに縁の無いよう
な服装ばっかりだけど、やっぱり可愛いのも似合うのよ。素晴らしいわ」
『そうか? さっきちょっと姿見で確認したが、どう見ても猿に烏帽子にしか見えないぞ』
 自分自身が着慣れないせいか、これが似合っているとはどうしても思えない。もっとも、
黒一色でシックなイメージだからまだ救いがあるが、小百合のようにスカートが白だった
りすると、ますます持って合わないこと甚だしかったろう。
「そんな事無いわよ。はい、それじゃあこの帽子被って」
 私の感想を一言で否定すると、小百合は次々にアクセサリーを渡してくる。
「あと、このネックレスと……ヒールはこれね。私と色違いのお揃いで。で、私は帽子じゃ
なくて髪飾りを着けるの。こうすると、同じ服装でもお互いの個性も出るのよ」
『あのな。小百合。少しは私の話も聞け。本当にこの格好で町を歩かなきゃいけないのか?』
 私が何も受け取ろうとしないので、小百合は勝手に私にネックレスやらブレスレットや
らを手際よく着けていく。それから、私の肩を両手で押さえると、無理矢理に姿見の前に
移動させた。
「はい、完成。どお?」
『ど……どうもこうもない。似合わないものは似合わないと――うっ!?』
 隣に並んで立った小百合と私を姿見で見て、私はドキリとしてしまった。同じ格好で並
ぶ私達二人は、本当に仲が良さそうな親友――いや、それ以上の存在にすら思える。それ
でいて、色やアクセサリーの違いが、互いの個性をも浮かび上がらせていた。
「エヘッ。美琴とお揃いだ。嬉しいな♪」
 小百合がそう言って、私の腕に手を絡め、頭を傾けてくる。
『お、おい止めろ。その……甘えて来られるとうっとうしい……から……』
「もうちょっとだけ。お願い」
 僅かに目線を上に向けられ、甘えた声で言われれば、さすがの私も拒否など出来なかった。
『う……す、少しだけなんだな。なら……もう少しだけ我慢してやる……』
 そう言いつつ、姿見の中の私達に、私は視線を向けた。小百合のまるで私に全てを委ね
きった顔に心臓が激しく高鳴ってしまい、体の奥底がむず痒くて仕方なくなってしまう。
と、唐突に小百合が離れた。
「はい、ありがと。それじゃあ、出掛けようか?」
『あ……』
 何だか妙な寂寥感を感じ、私は思わず呆然と小百合を見つめた。小百合は不思議そうに
小首を傾げ、私を見つめてからニッコリと微笑んでみせた。
「どうしたの、美琴? もしかして、もう少しこうしていたかったとか?」
 その言葉に、私は唐突に我に返った。慌てて彼女の言葉を否定する。
『バ……バカを言うな。そもそもうっとうしいと思っていたのに、もっと続けて欲しいわ
けあるか』
 すると小百合は、まるで全てを承知したような顔で頷き、ニッコリと微笑むと、サンダ
ルを持ち上げて私に掲げてみせた。
「大丈夫。続きは外で……ね?」
 その瞬間、私は一気に顔が火照るのを感じた。
『ふ、ふざけるな!! こんな事、外では許さないからな。絶対に、絶対にだぞ!!』
 こう否定しつつ、心のどこかでは小百合には絶対に勝てないことも、そしてまた、それ
を期待している私がいる事も、否定出来ない事実なのだった。
最終更新:2012年09月10日 22:01