593 名前:1/2[sage] 投稿日:2012/08/16(木) 12:10:22.31 0
  • 捨て駒にされるツンデレ

「うーん、こっちからも無理そうだ」
『くっ……こんな所に籠城しても半刻も持たないわ。援軍はいつになったら来るのよ!』
「来ないんじゃないかな」
『……は? な、何言ってんだか……それじゃあ私達がまるで――』
「あいつに捨て駒にされたんだろうな」
『御館様をあいつ呼ばわりしないで!! きっと何か……不測の事態が起きたのよ』
「それは違うな。俺が思うに、この状況は作戦通りに行ってるんだろう」
『……どういう意味よ、それ』
「つまり俺達は奇襲部隊じゃなくて囮部隊って訳だ、本隊は別方向からーってな」
『ふざけないでよ! 御館様が……そんな事……する訳……』
「一概にも絶対にしないって言い切れないだろ? 俺もあいつに激励された時から嫌な予感はしてたんだよな」
『……私達、どうなるの?』
「時期に扉は突破されて、後は多勢に無勢だ。結果は目に見えてるだろうな」
『……そうね』
「……」
『……』
「……よしっ、無駄話もこれくらいにして――」
『好き』
「……な、何? お前の口から一番言わなそうな言葉が漏れたような気がしたが」
『私は……貴方の事が……好きです……大好き』

594 名前:2/2[sage] 投稿日:2012/08/16(木) 12:11:28.57 0
「ち、ちょっと待て! どうしちゃったんだよ、お前!」
『この想いを伝えずに死ぬなんて……絶対に嫌だったの……だから……』
「いやいや、お前はあいつ――御館様が好きなんだろ!?」
『……そう思ってたんだ……勘違いしてる……御館様は尊敬してただけで……異性として好きなのは……貴方だけ』
「えっと、そのー……お、お前ってそんな性格だったっけ?」
『貴方が嫌って言うなら性格くらい直すけど? ……ふふっ……とは言っても時間がないけどね』
「そ、そんな事はないぞ、まだ――なっ、何で近付いて来るんだ!?」
『口付けを交わそうと思って……嫌ならしないけど?』
「……嫌ではないけど――って何言ってんだ、俺は!」
『もう少しかがんでよ……届かない……』
「えっ、あっ、そのっ……ちょっと落ち着け!」
『……落ち着いてなんか居られないよ……貴方がこんなにも近いのに――』
「ま、待ってくれ! まだ逃げられるんだ!」
『…………どういう意味?』
「そのままの意味だよ……嫌な予感がしといて何もしないのは馬鹿だけだ。ここに逃げ込んで籠城したのも意味がある」
『……この部屋に隠し通路でもあるの?』
「そうそう、御明察。古い鉱山とかを利用して、部下にこっそりと作らせたんだよ」
『……私達、助かるのね』
「だな。さっさとこんな所抜け出そうぜ」
『……』
「ん? どうし――」
『いやぁぁぁぁーーーーっっ!! わっ、私……なんて恥ずかしい事を……何で、すぐに言ってくれなかったのよ!!』
「いやいや、言おうとはしたんだぞ? お前が勝手に暴走し始めたから、言い出す機会を逃したって言うか――」
『人のせいにするつもり!? 本当に死んじゃうと思ったんだから! あぁーもうっ、さっきまでのは忘れなさい!』
「あんな濃いのをどうやったら忘れられるんだよ」
『良いから、とにかく、忘れなさいっ!! ほらっ、時間が無いんでしょ? さっさと逃げるわよ』
「へいへい……あっ、ひとつ言い忘れてた」
『……何よ?』
「いきなりで戸惑ってしまったけどさ…………さっきの続きはいつでも歓迎だぜ?」
『――――っっ!! しっ、しないからっ! もう絶対に出来な――じゃなくて! しないんだからっ!!』
最終更新:2012年09月10日 22:30