605 名前:1/3[sage] 投稿日:2012/08/18(土) 00:47:34.77 0
- ツンデレがコミケで着るコスプレ衣装を悩んでいたら その2
「は?」
質問に質問で答え、タカシはキョトンとした顔をする。私はため息をつき、委員長から
渡されたコスプレ衣装を指した。
『いや。言い方が悪かった。私が着るなら、どれが一番いいと思うか、それを聞いているのだ』
それに対するタカシの理解は早かった。
「つまり、この中から美琴がコスプレする衣装を、俺に選んで欲しいとそういう事か?」
その言い方が何故かとても気恥ずかしくて、私は思わずそっぽを向いてしまう。
『う…… ま、まあその……自分でも姿見で見てはみたが、どれがいいのかさっぱり分か
らなくてな。そもそも私は、元になったアニメも知らないし…… お前ならまだしも分か
るだろうと、そういう事だ』
「なるほど」
頷いて、タカシは衣装に目を落とした。
「ふーん。まどマギのほむほむと、モーパイのチアキちゃんと……このドレスってAWの
副会長かよ。よく作るよな。どれもこれも凝ったのばかりでさ」
『それは、委員長の友達にコスプレ衣装作りにやたら凝る子が作ったという事だが……』
タカシは、そっと衣装を持ち上げては眺めて感心したように頷く。
「にしても、全部制服じゃないほうだもんなあ…… 魔法少女に海賊にネット世界のアバ
ター衣装かよ。ホント、凝ってるわ」
不思議な事に、何故かタカシに衣装を見られていると、既にコスプレした自分を見られ
ているような気恥ずかしさに襲われ、私は急いでタカシを急かした。
『い……いいから早く決めろ。お前のお気に入りのキャラとかでもいいから!!』
しかしタカシは、衣装を丁寧に床に置くと、おとがいに手を当て、眉を寄せて難しそう
に考え込んだ。
『何を迷う必要がある。お前にとってはそんな難しい問題でもないだろう。さあ、早くしろ』
「まあちょっと待て」
タカシは片手を上げて私の前にかざして制する。
606 名前:2/3[sage] 投稿日:2012/08/18(土) 00:48:06.18 0
『待てないから早く決めろと言っているのだ。私としてはだな。一分一秒でも早く、こん
なくだらない悩みから脱却したいのだ。待つことなど出来ん』
苛立つ私に、今度はまあまあと両手で抑える仕草をする。
「いや。やっぱりさ。せっかく美琴がコスプレするんだし、一番似合う衣装を選んであげ
たいじゃん。そうすると、やっぱり試着したのを見るのが一番かな……と……」
『なっ!?』
タカシの提案に、私の全身がいきなり猛烈な熱を帯びた。
『ななななな…… 何を言ってるお前は!! 何でお前の前でコスプレ衣装を披露しなけ
ればならんのだ!! い、意味が分からんぞ!!』
動揺する私を前に、タカシはいともあっさりと答えてみせた。
「何でって、衣装選びの為だろ? やっぱ見なきゃ選べないし」
『どどど……どんだけ優柔不断なんだお前は!! 私のことくらいは日頃から嫌というほ
ど見ているだろう!! 脳内で衣装合わせくらい出来ないのか?』
私の問いに答えず、タカシは私の顔をジッと見つめて、それから指を差して言った。
「美琴さ。顔、真っ赤」
『――っ!!』
タカシに指摘されてもの凄く恥ずかしくなって、私は顔を背け下を向いてしまった。も
ちろん自分の体が上気していたのは気付いていたが、あからさまにそれと分かるくらい顔
に出ていたなんて恥の極みだ。しかし、ここまで来たらもう、開き直るしかなかった。
『し……仕方……ないだろう。私だって女なんだ。人前で恥ずかしい格好をしろと言われ
れば、か……顔くらい赤くなるわ……』
「でも、大丈夫なのか? そんなんで」
『何?』
心配そうなタカシの声に、私は顔は動かさずにチラリと視線だけを送る。その先で、タ
カシは腕組みをして難しい顔で考え込むように言った。
「いや。だってコミケって何万とか何十万とかいう人が来るんだろ? なのに、そんなに
恥ずかしがってたら、当日コスプレなんてとってもじゃないが出来ないんじゃないか?」
『む……それはそうなのだがな……その……』
607 名前:3/3[sage] 投稿日:2012/08/18(土) 00:48:40.03 0
私は曖昧にしか答えることが出来なかった。まさかタカシの前だから余計に恥ずかしい、
なんて答えが返せるわけもなかったからだ。しかしそんな私の気も知らず、タカシは真逆
の提案してくる。
「だったらさ。まずは幼馴染の俺の前でコスプレ披露してある程度恥ずかしさに慣れてお
けば、当日は何も問題なく出来るんじゃないか? なあ」
それに対して、私は否定の言葉を返そうとして、口に出せなかった。確かに、タカシの
言っている事は間違っていない。タカシの前でコスプレを披露する恥ずかしさに比べれば、
見も知らぬ他人に見られる事など大したことではないだろうと。
『う…… た、確かにその……一理なくもないが……だが……』
そして、もう一つ。不思議な事に、最初は恥ずかしさしかなかったのに、だんだんと、
コスプレした自分の姿を、タカシに見せてみたくなって来たのだ。そして、可愛いと褒め
られたいと。どんどん大きくなるその欲求に耐え切れなくなり、ついに私は屈した。
『まあ……し、仕方ないか…… お前がそうしないと決められないと言うなら…… この
ままだと、時間だけが無駄に過ぎて行ってしまうからな……』
承諾した途端、また体が一層の熱を帯び、心臓の鼓動が早く大きくなるのを感じた。
「よし。それじゃあ善は急げだ。俺はリビングでおばさんと話してるからさ。着替え終わっ
たら、携帯で呼んでくれよ」
スクッと立ち上がったタカシを見上げて私は頷く。
『わ……分かった。母にはくれぐれも余計な事は言うなよ。いいな?』
「分かってるって。それじゃ、待ってるから」
タカシが部屋から出て行くと、私は衣装を一つ取り上げてそこに顔を埋めた。
『ううううう……タ、タカシの前でこんな恥ずかしい格好をするなんて…… でも何で……
こんなに胸が……こそばゆいような感覚になっているんだ……ハァ……』
さらに続く
最終更新:2012年09月10日 22:32