736 名前:ほんわか名無しさん[sage] 投稿日:2012/08/29(水) 03:21:02.82 0
  • ツンデレに、男がツンデレを迷惑がっていると嘘をついたら

 放課後。私は、昇降口でタカシを待っていた。あいつは今日、日直だったので少し遅れ
て来るからだ。
「よっす、ちなみん。さては別府くんを待ってるのかな?」
「……友ちゃん」
 声に顔を上げると、そこには、私の数少ない友人の一人である友子が、立っていた。
「そういや別府くん、今日は日直だったもんね。……でも、わざわざこっち来ないで、教
室で待っててあげても良かったんじゃないの? ちなみんとしては、少しでも別府くんと
長くいたいんじゃないの?」
「……何を言っているのか理解不能。……そもそも、私は、別にあいつを待っているとは
言っていない」
「またまた~。毎日、一緒に登校して、一緒に下校してるくせに何言ってるんだか」
「……うるさい」
「あ、わかった。教室で待ってたら、他の子に別府くんを待ってることがバレるから、そ
れが恥ずかしくてこっちで待ってたんでしょ?」
「ちがっ……違う」
 思わず動揺が声に漏れてしまう。そしてそれを見逃してくれるほど、彼女は甘くなかっ
た。
「も~、わかりやすいなぁ、ちなみんは!」
「……ふん」
「ホント、ちなみんと別府くんっていつも一緒にいるよね」
「……あ、あいつが私につきまとってるだけ。……私は、別に、タカシのことなんか……」
 熱を持ち始めた頬を隠すように、私にしては早口でまくし立てる。すると、友子はニヤ
ニヤ笑いながら、また口を開いた。
「えー、それホントー? ちょっと信じられないなあ。私には、ちなみんが別府くんと一
緒にいたがってるように見えるんだけど」
「そっ……そんなわけない。……友ちゃんの目がおかしいだけ。……あるいは頭」

737 名前:ほんわか名無しさん[sage] 投稿日:2012/08/29(水) 03:23:17.61 0
 またも動揺が声に表れてしまい、それを誤魔化すように、毒を吐いてしまう。内心、ち
ょっと反省するが、友ちゃんも悪いと思う。
「ったく、強情なんだから。……ちなみんは、そう言うけどさ、別府くんの方はむしろち
なみんのこと、迷惑がってるみたいだよ? この前もホントは一人で帰りたいって言って
たし」
「……えっ?」
 心臓がドクンと大きく鼓動を打つのが聞こえたような気がして、それと同時に周りの音
が一瞬で聞こえなくなる。
「なーんてね。嘘よウソウソ。別府くんとちなみんは、どう見ても相思相愛なんだから、
さっさと告白しちゃいなさいよ。……って、ちなみん?」
「……めいわく? ……わた、わたし……タカシにとって……迷惑、なの? そんな……
でも……だって……」
「……ちょ、ちょっと、ちなみん? ねえ? さっきの全部嘘だってば! ……やばい、
完全にトリップしちゃってる」
「よう、待たせたな、ちなみ……って、友子も一緒か」
「あ、別府くん! ちょうど良かった、ちなみんは君に任せた! お姫様は王子様のキス
で目覚めるものなのよ!」
「はぁ、何言ってんだお前――ってコラ、どこ行く気だっ、せめて説明していけ、おい!
 ……ったく、行っちまった。……まあいい、帰ろうぜ、ちなみ」
「ぅ…………たかし?」
 気づくと、いつの間にか目の前には、タカシがいた。私の大好きな、タカシが。
「ぅ、うあ、ぅわああああああん」
「ちょ、ちなみ!? おい、どうしたんだよ?」


「で、友子に、俺がちなみのことを迷惑がってるって言われたと」
 しばらくして、落ち着いた私は、タカシに連れられて近くの公園まで来て、ベンチに腰
掛けていた。
「……ぅ、うん」

738 名前:ほんわか名無しさん[sage] 投稿日:2012/08/29(水) 03:25:28.87 0
「そんくらいで泣くなよ。ホント、ちなみは、昔から泣き虫だよな」
「…………ぃ、じゃない」
「え?」
「……そんくらい、じゃないっ。……わた、私にとって……タカシに嫌われるのがどんな
に辛いか……タカシは、わかってない。……私、私は……」
「バーカ」「いたっ!?」
 私が、せっかく自分の気持を吐露していたというのに、タカシは私にデコピンを食らわ
せてきた。
「……ば、馬鹿じゃない。……馬鹿なのは、タカシ」
「ったく、ようやく、いつものちなみらしくなってきたな。……あのな、俺達は小さい頃
からずっと一緒にいるだろ? だからさ、今更、ちょっとくらいちなみに迷惑かけられた
って、嫌いになったりしないっての。そもそも迷惑だとも思ってないしな」
「……そ、そうなの?」
「ああ、そうだよ。だから、気にすんな。多分、友子も冗談のつもりで言ったんだろう
よ」
 ……そう言えば、あの後、何か言ってたような気がする……。
「……じゃ、じゃあ、今日も、い、一緒に帰る?」
「当たり前だろ。今日も明日も明後日も、一緒に学校行って、一緒に帰ってやるよ」
「……そ、そう。……なら、いい。……ね、ねえ、タカシ」

739 名前:最後[sage] 投稿日:2012/08/29(水) 03:26:03.79 0
「ん? なんだよ、ちなみ」
「……あの、わ、私、その……た、タカシのこと…………ぅ~、や、やっぱりなんでもな
いっ」
「はあ? なんだそりゃ」
「……う、うるさい馬鹿。……お、女の子には、いろいろあるの」
「そうっすか。なんだかわかんないけど、とりあえず帰ろうぜ」
「……ね、ねえ、タカシ」
「今度はなんだよ?」
「……あ、ありがとう。……その、いろいろ」
「別に礼を言われるようなことはやってないけどな」
「……いいの、それでも」
「そうっすか」
「……そうなの……ふふ……」

終われ
最終更新:2012年09月10日 22:45