752 名前:1/3[sage] 投稿日:2012/08/31(金) 02:49:01.78 0
- ツンデレがコミケで着るコスプレ衣装を悩んでいたら その8
『なっ……!?』
ドキリとして、私は思わず体を後ずらせる。核心を突いた質問に、私の心が動揺してド
キドキと心臓が激しく鼓動を打つ。咄嗟に否定したい気持ちが湧き上がるが、それを私は
グッと押さえ込んだ。
『私は……その……き、来て欲しいと言うほどではないがな。だが、まあその……委員長
からのたっての願いでもあるし、その……一人でこんな恥ずかしい格好のままで立ってい
るのも何だかバカらしいし……だからまあ、いないよりはマシ……ではあるかな……』
この期に及んでも素直に来て欲しいと言えない自分を呪いつつも、精一杯頑張って必要
性はアピールしたつもりだ。どうかこれで承知して欲しいと、私は切に願った。
「なるほど。まあ美琴が来るなとかどうでもいいとか言わないって事は、結構真剣に来て
欲しいと思ってるという事か」
納得してタカシが頷く。あっさりと心の内を暴露されて、私の動揺が一気にピークに達
した。
『なっ……なななななな、何を言ってるのだこのバカ!! 私の言う事を聞いていなかっ
たのか? 承知してくれればありがたいとは言ったが、だからと言ってそこまでどうして
もと言うほどでは――』
「さっきは何か、涙目で私を一人でコミケ会場に放り出すのか、とか泣き言を言ってたよ
うな気がしたけど。あれは何?」
『ううううう……』
やはりあの咄嗟の一言は失言だった。これでもう、タカシの言葉を否定できる材料なん
て、無いに等しくなってしまった。また、ここで無理矢理強硬に否定すると、却って墓穴
を掘ってしまいかねない。
『も、もういい。お前の好きなように考えておけばいい。それで、どうなんだ? 引き受
けてくれるのか、断るのか?』
ほぼ、敗北宣言とも取れる発言の後、私はタカシに決断を迫った。するとタカシは腕組
みをして、目を閉じ俯いて難しそうに唸る。
753 名前:2/3[sage] 投稿日:2012/08/31(金) 02:49:35.16 0
「うーん…… まあ、引き受けてもいいんだけどなあ…… やっぱりタダで一日潰すわけ
だし……それなりに報酬が欲しいんだよな。美琴だって、勉強見てもらったお礼に、引き
受けてる訳だし、俺にも何かあったっていいと思うんだけど」
『一応、入場料代わりのカタログ代は、委員長が払ってくれると言っていたぞ。あとの報
酬に関しては、委員長に聞け。私はあくまで、代理なんだからな』
素っ気無く返事をしつつ、このミッションに成功すれば、委員長から追加報酬でスイー
ツを奢って貰える事を思い出した。しかし、それはタカシには内緒にしておこう。もし知
れたら、余計に不公平感を増させるだけだし。
「……でも、俺に頼んでるのは美琴なんだし、そもそも美琴の為にやってあげてるんだか
ら、美琴から報酬を貰うのが筋だと思うんだけどな。どう思う?」
ちょっと考えてから、タカシが答えてきた。そして意見を聞かれ、私はグッと言葉に詰
まる。
『どう思うと言われても……その、確かに、元々は私が一人でコミケ会場でコスプレをし
ていて、万が一にも変な男性に寄って来られないようにとか、そんな話ではあったが、だ
が私はお前に頼む気ではなかったし……』
「でも、結果的には美琴からお願いしてるじゃん。それを引き受けるなら、やっぱり美琴
からだと思うんだよなあ」
タカシの言葉を聞きつつ、私は理解した。つまり、タカシは私から受け取りたい報酬が
何かあるのだろうと。答えるのはそれを聞いてからでも遅くはあるまいと思った。
『じゃあ試しに聞くがな。仮に私から報酬を受け取るとしたら、何が欲しいのだ。言って
みろ』
タカシの答えは、即答だった。
「ほむほむのコスプレした美琴の写真を撮らせて欲しい」
『何!?』
驚き、動揺して聞き返すと、タカシはやっぱりそれしかないといった表情で、何度も頷
いた。
「いや。やっぱり美琴には魔法少女のコスプレが良く似合うなと思ってさ。しかも普段の
美琴とは違って守ってあげたくなるあの可愛らしさ。絶対写真に撮って残しておきたいな
と思って」
754 名前:3/3[sage] 投稿日:2012/08/31(金) 02:50:06.37 0
『だっ……駄目だ駄目だ駄目だ!! 何で私が、お前の為にそんな恥ずかしい真似をしな
ければならないのだ!! 絶対に引き受けないぞ、そんな事は!!』
またさっきのあの恥ずかしい体験を、今度はカメラまで向けられてしなければならない
のかと、想像するだけで体がゾクゾクとしてしまう。
「何でって、コミケで衆人環視の中でコスプレしなくちゃいけない恥ずかしさを少しでも
紛らわせる為だろ? 俺がいれば彼氏持ちだと思われて、変な奴らは避けれるし」
『ぐぬぬぬぬぬ……』
歯軋りしつつ、私は頭を抱えた。確かにその通りなのだ。しかも、一度タカシが来てく
れるかもという可能性を考えてしまうと、もうタカシ無しにコミケでコスプレする事が考
えられなくなってしまっていた。
「もし、この条件が受け入れられないのだったら、俺がコミケに付き合う話も無しって事で」
袋小路に入り込んだ挙句、とうとう退路まで断たれてしまった。恥ずかしさで涙すら浮
かべつつ、半ば自棄気味に、私は承諾した。
『わ……分かった!! もう、お前の好きにしろ。私の恥ずかしい写真でも何でも撮れば
いい。その代わり……これは成功報酬だからな。全ては、コミケが終わってからだぞ。い
いな!!』
するとタカシは、嬉しそうに頷いた。
「ああ。これでやる気が出て来た。いや、美琴のあの姿をもう一度拝めるのか。楽しみだ
なあ」
その喜びように、恥ずかしさが頂点に達し、裏返しで私は思いっきり悪態を吐いた。
『勝手に楽しみにしていろ!! このド変態が!!』
この後、コミケ当日に委員長達の生コスプレ姿に思わず目を奪われたタカシに私が嫉妬
した話とか、タカシ単独の私のコスプレ撮影会とか、更には私の発言が仇となってエロギ
リギリの恥ずかしい写真まで要求されたりとか、その辺は割愛する事にする。
というか、話せるわけ無いだろうバカ!!
以上!!
最終更新:2012年09月10日 22:46