12 名前:1/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:46:10.27 0
『なっ……!? 何でそんな、その……兄さんとデートみたいなことしなくちゃいけない
んですかっ!!』
「いや。嫌ならいいけどさ。俺も元々用事ない訳じゃないし。もう帰るなら駅まで送るか?
それともそれも必要ない?」
『な、何で来たばかりで追い出そうとするんですか!! 誰も、そんな来たばかりで帰り
たいなんて言ってもいないのに……』
「別に帰って欲しい訳じゃないさ。別に、気の済むまで部屋にいてくれたっていいし。た
だ、あんま遅くなるとお母さんとか心配するとは思うけど」
『そ、そこまで居座る気もありませんっ!! 思ったほど散らかってはいませんでしたけ
ど、それでもどことなくムサい感じがして嫌なんですよね。兄さんの部屋って』
「まあ、男の部屋だからな。で、どうする? 俺は敬子に合わせるけどさ」
『も、もう兄さんに任せます。兄さんが都内を案内したいって言うなら、付き合ってあげ
なくもないです』
「なるほど。真っ先にそれが口に出るって事は、やっぱり出かけたいって事なんだな。全
く、お前から希望聞き出すのも苦労するぜ」
『ちっ……違いますってば!! 私が行きたいんじゃなくて、兄さんが行きたそうだった
から、仕方なく付き合ってあげてもいいかなって思っただけですし、そもそも最初は兄さ
んが提案した事じゃないですか!! 何でそれが私が行きたがってるみたいになってるん
ですか!! 意味が分かりません!!』
「分かった。謝るから興奮すんなって。ちょっと待ってろ。友達に電話して、約束キャン
セルして貰うから」
プルルルル……プルルルル……
「あ、もしもし山田……って、何でと……お前が出てんだよ?」
『(電話の人……誰? 何か声が甲高く聞こえるけど……)』
「何? 山田の奴まだ寝てんの? いや、勝手に帰ったって……だって、起こしても起き
なかったから。ちゃんとメモは残したじゃん。ああ、だからゴメンって」
『(何か女の人みたい…… それも何か、やたら親しげで……)』
13 名前:2/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:46:42.85 0
「それでさ。今日、遊びに行くのさ。悪いけど用事が出来たから……何でって、急に実家
から妹が出て来たんだよ。それで、一日どっか観光でもするかって……」
『(まさか……兄さんの彼女って訳じゃないと思うけど…… でも、どんな関係なんだろう……
違うって思ってても……何でこんな、気になるんだろう……)』
「違うよ。そんなんじゃねーって。知ってるくせにからかうなよ。ホントだってば。ああ、
だからみんなに宜しく言っといてくれって。それじゃな」
『兄さん』
「ん? ああ。ちゃんと時間空けたからさ。少し休んだら出掛けようぜ。どこ行く?」
『その前に、一つ聞いていいですか?』
「ああ。別にいいけど、何?」
『今の電話。相手の人、女性でしたよね?』
「へ……? い、いやその……友達だって。マジで」
『何で隠そうとするんですか。妹相手に隠す必要もないと思いますけど。相手の人の声が
大きくて、電話から声が漏れ出てましたから』
「だって、何か昔っからお前、女の子がらみの話とかだと、やたら不機嫌だったりするじゃ
ん。だからまた怒るのかと思ってさ」
『べ、別にその……正直に言ってくれれば怒りませんてば。だから言って下さい。今の電
話の女性と、どういう関係なんですか?』
「だから言ったろ? 友達だって。大学のサークルで一緒のさ。性別言わなかっただけで、
それは嘘じゃない。あと、ついでに言えば、昨夜泊まらせて貰った友達の山田って奴の彼
女でさ。昨夜一緒に飲んで、彼女は帰ったんだけど、今朝俺もいると思って来たらいなかっ
たから、それで色々聞かれたんだって」
『本当ですよね。それだけですね? 嘘偽りは……ないですよね?』
「ないってば。これで満足したか? それともやっぱり不満か?」
『いえ。単なる好奇心ですから、別に不満を持つとか有り得ませんし。まあ、まさか兄さ
んみたいなダメな人に彼女が出来るとも思ってませんけど』
14 名前:3/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:47:22.47 0
『(良かった…… 少なくとも、今はまだ…… ううん。断定は出来ないけど、でもさっき
の人は彼女じゃなくて…… 兄さんが家を出てから……ずっと不安だったから……)』
「ちぇっ。言ってろよ。自分だってまだ、彼氏無しなんだろ?」
『な……っ!? そ、そういう事言うと、本当に怒りますよ? わ、私は別にモテないわ
けじゃないんですから。むしろ私の方が理想高すぎじゃないかとか奥手過ぎとか、散々か
らかわれてる方なんですから』
「わ、分かったから落ち着け。で、出かける事が決まった訳だけど、どこにする?」
『に、兄さんが決めて下さい。私はまさかそんな兄さんとデ……出掛けるなんて考えてま
せんでしたから、急に言われても思いつきませんし』
「そうだな……じゃあ、ソラマチとか行くか? ちょっと遠いけど、新名所だし。あとは
お台場か、近場で済ませるならサンシャインって手もあるけど。そっちの方が景色楽しん
だりとかは出来るな。あとは飯食って、ショッピング街回ったり……台場なら、ヴィーナ
スフォートとか。お前、あんまりオシャレな店回ったりしないだろ。たまにはいいんじゃね?」
『し、失礼な事言わないで下さい!! そりゃ、中学の時までは全然オシャレとか、興味
ありませんでしたけど、今はそれなりに考えてるんですから。今日だって――って、べべ
べべべ、別に兄さんに会うからオシャレした訳じゃなくて、遠出するんだから、普通に女
の子の嗜みとしてオシャレしただけで、本当に、兄さんなんかの為じゃないんですから!!』
「はいはい。その口ぶりも久しぶりで懐かしいよ。お前の性格は十分分かってるから、心
配すんなって。勘違いなんてしないから」
『わ……分かっていれば、その……問題ないですけど……』
『(どっちなんだろう……? 言葉どおりの意味なのか……それとも……裏の意味まで知
られてるんだとしたら……私……)』
「ま、お前もせっかくの休みを親に使われただけじゃ可哀想だからな。今日は遠慮せずに
何でも俺にねだれ。ちょうど、夏に稼いだバイト代の余りでまだ少しは余裕あるからさ」
『無理しないで下さいよ、兄さん。妹の前でカッコ付けようとして余分な出費した挙句、
お母さんに仕送り泣き付いたなんて事になったら、私もバツが悪いですし』
15 名前:4/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:48:04.28 0
「大丈夫だって。銀行の残高見て、ちゃんと使える分だけ下して来てあるからさ。お前は
何の心配もせずに、俺に頼っていればいいんだよ」
『全く……たまに妹の前で兄らしい事出来るからって偉そうに……って、ちょっと待って
下さい。今、何て言いました?』
「へ? いや。だから今日は何の心配もしなくていいぞって」
『その前です。銀行が何とかって』
「ああ。だから、ちゃんと使える分だけ下して来たから……って、やべっ」
『何だかまるで、私が来る事を予期していて下して来たみたいな口ぶりでしたね。そして
その態度。兄さん。私に何か隠していることがあるでしょう?』
「い、いやその……下して来たってのはさ。昨日、友達と飲んで金使ったし、週末は何か
と物入りだからって、別にお前の為に下ろしてきたわけじゃなくて……」
『私みたいなしゃべり方を真似しないで下さい。正直に言わないと、お母さんに兄さんは
仕送りの大半をエッチな物に注ぎ込んでるって嘘言って仕送り半減させますよ? 私の報
告と兄さんの弁解のどっちをお母さんが信じてくれると思いますか? あと、私の友達を
通じて兄さんの地元の友達にもその噂を流しますから』
「お前、人を脅すにしたって、嘘の情報を流すのは止めろよ。本気でお母さんが信じたら
どうすんだ? 俺、干上がるかも知れんぞ」
『だったら、正直に私に話して下さい。兄さん。私が来るのを知っていたんですか?』
「う…… えーと……まぁ……つっても、知ったの今朝なんだけど」
『一体どうやって? 誰が知らせたんですか? 教えて下さい兄さん。さもないと……』
「わ、分かった!! 言うから、殺意の篭った目で俺に迫るなって!!」
『早く教えて下さい。でないと私……自分が抑えられないかもしれませんよ……』
「い、いやだからさ…… そんなの決まってるだろ? お、お母さんからだって。つか、
他に誰がいるんだよ?」
『他にって、ゆーぽんとか英子ちゃんとか、兄さんも一応顔見知りじゃないですか。私が
今日、東京に行ったって知れば、勘付いてメール送るかもって……で、お母さんですか!?』
16 名前:5/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:48:40.80 0
「ああ。友達のトコで寝てたら、朝一で電話があってさ。敬子が今日、そっちに行くから
相手してやってくれって。だから取るものもとりあえず帰って来たら、もう玄関先にいたからさ……」
『ちょっと待って下さい。他には何か言ってませんでしたか? 洗いざらい白状して下さ
い。でないと疑心暗鬼で兄さんを殺してしまいそうです』
「ぎ、疑心暗鬼で人を殺すな!! しまったな……お母さんからは絶対に言うなって言わ
れてたんだけど……」
『ダメです!! 絶対に言わないと、私が許しません!!』
「いやその……だから、夏休みに一度も顔出さなかったから、敬子が寂しさのあまり超不
機嫌になってて困ったから、そっちに行くように仕向けたんで、あと宜しくって」
『誰が寂しがってるって言うんですかーっ!! あああああ……そ、それじゃあ私がここ
に来た理由ってのは……も、もしかして……』
「ああ。それは敬子の事だから、多分私から頼まれたって言うだろうけど、適当に合わせ
てあげてくれって。えーと……本当にお兄ちゃんっ子で困ってるんだからって笑って……」
『おっ……おっ…………』
「け……敬子?」
『お母さんのバカアアアアアアッ!!!!』
「どわっ!?」
『あああああ……もうっ!!もうっ!! 当の本人に何てこと言うのよっ!! ヤダヤダ
ヤダッ!! 恥ずかしくて死にたいっ!!』
「落ち着けって。敬子。まずは静かにしろ。隣近所から苦情が来るから」
『これが落ち着いていられますかっ!! 親に自分の恥部を曝け出されてまともな神経で
いられる訳ないでしょう? こっち見ないで下さい兄さん。私……今、兄さんに見せられ
る顔してませんから!!』
「大丈夫だって。敬子」
ギュッ……
『ふぇっ!? に……兄さん?』
「悪かったな。夏休みに家に帰らずに寂しい想いをさせてさ」
『そ……そんにゃっ……わ、私は別に……さ……寂しくなんて……』
17 名前:6/6[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 00:50:01.37 0
「ああ、ゴメン。そうだったな。でも、不機嫌にさせたのは事実なんだし、今日はその埋
め合わせに、散々俺に甘えていいんだからな。今日は、敬子の物になってやるから、自由
に振り回してくれ」
『わっ……私の物っ……ですかっ? ににににに……兄さんが……?』
「ああ。だから欲しい物ねだろうが、八つ当たりに暴力振るおうが、好きにして構わないぞ」
『……ほ、本当ですよね? その言葉に嘘偽りはありませんよね?』
「ああ。誰が、可愛い妹を前にして嘘なんてつくかよ。本当の本当だから、信じていいぞ」
『……じゃ……じゃあ……早速……』
ギュッ……
「何だ。甘えたかったのか? にしても、お前にしては珍しいよな。そういう態度見せる
事自体が」
『……こ、これはその……甘えたいんじゃなくて、単に興奮した心を落ち着かせたいだけ
です。黙ってて下さい兄さんは。落ち着いたら……離しますから……』
「ああ。わかった」
『覚悟して下さいよ? 今日は一日……兄さんを離しませんからね。疲れたとか、音を上
げたって……絶対に許さないんですから……』
終わり
最終更新:2012年09月10日 23:01