15 名前:1/2[] 投稿日:2012/10/20(土) 19:26:25.04 ID:nNAylZhpO [3/20]
こういうタイプのツンデレはいかがだろうかというお題ネタ
- うちの嫁は旧華族の末裔だとかいう立派な家柄で、とても古風な女だ。
- 外を歩けば俺の三歩後ろを行き、風呂に入れば迷わず俺の背中を流し、頼み事をすれば三つ指ついてかしこまるという徹底ぶりである。
- そんな嫁と見合い結婚して半年、二人の生活に慣れてはきたものの、嫁の態度によそよそしさを感じて違和感が拭えない俺がいた。
- 普通の家庭のようにしようと提案しても、「このように教え習った物を今さら変えようがない」と、取りつく島もない。
- そこで一計を案じた俺は、敢えて妻の望むような亭主関白を装い、接してみることにした。
- 妻が俺のために何かをしても礼なぞ言わず、常に胸を張りふんぞり返り、胸が痛むのを耐えて小言も言ったりした。
- 最初は無理をしていたのがありありと伝わったのか、微笑とも苦笑ともつかない顔で俺を見守っていた嫁であった。
- しかし、「お前の家柄に釣り合うような男になりたいから」という旨の発言をすると、妻もどうやら俺が本気であると察したらしい。
- もちろんそんなことは毛ほども思っていないのだが、その日から妻は、やけにそわそわと落ち着かなくなったような気がした。
16 名前:2/2[] 投稿日:2012/10/20(土) 19:28:36.30 ID:nNAylZhpO [4/20]
- 普段ならあり得ないような単純なポカをし、それを俺に怒鳴られる。そんなことを繰り返したある日、ついに妻が顔を手で覆い、泣き出してしまったのだ。
- 焦ったのは俺の方である。まさか泣くまで妻を追い詰めてしまうとは、思っても見なかった。
- 必死に取り繕おうとする俺に妻はすがり、「どれだけ情けなくてもいい、前の旦那様に戻って欲しい」と懇願してきた。
- 己の悪戯心が度を越していたのを悟った俺は、妻に土下座して謝り、今までの行動は全くもって本気ではないのだと伝えた。
- 今となっては稀有である大和撫子の妻に、少しだけ普通の家族のようにふるまって欲しかっただけなのだ、と。
- 妻は長い間黙っていたが、やがてほっと息を吐くと、ただ一言「良かった……」と呟いて、柔らかな笑みを浮かべた。
- その時の笑顔は、結婚して半年経った今までの中でも、間違いなく一番だったに違いない。
- そして、互いに互いの失策を謝りあうという儀礼を終えた後、俺と妻は、深く、深く、相手をもう離すまいとするように、抱きしめあった。
- それから妻は、わずかずつではあるが、男尊女卑の教えを乗り越えつつあるようである。
- 旦那であるところの俺としては、そんな妻の変化を、微笑ましく眺める毎日だ。
- そうしてまた一つ、この世に幸せな家庭が生まれたという、これはただそれだけの、お話でしたとさ―――。
最終更新:2012年11月12日 23:43