20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 22:26:51.04 ID:1ncPYJhZ0 [1/5]
十一月のつごもりの朝。
今日は大学は学園祭期間ということで終日休講。サークルやその他の活動に縁遠い僕はすっかり日も昇りきったころに目を覚ました。
ここのところは同じような朝を何度も繰り返している気がする。いや、大学に入学してからずっとかもしれない。
仮面浪人をすると決めて東京に出てきた、この春からずっと。
今日は終わらない。明日に何も期待しないから。今日を憶えていたいと思わないから。
東京に出てくる前。故郷にいたときは毎日明日がやってきた。故郷にいたころは明日が楽しみだったから。
隣にかなみがいたから。
僕はかなみと恋仲になったことはなかった。
でも、小さな町だったし幼い時分からずっと一緒でそれがあたりまえだった。
同じようなものを食べて、同じような空気を吸って、同じような景色を見て、思い出もほとんど共有してきた。
うんざりするほど喧嘩もした。同じだけ、馬鹿みたいに笑った。
かなみは僕の一部で、きっと僕はかなみの一部だった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 22:27:51.98 ID:1ncPYJhZ0 [2/5]
成長するにしたがって、かなみはどんどん綺麗になっていった。幼いころには短く揃えていた髪はいつの間にか背中にかかるほどになって、かなみはいつの間にか本当に綺麗なひとりの女の子になっていた。
それでも僕に突っかかってくる男勝りな性格は変わらなくて、やっぱりかなみだったのだけれど、ときおり機微を察してかける鈴の音のような声に僕の拍動は速くなった。
いつのまにか、僕はかなみに恋をしていた。
しかし、いざそう認識したところで僕には何もできなかった。僕は気の合う友人としての接し方しかかなみとの接し方を知らなかった。
新しい関係を作るにはあまりに積み上げてきた関係が重すぎるし、何よりかなみとの関係が崩れるということはあまりに恐ろしいことだった。かなみを失うことは自分を失うことですらあると思えた。
だから、僕はかなみをそれまで通りに悪友だと、親友だと思おうと決心した。
そして僕はくり返しかなみに確認するように言ったのだ。
「なあ、悪友」と。
かなみはいつもむすっとしてこう返してきた
「なんだよ、悪友」と。
こんな芝居がかったくだらない確認を何度も、何度も繰り返した。
それが僕の精一杯だった。

高校三年生の春、僕は東京での仮面浪人を、かなみは地方の国立大学への進学を決めた。
それぐらいの時期からかなみは僕を避けるようになった。会話も、挨拶さえなくなった。
僕が東京へ発つ日もかなみは会いに来てはくれなかった。


何か書ける気がしたんだ……モノローグで力尽きた……
最終更新:2012年12月05日 23:09