129 名前:1/4[sage] 投稿日:2012/09/22(土) 09:27:05.49 0
『キャッ!! つめたっ!!』
服を脱ぎ捨てると、彼女はそのまま浅瀬に足をそっと踏み入れ、その水の冷たさに悲鳴
を上げた。一度上げた足を、再び水の中に差し入れる。
『でも、気持ち良い。風も涼しいし』
それから、顔を上げて川岸にビニールシートを広げている彼に向けて手を振った。
『ほら!! アンタも早く来なさいよね!!』
すると彼が大きく手を振り返すのが見えた。彼女は頷くと、さらに川の中へと足を進め
る。といっても、深さはふくらはぎの中ほどまでしかない。そこで彼女はしゃがみ込み、
手を水に浸けて川の流れを感じていた。
「全く、人に準備全部させといて、自分だけちゃっかり先に川に入ってるとか、いい気な
もんだよな」
ブツブツと文句を言いながら、彼もそっと川の流れにそっと足を浸す。その途端、そろ
そろと彼に近付いていた彼女が、勢い良く立ち上がると同時に水の中に入れていた手を、
彼の方に向けて跳ね上げた。
『それっ!!』
当然、跳ね上がった水は彼に思いっきり掛かっていく。
「どわっ!? つめたっ!!」
思わず悲鳴を上げて飛び退り防御する姿勢を取る彼に、彼女は笑い転げた。
『あっははは!! 何、それ。おかしー』
「お前、何すんだよ!! ふざけんなよな」
文句を言う彼に、彼女はさらに不敵な笑みを浮かべてみせた。
『だってこんなの、水遊びの時はお約束じゃない。ほらほら』
バシャバシャと水を跳ね上げ、彼に更に水を掛け続ける。
「ちょっ!? 止めろよな」
『逃げたってダメだからね。ほれほれ』
横に逃げる彼を追って、彼女も向きを変える。しかし、それが逃げる為ではなく反撃の
態勢を整える為だと知った時は、既に彼女に向けて水が跳ね上がっていた。
『きゃあっ!! ん、もう!! 何すんのよ!!』
130 名前:2/4[sage] 投稿日:2012/09/22(土) 09:27:36.89 0
「うるせーな。人に散々好き放題に水掛けといてよ。ほれ、お返しだ!!」
更に水が跳ね上がり、彼女の全身を濡らす。しかし、勝負魂に火が点いた彼女は、逃げ
ようとはせず、横に回って逆に彼に水を掛ける。
『負けるもんですか!! こんのおーっ!!』
「やるかコラ。ちくしょう!!」
お互い叫び声を上げて水を掛け合い、被害の少ないようにポジションを変える。すると、
動いているうちに彼女の足が、ぬめった石に足を取られた。
『えっ!?』
するとそこに、容赦無い彼の攻撃が襲い掛かり、彼女はバランスを崩し、後ろ向きに倒れた。
『きゃっ……あああ~っ!!』
バッシャアッと盛大に水しぶきを上げて、彼女は尻餅を突いた。
『あいったあ~……』
打ったのがお尻だけで、しかも水の抵抗で勢いが削がれたとはいえ、したたかに川底に
ぶつけた尻を、彼女は片手で押さえて呻いた。ちょっと目尻から涙が出る。そこに、心配
した彼が慌てて近寄って来た。
「お、おい。大丈夫かよ?」
川の中に座り込んだまま、彼女は顔を上げて、様子を窺う彼を睨み付けた。
『大丈夫な訳ないでしょっ!! すっごく痛かったんだから。人がバランス崩した時に水
掛けるなんて、危ないじゃないのよ、このバカ!!』
歯をむいていきり立つ彼女に、彼は申し訳無さそうに頭を下げた。
「いや、ホントにゴメン。調子に乗って、状況が見えてなかったんだよ。ほれ、立てるか?」
差し出された手を取ろうかと一瞬手を差し出しかけて、彼女は腕を止めた。彼女の傍で
屈みこみ、手を差し出している彼は今、完全に無防備の状態だ。彼女は差し出された手を
取る代わりに、水の中に入れた手の平を上に向けると、彼の顔に向けて、片手で思いっき
り水を掛けた。
『隙ありっ!!』
掛け声と同時に彼の顔に水がビシャッと掛かり、彼は悲鳴を上げて仰け反った。
「うわっ!?」
131 名前:3/4[sage] 投稿日:2012/09/22(土) 09:28:09.58 0
その瞬間、バランスを崩し、彼も川の中に後ろ様に倒れて尻餅を突く。その様子に、彼
女はおかしくて大笑いした。
『やったあっ!! アッハハハハ!! ざまみろ、このバカ!! あたしに尻餅突かせた
から、バチが当たったのよ。あー、おかしっ……』
「くっそ……このヤロ……人が心配してやれば……」
バシャバシャと水の中でもがくように体を起こし、彼は彼女を睨み付けた。しかし、彼
女も強気に彼を睨み返す。
『何よ、やる気なの? いい加減敗北認めなさいよね。ヘタレのクセに頑張ったって無駄
なのに』
しかし、その挑発が却って彼を奮い立たせてしまう。思いの外素早く立ち上がると、彼
は彼女がまだ水から立ち上がれないうちに傍に寄って来てしまう。
「全く、ふざけた女だよな、お前は。そういう奴にはキッチリとお仕置きしないとな」
ワザとらしく、柄の悪い口の利き方をする彼に、彼女は身構えつつ体を起こし、いつで
も立ち上がれるようにする。
『お仕置きって冗談じゃないわよ。変な事したら、ただじゃ済まないわよ』
冗談でのやり取りとはいえ、次の行動が見えない事に彼女の体が緊張する。身じろぎす
る彼女を見下ろして、彼がイヤらしく笑ってみせた。
「いやぁ。そもそも挑発してくるかなみが悪いんだからな。俺がヘタレじゃないってトコ、
見せてやるよ」
同時に、その場でしゃがみ込むように姿勢を低くすると、前のめりに体重を掛けて、彼
女の肩に手を掛ける。その重みで、彼女の体が川底に押さえつけられる。
『ちょ、ちょっと!? 何すんのよ?』
思いもかけず乱暴な扱いに、彼女は憤慨して叫んだ。痛みは無いが、動揺で体が震え、
心臓が激しく鼓動を繰り返す。しかし、彼女の抗議を歯牙にもかけない様子で、彼はニヤッ
と笑って見せた。
「何するって、こうするのさ」
思わず息を飲み、彼女は目を閉じた。しかし、次の瞬間、胸元にヒヤッとしたものを感
じて目を開ける。すると彼が、川の水を掬ってバシャバシャと彼女の胸元を狙って水を掛
けていた。
132 名前:4/4[sage] 投稿日:2012/09/22(土) 09:31:55.04 0
『にゃあっ!! な、何すんのよこのバカ!! 冷たいじゃない。しかもどこ狙ってんの
よ!! このバカ!! スケベ変態痴漢レイプ魔!!』
押さえつけられていた手はいつの間にか離れていたので、彼女は体を起こし、片手で胸
を守る。すると今度は空いていた首元やおへそを狙われ、そこをガードするとまた胸を狙
われる。胸の谷間の間にまで水か染みこんでいき、冷たさとこそばゆさを同時に感じさせ
て彼女は身悶えた。
『ちょっと、いい加減に止めなさいよね。この……』
片腕のみで何とか防ぎつつ、もう片方の手で水を掻いて彼に浴びせ掛ける。しかし、倒
れこんだままの姿勢だと、圧倒的に上になっている彼の方が有利だった。
「いやあ。かなみがごめんなさいって謝れば、許してあげない事もないけどな。ほれほれ」
『きゃんっ!! やだそこ止めてってば!!』
どうやってか、皮膚の敏感な所を集中して襲う彼を振り払おうともがくが、なかなか足
元の滑る川の中では思うように動けない。
「ほれほれ。もうごめんなさいしちまえよ。最初に水掛けて調子に乗って悪かったですっ
て言えば、俺も紳士だし、許してやるからさ」
明らかに有利な状況に調子に乗っている彼を睨み付けて、彼女は奥歯を噛み締めた。そ
れまで体を庇っていた腕も外し、無防備な体勢になる。水が掛かり放題に掛かるが、それ
をグッと堪えた。
「お? ついに降参か? ちゃんと謝罪を口にするまでは止めないからな」
その途端、彼女を縛っていた何かが、プチンと切れたような感覚がした。
『……誰が……謝るかっての。このバカあっ!!』
両手で水を跳ね上げ、彼にぶっ掛けると同時に、彼女は体を起こした。
『こうなったら、とことんまでやったげるわ。ほら、かかってきなさいよね!!』
「この野郎。ホント素直じゃねーな。クソッ。もうこうなったら本気で容赦しないからな」
燦々と降り注ぐ日差しが水面を照り返すなか、跳ね上げる飛沫と悲鳴だけが、木々に覆
われた渓流にこだまし続けた。
続く
最終更新:2013年04月18日 14:00