151 名前:1/4[sage] 投稿日:2012/09/24(月) 03:14:41.89 0
『タカシ様。アイスコーヒーを淹れましたので、こちらに置いておきますね。どうぞ、ぬ
るくなる前にお召し上がりください』
「ああ、ありがとう。めいめい」
『めいめい!?』
ガッ!!
『あいたっ!! いた~っ……』
「っと、どうしたんだよ? 大丈夫か、めいめい。いつも思うけど、考え事したり動揺し
たりした時は、よく失敗するから気をつけた方がいいよ」
『お、大きなお世話です!! 大体、今のはタカシ様が変な呼び方で私を呼ぶからこんな
事になったんじゃないですか!! 足の指骨折したら、責任取って下さいよ? あと、何
ですか、めいめいって!!』
「ああ、怪我の方はちゃんと労災下りるから、心配しないでも大丈夫だよ。休業補償もちゃ
んと出してあげるからね」
『お金の心配している訳じゃありませんっ!! それより、最後の質問にちゃんと答えて
下さい!!』
「めいめいって呼び方の事? ああ。それは何となく、芽衣の事をあだ名で呼んでみたい
なって思ったから」
『何となくじゃ理由になりませんっ!! 一体何だって、そんな変なあだ名で呼ぼうなん
て思いついたんですかっ!!』
「いや、可愛いかなって思って」
『か、可愛いからって……って、私は仕事中なんですよ? いくらタカシ様が休日だとは
言っても、人をダシに暇つぶしの道具にしないでください。メイドだからと言って、そこ
までは付き合い切れません』
「別に暇つぶしの道具にしようとか思ってはいないよ。ただ、アニメや漫画でもヒロイン
をあだ名で呼ぶ事は多いし、アイドルの子達もあだ名付けられて喜んだり、自分で呼び名
考えてファンの子に呼んで貰ったりしてるじゃん。そういうの見てたら、女の子とあだ名っ
てやっぱりいいなあって思って」
152 名前:2/4[sage] 投稿日:2012/09/24(月) 03:15:13.23 0
『別にメイドに可愛らしさとか必要ありませんっ!! 使用人なんですから、忠実に主人
の為に働く事が出来れば、それで十分なんです。そういうのをメイドに求めたければ、メ
イド喫茶にでも行って下さい』
「そういうのをメイドに求めてる訳じゃないよ。俺は、芽衣に求めてるんだ」
『わっ……わたわたわた……私に求めてるって…… だだだだだ、だからですね、タカシ
様っ!! わわ、私はメイドなんですよ? それ以上でも以下でも無いんです。だから、
そういう事を私に求めるのがそもそも間違いだって、お気付き下さい!!』
「でも、芽衣はずっと専属メイドとして高校入学の時から一緒に暮らし始めて、もう5年
くらいだろ? 使用人って言っても、家族みたいなものだし。同い年の女の子で、幼馴染
でもあるんだから、ただのメイドと同列には扱えないよ」
『そ、それでもですっ!! 子供の時の話はさておき、専属であろうが何であろうが主人
と使用人の関係である事は間違いありません。ですから、あだ名のように、親しみを込め
た呼び方で呼ぶ必要はないんです。呼び捨てにしていただければ、それで結構です』
「まあ、そう固い事言うなって。めいめいは真面目すぎるんだよ。たまには、そう。気分
転換にもなるしさ。めいめいの頭の固さも、ちょっとは和らぐんじゃないか?」
『だからその呼び方止めて下さい!! あと、今、頭が固いっておっしゃいましたよね?
今のはどう考えても、私をバカにして言ったようにしか聞こえませんでしたが?』
「いやいや。バカにするとかしないとかじゃなくて、事実を正確に伝えただけだって。で
ないと、あだ名で呼んだ程度でムキになってそこまで怒鳴らないよ」
『そんな事ありません!! メイドがそんなふざけた呼び方で呼ばれたら、誰だって文句
言うに決まってます』
「じゃあ、試してみようか?」
『試してみるって……って、どこに電話掛けようとなさっているんですか?』
「ああ、実家」
『実家って……ど、どういう事ですか? 一体、何をなさるおつもりなんですか?』
「ちょっと、黙ってて。マイクオンにしてあるから、芽衣も一緒に話せるからね。ああ、
繋がった」
[はい、もしもし。こちら、別府でございますが]
「ああ、その声は英子ちゃんか。タカシだけど」
153 名前:3/4[sage] 投稿日:2012/09/24(月) 03:15:44.69 0
[タカシ様? こちらにお電話されるなんて珍しいですね。旦那様や奥様には、直接携帯
に電話されるのに、いかがなさったんですか?]
「いや。ちょっとさ。ゆーぽんに変わってくれる?」
[ゆーぽん? ああ、悠ですね。少々お待ちいただけますでしょうか]
『ほら、やっぱり変な声してたじゃないですか』
「まあまあ、珍しい事には変わりないからね。それより、話はこれからだから」
【もしもし? 悠ですけど、あの……タカシ様が私に用事って一体何なんでしょうか?】
「ああ、久し振りだね。ゆーぽん」
【ゆーぽん!? どっ……どうしたんですかタカシ様。私の事いきなりあだ名で呼ばれる
なんて】
『ほら。やっぱり動揺してる。私と反応一緒じゃないですか』
「いや。そう呼んだ方が可愛いかなって思って。仲の良いメイド仲間にはそう呼ばれてる
みたいだしさ。嫌かな?」
【へっ……? い、いやその……嫌とか全然そんな……タカシ様にそう呼んでいただける
なんて、何かちょっと恐れ多い感じはしますけど……って、その呼び名って可愛いですか
ね?】
「ああ。ゆーぽんって呼んだ方が、可愛いし親しみも増すかなって思うんだけど、どう?」
【ど、どう?だなんて……もう、是非是非!! あの、タカシ様にそんな風に思っていた
だけるなんて、とても光栄です!! お仕事、これからも頑張りますから!!】
「ああ。今度実家に帰ったら、声掛けるからさ」
【よ、宜しくお願いします!! ね、ね、みんな!! タカシ様が私の事ゆーぽんって呼
んだ!! 何か可愛いし親しみやすいって!! やー、何かうれしーっ♪】
『ちょ、ちょっと悠さんっ!! 何喜んでるんですかっ!!』
【あれ? 今の声、芽衣ちゃん?】
「ああ。実は、今の話、傍で芽衣も聞いててさ……」
『芽衣ちゃん?じゃありませんっ!! 主人にあだ名で呼ばれて喜ぶメイドがどこにいま
すかっ!! いいですか? 主従関係にはですね。信頼関係は重要ですけど、必要以上の
親密さとか必要ないんです。ですから、あだ名で呼んで貰うなんてのは、越権行為という
か、メイドとしての分を超えているんですから、仮にご主人様がそう望んだとされても拒
否すべきです。分かりますか?』
154 名前:4/4[sage] 投稿日:2012/09/24(月) 03:17:34.25 0
【また芽衣ちゃんは堅い事を。ていうか、久し振りにおしゃべりするのにいきなりお説教っ
てなくない? ていうか、どういう事なんですか、タカシ様】
「ああ。実は芽衣の事をめいめいってあだ名で呼んだらめちゃくちゃ憤慨してさ。他のメ
イドだって同じだって言うから、とりあえず実家のメイドで一番あだ名の似合ってるゆー
ぽんに聞いてみようかと思って」
【いや、似合ってるなんてその……ありがとうございます!! ていうか、みんな。芽衣
ちゃんのこと、めいめいだってー】
エーヤダ、カワイイー!! メイサン、メイメイダッテー。キャーッ、ナンカイメージカワルーッ!!
『だから、そのめいめいって言うの止めて下さいってば!! タカシ様。何でみんなに広
めちゃうんですかっ!!』
「いや。だって反応見る為に電話したんだし」
【アッハハハ。ダメだよ、めいめい。ご主人様相手に怒ったりしたらさー。いーじゃん。
タカシ様に可愛いって言って貰えるなんてメイド冥利に尽きるじゃん】
『だから、めいめいって――』
「あーもしもし。そういう訳だから、悪かったな。仕事の邪魔しちゃってさ」
【いえいえ、タカシ様からのご質問でしたら、これも仕事のうちですから。めいめいがメ
イドの立場を盾にして固い事言うような事があったら、遠慮なく私でも他の皆でも言って
下さい。私達からもめいめいに言っておきますから】
「アハハ。心強いな。ありがとう、ゆーぽん」
【いえ、こちらこそありがとうございます。でも、その呼び名はあんまりおおやけでは使
わないで下さいね。めいめいより厳しいメイド長に聞かれたら、大変な事になりますから】
「分かってるよ。じゃあ、また今度お屋敷でね」
【はーい。それじゃあ失礼しまーす】
プツッ……
続く
最終更新:2013年04月18日 14:04