172 名前:1/5[sage] 投稿日:2012/09/27(木) 07:06:22.93 0
『……………………』
「いつまで、その場にへたり込んでるのさ。めいめい」
『だ……だって、有り得ないじゃないですかっ!! この展開で負けるなんてっ!!』
「いや。十分負けオーラ出してたから。そもそも、めいめいって絶対負けられない何かを
賭けた勝負の時ほど、グー出す確率が高くなるし」
『なっ……何ですかそれ? じゃあ、最初から私が何出すか知っててじゃんけん勝負に持
ち込んだって事ですか? ズルいです卑怯ですそんなの反則です!! じゃあ今の勝負は
無効じゃないですか』
「いや。過去の傾向からある程度の推測をしたってだけで、必ずしもめいめいがグー出す
なんて確信があった訳じゃないよ。まあ、でもじゃんけん直前の様子を見てたら、何かも
う緊張で顔が青くなったり赤くなったりしてるような感じだったからさ。これならイケる
かなとは思ったけど」
『うううううっ…… それでもやっぱりズルには違いありません。せめてやり直しを要求
します』
「却下。だって、めいめいも承知の上で挑んだ勝負なんだし、そもそもこのネタ晴らしっ
て何度か言ってるんだけど、その度に同じ事繰り返してるんだもの」
『う、嘘ですっ!! ご自身を正当化なさる為に、嘘をおっしゃってるんです!!』
「まあ、そう言って自分をごまかすのは勝手だけどね。でも、めいめいが負けた結果は変
わらないよ」
『そんなのダメですっ!! 大体やっぱり、私そんな……タカシ様をあだ名で呼ぶなんて
出来ませんっ!! 主人に対して失礼極まります』
「主人の言いつけに背く方が、メイドとして失格だと思うけどなあ。めいめい?」
『うぐぅ…… せ、せめてその呼び方は何とかなりませんか? さっきから呼ばれている
だけで虫酸が走るんですが……』
「他の呼び方って? めいぽんとかめいりんとか? やっぱりめいめいの方が合ってる気
がするなあ。めいめいはそっちの方がいい?」
『申し訳ありません。他の呼び方でもその……そんなに気持ち悪さは変わりありませんで
した……』
173 名前:2/5[sage] 投稿日:2012/09/27(木) 07:06:54.53 0
「じゃあ、やっぱりこのままでいいよね? めいめい」
『せめて、その最後に強調させるように言うのは止めて頂けないでしょうか……』
「ああ、ゴメンめいめい。だってさっきからさ。めいめい、って呼んだ時の恥ずかしそう
な仕草がとても可愛らしくてさ。つい反応見たくなっちゃうんだよね」
『かっ……可愛いだなんて言わないで下さいっ!! 女の子が誰だって可愛いって言われ
ただけで嬉しくなると思ったら大間違いなんですからねっ!!』
「そうかもね。でも、めいめいは嬉しそうだよ?」
『うっ、う……嬉しくなんてありませんっ!! タッ……タカシ様になんて、その……可
愛いって言われたからって、別に……』
「ところで、そろそろタカシ様って呼び方も何とかしないとね。あと、敬語もダメだし」
『そ、それは何とかならないでしょうか? 無理ですやっぱり絶対!!』
「何で? 昔は普通に呼んでたじゃん。タカちゃんタカちゃんってさ」
『だからっ!! 昔は関係ありませんっ!! 今はその……ずっと、タカシ様って呼ばせ
ていただいておりましたから、それがもう普通で……だから、敬称で呼ぶのが当たり前な
ので、他の呼び方など考え付きません……』
「たまには気分転換しようって話なのに、それじゃあ意味がないじゃないか。別にタカちゃ
んでいいと思うけど?」
『私がよくありませんっ!! せめてその……子供の頃の呼び名じゃなくて……別のあだ
名を考えさせてください』
「それは別にいいよ。でも、あまり長く時間掛けないでね。そうだね。制限時間は5分で。
それ超えたら、タカちゃんで決定だから」
『またそうやって強引にお決めになられてっ!! どうしてタカシ様はいつもいつも、私
の意志を尊重せずに勝手に物事を進めてしまわれるんですかっ!!』
「基本的にはめいめいに任せてるじゃない。ただ、めいめいはお遊びごとには弱いから、
俺がサポートしてあげてるだけで」
『それはいつもタカシ様が変なご提案をされる時だけですっ!! あと、こんなの私にとっ
ては遊びじゃありません。ただの罰ゲームです』
「頭を柔らかくして、楽しめば遊びになるよ。はい、それじゃあ今からね。スタート」
174 名前:3/5[sage] 投稿日:2012/09/27(木) 07:07:25.76 0
『(全く、タカシ様と来たら…… ああ、でもあだ名かあ……タカシ様の事をどう呼べば……
確かに昔はタカちゃんって呼んでたけど、でもあの頃の……ただ親しかっただけの間柄の
呼び名で呼んだりしたら、甘えちゃうかも……じゃなくて、絶対甘えちゃう…… じゃあ、
ターくん、とかタッくん……とか? そ、それも気恥ずかし過ぎる……どうしよう……)』
「2分30秒経過。あと半分ね」
『(う、嘘? もうそんなに……? やだもう、このままじゃタカちゃんに決定しちゃう。
それだけは、ダメ…… あああ……せめて、ちゃんづけじゃなくて……う……そ、それな
らまだ……ああ、でも口に出せるかなあ……)』
「あと30秒」
『(ええい。もう、後はどうにでもなれっ!!)』
『きっ……決めましたっ!!』
「お? 残り10秒か。ギリギリだけど、めいめいにしては頑張ったね。で、俺の事は何て
呼んでくれるの?」
『え、えっと……その……』
「いいよ。遠慮せずに。今日、寝るまではさ。主従関係じゃなくて、昔仲良かっただけの
頃の関係だと思って」
『そ、それはダメです!! けど……ま、負けてしまった以上は仕方ありませんから、タ
カシ様……じゃなくて、その……タ……タカくんって……お呼びさせて……頂きます……』
「タカくんに決めたんだ。子供の頃よりちょっと大人向けにしたって感じかな? でもい
いよ、うん。新鮮で、嬉しい」
『よ……喜ばないで下さいっ!! 私はその……いっぱいいっぱいなんですから!!』
「めいめい、敬語」
『う……や、やっぱりその……ダメ、ですか? 見逃して貰えませんか?』
「ダメ。俺と、あと別府家関係以外の人には敬語使ってないじゃない。それと同じように
話せばいいだけの簡単な話なのに」
『そ、それが難しいから言ってるんじゃないですかっ!! ううううう……』
「じゃあ、敬語使ったらペナルティにしようか? 敬語一回しゃべったら、俺のほっぺに
キスするとか」
175 名前:4/5[sage] 投稿日:2012/09/27(木) 07:07:58.52 0
『なっ!!!! そそそそそそそ、そんなの絶対にダメダメダメ、ダメです!! そんな、
女の子にそんな事強要させるなんて、そんなのセクハラです。犯罪です。絶対に却下で
す!!』
「分かってるよ。今のは言ってみただけだから、まさかめいめいが、うんって言うとは思っ
てないしね。ただ反応が見たかっただけで」
『うっ…… ほっ……本当に意地悪なんですからっ!! だ、大っ嫌いです。タ……いえ、
あの……そういう所が……』
「誰のことなのかな? 大っ嫌いって」
『いえ、その……あの……し、失言でした。お許しください……』
「怒ってるんじゃないよ。ただ、名前言いかけて止めたでしょ? だから、ちゃんと名前
言ってもらわないとダメだよって」
『やっぱり、本当に意地悪ですっ!! だから、その……あの……タ……タカくんの……
そういう所が……ですっ!!』
「アハハ。ゴメンゴメン。めいめいが本当に可愛いからさ。ついつい言ってみたくなるん
だよね。いや、本当に反省してるから」
『本当ですよね? いつも反省してるとか言って、同じこと繰り返すんですから』
「大丈夫大丈夫。じゃあ、今度は真面目に言うよ。敬語一回ごとに、めいめいの耳に一回、
息を吹き掛けるっていうのは、どう?」
『や、やっぱりセクハラじゃないですかっ!! 全然反省されてませんよね、それ?』
「いや。敏感な所を弄るってのは罰ゲームの定番だし。別に足の裏や脇をくすぐるのでも
いいけど、多分そっちの方が時間長いだけ、耐えるのも辛いと思うけど?」
『……分かりました。じゃあ、タカシ様……タカくんの言うとおりでいいです……』
「理解が早いのはいいね。はい、じゃあ今からスタート」
『そ、そんなっ……まだ心の準備も出来てないのに急にだなんて無理で――っ!!』
「ギリギリ踏み止まったね。いきなり罰ゲームかと思ったけど」
『むっ…… その意地悪な笑顔、何かムカつきま――ムカつくん……だけど……』
「いやいや。別に期待なんてしてないよ。それより、めいめいも今日はもう仕事終わった
んだから、着替えて来なよ。メイド服より私服の方が、言い間違いもしにくいでしょ?」
『え? う、うん。じゃあ、お言葉に甘えてそうさ……するけど……』
176 名前:5/5[sage] 投稿日:2012/09/27(木) 07:15:43.98 0
「いいよ、その調子。出来れば、可愛い服がいいかな」
『そ、そんなのありま……持ってないから。ど、どんな服でも、その……文句付けないでよ?』
「分かってるよ。じゃ」
『え……と、どうしたの? 立ち上がって。あれ? アイス……コーヒー?』
「うん。氷だけ入れてこようと思って。めいめいとあだ名の件で色々やってたら、すっか
り忘れててさ。ぬるくなっちゃったから」
『そ、そんなの……タ、タカくんがやらなくていいよ。わ、私が、その……ちゃんと作り
直してくるから』
「いいよ。めいめいは着替えてきて。今日はもうお仕事終わったんだし、気にしないでも。
それに、せっかくめいめいが淹れてくれたのを飲まないなんてもったいないしね。大丈夫。
多少薄まってるだけだし」
『そ、それじゃあ、氷だけでも私が入れて来るから。そうしないと、やっぱり落ち着かな
いし……だから、タカくんは、大人しく待ってて……』
「分かったよ。めいめいがそこまでしてくれるって言うなら、お願いするよ」
『うん。じゃあ……すぐに戻って来るから。着替えは、それからにするね……』
『(ハァ…… やっぱり慣れないなあ……敬語しゃべらないなんて…… でも、使ったら罰
として耳元フーッてされちゃうし、そうしたら、またタカシ様にからかわれちゃうから、
気をしっかり持たないと……)』
続く
最終更新:2013年04月18日 14:06