181 名前:1/5[sage] 投稿日:2012/09/28(金) 07:14:12.68 0
『お、お待たせ……』
「へえ、いいね。何か家でめいめいの私服姿って新鮮でさ。なかなか似合ってるけど、何
でワンピースにしたの?」
『そ、それは……やっぱり、家だとその……いつものメイド服に近い方が落ち着き……う
うん。落ち着くかなって。だから……着たんだけど、ダ……ダメ、かな?』
「いや、いいよ。それにちょっとオシャレだし。めいめいって、大学行く時はもっと地味
めな服だよね?」
『が、学校の時はその……機能的であれば十分だし、それに、地味で目立たないようにし
ておかないと、仕事に差し障りが出るから……』
「もうちょっと、友達とか作った方がいいと思うけどな。めいめいも、今だけなんだから、
女子大生ってのを楽しまないとね」
『それはもう、耳にタコが出来るほど聞き……聞いたから。けど、それは私の勝手だと……
思うし……』
「ま、確かに今、その話で時間潰すのはもったいないな。それよりさ。今日の夕食は何に
しようか? 外食にする? それともデリバリー頼む?」
『あの……それなんだけど……タカくん。私、考えたんだけどさ……』
「ん? 何、めいめい?」
『うん……だから、その……やっぱり、私がその……料理作ったり、お風呂沸かしたりし
たら、ダメかなって思って……?』
「え? だって、せっかく有給での半休なんだし、もっと羽伸ばせばいいと思うんだけど」
『いや、だってその……やっぱり、外食だとお金がもったいないし……それに、仕事じゃ
なくて、たまには趣味でお料理するのもいいかなって思って。だから、いつものように、
ご主人様の栄養バランスや健康を考えたメニューじゃなくて、私と……タ、タカくんの、
好きな料理だけを作るってのなら、どうかなって……』
「趣味で……か。まあ、確かにめいめいの手料理は大抵朝晩は食べてるけど、言われてみ
ればそれは仕事の一部なんだよな。けど、一見同じ事のように見えるけど、仕事と趣味の
区別なんて付けられるの?」
182 名前:2/5[sage] 投稿日:2012/09/28(金) 07:14:45.89 0
『分からない……けど、やってみるのも面白いかなって、そう思っただけで…… ダメ……
かな?』
「いや、まあ……めいめいがそこまで言うなら、ダメとは言わないけどさ。めいめいの手
料理は、そこいらのレストランの料理なんかよりよっぽど口に合うし」
『い……言っとくけど、今日はタカ……くんの為に料理作るわけじゃないんだからね。も、
もちろん二人分は作るし、私の好きな料理だけじゃ悪いからタカくんの好きな物もメニュ
ーに入れるけど、今日は、ご主人様の為じゃなくて、私が自分の為に料理するんだから』
「むー。何かそう言われるとちょっと寂しいけど、そもそもは俺が休めって言った訳だか
ら、まあ仕方ないっちゃ仕方ないけど、やっぱりこう、釈然としない気持ちがするなあ」
『そんなの……し、知らないから。タカくんが休めって言ったから、じゃあ私は、自分で
好きな風に料理したいなって思っただけで、あくまでタカくんの分はついでなんだからね』
「ふーん……じゃあさ。今日は俺が、一緒にキッチンに入ってめいめいの手伝いをしても、
怒らないかな?」
『えっ……そ、そんなのダメだってば!! そ、そりゃ確かに今日のはお仕事じゃないけ
ど、それでもやっぱり邪魔されたくないし……』
「邪魔なんてしないよ。うちのキッチンってかなり広いし。それに、俺の料理の腕が下手
じゃないって事は、めいめいも知ってるだろ?」
『そ、それは…… だ、だったらその……場所だけ使ってもいいから、タカくんは自分の
料理を作って。そうすれば、手伝わせるなんて事にはならないから』
「全く、そこまで形にこだわるとか。どうせ、頭の中では休みとはいえ、タカシ様に料理
を手伝わせる訳には行きません、とか考えてるんだろう? めいめいはお堅いから。でも、
逆に言えば、ここまで譲歩してくれたってだけでもありがたく思わないとね」
『う…… わ、私はその……タカくんと一緒に料理したくないってだけだもの。勝手に人
の気持ちを代弁しないでくれる?』
「はいはい。で、材料はどうする? いつもならそろそろ買い物に行かなくちゃいけない
時間だと思うけど」
『も……もちろん、買い物には行くわよ。色々買い足したいものがあるもの。けど、まだ
ちょっと後でもいいと思うけど』
183 名前:3/5[sage] 投稿日:2012/09/28(金) 07:15:17.26 0
「せっかくなんだし、食品売り場だけじゃなくて色々見て回ろうよ。休みの買い物なんだ
から、別に買わなくてもいいけど、興味のあるお店をひやかすとかさ。楽しみの時間を多
く使ってもいいと思うけど」
『ちょ、ちょっと待って。何で……タカくんも一緒に行く事前提になってるの? 私は二
人で行くだなんて一言も言ってないんだけど』
「うん。でも、俺も今日は料理作るんだから、一緒に買い物も行こうと思ってね。それに、
それ自体は別に珍しい事でもないだろ? めいめいの普段の仕事の時も、時々くっ付いて
一緒に行ってるんだし」
『う…… ま、まあその……勝手にすれば、いいと思う。私は別に、一緒に行きたいとか
思わないけど……』
「じゃあ、決まりだな。ちょっと支度してくるから、めいめいも出掛ける準備して」
『う、うん。でも、私はちょっと服はこのままで大丈夫だから、ちょっとお化粧と髪形整
えて、準備出来るし。タカくんの方こそ、ぐずぐずしてたら置いて行くからね』
「了解。でも、普段はエプロンとカチューシャ外したメイド服だけど、私服のめいめいと
出掛けるってのは久し振りでいいな」
『――っ!? ま、またそういう変な事言って!! くだらない事ばかり言ってないで、
さっさと準備して来てよね。もう……』
「分かってるよ。ああ、あと一つ思ったんだけどさ」
『まだあるの? い、言いたいならさっさと言って。聞き流してあげるから』
「うん。何か、こうやってあだ名で呼び合ってごく普通の言葉で会話しながら一緒に買い
物行ったり料理したりって、何か結婚直前のカップルとか、新婚の夫婦みたいな感じがし
ないかなって?」
『なあっ!? ししししし……新婚って……一体何を考えているんですかタカシ様はあ
っ!! い、いいですか? 罰ゲームだから仕方なくやらされているとはいえ、本来私が
タカシ様にこのようなぞんざいな口の利き方をする事はあってはならない事で、だからそ
んなカップルだとかましてや新婚の夫婦みたいだなんて事は思うことさえ論外なんですか
らねっ!!』
「めいめい」
184 名前:4/5[sage] 投稿日:2012/09/28(金) 07:15:48.51 0
『めいめい、じゃありませんっ!! いいですか? 日頃から時折、タカシ様は私の事を
自分と対等に扱いになろうと致しますけどね。それはそれで使用人冥利に尽きるとはいえ、
やはりメイドという物はちゃんと控えめに一歩下がって主人を守り立てなければ――って、
何ですか?』
「いや、その……罰ゲームだって事は、分かってるよね?」
『あ……ちょ、ちょっとお待ちくださ……じゃなくて、待ってタカくん。い、今のはその、
タカくんが余りに変な事を言うから、動揺して普段の言葉遣いが出ちゃっただけで、どっ
ちにしてもタカくんのせいで出ちゃったんだから、免除って事になるでしょ? 当然』
「いやあ。原因がどうあれ、敬語使ったら罰ゲームってのは、めいめいも了承してる事で
しょ? はい、こっち来て。早く」
『ダ……ダメダメダメ!! 私、耳弱いから!! 今ので罰ゲームはやっぱり酷いと思う
の。だから、見逃してってば』
「耳押さえて頑張るのはいいけどさ。そしたら脇の下のくすぐり30秒に変えようか? そ
の方がめいめいがいいって言うなら」
『そ、それもダメ!! 30秒なんて耐えられないもの。絶対窒息死しちゃう!!』
「でしょ? 耳元に息吹きかけるだけなら、一瞬で済むんだから。ほら。自分で来なきゃ、
こっちから行くよ」
『こ、来ないで。分かった。こ、ここに立てばいい……かな?』
「ああ。そこでいいよ。それじゃあ、心の準備は出来た?」
『ひ、一息だけだからね? お願いだから、変に気持ちの悪い吹き掛け方とかしないでよね?』
「そんな緊張してると、却って感じちゃうよ。気持ちを楽にして、他に意識を散らした方
が、耐えられると思うけどな」
『よ、余計なアドバイスとか偉そうにしないでいいから。や、やるなら早くして。焦らさ
れるのも好きじゃないから。あと、やる前にちゃんと一言、断わってよ。いい?』
「了解。それじゃあやるよ。いい?」
『う……だ、ダメだけど……分かった……』
「それじゃあ……スーーーーーーーーーーーーーーーッ…… フーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」
185 名前:5/5[sage] 投稿日:2012/09/28(金) 07:17:32.52 0
『ひゃっ!? やっ……やああああああああああ……ふぁあああああああっ……いやっ……
やっやっ……あああああああああああああああっ……みゃああああああああっ!!』
「はい、おしまい。俺が肩を抑えてたとはいえ、よくしゃがみ込まずに持ちこたえたよね」
『ひどっ……酷いっ!! 確かに一息とは言ったけど、あんなに長々とやり続けるなんて
聞いてないわよっ!!』
「いや。めいめいの反応が可愛くってついつい。俺もちょっと悪かったなとは思ってるよ」
『嘘ばっかり。嬉しそうな顔して。もう知らない。タカくんの意地悪。嫌いなんだから!!』
「やれやれ。怒らせちゃったな。でも……もし、芽衣が俺のメイドじゃなくて、それでも
付き合いがずっと続いてたら、本当にこんな感じだったのかも…… いや、まあ考えない
ようにしよう。うん。芽衣は十分によくやって、尽くしてくれてるんだしな」
『ああ、もうタカシ様のバカ!! いっぱい変な声出しちゃったじゃない。それもこれも、
タカシ様が私とのやり取りを、まるで新婚の夫婦みたいだなんて言うから…… あああ、
もう考えちゃいけないのに!! でもこれから二人でショッピングだなんて、しかも敬語
使わずにって、本当に恋人同士みたいで…… だ、ダメダメ。私がそんな事考えちゃ。今
日のはあくまでお遊びで、言葉遣いがくだけてるからといって、メイドとしての立場まで
忘れちゃいけないんだから。でも……確かにタカシ様のおっしゃられる通り……ではある
し……心の中でだけなら…… そ、それもダメなんだけど……でも一度言われたせいで、
もう意識しちゃって……私とタカシ様が……新婚カップルだなんて……一緒に買い物して、
お料理して……おふ……って、私何考えてるんだろ!! バカバカバカ!!』
結果、めいめいが準備を終えるまで30分以上掛かったとか。以上。
最終更新:2013年04月18日 14:07