523 名前:1/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:03:08.32 0
『フゥ…… 困ったな……』
「何を悩んでいるんだ? 玲緒」
『うわっ!? 何だ、別府か。こっちに寄って来るな、気持ち悪い。大体貴様、いつ現れ
たんだ』
「いきなり気持ち悪いとはご挨拶だな。せっかく、玲緒とお茶でも一緒に飲みたいと思っ
てわざわざ立ち寄ったのに」
『おかげでオレはせっかくの珈琲タイムを、別府などと言う気持ち悪い生き物のせいで台
無しにされた訳だな。はっきり言って迷惑だ。そもそも、別に約束した訳でもないのにこ
うして居場所を当てられるのは、何だかストーカー行為を受けているみたいで不快だ』
「玲緒は火曜日か休みの午後は、特に用事が無ければここに来るのが習慣じゃん。それで、
嫌だ嫌だ言いながら、結局俺と一緒におしゃべりするのも。何を今更」
『オレは断わっているのに、お前が勝手に隣に座って話し掛けて来るのをあしらっている
うちに、いつの間にかペースに巻き込まれているんじゃないか。ほら、今もこうして許し
も得ずに隣に座っているし。オレはいいなんて一言も言っていないぞ』
「マスター。ダージリンティー一つ。濃い目で」
『人の話を聞いているのか、貴様は』
「聞いても聞かなくても、結局玲緒はいつも俺と一緒にコーヒー飲んでくれるしな。今だっ
て本気で嫌なら、席を移ればいいだけなのに」
『何でお前のせいでオレが席を動かなければならないのだ。そんな面倒臭いことは真っ平
ゴメンだな』
「それは席を移らない事の言い訳ですか?」
『言い訳などではない。オレがお前が隣にいて不愉快なのは事実なんだから。だからと言っ
て、それでオレが席を移ったら、何だか負けたような気がして嫌なだけだ』
「なるほどね。それは玲緒のプライドが許さないと」
『そういう事だ。とにかく、オレは今考え事の最中なのだから邪魔をして欲しくない。ど
うせどけと言ってもどかないだろうし、せめて黙っていてくれ。お前の不快な声を聞いて
いると、余計に気が散る』
524 名前:2/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:03:39.50 0
[ほれ。ダージリンだ。全く、俺の店のお茶は女と逢引のついでに使われてるだけかよ]
『逢引などと言う言葉は使うな、マスター。オレは決してこの男と会うために店に来てい
る訳ではない。勘違いされては困る』
「いやいや。マスターの紅茶も好きだって。それがなきゃ、わざわざ高い金払って来ない
からさ」
[全く……大学生になったんだっけ? ちっとも変わらないな。お前ら二人は]
『だから、オレと別府をひとくくりにしないでくれと言っているのに』
「まあまあ。それより、考え事してるって言ってたけどさ。さっきため息ついていたけど、
珍しく悩み事か?」
『珍しくとは何だ。失礼な。オレだって、人並みに悩みくらいある。能天気な貴様と一緒
にするな』
「まあ、確かに俺もあまり悩まない方だけど、玲緒だって普段は結構物事をバッサリ判断
するじゃん。何があった?」
『別に、大した問題ではない。まあ、だからこそ何にしようか迷っているのだが、どのみ
ち貴様には関係ないことだ』
「そう素気無いこと言うなって。高校時代からの付き合いなんだしさ。解決のヒントにな
るような事言えるかも知れないんだから、とにかく話してみなって」
『……貴様に話すと、絶対偏った答えが返って来そうだからな。余り当てになりそうにな
いが』
「何が偏るんだか、こうなると余計に知りたくなってきたな。というか、さっき俺が声掛
けた時、何か隠さなかったか? カウンターの上に広げてた、雑誌みたいなの」
『そこまで見ていたのか。もういい。隠すのも面倒になって来た。ほら。見たければいく
らでも見ろ』
「えーと、何なに。ハロウィーンコスプレ大特集。今年のハロウィーンの仮装はこれで決
まりって…… 玲緒、もしかして仮装でもするのか?」
『その通りだ。明日、大学のサークル仲間でハロウィーンパーティーがあってな。まあ、
ハロウィーンだし、当然仮装パーティーという事になったんだが……』
「スマン、玲緒。話の腰を折るが一つ質問いいか?」
『何だ? くだらない質問なら、話自体を止めにするぞ』
「いや、俺にとっては重要な事なんだが…… そのパーティーって男も参加するのか?」
525 名前:3/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:04:10.82 0
『ああ。まあ……そうだが。それがどうかしたか?』
「マジかよ。男女間でトリックオアトリートとかやっちゃうのかよ。玲緒も誰かにお菓子
くれないとイタズラしちゃうとかやったりやられたりするのかよ」
『別に、友達同士の内輪のパーティーなんだし、そう特別な事もないだろう。大体、そん
な事を貴様が気にしてどうする? オレとお前はただの知り合いでしかないのに、そんな
事に口を挟むなんて差し出がましいにも程があるとは思わないのか?』
「せめて友達って言ってくれよ。いや、分かってんだけどさ。何か、その……いや、やっ
ぱいいよ。みっともないのは分かってるし」
『一つ、確認していいか? 別府』
「ああ、何だよ。場合によっては回答を拒否するけど」
『別に貴様が傷付くような事じゃない。別府は、オレがどこの大学に通っているか、知っ
ているよな?』
「ああ。H女子大だろ? それくらいもちろん知ってるよ」
『そうか。なら、オレが誰とパーティーをすると言ったか考えれば、己の愚かさ加減が分
かるだろう』
「誰とって……大学のサークル仲間って事は……あ?」
『フン。気付いたか。そういう事だ』
「い、いやいやいや。ちょっと待てよ。確かに女子大って事は、サークルには女の子しか
いないかも知れないけど、どっか近くの大学の同じサークルと合同とかそういう可能性も……」
『生憎、うちの演劇サークルは他大学とのサークル同士での交流はなくてな。もしかした
ら、メンバーの誰かが彼氏の一人も連れてくるかも知れないが、そこまでは関知していない』
「ということは……もしかして、俺……騙された?」
『正解だ。全く、オレは貴様の何でもないと言うのに、一人前に嫉妬するとはな。本当に
気分が悪いが、まあ男が来ると思った時の貴様の動揺っぷりはなかなか楽しかったから、
それで帳消しにしてやろう』
「うぐぐぐぐ……玲緒にたばかられるとは…… 純真で人を疑う事すら知らなかったあの
頃の玲緒はどこに行ったんだ!!」
『人の過去を勝手に語るな。オレだってこれくらいの冗談くらい言えるし、何よりも貴様
には主導権を握られっ放しだからな。たまには逆襲くらいしておかないと』
526 名前:4/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:04:42.09 0
「ちきしょう…… まあ、女の子しか来ないんなら、安心して衣装選びに協力出来るけどな」
『誰も貴様に選んで欲しいなどとは言っていない。そもそも貴様に見せる気なども微塵も
ないからな』
「えー? この後、衣装買いに行くんだろ? なら俺も付き合うって。で、ついでに玲緒
の家行って、感想言ってあげようと思ってたのに」
『頼んでないし、付き合って貰いたくもない。ましてや貴様の前でコスプレをする気もな
い。大人しく帰れ』
「ちぇっ。冷たいな、玲緒は」
『これが普通の反応だ。ただ、せっかくだからあくまで参考程度に聞くが、貴様ならどれ
がいいと思う?』
「玲緒に? だったら……これなんてどう? 水辺の妖精とか、玲緒にピッタリじゃない?」
『なっ…… だ、誰がこんな露出の高い衣装など着るかっ!! こんなもの、ほとんど水
着じゃないか。大体、季節を考えろ。10月も終わりだぞ。風邪を引くだろうが』
「可愛いと思うんだけどなぁ…… ハロウィン女子会だったら、これくらい大胆でもいい
んじゃないかと」
『ここまで来たら、却ってドン引きされてしまうだろうが。選ぶなら、もう少し真っ当な
のを選べ』
「ま、そう怒るなって。さすがに今のは冗談って言うか、まさか玲緒が選ぶとは思ってな
かったけどさ。最初に際ど過ぎるのからいけば、多少大胆なのも選びやすくなるかなって」
『冗談を言うな。そもそも大胆なのはオレの好みじゃない』
「知ってるけど、そろそろ新しい世界の扉を開くのもいいかなって。玲緒も何か目覚める
ものがあるかも知れないよ」
『そんな世界など知りたくもない。それが貴様がキッカケなら、なおの事ゴメンだ』
「やれやれ。相変わらずお堅いよなあ。じゃあ、玲緒はどういうのを選ぼうかと思ってい
たんだ?」
『む……それなんだがな。オレは例えば、こういうのとか…』
「まあ、ハロウィンだけに魔女は定番だな。でも、これだと色的にも衣装としても地味過
ぎじゃね?」
527 名前:5/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:05:37.03 0
『地味などと言うな。そもそもオレは付き合いで着るだけだし、積極的にコスプレしたい
気持ちもない』
「またそういう付き合いの悪い事を言うし。他にはどんなのを?」
『後は、動物系の……この狼の衣装とかだな……』
「こっちの方がまだ映えるけど……でも、だったら俺は断然猫を押すな。猫耳付けた玲緒
が腰をくねらせてニャーとか鳴くの、超可愛い」
『ほら、見ろ。どうせ貴様の事だ。オタクっぽくミニスカの衣装を選んで来ると思った』
「いいじゃないか。玲緒って結構スカート履いてるし、こっちの方が絶対可愛いって」
『だからと言って、ここまで短いのは持っていないし。あと、あんまりフリフリ過ぎるの
は好きじゃない』
「そうか? 似合うと思うけどな」
『貴様がどう思おうが、俺は似合うとは思わん』
「頑固だな。でも、こういう衣装がいいなら、それでもいいじゃん。何を悩む必要がある
んだ?」
『む……それは、だな。その……』
「どうした? 玲緒らしくもない。言葉を濁すなんて」
『いや。だから……だな。サークルの、その……みんなからも、地味だと言われそうで……』
「何だ。やっぱり地味だと思ってるんじゃないか。なら、もう少し露出度高いの行こうぜ?」
『誤解の無いよう言っておくがな。オレがこういうのを着たい訳じゃないんだぞ? ただ、
せっかくのパーティーでだな。こう、ガッカリされるというのも避けたいとは思うし……』
「玲緒って意外と場の空気とか気にするんだよな。あと、強く頼まれると断われないタイ
プだし。一人称オレの割には気が小さいというか何と言うか」
『だ、黙れ!! せっかく誘って貰ったんだし、それなりには……その……皆が盛り上が
るような格好をするのが礼儀と言う物だろう。気が小さいなどと言うな。不愉快だ』
「ゴメン。今のはちょっと言葉のアヤだった。まあ、玲緒の選ぶような衣装でも別に場に
合わないとかそんな事はないと思うけど、玲緒としても、もう少し場が盛り上がるような
仮装をしたいって事だろ」
『……まあ、そういう事だ』
「なら、こういうのはどうだ? ヴァンパイアの衣装で、こういうタイトな衣装は。玲緒
なら体のラインも綺麗だし、見映えすると思うけど?」
528 名前:6/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:06:09.07 0
『うーん…… だが、これだと何だかSっ気の高い女だと思われそうじゃないか? 余り
女王様系なのはちょっと……』
「なら、ナースなんてのは? お菓子くれないとお注射するわよ、とか」
『だから、ミニスカはともかく何でこんなに胸元を広く開けているんだ。こんな看護師が
いたら、むしろ患者が興奮して大変な事になりそうだな。特に貴様のようなスケベ患者が』
「そこはそれ、お祭りだから。玲緒ってDカップくらいだろ? いいと思うけどな」
『だからイヤらしい目で見るな。変態が。もう少しマシなのは無いのか』
「うーん…… 何か、どれ選んでも文句言われそうな気がするなあ……」
『それは貴様がスケベな考えでしか選んでないからだろうが。意見を聞いて欲しいのなら、
もう少し真面目に選べ』
「いや。真面目に可愛いの選んでるけど…… よし、分かった」
『何だ? 何か真っ当な考えでも思い付いたのか?』
「ああ。どうせ玲緒の事だから、何を選んでも否定しそうだしな。こうなったら、俺のセ
ンスで、玲緒に一番似合う衣装を一つだけ選ぶ。後は玲緒がそれを参考にするなり、完全
拒否するなり好きにしてくれ」
『まあ、無駄な意見をぐだぐだと言われ続けるよりはマシだな。で、どれだ。早く選べ。
この後買い物に行く事も考えると、もう時間が無い』
「ちょっと待って……よし、これだ!!」
『どれ、見せてみろ。って……なっ!!』
「どうだ。この小悪魔な衣装は。黒のミニスカワンピースで、赤のフリル付き。レースの
オーバーニーが蠱惑的なイメージを醸し出しつつも、そこに付いた赤のリボンとかいかに
も女の子らしく可愛らしい感じで、あと赤い角突きのカチューシャがピンポイントに萌え
を出してて、玲緒がこれを着たら大抵の男は一撃で魅了されると思うんだが」
『……貴様は……これが本当に、俺に似合うと思っているのか?』
「ああ。大真面目でそう思ってる。玲緒に全否定されるのは覚悟で」
『そうか……』
ガタッ。
「あれ、玲緒? どうしたんだ。立ち上がって」
『マスター。勘定を頼む』
[ああ。400円だな]
529 名前:7/7[sage] 投稿日:2012/11/03(土) 21:06:49.17 0
「あれ? もしかして玲緒、帰るのか? 感想も無しに?」
『フン。全く……貴様の妄想のバカさ加減には呆れ果ててな。もう時間もないし、これ以
上付き合っていられん。じゃあな』
「うーん…… 怒ったかなあ? 絶対に似合うと思うんだけど、まあ純情な玲緒じゃあ、
ちょっと無理だったかなぁ?」
『……と言いつつ、買ってしまった訳だが…… 俺は本当にこれを着て行くのか? いや。
受けるのは間違いないとは思うが……』
『……一応、店でも着たが……もう一度、着てみるか……』
『もし……別府が、こんなオレを見たら何て言うかな? もし、絶賛されでもしたら……』
『あああああ、いかんいかん!! ダメだ。考えるだけでも、この辺がキューって…… も
し、そんな事になったら……オレの方が魅了……されてしまいそうだ……』
終わり
三日遅れのハロウィンネタ
最終更新:2013年04月18日 14:55