554 名前:1/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:28:18.76 0
- ツンデレにハロウィンのコスプレをしてってお願いしたら ~前編~
『タカシ様。どちらにいらっしゃるんですか? タカシ様』
「トリック、オア、トリートッ!!」
『ほひゃあっ!? ななななな、何ですかこのかぼちゃのお化けはっ!!』
「あっははははは!! 芽衣は面白い驚き方するなあ。ほひゃあって……可愛い……」
『その声はタカシ様ですねっ!! な、何をなさるんですかっ!! 変な仮装で人を驚か
したりして。そういう性根の曲がった意地悪をなされる方には、将来下の者が付いてまい
りませんよっ!!』
カポッ。
「まあまあ。驚かされて悔しいからって、そうまなじり立てて怒る事ないじゃない。たか
だがハロウィーンの仮装なのに」
『だからといって、物陰に隠れていきなり大声でトリックオアトリートとか大声で声掛け
るとかする必要ないじゃないですかっ!! これじゃあお菓子をあげる前に、もうイタズ
ラされちゃってます』
「あ、そうそう。トリックオアトリート」
『はい?』
「いや、だからハロウィーンの定番だって。お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞって」
『そ、それくらいは知ってます。話してる最中に唐突に言われたから、ちょっと付いてい
けなかっただけです。まるで私が無知みたいな言い方しないで下さい』
「そんな事思ってないって。で、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうけど? さっきの軽
い脅かしなんて比較にならないほどのイタズラをね」
『タカシ様がどんなイタズラを考えなさっているか知りませんけど、残念ながらその望み
は叶いません』
「え? 何で?」
『私が何でタカシ様をお呼びしたか、お分かりではないのですか? 時間的に』
「ああ、なるほど。お茶の時間だから……って事は、お菓子も準備してありますよって事か」
『さようでございます。さっさとそのバカな仮装を着替えて、リビングにいらしてくださ
い。いいですね?』
555 名前:2/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:28:49.70 0
『お待たせしました。本日はエチオピアから直送で取り寄せたモカコーヒーです……って、
まだその仮装してるんですかっ!!』
「いや、だってハロウィーンだし。まあ、さすがにかぼちゃの被り物は重いし付けてたら
食べられないから外さざるを得ないけどさ」
『だからといって、何もずっとその格好でいる必要はないじゃないですか。それとも、一
日中その格好でいるおつもりですとか?』
「ああ。だってせっかくデザイナーの一色結子さんに作ってもらった衣装だからね。今日
一日くらいは着ておかないともったいないし」
『だから、一流のデザイナーの腕を、タカシ様の娯楽に使わないで下さいってば!! はっ?
ちょ、ちょっとお待ちください。その……もしかして、私の衣装ももしかして……』
「いい読みだね。さすがに芽衣も、そろそろ学習して来たか。はい、どうぞ」
『き、着ませんよ!! 私は絶対に着ませんからね!! 大体私は仕事中なんですから、
タカシ様の娯楽に付きあって、ハロウィーンごっこなんてやってる暇は無いですから』
「大丈夫。芽衣はただ、仮装して、トリックオアトリートって言うだけでいいから。あと、
芽衣の今日一日の制服も、その衣装でね」
『ぜっっっったいに嫌ですっ!! 私の制服はこのメイド服なんですから。他の服着てお
仕事とか、考えられませんっ!!』
「ズズ…… うん、美味しい。コーヒーなのに、甘味料なしで独特の甘み感があってスッ
キリした飲み心地だし。芽衣も飲みなよ」
『タカシ様。私の言葉を無視してお茶を飲むとかどういう事ですかっ!!』
「だって、芽衣の作ってくれたスイーツ。パンプキンパイじゃないか。しっかりハロウィー
ン意識しておきながら拒否するとか、意味が分からないよ」
『それは季節物だからであって、私が仮装する事とそれとは全く関係ないじゃないですか。
とにかく、私は絶対に着ませんからね』
「まあ、とにかく中身だけでも見てみようよ。芽衣もお茶でも飲みながら、さ」
『見るだけですよ。絶対に着ませんからね』
「どれどれ……」
ガサガサ……
556 名前:3/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:29:21.84 0
「へえ、可愛い魔女の衣装だな。ちゃんととんがり帽子にステッキまで付けて。結子さん
らしいセンスだなあ」
『何で魔女の衣装がそんなミニスカートなんですか。それじゃあAKBなんちゃらの衣装と
かと大して変わりありません。胸だって変に強調されてるし』
「芽衣に一番似合う衣装を考えたって言ってたよ。せっかくスタイルいいのに、普段地味
なメイド服でもったいないって」
『地味で悪かったですね。でも、このメイド服だって機能的で動きやすくて、私は気に入っ
てるんですけど』
「これはやっぱりデザイナーだった、結子さんのおばあ様がデザインされたものだからね。
ま、センスでは色々ケンカしたらしいから」
『私、絶対そのおばあ様の方が気が合うと思います』
「まあ、せっかくのパイをそんな自棄気味に食べなくても。ところで芽衣。結子さんから、
伝言があるんだけど」
『私宛に、ですか? 何か、ひっじょーにロクでもない気がするんですけど』
「いや、実務的な話として、報酬の件なんだけど」
『あの方、デザイナーとしては世界的に名の通ったブランドなのですよね。もしかして、
物凄く高いんじゃないですか? 全く、いくらお金持ちとはいえ、タカシ様のようにくだ
らない道楽にお金を使っていると、いつか破産致しますよ』
「資産管理は芽衣がしっかりしてるから、安心してるよ。はい、これ。結子さんからの請
求書」
『お見せ下さい。何なに……報酬は下記いずれかの方法でお支払いください…… 芽衣ちゃ
んのコスプレ写真10枚。動画撮影5分及び作成手数料1万5千750円……って、何ですか
この写真って!!』
「結子さんも、せっかく芽衣の為に作った衣装だから、どんな風な着心地とかまで見てみ
たいんだって。だからって忙しい芽衣をスタジオに呼ぶのも申し訳ないから、動画でいい
よって」
『ぜ、ぜっ……絶対に嫌ですっ!! そんな恥知らずなこと、出来ませんっ!!』
「いいじゃないか。同性同士なんだし。何なら写真と動画は、俺のいない所で一人で撮る?」
557 名前:4/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:29:55.16 0
『タカシ様のいるいないじゃありませんっ!! 何で世界的な一流デザイナーの所にそん
な恥ずかしい映像とか送らなくちゃならないんですかっ!!』
「嫌なら、拒否も出来るよ。ほら、もう一つの支払方法」
『えーと、もう一つは……制作料30万!? そ、それに衣装材料費に小物代合わせて……
ぐふっ!!』
「これでもサービス価格だとは言ってたけどねえ。選ぶのは芽衣に任せるよ。家計管理の
責任者として」
『だからって、金額が余りにも違い過ぎるじゃないですかっ!! 何なんですかこの差はっ!!』
「つまり、結子さんにとっては、芽衣の写真と動画の価値はん十万になると、そういう事
じゃない」
『あの人おかしいです。絶対にどこか頭のネジが外れてます』
「まあ、いい意味でなら、そうかもね。普通と違う発想とかセンスを持ってるから成功し
たんだろうし」
『褒め言葉で言ってるんじゃありませんっ!! どこをどう見たら、私なんかにそんな価
値を見出せるんですかっ!!』
「うーん。まあ、有り得ないことだから考えた事なかったけど、もし芽衣の魔女っ娘姿に
対価を要求されるとしたら、もしかしたらそれくらい払っちゃうかもなあ」
『ほえ? タ……タカシ様が、ですかっ!?』
「うん。言われてみれば、そのくらいの価値あってもいいかなあって。芽衣は美人で可愛
くてスタイルもいいし、それに結子さんの衣装なら、きっとすごく映えると思うから」
『お……おおおおおおお、お止め下さいっ!! そんな変な持ち上げ方したってダメです
からねっ!! わ、私はこんな衣装絶対に……』
「着ない?」
『うっ…… い、いやその……』
「2着で50万近くかあ…… さすがの俺も、そこまでの散財はした事ないなあ……」
『うううううっ!! タ、タカシ様が発注なさったんじゃないですかっ!! 十分になさっ
てますっ!!』
「だって、芽衣のコスプレ写真くれるなら、タダ同然で引き受けるって言ってくれたから」
『さいっしょから計画的だったんですねっ!! タカシ様のバカッ!! バカバカバカ!!』
558 名前:5/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:30:27.07 0
「後は芽衣の判断に委ねるよ。コーヒーでも飲んで頭スッキリさせながらゆっくり考えて。
俺も、着て欲しいとは思うけど、写真と動画については、完全に芽衣にお任せするから」
『ううううううううううっっっっっ!!!!』
「いやあ。このパイ、美味しいなあ。もう一切れいけそうだ」
『タ……タカシ……様?』
「芽衣、準備出来たのか? なら、入っておいでよ」
『ほん……本当に、こ、こんな格好で……私、写真撮られなくちゃいけないんですか?』
「自分で決めた事じゃない。タカシ様が業務命令としておっしゃるなら、私は従わざるを
得ませんから、そうご命令下さいって」
『そ、そうですけど…… でも、こんなの絶対恥ですってば!!』
「いいから、入っておいで。ほら」
『ううううう……』
「へえ……」
『や、止めて下さいっ!! そんなイヤらしい目で見ないで下さいってば!!』
「いや。純粋に可愛いなあって。ピンクの体にフィットした薄い衣装。スカートはフワッ
と広がって赤いふわふわの飾りが付いて。白のニーソックスと飾りの付いたアームカバー
に、折れ曲がったとんがり帽子。そしておまけにステッキまで。確かにUの字型に空いた
胸元とか、ワザと開けたお腹とか、強調された太ももとか、エロスな要素もいっぱいある
けど、それ以上に全体の調和感が素晴らしいよね。さすが結子さんのデザインしただけの
事はある」
『真面目に感想言ってるように見せて、しっかり見てる所は見てるじゃないですかっ!!
タカシ様のド変態っ!!』
「まあ、そこは男だから勘弁してよ。むしろ、全く興味を注がれなかったら、一人の女子
としては却って微妙な気分にならない?」
『そんな事を知った風に言わないで下さいっ!! ホントに……ホントにこれで、今日一
日仕事までしなくちゃならないんですか? こんな、後ろがすごく気になる衣装で家事を
やれと?』
559 名前:6/6[sage] 投稿日:2012/11/04(日) 23:31:15.64 0
「だって、芽衣がどうしても着る決意が付かないから、業務命令にしろって言ったじゃな
い。自分で決めた事なんだから、しっかりやり遂げないと」
『だってだってだって……そうしないとお金があああああ…… ああ、もういいですっ!!
とりあえずとっとと写真と動画だけ撮って下さいっ!! そこを乗り越えちゃえば、後は
タカシ様の目線だけ気にすればいいんですから』
「その意気や、快し。さ、じゃあまずはそこに立って。体の向きはもう少し左で……で、
そう。体をくねらせて腰を強調して。で、ステッキを差し出して顔はこっちで……それで、
ウインクして。はい、チーズ!!」
カシャッ!! ウィーン……
『ちょっと待って下さいっ!! 今……今、私つい、言う通りにやっちゃいましたけど、
どんなポーズだったんですか? 確認させて下さい。場合によっては消去します!!』
「そんな事、いちいちやってたら何時間経っても終わらないよ。芽衣も仕事の続きがある
んだろ? 確認は最後にして、その時削除した枚数分だけ撮り直せばいいじゃん。ほら、
次、次」
『お願いしますから、絶対に変な写真を撮らないで下さいね』
「了解。じゃあ、次はそのソファーに座ろうか。そう。それで膝立てて。大丈夫、こっち
からは中見えないからさ。そんな怒った顔して文句言いたそうな顔しないで。そう。それ
で、膝に頭預けてステッキは左手で。そう、笑って……はい!!」
『ホントに……ホントに、見えてなかったんでしょうねっ!! もし嘘だったら、写真の
出来うんぬん以前の問題で、旦那様にタカシ様のセクハラ報告を致しますからねっ!!』
「大丈夫だって。芽衣に対して、ちゃんと主人としての信義は貫くからさ。じゃあ、次は
そのソファーの上に四つん這いになって。うん、そう。両腕をもうちょっと寄せて、目線
は上目遣いでねだるように……いいね。色っぽいよ。はい、チーズ」
『これを、あと七枚も……』
「それプラス動画撮影5分ね。ほら、頑張って」
『私……もう死にたいです……』
後編~芽衣さんのいたずら編に続く~
最終更新:2013年04月18日 15:01