663 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その5 1/3[sage] 投稿日:2012/11/17(土) 12:10:19.54 0
すると、またしても先輩の返事に若干の間が空いた。僕に否定されて、きっとムッとし
たんだろうと推測する。
『あ、当たり前でしょ、そんなの。別にあたし達、全然仲良しじゃないんだから。高校の
時から部活で先輩後輩だったってだけで、別に付き合ってる訳でもないんだし』
自分は散々同じ事を言っているのに、僕が一言、似たような事を言っただけで機嫌を損
ねるのだから、本当に困った人だと思う。
「そうですよね。だから僕も、別にどっちでもいいくらいの気分で引いたんですけど。で
も、結果的にそれで当たりを引いちゃうんだから、運命のイタズラというか、やっぱり何
かしらの縁を感じずにはいられないんですけど」
『縁とかバッカじゃないの。こんなのただの偶然でしょ。4分の1の確率で誰かが当たるん
だから、たまたまアンタがそれを引いたってだけよ。アンタとあたしの間に、繋がるよう
な縁なんて、何にもないわよ』
「それじゃあ、先輩は僕が当たりクジを引いたのは、ただの偶然だって、そういう事でい
いんですよね?」
先輩から言質を引き出した事で、僕は念押しをする。
『そうよ。ただの偶然以外に何があるって言うのよ? クジなんだから、イカサマでもな
い限り誰も操作出来ないでしょうが』
さも当然とばかりに先輩が答える。僕は満足して頷いた。
「そうですよね。ですから、僕と先輩がペアでモデルになったのは、たまたま偶然だったっ
てだけで、僕のせいではないですよね?」
僕の問い掛けに、先輩がウッと呻いた。どうやら、自分で言い掛かりをつけていること
を肯定してしまった事に、先輩も気付いたようだった。
『そ、それはその……アンタのせいよっ!! だってそもそも、クジ自体を放棄すればい
いだけの話じゃない。そうすれば、絶対組む事は無かったんだし……』
664 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その5 2/3[sage] 投稿日:2012/11/17(土) 12:12:12.63 0
「それは無理ですよ。だって、音羽さんだって自分は写真映りも良くないし、先輩の方が
絶対可愛いって断わってたのに、クジ引かされたじゃないですか。何の理由もなく辞退と
か、佐倉さんも涼城さんも許してくれないでしょ」
先輩だって、ウチの部活の上級生の人となりはいい加減把握しているはずだ。そう思っ
て主張すると、先輩はウーッ、と唸ってしばらく黙ってから、つっけんどんに言い返して
きた。
『分かったわよ。もういい。どうせ、アンタのせいにしたって、何にもしてくれないもん
ね。別府君って冷たいから』
「僕に何をしろっていうんですか? 出来る事だったら、何だってしてあげますよ。ただ、
理不尽に僕のせいにされるのが困り物だったってだけですから」
『だからいいって言ってるじゃない。今更アンタにして欲しい事なんてないし』
先輩は単に、やり場のない恥ずかしさをどこかにぶつけたかっただけなのだろう。それ
を完全否定されたから拗ねているだけなのだ。謂れなき容疑を晴らしたところで、次に僕
がしなければならないのは、先輩の機嫌を直す事だった。
「でも、個人的には何だかんだ言って、先輩と一緒に写真のモデルになれて良かったです
よ。おかげですごく可愛らしい先輩と一緒に写る事が出来ましたし」
『ズ……ズルいっ!! そんな事言って……可愛いとかアンタに言われても嬉しくないし……
大体、あたしが嫌がってた横で一人で喜んでるなんて、やっぱ最低よアンタは』
褒めたのに、罵倒で返して来るのは、やっぱり先輩だ。とはいえ、今の声はどちらかと
言うとワザとらしく不満気な声を作っているように聞こえた。やはり僕が嬉しいと言うと
先輩も悪い気はしないのだろう。
665 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その5 3/3[sage] 投稿日:2012/11/17(土) 12:15:57.96 0
「最低と言われても、自分の心に嘘は吐けませんしね。先輩には申し訳ないですけど、撮っ
た写真のうちで、一番先輩と仲良さそうな写真を一枚、調ちゃんに貰おうかと思ったくら
いですから」
欲しいと思ったのは事実としても、実際貰おうとまでは思わなかったのだが、敢えて盛っ
て話をすると、先輩が激しく文句を言って来た。
『ダメ!! 絶対ダメよそんな事したら!! それじゃあ、あたしはともかく別府君があ
たしに気があるって思われちゃうじゃない。そうしたら、今より絶対もっとややこしい事
になるもの。だからそんなお願いしたらダメだからね!!』
言っている事に嘘はないのだろうが、それだけじゃないなと僕は推測する。恐らくかな
りの照れも入っているだろう。それを見越した上で、僕は先輩の言葉に頷いた。
「ええ。そう思ったから思い止まりましたけど。でも、その代わり一つ先輩にお願いした
い事が出来まして」
『あたしに? な……何をよ?』
戸惑うような先輩の言葉に頷きつつ、僕は話を続けた。
「だから、今度先輩が遊びに来たとき、二人だけでいる時の写真を撮らせて貰えませんか?
もちろん、調ちゃんが撮ったような綺麗な写真は撮れませんけど、でもデジカメなら家に
もありますから。ただ、二人きりなら、もっといい絵が撮れるんじゃないかなとも思いますけど」
続く
最終更新:2013年04月18日 15:10