706 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その6 1/4[sage] 投稿日:2012/11/21(水) 07:07:54.19 0
僕のお願いに、先輩が電話の向こうで驚いて息を飲むのが聞こえた。それからたっぷり
10秒以上の間を置いてから、激しい否定の言葉が浴びせ掛けられた。
『ダ……ダメよそんなの絶対ダメだってば!! ふ、二人きりでいる時の様子を写真に撮
るだなんて……絶対にヤダ!! 大体、何だって意味も無いのに写真なんて撮られなくちゃ
ならないのよ!! 全然分かんないわよ!!』
「だって、僕が欲しいですから」
先輩の問いに当たり前のように答えると、先輩がまた絶句した。それから、戸惑ったよ
うな困ったような怒鳴り声が聞こえてくる。
『だから何だって、アンタが欲しがるからってあたしが写真撮られなくちゃならないのよっ!!
あたしにいい事何もないじゃない!!』
「先輩がどう取るかは分かりませんけど、少なくともリスク回避にはなると思いますよ。
実際、僕からお願いしなくても逆に調ちゃんの方から、分けてあげるけどどう?って言わ
れてますし。先輩は言われませんでした?」
『言われたけど、当然断ったわよ!! 何であたしが別府君とのツーショット写真を後生
大事に持たなくちゃいけないのか意味分かんないってね。アンタも絶対貰っちゃダメだか
らね』
予想通りの返事に、僕は頷く。何か少し脅迫するようで気が引けるけど、やっぱりあの
写真を見たら、一度は先輩との僕の部屋での写真は撮っておきたいと、どうしても思って
止まないのだ。
「だから、僕の申し出を受けてくれれば、僕も調ちゃんの写真を貰わなくて済みますから
ね。今度は二人だけですから、誰に見られるわけでもないですし、お互いが写真を持って
いる事も、誰にも知られずに済みますし」
すると慌てて先輩が突っ込みを入れて来た。
707 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その6 2/4[sage] 投稿日:2012/11/21(水) 07:09:53.31 0
『ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!! お互いがって……何であたしも、その写真を持つ
事になってるのよ!!』
「あれ? いらないんですか? せっかく、初めて二人きりで撮る写真なのに」
ワザとらしく、さも当然の如く澄まして聞くと、一瞬だけ間を置き、先輩は激しく拒否
をして来た。
『あ……当たり前でしょそんなの…… せっかくも何も、全然欲しくないわよっ!!』
「そうですか。なら、僕一人で自分のパソコンに大切に保存しておきますね」
『――――っ……』
大切に、という言葉をわざと強調して言ったせいか、先輩がまた絶句した。返す返すも
電話なのが惜しい。直接会って話していたら、きっと色んな先輩の表情が楽しめたのに。
『ま、待ちなさいよっ!! あたし、まだ撮らせてあげるとか……一言も言ってないでしょ?
なのに何で既成事実みたいに言うのよっ!!』
「ダメなんですか?」
またしても突っ込みを入れて来た先輩に、僕もまたしても意外そうに答えを返す。しか
し今度は、二度目だけあってか、先輩も僕にペースを乱されず、普通に拒否して来た。
『ダメに決まってるでしょ!! さっきだって言ったじゃない。ヤダって…… ダメだっ
てば、そんなの。二人っきりの光景を写真を撮って、別府君のパソコンに保存するなんて……』
口調がどんどんと弱く、ためらいがちになっているのは、自分のセリフから状況を想像
してしまっているせいなのかな、と推測する。そこに僕は、意地悪く脅すような事を言った。
「いいじゃないですか。学校案内のパンフに載るくらいなんですから、今更僕専用に写真
を撮られたって。それに、このままだと調ちゃんが変な勘ぐりをしないように、上手く言
葉でごまかして、写真を貰っちゃうかも知れませんよ?」
708 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その6 3/4[sage] 投稿日:2012/11/21(水) 07:34:27.20 0
『それはダメ!! 絶対ダメ!! 別府君の口が上手いのは良く知ってるけど、それでも
調が変に気を回して、仲を取り持とうとするかも知れないじゃない。だからダメ』
「なら、写真……撮らせて貰ってもいいですよね? どっちがいいかは、明白だと思いま
すけど?」
『ううう……』
先輩の気持ちは、もうほとんど承諾に傾いているのだろう。後は、どう自分に言い訳す
る理由を見つけるかだけだと思う。ただ、これ以上は蛇足になるので、僕から押す事はも
うせず、黙って返事を待っていると、やがて振り絞るように、先輩が言葉を発した。
『わ……分かったわよ。こっちの条件……聞いてくれるなら、撮らせてあげてもいいわ』
「条件? 何ですか、それは?」
先輩が条件を付けて来るとは思っていなかったので、僕は興味津々に聞き返す。すると、
数秒のためらいの後、先輩の答えが返ってきた。
『だからその……撮った写真を、アンタが見る前にあたしに一度チェックさせなさい。そ
れで、あたしが見て絶対にダメって思った写真は消すから』
「あれ? 先輩さっき、僕と二人で映った写真なんていらないって言ってませんでした?」
ワザと論点をずらしたような答えを返すと、先輩の怒鳴り声が飛んで来た。
『だからチェックって言ってるでしょうがっ!! あたしはそんな……自分のパソコンに
保存とかしないもん。ただ、アンタに見られたくない画像があるかも知れないから、それ
を検閲するだけなんだから』
そう言いつつ、ちゃんと自分では保管するんだろうなと、何となく想像する。いや、こ
れは単に自分の願望なんだろうけど、でもそうあってくれれば僕も嬉しい。
「分かりました。自分で全部見れないのは残念ですけど。ただ、余程のもの意外は残して
おいて下さいよ。デジカメが返って来たら、一枚も残ってなかったとかだったら、やり直
しですからね」
念のため釘を刺すと、ブスッとした声で不満気に先輩が答えて来た。
709 名前:・ツンデレが写真のモデルで男とカップルになったら その6 4/4[sage] 投稿日:2012/11/21(水) 07:36:03.94 0
『分かってるわよそんなの。約束不履行とか言って、調に写真ねだられたりしたらたまん
ないもの。ちゃんと残してあげるってば』
これでちゃんと、口約束とはいえ、先輩の言質は取った。僕は頷くと、話をまとめ上げ
に掛かる。
「それじゃあ、決まりですね。準備しておきますので、次に遊びに来るときに撮影会にし
ましょう。今週末は来ますか?」
『さあ? 気が向いたらね』
気の無い返事だが、つまりこれが先輩にとっての肯定なのだ。用事があれば、即断わっ
て来るのだから。
「それじゃ、お待ちしてます。ちゃんと先輩の為に、美味しいお菓子は用意しておきますから」
『バカ。当たり前でしょ、そんなの。あたしはお客様なんだからねっ!!』
それで、先輩の方から電話は切れた。僕は、ベッドに寝転がって当日を想像する。もち
ろん、つまらない写真なんて一枚だって撮る気はない。出来る限り先輩とくっ付いた写真を撮る為に、どうやって先輩を口説こうか、僕は今から頭を悩ませたのだった。
終わり
最終更新:2013年04月18日 15:13