46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/22(土) 23:59:13.75 ID:/WITyspY0
お題
つ・ツンデレさんと一緒の帰り道で蛍が飛んでるのを見つけたら
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/06/23(日) 10:24:30.46 ID:jgtWU0br0
46 ・ツンデレさんと一緒の帰り道で蛍が飛んでるのを見つけたら
纏さんに誘われて花火を見に出かけた、その帰り道。
俺は道端に、ふわりと風に乗る淡い光を見た。
「あ、ホタル?」
『……ここらにんなもんが居るわけないじゃろ。見間違いじゃ。若いくせに、主も耄碌したもんじゃのう』
思わず声を出してしまった俺に、しかし纏さんは冷たい。
「いや、確かに見たんだって! エメラルドグリーン? っぽいのがふわふわ〜って……」
『ふ〜む』
馬鹿にされた俺は必至に解説してしまう。だが顎に手を当てて考え込んでいた纏さんは、やがてニカッと笑いながらこういった。
『多分それは、死者の魂……じゃな!』
「ちょ、なんだよそれ……」
『知らんのか? 言い伝えによると蛍の光は、現世に未練を残して死した者の魂が……』
「や、やめてくれよもう!」
『何じゃ? 怖いのか? ん? ん?』
俺が怪談を苦手なの知っていて、おちょくるような声を出す纏さん。
「怖いに決まってるだろ! 嫌いなんだよそういうの……!」
『かかか! お子様じゃのう! そんなに怖かったんなら、手でもつないじゃろうか?』
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ほれ、と片手を差し出してくる。
「いいっての! 子供扱いすんなよ。同い年だろ!」
ムキになって言い返す俺。しかし纏さんは……。
『なんじゃ、詰まらんの。……このままでは、儂の魂がホタルとなってしまうぞ?』
と、上目遣いで返してきたのだった。
「ど、どういう意味だよ……」
『言わねば分からんか? 鈍感じゃのう』
差し出した手を引っ込めず、口を開く。
……言われなくても分かってはいるが、どうにも恥ずかしさが先立ち、なかなか一歩が踏み出せない。
夏の暑さのせいではない頬の上気を感じ、しかし俺は意を決して、纏さんの手のひらを掴んだ。
『ほ! お主にしては中々の思い切りじゃの。よいよい』
偉そうに言っているが、彼女自身俺と同じように火のように顔が赤い。
暗い夜道にホタルが二匹。甘い水に誘われて、ふわふわと飛んでいく。
最終更新:2013年09月02日 18:37