329 名前:1/3[] 投稿日:2011/05/28(土) 09:08:58.90 ID:cMNj2ng9O [3/9]
お題作成機より
居間、アッパー、納涼
「暑いわねー」
初夏の夕暮れ、縁側に座り、柱に寄り掛かりながら沈んでいく夕焼けを見ながら私は誰に言うのでもなく呟いた。
「かなみ、ほい、アイス」
「……暑苦しいやつが来た」
後ろから現れたタカシの姿を視認した私はそう言いつつも、タカシから差し出してきた二つ折りのアイスの片割れをちゃっかり受け取る。
「暑苦しいやつって……第一来たのは俺じゃなくてお前のほうだろ。人の家に勝ってに上がり込んだと思ったら、アイス要求しやがって……あれか? お嬢さま気取りですか?」
「男のくせにいちいちうるさいやつね。嫌ならどっか行けば? 私からあんたへの用はもうないし」
「人の家の居間に居座って何言ってんだか……」
タカシはどこかに行く……ということはせず、むしろ私に近づき、横の位置にくると腰を下ろした。
「何でわざわざ横に来るわけよ。人が納涼しているのに、余計に暑苦しくなったじゃない」
「まあまあ、そう言うなって。
……かなみ、何かあったのか?」
330 名前:2/3[] 投稿日:2011/05/28(土) 09:09:47.33 ID:cMNj2ng9O [4/9]
「…………別に何も……」
今の言葉に嘘はない。本当に何かあったわけでも誰かに何かされたわけでもない。私が一人でに不安になっただけだ。
タカシは私がどんな辛辣な言葉を投げても、どんなことをしても、いつも一緒にいてくれる、受け止めてくれる。
それはなかなか素直になれない私にとってはこの上なく嬉しいことであり、時々、限りなく怖いことでもある。
タカシに依存しっぱなしの私は、タカシがもしいなくなってしまったらどうなってしまうのだろうか? と。
331 名前:3/3[] 投稿日:2011/05/28(土) 09:10:53.48 ID:cMNj2ng9O [5/9]
「……そうか、それならいいんだ。悪かったな勘違いして」
本心では絶対にそう思ってないくせに、私を慮ってか、タカシは無理矢理繕った笑顔を張り付けていた。
(まったく、いつも鈍感なくせに、こういうところには気が回るんだから……)
「さて、俺も溶ける前にアイスを食べますか。って、うぉ!? き、急にどうしたかなみ?」
「別に、どうも……ただ、柱に寄り掛かっても固くて痛いからあんたに寄り掛かっているだけ。何か文句ある?」
「いや、別にないけどさ。なんかこうしていると、夫婦みたいな感じがするな」
「……勝手に言ってろ馬鹿」
こうして今日も私の不安はさらに重くなっていくのだろう。
終わり
最終更新:2011年05月29日 11:35