28 名前:1/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:19:16.85 ID:H2+JaGsB0 [6/15]
お題作成機より:幽霊物の怪、雨、髪の毛
「ただいまぁ…… あれ? 優はどこ行った」
「いないのか? いや、そんな馬鹿な。アイツ、地縛霊だから部屋から出るなんて出来な
いはずなのに……」
「それとも、まーた何か拗ねて姿消してるのか? この間も時間が無くて朝飯の食器片さ
ないまま出掛けたら、グズグズと文句言ってたし。幽霊のクセに細か過ぎる性格とか、救
いようないよな全く」
『誰が救いようが無いですかっ!!』
ポコッ!!
「あたっ!? 優か? いるなら出て来いよ。隠れて物を飛ばすとか卑怯だぞ」
『やかましいです。姿が見当たらないからって、人の悪口言ってる人の方がよっぽど性格
悪いです』
「いや。それは何かしら悪口言えばこらえ性の無い優の事だからさ。絶対姿現すんじゃな
いかなって思って」
『それってもしかして、私を呼び出す為にワザと悪口言ったって事ですか? どれだけ歪
んでるんですか、タカシさんは。救いようがないのは貴方の方じゃないですかっ!!』
「だって、呼び掛けても出て来ないんじゃこうするしかないだろ? それに、現にこうし
て呼び掛けには応えてるし」
『人の事を簡単に釣られるような性格が軽い女みたいに言わないでください。タカシさん
みたいに無能で甲斐性も無くて意地も悪い人に悪口なんて言われたら、どんな幽霊だって
我慢なりません。取り殺さなかっただけ感謝して欲しいです』
「お前って人を取り殺せるほど強い霊力とか持ってないだろ。せいぜいが悪夢見せるくら
いでさ。つか、寝てる間に嫌がらせって、お前も相当性格歪んでるよな」
『黙って聞いていれば言いたい放題言ってくれますよね? こう見えてもポルターガイス
ト現象は得意なんですよ? どこからともなく飛んで来る包丁に刺されて悶絶しながら死
ぬ事をお望みですか? 何なら今すぐやってあげてもいいんですよ?』
「得意っつー割には結構ノーカンだよな。散らかす事は得意だけど、片付けのような正確
さを要求される仕事はダメダメだし。それにお前、幽霊のクセにホラーとかダメじゃん。
俺を刺したらすっげー血が出ると思うけど大丈夫なのか?」
29 名前:2/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:19:48.76 ID:H2+JaGsB0 [7/15]
『ぐっ……ううううう……だだだっ、大丈夫です……多分…… 首とか、お腹とか、スプ
ラッタになりそうなところは避けますから……』
「ついでに言うと、俺まだ死にたくないんだけどさ。怨念で地縛霊になっちゃったらどう
する? それこそずっとお前と一緒にいる事になる訳だけど」
『そ、それは望むところ……ではなくてですね。そんな事になったら、絶対に追い出しま
すから。ここは私の家なんですからね』
「お前は勝手に取り憑いてるだけで、所有者は大家だし、今の借主は俺だからな。所有権
主張すんな」
『そんなあっ!! 私だって、前の前の前の前の前くらいの借主なんですよ? 死んで一
方的に契約打ち切られただけで、少なくとも立場的にはタカシさんと同等のはずです』
「まあ、とりあえずだ。隠れていて声だけ聞こえてきても喧嘩するのも興ざめだしな。続
きは姿を現してからにしろ」
『い……嫌です』
「は? 何でだよ」
『何でもかんでもありません!! と、とにかく嫌なものは嫌なんです。タカシさんにわ
ざわざ姿見せなくたって、喧嘩くらい出来ます』
「別に、出会った最初の時から姿見せてたじゃん。むしろ俺みたいに霊感の強い相手だと
消してる方が大変だって言ってなかったか?」
『言いましたけど、とにかく今は見せたくないんです。絶対に』
「フーン。じゃ、まあしょうがないか」
『そうです。出ても平気になったら自分から姿を現しますから、今はほっといて……って、
何やってるんですか、タカシさんっ!!』
「気を集中して霊感を高めてるんだよ。そうすれば、姿見えなくても気配で居場所分かる
からな。お? こっちの方か」
『キャアッ!! ちょちょちょ、ちょっと止めて下さい触らないで下さいってば!!』
「お? この辺か。確かに何も無い空間なのに人間っぽい感触があるな」
『ダメです撫でるのはあっ!! って、ちょ、そこはっ!!』
「ん? 何か柔らかいのに当たったぞ? 何かふわふわして弾力があって揉み心地がいい
というか……」
『ダ……ダメッ……ダメ……ですっ……そんな風に揉むのはぁ……ひゃうっ……』
30 名前:3/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:20:19.60 ID:H2+JaGsB0 [8/15]
「何か急に大人しくなったな。よく分からんけど、ここら辺が弱点なのか? なら、もう
ちょっと責めれば我慢出来ずに姿現すかも」
『へっ……? や、止めて下さい!! これ以上は――ひゃんっ!!』
「いや。どこだか分からないけどいい感触だな。ほら。出て来ないともっと弄くるぞ」
『ダメ…… そんなとこ……弄るのはぁ……あ、あ、あ……ひんっ……』
「もう少しで落ちるか? ほら。我慢するのは体に良くないぞ。無理して降参しちまえよ」
『ひうっ……あああっ……あんっ!!』
「ほーれ。これでどうだ?」
『ひゃあああうううんっ!! もう……もう…… いい加減にして下さいっ!!』
ポカッ!!
「あいてっ!!」
『どんだけ鬼畜なんですかタカシさんはぁっ!! ひ、人が姿を消してるのをいい事に知
らないフリして胸を揉みたくるなんて!! ドスケベです!! 変態です!! 犯罪者で
す!! 今度こんな事したら強制わいせつで訴えますからねっ!!』
「幽霊なんて法律の枠外なんだから罪になんないだろ? 大体不可抗力だし」
『嘘ですっ!! 絶対気付いて触ってました。この卑怯者!!』
「そもそもお前が素直に姿を見せてれば、こんな事態にもならずに済んだとは思うけど……
まあ、理由も分からなくないか」
『へ? どうしたんですか? 何か急に理解を示すような態度を取るなんて、気持ち悪い
んですけど』
「いや。お前が姿を見せたがらなかった気持ちは分かるよ。確かに、その髪じゃなあ」
『へっ……!? いっ……いやああああああっ!! 見ないで、見ないで下さいってば!!』
「いや。見ないでっつっても、もう見ちゃったし。これ以上隠しても意味無いだろ」
『うううううっ…… グスンッ!! タカシさんにだけはこんな髪を見られる訳には行か
なかったのに。絶対バカにされる。からかわれる。どこのパンクロッカーだって揶揄され
るに決まってます』
「いきなり見たら、弄らずにはいられなかっただろうけどな。まあ今更だし止めとくわ。
それより、一体何だってそんな髪になったんだ?」
31 名前:4/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:20:50.96 ID:H2+JaGsB0 [9/15]
『分かりません。昔っから……と言っても生きてるうちはもちろん違いますよ。幽霊にな
てからですけど、こんな風に天気が悪くて湿気がものすごい日だと、こんな風に髪の毛が
ボワッと膨れ上がっちゃって……』
「へー。何なんだろうな? 幽霊だから静電気がより過敏に反応するとかなんだろうか?
その割には触ってもバチバチ来なかったけど」
『理由なんて分かりません。知ってたらとっくにこんな髪型にならないよう対策してます』
「なるほど。じゃあ今度、この道の筋の人にでも聞いてみるか。うちの地縛霊の女の子が
困ってますって」
『絶対止めて下さいっ!! 幽霊が実在するなんてなったら、私絶対見世物にされちゃい
ます。いいんですかタカシさんはそれでも。この部屋だって、好奇心に溢れた野次馬たち
がいっぱい押し寄せてきて、さながらテーマパーク状態になっちゃいますよ?』
「なるほど。優だけに優園地か。上手い事言うなお前も」
『誰もシャレでそんな事言ってません。私とタカシさんの二人きりの静かな生活が壊され
ちゃいますけど、それでいいんですかって聞いてるんですっ!!』
「まあそうなったら俺は引っ越すし。お前は地縛霊だから動けないだろうけど」
『私を見捨てて逃げるって言うんですか!! どんだけ悪魔なんですかタカシさんはっ!!』
「見捨てるも何も、そうなったら住めないしな。まあ、安心しろ。たまには様子見に来て
やるから」
『結構ですっ!! 大勢の見世物になって女郎同然の身になった私を笑いに来るんでしょ
う? そんな鬼畜になんて会いたくありませんから』
「三角頭巾に白い着物でうらめしやぁぁぁ~~~とかやってたらさすがに笑うけどな。お
前も意外と楽しいかもよ」
『何をどうすれば楽しくなるんですかっ!! もういいです。タカシさんなんて知りませ
ん。私を売り飛ばして見世物にして、その収入で豪遊でもなんでもすればいいんですっ!!』
「さすがに幽霊程度で豪遊は無理だろ。てか、そもそも前提が間違ってるし。優の事を相
談できる霊能力者だったら、他に幽霊なんてたくさん見てるだろうし、今更物珍しくもないだろ」
『本当ですか? もしちゃんとこの体質を直してくれるって言うなら、お願いしてもいい
かも知れませんけど……』
「ああ。でもそれほど強い霊能力者なら、いっそお祓いして貰ったほうがいいかも。そう
すれば、幽霊も消えて俺はめでたく安くて綺麗なワンルームに気兼ねなく住めるという」
32 名前:5/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:21:22.11 ID:H2+JaGsB0 [10/15]
『やっぱり悪魔ですタカシさんはっ!! そんなに私が邪魔なんですか? 邪魔なんです
ね? ええ、もういいです。ポルターガイストで部屋の中をメチャクチャにしてやりますからっ!!』
「冗談だって。祓うくらいならとっくに出てるし。でもまあ、霊能力者なんて安いのは胡
散臭そうだし、ちゃんとしてる人は金掛かりそうだから、当面はこのまま保留だな」
『そんなっ!! 私ずっとこのままタカシさんの前でこんな髪型して過ごさなくちゃなら
ないんですか? そんなの嫌です。みっともないし』
「そう言ったってしょうがないだろ。まあ安心しろ。これはこれでなかなか味のある髪型
になってっから」
『安心なんて出来ません。ていうかその顔。絶対本気で似合うなんて思ってませんよね?
超面白いとか思ってませんか? 絶対バカにしてますよね?』
「いやいやいや。バカになんてしてないから。信用しろって。ホント言えば、最初ちょっ
と面白いとは思ったけど、もう見慣れたからさ」
『うううううっ…… やっぱりバカにしてたじゃないですかあっ!! タカシ様って本当
に腐った精神の持ち主ですよね? 女の子バカにして喜んで……そんな人は地獄に落ちれ
ばいいんですっ!!』
「まあ、拗ねんなって。ちょっと顔上げてみ? 悪いようにはしないからさ」
『嘘です。絶対私の顔見て笑うつもりです。信用なんてしません』
「全く、しょうがねーな。すぐ卑屈になるんだからよ。まあそのままでもいいや。ちょっ
とだけ動くなよ?」
『動くなって、何するつもりなんですかっ!! って、髪触るの止めて下さいっ!!』
「すぐ済むって。ほら、これでよし。ちょっと鏡見て――って幽霊は鏡には映らないんだ
よな。窓ガラスに自分の姿映して見てみ?」
『どんなイタズラし掛けたんですか? どーせ、髪に変な事したんでしょう? もういいです』
「いいから見てみなって。一度でいいからさ」
『分かりましたよ。笑うなら好きなだけ笑えばいいんです。全く、どんな姿にされたんだ
か――え?』
「どうだ? ドンキで見つけた髪飾りだけどさ。もしかしたら実体化してる時は着けられ
るかなって。試しにやってみたけど、なかなかいい感じだろ?」
33 名前:6/6[] 投稿日:2013/10/05(土) 20:21:53.10 ID:H2+JaGsB0 [11/15]
『いえ、その……あの……』
「これなら、その髪でもそう変には見えないだろ。というか、俺的には可愛く出来たと思
うんだけどな。どうだ?」
『う……ううううう…… タッ……タカシさんに可愛いとか言われても虫酸が走るだけで
すけど……でもその、着けないよりはマシかなと……思いますので、一応お礼は言ってお
きます……』
「どうでもいいけどさ。その……俺に向かって毒舌吐くのはいいけどさ。そんな照れ顔で
言われても、説得力ゼロだぞ」
『んなあああああああああっ!!!! 言わないで、言わないで下さいいいいいっ!!!!』
この日以降、ジメジメした日は嬉々として髪飾りを着ける幽霊さんがいたりとか
最終更新:2013年11月17日 16:22