353 名前:1/5[] 投稿日:2011/05/28(土) 13:03:35.45 ID:Zsy2s4Ae0 [5/9]
『全く、めんどくせえな。疲れてんのに、何で女子の応援しなきゃなんねーんだよ』
【アホか。この女子バレーでウチのクラスが勝てば、球技大会で総合優勝じゃねえか。全
員で応援しろって担任から指示出てたろ】
『やれやれ。ま、いっか。終わるまでここで試合見てりゃいいんだろ。ふぁーあ……』
【何言ってんだよ。お前の嫁の別府が出てんだろ? 声出して応援してやれよ。きっとや
る気出すぜ】
『ふざけんな。誰が嫁だっつーの。あんなチャラチャラしたの、好みじゃねーよ』
【その割に、いつもベッタリくっ付いてるじゃん。あれだけ可愛い子に好かれてそんな事
言ってたら、お前袋叩きにされるぞ? 聞いたの俺だからいいけどさ】
『みんな見た目に騙されてんだよ。幼馴染ってだけでも疲れんのに、四十六時中一緒にい
たりしたら死ぬぞ。マジでプライベート無くなるし』
「あ? カナタ君だーっ!! 応援に来てくれたの? うれしーっ!!」
『バカ。お前の応援に来たんじゃねーよ。クラスの応援だっつーの。それも強制的にな』
「じゃ、今からでも私の応援してよ。頑張るからさ」
『しねーよ。あと、あんま張り切り過ぎんなよ。お前、いっつも何かしらやらかすんだから』
「失礼な。本気出したら私、凄いんだからね。見ててよ、カナタ君」
『やれやれ。調子乗りやがって。あのアホ』
【相変わらずお熱いねえ。お前ら】
『あー、もう。勝手に言ってろ、バカ』
「せやっ!!」
ピーッ!!
[きゃーっ!! やった、孝美。ナイススパイク]
「フフン。見たか、私のじつりょ……って、アイタタタ……」
[え? ちょっと、どうしたのよ孝美]
「わかんないけど……ちょっと無理して打ったから、着地の時足首捻ったかも……ったぁ~……」
354 名前:2/5[] 投稿日:2011/05/28(土) 13:04:16.43 ID:Zsy2s4Ae0 [6/9]
[だ、大丈夫? 救護班ちょっと来て!!]
「いや、そんな大げさにしなくても大丈夫だってば。いっ……たあああああ……」
[何言ってんのよ。全然大丈夫じゃないじゃない。ほら、肩に捕まって]
「ごめんね、フミちゃん。少し冷やせば多分平気だから」
【おい。何か別府の奴、怪我したんじゃね? 何か支えられながら退場してるぞ】
『ん? 何やってんだあのバカ。全く、どうせ調子に乗って無茶なプレーしたんだろ』
【そう言ってる場合かよ。ほれ、行ってやれよ】
『平気だろ。別に俺が行って何かしてやれることなんてねーし』
【元気付けてやる事くらい出来るだろ? こういう時、好きな人が傍にいてくれるだけで
心強くなるとか、そういう心遣いはないのかお前は】
『好きって……だから言ってんだろ? 俺たちはそういう関係じゃねーって』
【今、照れてる場合か。お前はともかく、別府の奴はどう考えてもお前にベタ惚れだろ。
こういう時くらい、彼女に優しくしてやれって。な?】
『お、押すなって!! 分かったよ。いきゃあいいんだろ。いきゃあ。全く……』
「イタタタタ……」
『おい。何やってんだよ、このアホ』
「あ、カナタ君。心配して来てくれたの?」
『ちっと様子を見に来ただけだよ。で、どうなんだよ。足か? やっちまったの』
「うん。ちょっと捻っただけ。だから少し休めばまたすぐ、カナタ君にカッコイイ姿見せ
られるから」
『どれ……って、バカ。お前、相当腫れてんじゃねーか。こんなので復帰出来るわけねーだろ』
「ううん。見た目ほど酷くないから。見て見て。ほら、こんなにげん――――っっっった
あああああああ!!!!」
『お前、バカだろ。いや、バカを通り越して救いようの無いバカだな』
「あううううう……痛い痛い痛い……」
『全く……こりゃ、保健室行って先生に診てもらわないとダメだろ。おい、保健委員』
355 名前:3/5[] 投稿日:2011/05/28(土) 13:04:58.03 ID:Zsy2s4Ae0 [7/9]
〔え? あ、はい〕
『悪いけど、担架持って来てくれ。こいつ、保健室に運ぶから』
〔あ……はい。ちょっと待ってて下さい〕
「ちょ……ちょっとちょっとちょっと!!」
『何だよ、救いようのないバカ女。言っとくけど、行かないとか却下だからな。まあ、も
う試合に出られる状況じゃないってのは、身に染みて分かっただろうけど』
「そうじゃなくって!! こういう時はその……カナタ君が私をおんぶして連れてくとか、
もしくは、お……お姫様抱っことかして連れてくものじゃないんですか?」
『こんだけの衆人環視の中で出来る訳ねーだろ。つか、そもそも誰もいなくてもやらないけどな』
「冷たい!! 冷たすぎだよカナタ君。私、怪我人なんだよ? もう少し優しくしてくれ
たっていいと思うんだけどなー」
『だから優しくしてやってんだろ? 面倒見てるだけでも感謝しろ』
〔すみません。あの……担架持ってきましたけど〕
『よし。じゃあ孝美はこの上に乗れ。片足使えなくても、何とかなるだろ?』
「無理。カナタ君が支えてくれないと。そのくらいはしてくれたっていいでしょ?」
『しょうがねえな。ほれ……よっと。おい、友哉』
【何だよ? 一体】
『こいつ、保健室運ぶからさ。お前、そっち持てよな。人の背中押した責任くらい取って貰うぞ』
【いや、そりゃいいけどさ。こういう時って、カナタがお姫様抱っこして運んでくもんな
んじゃねーの?】
『だから、やらねーっつってんだろ!! ニヤニヤしてんじゃねーよ。このバカ!!』
『良かったな。軽い捻挫程度でよ』
「うん…… あの、先生は?」
『ああ。何か、サッカーの決勝でも頭打った奴が出たとかで、急いで出てったよ。全く、
何でこう、うちのガッコの球技大会って熱くなる奴が多いんだろうな』
「いいじゃん。盛り上がって。あ? そういえばサッカーって言えばカナタ君も2得点し
たよね。私、ちゃんと見てたよ。もう興奮して声枯らしちゃうくらい叫んじゃったよ」
『ああ。その声のせいで気が散らなきゃ、もう1点くらい取れたかもな』
357 名前:4/5[] 投稿日:2011/05/28(土) 13:05:43.64 ID:Zsy2s4Ae0 [8/9]
「私のせい!? そ……そんなぁ……」
『冗談だよ。お前の声なんていちいち聞いてられるか。それに、どっちみち3点取られて
一回戦負けだからな。別にカッコ良くもねーだろ』
「ううん。試合に負けちゃったのは残念だったけど、カナタ君はカッコ良かったよ。いつ
だってカナタ君はカッコ良いけど、でも改めて惚れ直しちゃった」
『フン。好き勝手言ってろよ。バカ』
「それに比べて私なんてなあ…… これからっていう大事な時に怪我しちゃって……」
『俺にかまけてチャラチャラしてっからだろ。だからいつも言ってんじゃん。調子に乗る
なって。お前、大体それでミスするんだから』
「うん。そうだよね……カッコ良いとこ見せようなんて張り切って無理しちゃってさ……
それで怪我しちゃって……クラスの皆に迷惑掛けて……挙句の果てに、カナタ君にまで迷
惑掛けちゃって……」
『お、おい。ちょ……待てよ。何泣いてんだよ!?』
「だって……だってだってだって……これで負けちゃったりしたら私のせいだし……グスッ……
皆にもカナタ君にも心配させて迷惑掛けて……いつもカナタ君にバカだバカだって……ホ
ント……大バカだよ私……」
『全く……しょうがねえなぁ……』
ギュッ……
「キャッ……!? カ、カナタ君?」
『いいか、よく聞けよ。確かに孝美もよく頑張ってたけどさ。だけど、お前一人で決勝ま
で勝ち上がってきたわけじゃないだろ? チーム皆でまとまって今日まで放課後練習して、
頑張ってきたからだろ? 違うか?』
「う……ううん。その……違わないけど……」
『だったら、ここで負けたとしてもそれは別にお前一人のせいじゃない。チーム全員の力
が、向こうに及ばなかったからだ。だから、お前が責任を感じる事じゃねーよ。個人戦な
らともかく、バレーなんてチームプレーなんだからさ』
「でも……やっぱり、心配させちゃったから、それでプレーが乱れたりしたら……」
『それも他の奴らの心の弱さだよ。別に障害を負うほどの怪我したわけじゃないんだから。
あと、スポーツに怪我はつきものだから、それも気にすんな。お前だって、怪我したくて
した訳じゃないんだろ?』
358 名前:5/5[] 投稿日:2011/05/28(土) 13:06:32.20 ID:Zsy2s4Ae0 [9/9]
「そ、それはもちろんだよ。けど……」
『だったら、起こった事は気に病むな。ただ、調子に乗り過ぎた事だけは反省しとけ。痛
い思いするのは、結局誰でもない、お前自身何だからさ』
「う、うん。その……ありがとう、カナタ君。私の事、慰めてくれるなんて……嬉しいな……」
『落ちついたか? それじゃあ、離すぞ』
「ダ、ダメ。ちょっと待ってよ」
『何だよ? まだ、泣き止まないのか?』
「ううん。その……せっかく、カナタ君が抱き締めてくれたから……もうちょっとだけ、
いいでしょ? お願い。今だけ、甘えさせて……」
『しょうがねえな。あと少しだけだぞ?』
その後、優勝報告に来たクラスの女子に思いっきりこの様子を見られて、顔を真っ赤に
しながら言い訳に奔走するカナタ君の姿があったとか。
終わり
最終更新:2011年05月29日 11:38