411 名前:1/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:49:11.85 ID:07aC0/nt0 [7/15]
  • 同僚の送別会に出席したツンデレと男

『「[【かんぱーい】]」』
[おー。いい飲みっぷりじゃん。はい、どーぞ。かなみ]
『あ、いいっていいって。今日は友子が主賓なんだから、大人しくしてて。私の分は、
きっと傍に座ってる使えない先輩が注いでくれるから』
「使えない先輩って、もしかしたら俺の事?」
『あれ? 誰も別府さんだなんて名指しで言ってはいませんけど。でも、心当たりがお
ありでしたら、注いでくれますよね』
「うーん。ここで椎水さんに注いだら、自分で認めることになっちまって癪だけど……
まあ、はいどうぞ」
『あ、すみません。さすが営業ですよね。ビールの注ぎ方だけ無駄に上手で』
[あはは。相変わらず、二人の夫婦漫才は面白いわ]
『誰が夫婦だっつーの。会社の先輩だからこそ、文句言いながらも世話してあげてるけ
ど、家でだなんて絶対ゴメンなんだから』
[分かってる分かってる。もう何度聞いた事やら。でも、とりあえずは、これが最後なのよねー]
『そうよ。全く、人の事散々からかっておいて、私より早く結婚しちゃうなんてズルイ』
[あっははは。何てゆーのかな。私だって、まさか自分が結婚するなんて思わなかった
けどさ。まあ、勢いみたいなものっていうか……ねえ? プロポーズされちゃったし……
ここで断っても良かったんだけど、みたいな]
『相手の人って、高校の同級生だったよね。全くズルイなー。付き合ってる彼氏いないっ
てずっと言ってて、人を騙してきてさー』
[いやいや。だって全然付き合ってるなんて実感なかったしさ。デートだなんて気張っ
た事も一度も無いし、好きだとか付き合おうって言われた事もずっと無かったもん]
『えーっ? でも、プロポーズはあったって言ったよね? どんな風だったの?』
[うん。だからね。休みの日にまったりしてたらさ。これからも、こんな風にずっと過
ごしていけたらいいんだけどなって。最初、あんまりにもさりげなさ過ぎてプロポーズ
だなんて気付かなくてさ。そうねー、なんて生返事しちゃって。そしたら、年取っても
だよ。それでもいいのって。その時初めて気付いたのよね。そっか。これからもずっと
一緒に過ごしたいって、そういう事なんだなって]

412 名前:2/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:49:52.76 ID:07aC0/nt0 [8/15]
『で、何て答えたの?』
[いやー。アンタはいいの? あたしみたいな適当な女でって。そしたら、あたしと一
緒にいられなくなる方が嫌だから……って。さすがに、ちょっとキュンって来ちゃったかな]
『羨ましーなー。そういう自然体の付き合いって。いい人そうだね。旦那さんになる人』
[いい人そうって言うか、逆に人の良さだけが取り柄みたいなもんよ。大してカッコ良
くもないし、稼ぎだってそんな良くないし]
『またまた、そんな謙遜しちゃって。あーあ。あたしも早くいい人見つけて結婚したいなー』
[かなみこそ何言ってんのよ。だから、すぐ隣にいるってのに、ぜんっぜん、積極的に
行こうとしないんだから。そんな事ばかり言ってるとね。いざ、別府さんに結婚話が出
た時に後悔する事になるんだからね]
『ぜっったい、後悔なんてしないし。大体、こんな人に結婚相手なんて現れるわけもな
いし。仮にお見合い話があっても、一度会えば向こうから断られるに決まってるわよ』
[あれ? 聞きました、別府さん。愛しい後輩が、こんな事言ってますよ]
「うん? 何か言った?」
『ほら。全然こっちの言う事なんて聞いてないし。いいですよ。こっちの話なんて聞か
なくても。むしろ、邪魔しないで下さい』
[いやいや。別府さんはどうなのかなーと思ってさ。こんな可愛い後輩が甲斐甲斐しく
面倒見てくれてるのに、何とも思わないのかなーって。この子、今のところフリーなんですよ]
『余計な事は言わないの!! もう、最後までこうなんだから。毎回おんなじこと言わ
せないでよね。だらしない人見ると黙っていられないのは性格なの。別府さんがとりわ
けだらしのない人だから、一番面倒見る回数が多いだけで、他の人の面倒も見てると思うけど』
[あたし、今日最後なのよ? ぶっちゃけちゃったりしないの?]
『しない!! というか、ぶっちゃける事何にもないし』
[んで、別府さんはどうなんですか? かなみの事、面倒見る気とかないですか?]
「いやいや。椎水さんだったら、俺じゃなくたって、他にいくらでもいい男見つかるだ
ろ。可愛くて明るくて元気で、付き合いもノリもいいし、あれこれ気が付いて世話も焼
いてくれるし」
[ありゃ? 意外に余裕の発言じゃないですか。もしかして、別府さんはもう隠してこっ
そり彼女さんいるとかですか?]


413 名前:3/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:50:48.39 ID:07aC0/nt0 [9/15]
「いやいやいや。そうでなくて。普通にこれだけ可愛かったら、出会いも多いと思うん
だけどなあ」
[意外と恋愛ベタなんですよ。合コン言っても、気を遣っちゃうタイプで。こう、何て
いうか男に媚びるのが下手なんですよね]
「まあ、口調は厳しいからなあ。部長ですら、思わずかしこまっちゃうくらいだもんね」
[アハハハハ。そうでしたっけ。あれ、去年の花見でしたよね。酔っ払って説教しちゃっ
て。超笑えたっけ]
『二人で好き勝手人の事言ってないでよね。あと、別府さん。可愛い可愛い連呼しない
で下さい。別府さんに言われると、嬉しいどころか、背中がゾワーッとして、こそばゆ
くなっちゃいますから』
「せっかく褒めたのに……なあ?」
[ねえ。こういう所が、男が敬遠する所以じゃない?]
『誰が男の人に敬遠されてるって。さっきから、最後だからって私の事、好き勝手言い
過ぎじゃない? ちょっと』
[フフン。もう今日は最後だからね。かなみがベロベロになるまで酔わせて、洗いざら
い吐き出させるから。特に男関係とか]
『冗談。私こそ、友子をベロベロにさせて、今まで隠しまくってた彼氏との馴れ初めを
全部吐かせるんだから』
「じゃあ、同期の女子同士で積もる話もあるだろうし、俺はこの辺で」
『待って下さい。別府さんが抜けたら、私達のお酌は誰がするんですか? 特に、友子
は今日の主賓ですよ。こういう時くらい、役に立ってもいいんじゃないですか?』
「あの…… 俺、一応君らの先輩で……」
[申し訳ないですね。でも、せっかくだから聞いていって下さいよ。私がかなみをベロ
ベロにして、別府さんの事をどう思ってるか、洗いざらい吐き出させますから]
『何言ってんの。そんなの、いつも言ってる通りだから変わんないし。それより、友子
と旦那様の馴れ初め聞いといた方がいいと思いますよ。別府さんも、少しは参考になる
かもしれないし。まあ、素材的に無理だとは思いますけど』
「…………聞きたくないなあ。誰か、俺を助けてくれぇ……」


414 名前:4/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:51:30.98 ID:07aC0/nt0 [10/15]
[それじゃあ、皆さん。今まで本当にお世話になりました。ありがとうございます]
【お疲れ様。結婚式、楽しみにしてるからね】
〔頑張ってな。いいお嫁さんになるんだぞ〕
「お疲れ様。幸せになってな。花嫁姿、楽しみにしてるから」
[ほんっとうに、ありがとうございます!! さて……これ、どうしようか?]
『うにゅ……ともほぉ……』
[全く、私と飲み比べとか、無謀なチャレンジするから]
「大丈夫? 椎水さん」
『むぅ……しゃわらないれくらさい。べっぷさんは……きもひわるいれす……』
[舌が回らないくらい酔っても、とうとう口は割らなかったわねえ。その点では、私の負けだわ]
「じゃあ、椎水さんは俺がタクシー捕まえてくるから、それに乗せるよ」
[すみません。じゃあ、申し訳ないけど、かなみを家までお願いできます?]
「え? 俺が家まで送るの? そりゃ、さすがにまずくないか?」
[近くでもいいですよ。とにかく、こんなに酔っ払っちゃって、一人で帰らせると心配
だから。それとも、別府さんの家にお持ち帰りします?]
「いやいやいや。酔っ払った娘さんを連れ込むのはさすがに反則だろ。分かった。責任
持って、送り届けるよ」
[頼みます。それじゃあ、かなみ。しっかりやるのよ。今度はアンタの番だからね]
『ん……うん……ふぅーっ…… じゃね……友子……』
「よし、捕まえた。それじゃあ、椎水さん。バッグ持った? 乗るよ」
『一人で立てますって……ととと……』
「うわっと。じゃあ、これで失礼します」
[じゃあ、別府さんも、また。新居に遊びに来て下さいね、二人で]
「ああ。約束するよ。じゃ」
[ほら。かなみも、早く]
『イヤなの……別府さんろなんら……乗りたくない……』
[だーっ。最後まで迷惑掛かる子ね、もう。ていっ!!]
『んきゃっ!?』
「だ、大丈夫? 椎水さん」
『イタタタ……足打った……』

415 名前:5/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:52:13.17 ID:07aC0/nt0 [11/15]
[……それじゃあね。かなみ]
「すみません。出して下さい」
 ブロロロロ……
『……気持ち悪い』
「大丈夫か? 車の中で吐くなよ。我慢出来ないようなら言えよな。すぐ、車止めて貰うから」
『平気です。それより……肩……』
「え?」
『肩、貸してください。もたれたいから……』
「あ、ああ。いいよ。はい」
『フゥ…… 友子の話、聞いてました? タカシさん』
「え? あ、ああ。もちろん」
『旦那さんになる人、随分しっかりしてるじゃないですか。大人しいけど、しっかり智
子を支えてる感じで。結婚だって、すっごい考えてるし』
「だな。何か、口でいろいろ言ってるけど、お互いが支え合ってていい夫婦になりそう
だなって感じがした」
『ですよね。なのに、タカシさんと来たら……』
 ギュウッ!!
「あいてっ!! いきなりつねるとか、何すんだよ!!」
『だって、全然だらしないじゃないですかぁ…… 一体、いつになったら、男を見せて
くれるんだか……ずっと……待ってるんですよ……』
「ゴメン。でも、やっぱり大分酔ってるな。普段はそんな事言わないのに」
『……分かって……ますもん……いろいろ、事情があるって…… だけど……私だって……
いつまでも待たされたら……腐っちゃいますよ?』
「分かってる。ちゃんと、責任は取るよ。ここまで待たせてるんだしね」
『……絶対ですよ?』
「うん。でも、あれだけ酔わされてもよく口を割らなかったな。正直、感心したよ」
『私……酔っても、気だけは確かだから…… 友子には散々からかわれたから……絶対
秘密にして……結婚式でびっくりさせようって……そう決めてるんですから』
「彼女、驚くかな? むしろ、ほらやっぱりって顔するんじゃないか」

417 名前:6/6[] 投稿日:2011/05/28(土) 19:53:44.43 ID:07aC0/nt0 [12/15]
『かもしれないけど……それでもっ!! だから……時間が経ち過ぎたら……驚きも減っ
ちゃうかも知れないんだから……』
「確かに。約束はこっちの方が早かったのに、まさか彼女に先を越されるとは思わなかっ
たからな」
『頼みますよぉ……ずっと……待って……スゥ……』
「寝ちゃったか。そうだな。あまり、自分の家の事ばかりも言ってられないか。かなみ
の為にも……な……」


終わり
最終更新:2011年05月29日 11:46