701 名前:1/5[] 投稿日:2011/06/04(土) 19:18:48.69 ID:ynXjr9zT0 [2/14]
「ねえ、カナタ君。今日さ、お昼一緒に食べようよ。二人っきりで」
『断る。じゃ、まーそういう事で』
「即答で拒否ですか!? せめて、ちょっとは悩むとかないの? ねえ!! ねえ!!」
『ウザイから体揺するな。昼は忙しいんだよ。友哉たちと花札すっから』
「そんなの一日くらいいいじゃん。ねえねえ。私、せっかくカナタ君のためにお弁当作っ
て来たんだからさ」
『はあ? そんなの知るかよ。そもそも、俺だって弁当持って来てるし。作って来るな
ら、昨日のうちに聞いとけよな。そしたら、その時点で断るから』
「最初っから断る事前提なんて酷いよ。大体、そういう事言うって分かってるから、内
緒で作って来たのに。せっかくの彼女の手作り弁当なんだよ? 喜びこそすれ、断るな
んて有り得ないと思うんだけど」
『いつから彼女になったよ。いつも言ってるけど、俺ら単なる幼馴染でしかないからな。
なのに、お前が調子こいて吹聴するから、いつの間にかクラス公認のカップルにされち
まったじゃねーかよ』
「聞いた? 男子諸君。可愛い彼女を目の前にしてこの発言。照れ隠しにしてもちょっ
と酷過ぎると思いませんかね?」
【全くだよな。さっきから聞いてると、カナタの奴酷い事ばっかり言ってるよな】
『うわ。何だよお前ら。裏切るつもりか』
【裏切るも何もねーよ。可愛い幼馴染が弁当作ってくれるなんて夢のシチュが目の前に
あるっていうのに贅沢言ってんじゃねーぞ、コラ。いいから、とっとと行け。そして死ね】
『ちくしょう。気が付きゃ、周囲からの嫉妬の視線が……お前のせいだぞ、このヤロウ』
「エヘッ。カナタ君ってば、照れること無いのに」
『照れんじゃなくて、心底から迷惑してんだ。とにかく、こんな針のむしろにゃいられ
ないから、俺は場所変える。お前は付いて来んなよ』
「あ、ちょっと待ってよ、カナタくーん!!」
702 名前:2/5[] 投稿日:2011/06/04(土) 19:19:34.73 ID:ynXjr9zT0 [3/14]
「はい、カナタ君。貴方の妻からの愛妻弁当ですよ」
『付いて来んなっつったのに……ちゃっかり俺の横キープしやがって……』
「そんな仏頂面しないの。ここは、私たち二人きりなんだから照れる必要もないんだし」
『勘違いすんなよ? 別に照れ隠しでキツイ言葉吐いてる訳じゃねーからな。そこのと
ころだけは、ハッキリ言っとくからな』
「まあまあ。そんな事より、お弁当食べてよ。ね?」
『だから言ってるだろ。俺には弁当があるからって……あれ? あれ?』
「あ、カナタ君の弁当だったら、私が既にこちらにキープしておりますが」
『キープって、お前どこに隠した。出せよ、早く。マジで怒るぞ』
「いいよ、別に取っても。カナタ君が取れるなら、だけど」
『だからどこに隠したか言えって…… ちょっと待て。なんだよ、お前のスカートの、
物凄く不自然な膨らみは? まさか……』
「大正解。さ、どうぞ。私は抵抗しないから、自由に取っていいよ」
『おまっ……いつの間に人の弁当をそんなトコ入れたんだよ!! いいから出せ!!
早く出せ!! 向こう向いててやるから』
「やーだよっ!! だって、カナタ君の弁当はここにあるじゃん。私の作ってきたお弁当が」
『だから、それは食わんって言ってるだろ。しつこい奴だなお前も。ほら、いいから早く出せ』
「だったら、カナタ君が自分で取りなよ。私のスカートの中に手を入れて。何だったら、
まくって中を見てもいいけど」
『誰が見るかっ!! ちくしょう…… 卑怯な手を使いやがって。汚ねーぞ、このヤロ……』
「はてさて。純情なカナタ君が、女の子のスカートの中に手を突っ込めるかな? ほら
ほら。早くぅ」
『誘惑するような声出すな。クソッ…… 誰がお前の策略なんかに負けるかよ。こうなったら……』
「どうするの? スカートまくって、お弁当を取り返すの? それとも、大人しく私の
お弁当食べる? ほらほら。早くしないとお昼休み終わっちゃうよ?」
『うっせーな。どこにも触らず、中も見ずに弁当だけ取りゃいいんだろ? お前、さっ
き抵抗しないって言ったよな? なら、簡単じゃねーか』
「カナタ君。声震えてるよ。可愛いなあ、もう。純情でさ」
『誰が純情だ!! バカにすんなよ。すぐに奪い返してやるからな』
703 名前:3/5[] 投稿日:2011/06/04(土) 19:20:20.83 ID:ynXjr9zT0 [4/14]
「どうぞどうぞ。ああ、でもいよいよ、私の純潔がカナタ君に奪われた事になるのかぁ……
何か、ちょっと興奮しちゃうな」
『ちょっと待てよ。何でこれしきの事で純潔が奪われたなんて事になるんだよ? 意味
が分からない事言うな』
「え? だって、お昼休み終わったら、多分みんなから聞かれるもん。カナタ君と二人っ
きりでどうだったって? そしたら、こう答えるから。カナタ君が、私のスカートを
まくって、中に手を入れて、まさぐって来たって」
『な…… なあっ!?』
「ウソじゃあないよね。本当は単にお弁当取ろうとしただけでも、受け取る側はそうは
取らないだろうし。どうする? 多分、一瞬にしてクラス中に広まっちゃうよね。それ
でもカナタ君、スカートの中に手を入れられるかな?」
『だああああっ!! ちくしょう!! 分かった、もういい。昼飯抜きにして、次の休
み時間に食うから。教室戻る時になったら、さすがにお前も隠し続ける訳にはいかない
だろうしな。そん時奪い返すわ』
「でも、いいの? 男子って次の時間体育だよね。お昼食べないと、さすがに体が持た
ないんじゃないかなあ」
『そんなもん、気合だ。たかが40分くらい、乗り越えてやらあ』
「ダメだよ。そんなやせ我慢で体調崩すような事しちゃ。だから、はいこれ」
『だから言ってるだろ。意地でもお前の作ってきた弁当なんて食わねえって』
「どうしてなの? 私がカナタ君の喜ぶ顔が見たくって、一生懸命に作って来たお弁当
なのに。どうしてそんな、意固地になってまで、食べてくれないの?」
『不味いから』
「何故に!? 何で食べるどころか、フタさえ開けてないのにそんな事言えるの? 酷
いよ!! ちゃんと味見してから言おうよ、そういう事は!!」
『何でわざわざ不味いと分かってる弁当食ってから言わなくちゃなんないんだ? アホ
らしい。そこに地雷があるって分かってて踏む奴なんてダチョウ倶楽部くらいのもんだろ』
「だから、食べてもいないのに不味いかどうかなんてわかんないじゃん!! 失礼だよ、そんなの」
『だって、お前超絶に料理下手だろが。幼馴染の俺が知らないとでも思ってたか?』
「ギク!!」
704 名前:4/5[] 投稿日:2011/06/04(土) 19:21:22.19 ID:ynXjr9zT0 [5/14]
『中学の時、調理実習でお前のせいで失敗して台無しになった料理を責任持って処分し
ろって班の子から言われた奴。アレを別の料理と騙して俺に食べさせようとしたろ?
匂いで気付かなかったら、俺は今頃鬼籍入りだ』
「そ、そんなのもう二年も昔の話じゃん。今は成長したもん。ちゃんと美味しい弁当作っ
て来れたもん。大体、好きな人に作るお弁当で相手殺しちゃったら意味無いじゃん」
『そこに気付いただけでも褒めてやるよ。そんな訳で、俺に弁当食わすのは諦めろ』
「だから、ちゃんと作って来たってば!! せめて見てよ。食べなくてもいいから、フ
タ開けるだけでもさ。ねえ、お願い。いいでしょ」
『どわっ!? わ、分かったら体寄せんな。胸押し付けんな。暑苦しいし、鬱陶しいっての』
「クスッ…… ホント、カナタ君ってスキンシップ弱いよね。怒りっぽいクセに、純情
なんだから」
『あ? 何だって?』
「わ、分かった。ゴメンなさいゴメンなさい。お願いだから、グーは勘弁して、グーは」
『全く…… 仕方ねーな。見るだけだぞ。見るだけ』
「う、うん…… 分かってるから。はい、どうぞ」
『つか、どうして弁当箱二個も使ってんだよ。どんだけ量多くしてんだ』
「カナタ君も食べ盛りだから、一つに入る量じゃ少ないかなあって」
『フン。ま、見るだけだから、関係ねーけどな』
カパッ……
「どうですかっ? 私の渾身の力作は!!」
『どわっ!? 勢い込むな。落ち着け、全く……』
「ね、ね。感想感想。早く教えてよ」
『ハァ…… あのさ。一つ聞いていいか?』
「はい。何でしょうか?」
『何で、こんなにこんもりと、野菜炒めが入ってるんだ?』
「エヘヘ…… 実はですね。ちょっと、作り過ぎちゃって……」
『だからって、全部詰めんなよ。適量ってもんがあるだろ。その上、何やら訳の分から
んものまで入れてるからグッチャグチャじゃねーか』
「おかしいな。詰めた時はもうちょっと綺麗だったんだけどなあ。持ってくる時に動い
たのかな?」
705 名前:5/5[] 投稿日:2011/06/04(土) 19:22:46.08 ID:ynXjr9zT0 [6/14]
『まあ、八割が野菜炒めじゃ、どうでもいいって話もあるけどな。あと、何で卵だけこっ
ちに寄ってるんだ?』
「え? それはね。炒り卵だよ。ホントは卵焼き作ろうと思ったのですが、グチャグチャ
になってしまったので……」
『ああ。あと、何か半分くらい炭になってないか?』
「だって、卵ってすぐ焼けちゃうんだもん。何とか頑張って固めようとしてるうちに、
裏っかわが真っ黒になっちゃって…… でも大丈夫だよ。食べられるよ」
『食べられるか!! 焦げた物は体にも悪いし、そもそも不味いだろ。あと、こっちの
生キャベツはなんだよ? 全然炒めてないのも入ってるぞ』
「それはキャベツの千切りだって。サラダもちゃんと入れておかないとね」
『野菜炒めと混じって収拾付かなくなってるぞ。あと、どこが千切りキャベツだ。むし
ろ厚切りキャベツだろこれ』
「これでも頑張って切ったんだよ? 見てよこの手。私の白魚のような手が絆創膏だら
けになっちゃったんだよ」
『何か、キャベツまで血に塗れてそうだな。食欲そのものが失せるわ』
「もうちょっと心配する言葉掛けてくれたっていいと思うんだけど」
『自業自得だ、頚動脈切らなかっただけでも幸運だったと思え。全く…… この春巻き
はまともだな。冷凍か』
「本当は全部手作りにしたかったんだけど、お母さんが一つくらいはカナタ君が食べら
れるものを入れなさいって言うから……」
『おばさん…… 分かってんなら、最初から作らせんなよな……』
「お母さんも酷いんだよ。愛娘の頭をポンポンポンポン叩くしさ。切る時の野菜の押さ
え方一つくらいとか、いいじゃん。ねえ」
『そりゃ、マジで危ないからだろ。むしろおばさんに感謝しとけ。でなきゃ、今頃お前、
病院行きだ』
「そんな大げさな。それより、こっちも開けてよ。ねえ」
『こっちって、どうせご飯が詰めてあるだけだろ? 見る必要もねえ』
「フッフーン。それはどうかな? ちょっと開けてビックリだよ?」
『ビックリって…… ホントにただのビックリ箱とかだったら、マジで殴るぞ』
「そんな事はしないって。ほら、早く。ね?」
719 名前:1/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:28:59.71 ID:ynXjr9zT0 [9/14]
『だから急かすな。仕方ねーな、全く……』
カパッ。
『げっ!? 何だこりゃ!?』
「エッヘヘヘー。ビックリした? ビックリした?」
『ビックリっつーか……何でご飯が黄色く染まってんだよ? 何したんだ、これ?』
「え? カナタ君って確か卵かけごはんが好きだったよね。だから、ご飯に生卵とだし
じょうゆをかけてみたんだけど……」
『チョップ!!』
ゴンッ!!
「いったあああああ!! 何すんのよカナタ君!! 酷いよ。私だって女の子なんだ
よ? いきなりおでこにチョップとかないよ!!」
『酷いのはお前の頭の中だ!! 弁当に腐りやすいものかけるな!! 俺の胃腸を破壊
する気か!!』
「だってだって、真っ白いご飯だけじゃ寂しかったんだもん。だからって、ふりかけと
か梅干じゃ芸が無いなあって思って……グスッ……」
『とにかく、これは産廃な。持って帰って捨てろ』
「えええーっ!! 食べてくれないの? カナタ君の為に頑張って工夫したんだよ」
『だったらお前、これの臭い嗅いでみろ。せめてそれくらいしてから言えよな』
「そんな。だってまだお昼だよ? 大丈夫だって――うぇっ……」
『今、えずきかけたろ。全く……卵を暖かいご飯にかけて常温で持ってくりゃ、そうもなるわ』
「はうぅ…… やっぱりダメ? 正露丸、買って来ても?」
『お前、俺に腹を壊せと言うか』
「い……いやその……ゴメンなさいゴメンなさい…… カナタ君の顔、本気で怖いよ。
殺気だってるよ」
『当たり前だ。まあ、お前は一つ、いい勉強でもしたと思え。あと、これとこれとこれもダメな』
「ああっ!? 私のお弁当のおかずが、次から次へと産廃扱いに」
720 名前:2/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:30:03.49 ID:ynXjr9zT0 [10/14]
『当たり前だ。体壊すものなんてもはや食い物じゃねえ。ゴミと一緒だ。お前だって生
ゴミは食えないだろ?』
「私の弁当を生ゴミと一緒にするなーっ!!」
『なら食ってみろ。もし残さず、全部食えたなら、こっちのまだ食べられそうなおかず
は、俺が食ってやってもいいぞ』
「マジですか!? カナタ君、私のお弁当食べてくれるの?」
『お前がその腐った弁当を食えたならの話だぞ。まあ、正直言えば無理すんな。俺のせ
いで体壊されたりしたらたまんねーしな』
「(これを全部食べればカナタ君が私のお弁当を……これを全部食べたらカナタ君が……)」
『ま、これに懲りたら今度からはまずがお前自身がちゃんと食える弁当を作って来るこ
ったな――って、おい。お前、その産廃見つめて何考えてるんだ? まさか……』
「カナタ君。お箸貸してっ!!」
バッ!!
『なっ……? お前、本気か? 止めろバカ!! そんなの食ったら絶対体壊すぞ。おい!!』
「ぬおおおおっ!! 食ったらあああああっ!!」
ガツガツッ!!
「グフッ!! ウェッ!! オエエッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!」
『ああ、もう!! 何やってんだよお前は。馬鹿かホントに。死ぬぞ!!』
「ううううう…… ゴホゴホ…… だ、だってだって……全部食べたらカナタ君、私の
お弁当食べてくれるんでしょ? だったら……」
『だからって体張ってまでやる事じゃねーだろ。ああ、もう分かったよ。お前のバカさ
加減にはホント呆れたわ。全く……今日だけは食ってやるから、とにかくそれを食うの
はもう止めろ』
「ありがとう!! やっぱりカナタ君って優しい」
『やれやれ……売り言葉に買い言葉とはいえ、変な約束すんじゃなかったぜ。大体お前
は、くだらない事に体張り過ぎなんだよ。女のクセに、いつか死ぬぞ』
「カナタ君の為に死ねるなら、私は本望だよ」
『ハァ…… 分かった分かった。いいから、箸寄越せ。食ってやっから』
「はい。それじゃあ遠慮なくどーぞ」
721 名前:3/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:31:30.36 ID:ynXjr9zT0 [11/14]
『むしろ今でも遠慮したいんだけどな。全く……こんな美味そうじゃない弁当食うなん
て初めてだぞ』
「ささ。早く早く。パクッとどうぞ」
『分かってるよ。今、ちょっと勇気を奮い起こしてる所なんだから、待てって』
「ジー……」
『何だよ。この野菜炒め、切り方がバラバラで火が通ってないのもあるじゃねーか。こ
れなんてほとんど生だし…… 無難に春巻きから行くか。いや。でも逃げても仕方ねー
しな。やっぱり野菜炒めから処分するしかねーか……』
「ジーッ……」
『で? お前はさっきから何を期待に満ちた目で俺を見つめてんだ?』
「え? だ、だってカナタ君がいよいよ私の手作り弁当を食べてくれるんですよ? 期
待するなって言う方が無理じゃないかなあ」
『いや。何かそれだけじゃないだろ。何か、こう……口元がニヤニヤしてる気がするんだが』
「ううん。そんな事ないよー。それよりほらほら。食べて食べて」
『いーや。絶対に何か隠してるだろ。お前のそういう表情は見え見えなんだよ』
ギュウーッ。
「いふぁいいふぁい!! いうふぁらいうふぁら、ほっふぇふふぁふぁふぁいふぇ」
『もはや何言ってんのかほとんどわかんねーけど、言うってんなら。ほら』
「いったあ~…… カナタ君、乱暴にし過ぎだよ」
『お前、俺相手にごまかせると思うなよ。さあ、何隠してたか言え』
「え? いやあ。別に大したことじゃないよ。このままカナタ君が食べたら、間接キス
だなあって思ったらつい口元が緩んじゃっただけで」
『ん? ああ。そんな事か。確かにそうだな』
キュキュッ……
「拭いた!? 拭いたよこの人、ティッシュで!! 酷い、酷過ぎる!!」
『別に間接キスくらい気にしねえけど、お前が騒ぐのが鬱陶しいからな。さて、それじゃあ食うか』
「ああ……むしろ私のせいなんだ…… 何かその言われ方、地味にヘコむんだけど……」
『いっそ、そのまま大人しくしててくれ。どれ……』
モギュモギュ……
「で、どうなの? 私のお弁当は」
722 名前:4/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:32:50.34 ID:ynXjr9zT0 [12/14]
『もう復活したのかよ。立ち直り早いな』
「だって、せっかくカナタ君が食べてくれてるのに、いつまでも落ち込んでられないも
ん。で、どうなの? 味は。美味しい? 美味しい?」
『いや。普通に不味いから』
「そんなぁ…… しかもリアクション薄いし。サラッと事も無げに言われても……」
『ある程度覚悟してたし、食えなそうなものは全部廃棄した後だからな。とにかく火の
通り方がバラバラだし、味付けも塩辛いし脂っぽくてベタベタするし。肉が入ってない
のは……ああ。焦げすぎて捨てたからか。とにかく、こんなもん人に食べさせるレベルじゃねえ』
「厳し過ぎるお言葉に、私の心はもはやズタズタです……」
『安心しろ。きっちりダメ出し続けてやるから。卵の方は、逆に甘過ぎ。つか、何で炒
り卵に砂糖入れてんだよ』
「それは……卵焼きにするつもりだと言ったはずだけど……上手く出来なくて仕方なく
崩れたのをそのまま入れたから……」
『つまり、失敗作をそのまま入れたのか。論外だな』
「あぅ……本当にゴメンなさい……」
『あと、千切りキャベツというなのただのキャベツだな。これは。さすがに食えないレ
ベルじゃねえが、味もそっけもないな。塩くらい振っとけっての』
「ううん。その……一応、振ったんだけど――」
『ゴホッ!? これか…… 全然混ぜ合わさってねーじゃねーかよ。一箇所にドバッと
かけやがって。不意打ちだったから、さすがに吐きそうになったぞ』
「だって、混ぜ合わせようとしたら、野菜炒めが大変な事になってしまったので……」
『お前、不器用なんだから同時に二つも三つもこなそうとすんな。分を弁えとけ』
「重ね重ね、真に申し訳ないです。本当に」
『フゥ……唯一食えるのは、この春巻きだけか。これは本当に美味いな』
「うん…… まあ、冷凍食品だからね……」
『よし。とにかく全部食ったぞ。ほれ』
「……ありがとう。ここまで叩かれると、もう嬉しさも半減だよ……」
『むしろ、これだけ不味いものを食い切った俺に感謝しろよな。量が少ないから何とか
なったけど、あの量全部だったらさすがに完食は無理だったぞ』
「ごめんね、カナタ君。私の為に無理してくれて……」
723 名前:5/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:33:38.80 ID:ynXjr9zT0 [13/14]
『お前の為じゃねーよ。自分の言葉に責任取っただけだっての。勘違いすんなバカ』
「それでもいいの。せめて、お詫びにデザートで口直し……してくれるかな?」
『デザート? また変なもんじゃねーだろうな』
「大丈夫。まだ早熟の美味しい果実だから……」
シュルッ……
『で、何でお前がリボン外してんだよ?』
「どうぞ。私がデザートだから……遠慮なく、た、べ、て」
ゴンッ!!!!
「~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっ!!!!」
『お前、俺がその手の冗談嫌いだって知ってるよな? どうして懲りずに同じこと繰り
返すんだよ!!』
「いったあああああ…… グーだよ、グー。女の子に。信じられないよぉ……」
『大丈夫だろ。お前の頭でも一番固いところ狙ったから。むしろ、こっちの拳が壊れるぞ』
「失礼だよ。女の子の頭を石頭だなんて。私だって意外に脆くてデリケートな所もある
んだからねっ!!」
『だったら、くだらない事言って自分を安売りしてないで、弁当くらい少しはまともに
作れるように努力しやがれ』
「これでも散々頑張ったんだよ!! お母さんに後ろからポカポカ頭殴られながら」
『確かに、口に入れられる量が増えただけはマシになったがな。とにかく、今度俺に食
わせたかったら、自分でちゃんと味見して、合格になったおかずだけ詰めて来い。あと、
弁当のご飯に生卵かけるような常識のない真似は二度とすんなよな。いいか』
「あの……カナタ君。一ついいかな?」
『あん? 何だよ?』
「今、今度って言ったけど……もしかして、リベンジのチャンスありですか?」
『う……また余計な事言っちまったか…… ま、まあな。別にお前の弁当なんて食いた
かねーけど、ちゃんとまともな物が作れるようになったら、一度くらいはリベンジさせ
てやってもいいぜ』
「あ……ありがとうっ!!」
ガバッ!!
『うわっ!?』
724 名前:6/6[] 投稿日:2011/06/04(土) 21:34:25.80 ID:ynXjr9zT0 [14/14]
カシャン!!
「私、頑張るから!! 今度こそ、カナタ君に美味しいって言って貰えるようなお弁当
作れるようになるから、応援してよね」
『わ、分かった。分かったから抱き付くなって。それより、今なんか物が落ちる音がし
なかったか?』
「え? そんな音したかな。気付かなかったけど」
『いや。確かにしたぞ。それよりお前、確か俺の弁当をスカートの中に隠してたよな?
あれ、どうしたんだよ』
「どうしたって、当然そのままに…………あ!?」
『まさか、今……お前が抱きついた時に……』
「……………………あはっ♪」
終わり
最終更新:2011年06月09日 22:10