846 名前:1/5[] 投稿日:2011/06/05(日) 23:30:40.62 ID:sSgu3z+60 [3/7]
  • お題作成機より【停電 後輩 子供扱い】

『先輩先輩、ここの構文って何が入るんです?』
「どれどれ? えっと……あれ? ちょっと待ってろよ。えーと、参考書、参考書……」
『もうっ!! 何で教える立場の人が参考書漁ってるんですかっ!! 学年上なんだから、
少しは役に立つだろうと思って、先輩の家までわざわざ勉強しに来たのに、これじゃ何の
意味もないじゃないですか』
「俺だってそう英語は得意じゃないんだし、たまたま忘れただけだっての。それに、教え
てやれた部分もあったろ? 意味ないとか言うな」
『先輩、教え方が下手だから余計に時間掛かるんですよ。あーあ。こんな事だったら一人
で勉強してた方がマシだったかなあ』
「何言ってんだ。一人だと、途端に集中力切らすクセに。俺の目があるから、真面目にやっ
てるんだろ?」
『私は先輩と違って、真面目にキチンと勉強出来ますから。むしろ先輩の方でしょ? 私
がいないと真面目に勉強出来ないのは』
「ま、俺はそれを否定しないけどな。教える側がサボッてたら、示しつかんし……ん?」
 プツッ……!!
『きゃっ!?』
「何だ、停電か? 全く……電力足りてんじゃ無かったのかよ……それとも、変電所の事
故か何かか?」
『せ……先輩?』
「何だよ。どうした? 椎水」
『いえその……先輩。どこ? どこにいます?』
「どこって、さっきと同じ場所だよ。こう真っ暗じゃ動きようないしな」
『ホントですか? だって、その……全然見えないから……』
「外も真っ暗だしな。今日、曇ってるから月明かりも無いし」
『えっと、その……そ、そっち、行っていいですかっ?』
「へ……? いや、ダメじゃないけど、今は止めた方が良くないか? 下手に動くと――」
 ガツッ!!
『あいたあっ!! たあぁ~~~~~っ!! 手ぇ、机に思いっきりぶつけちゃったぁ~っ!!』

847 名前:2/5[] 投稿日:2011/06/05(日) 23:31:11.93 ID:sSgu3z+60 [4/7]
「ほら、言わんこっちゃない。真っ暗闇だとどっかにぶつけるかも知れないから止めた方
がいいって言おうと思ったのに」
『呆れたように言わないで下さいっ!! だって……だって、だって……』
「だってって、どうしたんだよ?」
『い……いえそのっ!! だ、大丈夫です!! 何でもないですってば!!』
「何でもないことないだろ。明らかに余裕のない声だし。さっきと全然違うぞ」
『あぅ…… そ、それは……』
「どうしたんだよ。もしかして……暗いのが苦手、とか?」
『えっ!? ち……違いますってば!! こここ……こんなの全然怖くありませんっ!!
バカにしないで下さい!!』
「その割りには、声が震えてるけどな。それに、だとしたら俺の傍に寄りたがったのも説明つくし」
『な……何言ってるんですか。別にそんな……先輩の傍に寄りたかった訳じゃありません!!』
「じゃあ、何でこっちに来るなんて言い出したの? 俺には理解出来ないから、教えてくれる?」
『えーと、それはその……あの……秘密ですっ!! 言えない事じゃないですけど、先輩
には教えたくありません』
「なるほどね。確かに、秘密だよね。うんうん」
『何一人で勝手な解釈して頷いているんですか!! ホント、失礼な人ですね。先輩って』
「ゴメンゴメン。じゃあ、ちょっくら懐中電灯でも取って来るかな」
『え……? 先輩、どっか行っちゃうんですか?』
「あ、うん。下の物置に確か非常用の懐中電灯があったからさ。真っ暗すぎて何も出来な
いじゃ、時間ももったいないし」
『ダ……ダメですっ!! ここにいて下さいっ!!』
「何で? 椎水だって、灯りがあった方がいいだろ?」
『それはそうですけど…… 真っ暗闇で動かない方がいいって言ったのは先輩じゃないで
すか。階段から転げ落ちても知りませんよ』
「うん。でも、大分夜目も慣れてきたから、少しは視界も利くし。それに自分の家だから、
気をつけて歩けば、階段から落ちる事もないよ」
『それでもダメですっ!! ここにいて下さい!!』
「何でそんな必死で止めるのかな? いつもの椎水だったら、こういう時こそ役に立てと
か何とか言って、俺を働かせようとするのに」

848 名前:3/5[] 投稿日:2011/06/05(日) 23:31:43.37 ID:sSgu3z+60 [5/7]
『そ、それはその……万が一でもあって、先輩が怪我されたらうっとうしいじゃないです
か。私のせいじゃないのに、何か私のせいみたいな罪悪感があるし……』
「そんな事ないよ。仮に階段から落ちても、自己責任だし。まあ、座りながら降りるつも
りだから、まずそんな事はないけどね。それより、すごくゆっくり行かなくちゃ行けない
から、しばらく一人にするけど大丈夫だよね」
『そ……そんなぁ…… やっぱりダメです!! ここにいて下さい!!』
「そんな事言われても、理由が分からないとなぁ。正直に、椎水が理由を話してくれれば、
ここにいる事にしてもいいけど。どうする?」
『ズ……ズルいですよ。交換条件なんて。卑怯です!!』
「だって、意味も分からず引き止められても困るし。ちょっと我慢すれば、真っ暗闇から
は解放されるんだぜ?」
『そのちょっとが我慢出来ないから困ってるんじゃないですか!!』
「我慢出来ないって、何がかな?」
『はっ!? あう……ううううう……』
「そろそろ、正直に答えた方がいいんじゃないか? 椎水って、暗所恐怖症だろ?」
『ギク!!』
「まあ、そうだろうとは思ったけどな。さっきから様子が変だったもん。急に俺の傍に来
たいとか、普段の椎水なら絶対に言い出さないし」
『いけませんか? 暗いの怖くて。しょうがないじゃないですか!! 子供の時、おばあ
ちゃんの家の蔵に忍び込んで遊んでたら鍵掛けられて出れなくなっちゃって、真っ暗闇の
中一人で何時間も閉じ込められて、それ以来どうしようもなくなっちゃったんですから!!』
「なるほどね。むしろ、別に恥ずかしがって隠す事でもないだろ。誰だって、怖い物の一
つや二つはあるし」
『そうやって偉そうに慰めてくるのが嫌だったから、隠してたんですよ。ハァ……もう、
先輩に知られるなんて最悪だ……』
「ふうん。そういう事言うなら、やっぱり懐中電灯取りに行って来ようかな。それだけ強
がれるんだったら、一人にしておいても平気そうだし」
『ダッ……ダメですってば!! 何のために告白したと思ってるんですか!! 約束なん
ですから、ちゃんといて下さい』


849 名前:4/5[] 投稿日:2011/06/05(日) 23:32:15.61 ID:sSgu3z+60 [6/7]
「はいはい。じゃ、傍に行くよ」
『えーっと……も、もう来ました? どこにいます』
「ここにいるよ。ほら」
 ポン。
『きゃあっ!! い、いきなり肩叩かないで下さい。びっくりするじゃないですか!!』
「ああ、ゴメン。驚かせちゃったか。てっきり、少しは見えてるもんだと思ったから」
『い……今、確認しました。顔は見えませんけどシルエットなら……』
「これで大丈夫? 安心出来たか?」
『う……その……えーっと……まだ、ちょっと……』
「ダメか。俺程度が傍にいるだけじゃ、やっぱり怖さは解消出来ないのかなあ」
『そ、そうじゃなくて……えっと、その……』
「どうした? 椎水にしては言葉濁すなんて珍しいな。言い難い事でも、はっきり言って
いいんだぞ」
『わ、分かりました。あの、先輩。その……だっ……抱いて貰っていいですか?』
「へ? だ、抱くって……」
『あの、エッチな意味じゃないですよ? じゅ、純粋にギュッて抱くだけですからね!!』
「いや。その勘違いはしてないけど……でも、いいのか? いつもだったら、凄く嫌がり
そうなんだが」
『だってしょうがないじゃないですか!! そうして貰わないと、あの……心の中が不安
でざわついて、落ち着かないんですから』
「分かった。ホントはこんな事されたくないんだけど、仕方なくだって事だね」
『私のセリフ、取らないで下さい。分かった風に言われるのは、嫌いです』
「分かったよ。じゃあ、もうちょっとこっち寄って。椎水から寄って来た方が、驚かせな
くて済みそうだし」
『え、えっと……じゃあ……失礼して……』
「来たね。じゃあ、抱き締めるよ。いい?」
『あ……は、はい……』ドキドキドキドキ……
 ギュッ……
『あっ…………』


850 名前:5/5[] 投稿日:2011/06/05(日) 23:33:18.62 ID:sSgu3z+60 [7/7]
「どう? 少しは落ち着いた?」
『は、はい……』
『(先輩のぬくもりが……心に染み渡って来て……何か凄くホッとするな…… 本当に、不
思議だけど……)』
「平気になったら、いつでも言って。そうしたら、離すから」
『ダ……ダメです……』
「え?」
『離しちゃ……ダメです……灯りが点くまでこのまま…… ううん。点いても、しばらく
はずっとこのままで……お願いします……』
「ハハハ…… 椎水って、意外と甘えっ子だったんだな。可愛いぞ」
 ナデナデ……
『止めて下さい!! そうやって、子ども扱いされるのは嫌いです』
「分かった分かった。じゃあ、撫でるのは止めにするよ」
『ちょ、ちょっと待って下さい』
「何? どうしたの?」
『いえ、その……子ども扱いするのは止めて欲しいですけど……撫でるのは、別に…… ちゃ
んと、年相応の女の子として見てくれるんでしたら……』
「撫でられたいんだ」
『はぅっ…………は、はい……(///////////)』


この後、例によって様子を見に来た先輩の母親に抱き合ってる所を見られてあーだこーだなるのは省略で
最終更新:2011年06月09日 22:21