あ84 名前:ある日の次の日の月曜日 朝 1/2[sage] 投稿日:2011/06/20(月) 06:05:11.42 ID:CbOJZNAkO [1/2]
「ねぇねぇ、おとーさん」
「ん?どうした、かなみ」

出勤前、玄関で支度をしていると娘のかなみが声をかけてきた。
娘は保育園に通うくらいで、まぁ何というか、母親にべったりなお年頃だ。
そんなもんで父親の俺にはあまり近寄ってくれない。
嫌われてるっていうのとは違う気がするけど
俺はというと、勿論かなみ大好きだからちょっと寂しい。いや、めっちゃ寂しい。娘にべったりなお年頃だもの。

「ちちのひ、って、おとーさんにありがとうってするんだよね」
「んー、そうだね」
「あのね、だから……」
「うんうん」

言葉じりに近付くに連れてモゴモゴと口ごもるかなみ。
あぁ、ただ喋ってるだけなのにこんなに可愛い。ずっとこのまま眺めていたい。
しかもこの流れは期待していいパターンだ、多分。

「おとーさん。いつも、ありがとう。おしごとがんばってね」
「はいっ」

元気良く返事をしたものの口元と頬は弛みっぱなしだ。まさにヘブン状態。
尊さんに見られたら「このド変態が!」と、グーではなくチョキが飛んで来るかも知れない。
夫婦関係とは得てしてそういうものらしい。
しかし視界を奪われるのはかなみが見れなくなるから困る。

85 名前:ある日の次の日の月曜日 朝 2/2[sage] 投稿日:2011/06/20(月) 06:08:02.96 ID:CbOJZNAkO [2/2]
「それと…えっと……」

まだ何か言いたそうにモジモジとしている。これ以上なにが飛び出すというのだ。
俺の口からよだれが飛び出るぞ。いや既にちょっと垂れてるかも知れない。視界のピンチだ。

しばし見守っていると、かなみは意を決した様にキュッと目を瞑り

『おとーさん大好き!!』

半ばというか10割くらい絶叫した。
そして、くるり180度ターンをしてリビングへ走って行った。いや逃げて行った?

初めて見る娘の本気モードで現実に呼び戻される。
そういえば、出勤前だからいつまでも呆けていられない。

「それじゃ、行ってきまーす!」

リビングに向かって大きな声で言うと、返事の代りに
真っ赤に染まった可愛い顔がちょっと出て、ジッとこちらを見つめていた。
最終更新:2011年07月15日 01:25