247 名前:無理と道理(仮題) 1/2[sage] 投稿日:2011/07/04(月) 21:29:46.96 ID:1+aMOEdL0 [1/3]

~第一幕~

ここは大陸一の帝都。王侯貴族は毎夜夜会で舞い踊り、商人のかわす銀貨には錆び一つつかない繁栄ぶりであった。
もうとうに日も落ちたというのに街から活気が消えることはない。

そんな帝都のとある商館から顔をほころばせて出てくる男が一人。
「うおっしゃあああ!」
『相変わらずうるさいですわ。行商人ならもう少し周りに気を払ったらどうなんですの』

戸の外には女が一人。女はシンプルだが商館の扉の前には場違いな紫色のイブニングドレスを身にまとっていた。
「うおっなんだリナか。久しぶりだな。この前会ったのはもう一年くらい前か」
『なんだとはずいぶんなご挨拶ですこと。一年四か月ぶりですわ』


248 名前:無理と道理(仮題) 2/2[sage] 投稿日:2011/07/04(月) 21:31:49.65 ID:1+aMOEdL0 [2/3]
「というかお前こんな時間にこんなとこにいていいのかよ。また昔みたいにリナの親父さんが私警隊動かして探したりしたら洒落にならん」
『昔の話ですわ。散歩をしていたら“偶然”夜空に叫んでいる見知った珍獣を見つけたから声をかけてみたまでですの』
「あはは、あいかわらず厳しいな……」
『……それで商売のほうはどうですの。まあ、あなたのことですから芳しくはないのでしょうけど』
「へへっ そうでもないんだぜ。最近は行商にもなれて利益だってずいぶん上がるようになったんだ。ついこないだなんか縁あって少ないけど丁子なんかも扱ったんだぜ」
『そう……あなたが……」
「リナ、なんかあったか?リナなら『はあ、あれほど詐欺には手を染めるなと言いきかせてておりましたのに』ぐらいは言いそうなのに」
『あなたの中のわたくしはどんなイメージなのかしら……まあ、いいわ』

『わたくし、結婚しなければなりませんの』
帝都の街を風は静かに吹き抜けていく。

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最終更新:2011年07月07日 15:53