98 名前:1/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:39:15.23 ID:82FSD45L0 [16/29]
「いや、食った食った。美味かったなあ、芽衣」
『タカシ様。言動といい態度といい、別府家の嫡男としては、少々みっともないと思いますが』
「ああ、ゴメン。満足したもんだから、ついつい」
『最近のタカシ様は、少々そういう俗世的な面が目立ちます。いくら大学で普通のご友
人を持たれたとは言っても、ご自身の立場は常に念頭に置いて貰わないと困ります』
「分かってるけど、まあそう固いこと言うなって。せっかく二人で食事に来たのにさ。
そんな事ばっか考えてると、早く老けるぞ」
『老けっ……!? わ、私だって使用人とはいえ、れっきとした女性ですからねっ!!
そういう事おっしゃるなんて、失礼だとは思いませんか?』
「だって、芽衣があんまりお説教ばかりするからさ。ついついからかいたくなったんだ
よ。大丈夫。十分、芽衣は若くて綺麗だから心配するなって」
『綺麗って…… そ、そんな……とってつけたようなお世辞を言われたって嬉しくありませんっ!!』
「そんなに拗ねるなって。それより、今日行った店、美味かったな本当に。シチューの
肉も、ホント、口の中で溶けるってああいうのを言うんだよな」
『確かに美味しかったですけど…… でも、贅沢ではありませんか? 家で食べれば費
用は遥かに少なくて済みますのに…… そりゃ、確かにあの店のシェフに比べれば、私
の料理の味なんて数段は落ちますけど……』
「そんなにしょっちゅう豪遊してる訳でもないし、たまにはいいじゃん。芽衣にも、た
まには炊事くらい休ませてのんびりして欲しかったから。まあ、気は休まらなかったか
もしれないけど」
『それは御心遣いに応えられなくて、申し訳ありませんでした。どうせ私は、生来根が
貧乏性ですからね』
「そんな僻みっぽく言うなって。芽衣には家の家計全部任せてるから、そうなるのもし
ょうがないよ。それと、いつもの芽衣の料理だって十分に美味しいんだから、その事も
別に気にしなくていいからね」
『別にそんな事で僻んでなんていません。私なんかと比べられたら、プロでやってるシェ
フの方に、却って失礼です』
99 名前:2/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:39:36.31 ID:82FSD45L0 [17/29]
「さっき、芽衣が自分の料理を卑下するような事を言ってたから、気にしてるのかなと
思ってね。でも、そういった意味で言えば、いい経験にもなったんじゃないの? 美味
しいレストランで食事をすれば、味の参考にもなるだろうし」
『確かにおっしゃる通りかもしれませんが、それは、日頃料理をなさらないタカシ様に
は言われたくありません』
「一応、俺も趣味で料理はやってますが? 芽衣があまりキッチンに立つのを好ましく
思ってないだけでさ。だから、その言い草はちょっと無いんじゃないかなあ」
『それとこれとは別です。私は、タカシ様の発言を諌めただけで、料理をしない事につ
いて文句を言っているわけではありませんし、別府家の時期当主たるお方が、ちまちま
と下女のようにキッチンに立つべきではないという考えも変わってはおりません』
「だから、そうムスッとしない。せっかく楽しい食事をしに来たのに、最後がケンカで
終わったら後味悪いじゃないか」
『それは、タカシ様が私の意図を勝手に代弁して、分かったような事ばかりおっしゃる
のが悪いんです。ご自分の発言を棚に上げて私に怒るなと言うのは無理があり過ぎます』
「分かった、ゴメンよ。俺が悪かったからさ。機嫌直してくれるか?」
『何が悪かったか、キチンと理解しておられますか? ただ、謝ってこの場を流そうと
するだけではないでしょうね?』
「分かってます分かってます。それに、あんまり長いこと、ここで怒ってるとさ。傍か
ら見ると痴話喧嘩にも見えるから。もう行こうぜ」
『痴話……っ!? って、な、何をおっしゃっているんですかっ!! タカシ様と私は
あくまで主従の関係なんですよ? だ、断じて痴話喧嘩なんてする関係じゃ――』
「落ち着いて、芽衣。あくまで、通りすがりの他人から見るとそう見えるかもしれないっ
てだけだから。何も知らない人から見れば、年頃の男女が道端で言い合ってたら、勘
違いしてもしょうがないじゃないか」
『私は落ち着いておりますっ。もし、そのように見えるとすれば、タカシ様の身に纏っ
ているオーラが低すぎるから悪いんです。高貴な身分の方なんですから、私などと同列
に見られるとすれば、それはタカシ様のせいなんですからねっ!!』
「分かった分かった。それは努力するからさ。とにかく、今はもう帰ろうぜ」
『そうですね。元々、ただでさえ仕事が残っているところを引っ張り出されたのに、こ
れ以上タカシ様と無駄な時間を過ごしている余裕なんてありませんから』
100 名前:3/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:39:57.87 ID:82FSD45L0 [18/29]
「一週間も前から話はしてあったはずなんだけどなぁ。それはちょっと心外だぞ」
『もちろん、主人からの誘いですもの。義務ですから、忘れてなどはおりません。けれ
ど、それだって時間を割くのは大変なんですから。タカシ様は家で特に仕事もないから
いいでしょうけれど、学生とメイド仕事の両立をこなすのは、結構忙しいんですからね』
「だからこそ、たまには食事の支度から解放してあげようと思って、誘ったつもりだっ
たんだけど。有難迷惑だったかな? だとしたら、もう誘うのも止めるけど」
『――――っ……!! そ……それは、タカシ様がお好きになさったら宜しいでしょ
う? 私は端女の身分ですから。それについてどうこう言える立場ではありません』
「ふーん。じゃあ、聞くけど、芽衣は今日の外食はどうだった? 楽しめたって思うん
だったらまた誘うし、主人の道楽に付き合っただけの全く無駄な時間だったって言うな
ら、もう誘わないから」
『だから何で私の意見をいちいち聞くんですかっ!! 優柔不断な男性は女性から好か
れませんよ?』
「そんな事言ったって、相手のある事だからね。女の子を楽しめない場所に無理矢理付
き合わせるのは、俺の本意じゃないから。もちろん俺は、また芽衣と一緒に食事に来たいけどね」
『だったら、私の意見なんて聞かず、またお誘いになればいいじゃないですか。いいで
すよ? タカシ様がお望みであれば、私はたとえ仕事で忙しかろうが、そちらを優先致
しますから』
「でも、それで芽衣が楽しめないなら、俺も楽しめないんだよ。だから、感想を聞いて、
それで今後どうしようかを決めようかと思っただけ」
『じゃあ……私が、全然楽しくなかったですって言えば……』
「うん。もう二度と誘う事はないだろうね。それも寂しいけど、でも普段の芽衣の作っ
てくれるご飯を、二人で一緒に食べるだけでも十分だし」
『そ……そんな事おっしゃられたって……』
「で、どう? 正直な感想を述べてくれればいいからさ。お世辞とかそういうのは抜きにして」
『(何て答えよう…… そりゃ、私だって本当はまた、タカシ様に誘っていただきたいけ
ど、本当はこんな、タカシ様の厚意に甘える様な事を何度もしてはいけないし…… で
も、タカシ様は正直に言えっておっしゃって……あああああ……)』
「そんな難しく考える事ないと思うんだけどな。俺の言った事とか、色んなしがらみと
か全部忘れて、今の気持ちだけ言えばいいだけなんだけど」
101 名前:4/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:40:20.69 ID:82FSD45L0 [19/29]
『(だから、それを言うのが難しいのに…… タカシ様に私の複雑な心が分かっていただ
けたら…… かといって、知られたら、恥ずかしくて死んじゃうけど……)』
「黙り込まれても困るんだけどな。それとも、そんなに答えるのが嫌とか? それも意
味分かんないけどな」
『あ……いえ、その……そこまでではないですけど、ちょっと表現するのが難しいとい
うか……』
「うん? 難しいって?」
『(ああ、もう……うっかり口が…… も、もう、成り行き任せで行くしか……)』
『で、ですからその……楽しかったとか嬉しかったとか、そんなのは別にその……(あ
りますけど……)、ただ、その……無駄ではなかったというか…… 自分だとどうしても、
料理の味がマンネリになってしまいますから、たまには名店のシェフの料理を味わって
見るのも、参考にはなりますし、それに雰囲気の変わる場所での食事も、まあ悪くは無
いですから……』
「つまり、来て損は無かったって事でいいのかな?」
『ハ……ハァ……まあ……』
「なら良かった。じゃあ、また時期を見て、芽衣が献立に悩んでるような素振りを見せ
る頃に誘う事にするよ」
『べ、別にいいですよ。そんな、私の様子なんて窺わなくたって、タカシ様が行きたい
時で…… 仕事ですから、お供くらい致します』
「でも、しょっちゅう誘ったら怒るだろ? ウザッたいとか仕事があるとか何とか言ってさ」
『それは当たり前です。物にも限度という物がありますし、大体いくらお金があるから
といって、贅沢しすぎはタカシ様の為にもなりませんから』
「ほら。だから、頃合いを見て誘おうかなって思っただけなのにさ。どうして芽衣はい
つも俺が言った事に反抗するかな」
『別に反抗してると言うほどではないじゃないですか。ただ、いちいち私の様子を見て、
とかそういうのはいらないです。大体、私の行動を観察されるのなんて、その……それ
だって、嫌ですから』
「分かった分かった。じゃあ、また今度行こうなって、これだけ言えばいいかな?」
『そうですよ。それなのに、いちいち私をダシに使ったりとかして。そういうのは全然
カッコよくありませんから』
102 名前:5/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:40:42.19 ID:82FSD45L0 [20/29]
「了解。じゃあ、何とか話もまとまったところで、今度こそ帰るとするか」
『話がこじれたのは、全部タカシ様が変な事言ったり、答えにくい質問をしたりしたか
らですからね。私のせいじゃありませんから』
「また、そうやって芽衣は、言葉尻を捉えて突っ掛かる。まあいいけどな。全部俺が悪
いって事にして、それで芽衣の気が済むなら」
『気が済むとか済まないとか、そういう問題ではありません。タカシ様のくだらない発
言のせいで、こんな所で無駄に立ち話し続けたのは事実じゃないですか。私が突っ掛か
るのは、タカシ様が聞き過ごせない様な発言ばかりをなさるからです』
「そうでもないと思うけどなぁ。今のなんて、別に普通の発言だろ? 誰も芽衣のせい
で遅くなったとか言ってないのにさ」
『でも、そう言いたげな口ぶりだったじゃないですか。何とか、とか、ちょっと嫌味っ
ぽかったですよ?』
「そうか? 別に俺は気にしてなかったけどな。まあ、芽衣が気に障ったのなら謝るよ。ゴメン」
『謝罪なんかよりも、気にしてなかった方を気にして下さい。タカシ様は、そういう所
が鈍感なんですから』
「分かった分かった。言葉なんてポロッと出ちゃうから、出来るかどうかは分からない
けど、芽衣の言葉は肝に銘じておくから」
『そう言って、いつもタカシ様は同じ事を繰り返すんですから。信用出来ません』
「それじゃ、信用して貰えるようになるまで頑張るからさ。それで今はいいだろ?」
『まあ、仕方ありません。確かに、これ以上言ったところで今、タカシ様が急に変わる
わけではありませんからね』
「そういう事。と、信号青だ。渡っちまおうぜ」
『ちょ、ちょっとお待ち下さい。タクシーを拾うんだったら、こっちの方じゃありませんか?』
「いや。タクシーは使わないよ。ちょっと一駅分くらい歩いてから、電車で帰ろうかなと」
『電車でって…… あ、お待ち下さいタカシ様!! 全くもう。一人で先に行っちゃわ
ないで下さい。もう少しで置いていかれるところだったじゃありませんか』
「ゴメンゴメン。信号赤になりそうだったからさ」
『全く…… 大体、何だって歩いて帰ろうなんて思ったんですか。私だって帰って仕事
があると、さっきも行ったはずですのに、こんな所で無駄に時間を浪費するなんて』
103 名前:6/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:41:03.89 ID:82FSD45L0 [21/29]
「でも、贅沢ではないし、何より健康にいいだろ? 胃袋をこなすのにもちょうどいい
しさ。それに、今日は晴れてておまけに風も良い感じで優しく吹いてるからさ。一駅分
くらい、散歩するにはちょうどいいかと思ったんだ」
『そうですか。でも、タカシ様が気まぐれで散歩なさろうとそれは勝手ですが、その道
楽に付き合わされる私の身にもなって下さい』
「別に、付き合いたくなければ先に帰ってもいいよ。仕事もあるんだろうし」
『なっ……!? しゅ……主人にお食事にお誘いいただいたのに、当の主人を放り出し
て、使用人が先に帰れるわけないじゃないですか。道理に外れた事を言うのは止めて下さい』
「それだったら、文句言うのは止めて、ちょっとした散歩を楽しもうぜ。どうせ一緒に
行くんだからさ」
『そんな事おっしゃられたって……そ、そこまでポジティブには考えられません』
「ちょっと考え方を変えればいいことなんだけどな。と、芽衣。ここ左な」
グイッ!!
『え……きゃっ!! い、いきなり何をなさるんですかっ!!』
「あ、ああ。ゴメン。芽衣がそのまままっすぐ行きそうだったからさ。つい」
『声だけ掛けていただければ分かりますっ!! そんな、手首を掴んで引っ張らなくても』
「うん。悪かったな。今離すから」
『あっ……!!』
「え? 何? どうかした?」
『い、いえその…… ま、またいきなり掴まれて驚かされるくらいだったら、その……
このままで、いいです……から……』
「そ、そうなんだ。なら、そうさせて貰うよ」
『はい……』
『(離すって言われたら、急に寂しくなっちゃって……思わず変なお願いしちゃうなんて……
メイドとしては、失格かな…… いっそ、それだったら手を繋いで貰った方が、で、で
もそこまではさすがにお願い出来ないし……)』
『ハァ……』
「どした、芽衣。ため息なんてついて」
『え? い、いえ。何でもありません。ちょっとうんざりした気分が形になってしまっ
ただけです』
104 名前:7/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:41:26.38 ID:82FSD45L0 [22/29]
「ふーん。うんざりしてるって事はさ。やっぱり、手……離した方がいいか?」
『い、いえっ!! 別にこれは……今のため息はそれとは関係なくて……だから別に、
気になさる必要はないです』
「いや。何かまた、俺が何か気に障るような事でもしたのかと思ってさ。まあ、あんま
り気にしてもしょうがないけど」
『そうですよ。私だって色々と悩みくらいあります。四十六時中、タカシ様の事ばかり
考えてなんていられません』
「はいはい。そりゃ、確かにそうだよな」
『(嘘ですよ、そんなの…… 私はいつだってタカシ様の事しか考えてなくて…… でも、
口を付けば何か貶すような事しか言えなくて…… あああ……ダメだ。こんな事考えて
たら、またため息なんかついて、タカシ様が気に掛けてしまう……)』
「芽衣。こっち」
『え? あ……ま、また急に腕を引っ張らないで下さいってば』
「いや。そんな引っ張ってはいないけどな。芽衣が考え事しててそのまま真っ直ぐ行き
そうだったから、声掛けつつちょっとは引いたけど」
『だからといって、結果的にはビックリしたんだから同じ事です。もう少しタカシ様は
女性のエスコートの仕方も学ばないと、先々困る事にもなりかねませんよ』
「そうだな。俺は気を付けてるつもりだけど、芽衣が相手だとついつい気安い扱いにな
ってるかもしれないし。肝に銘じとくよ」
『タカシ様はよくそうおっしゃいますけど、口先ばかりでなくキチンと実行して貰わな
いと困りますよ。分かりましたか?』
「分かってる。必ず出来る自信はないけど、意識するようには心掛けるからさ」
『(ハァ……また説教くさい事を…… タカシ様はこういう時、いつも笑顔で流してくだ
さるけど、内心では面白く思ってらっしゃらないかもしれないな…… だって、いくら
小さい頃からずっと一緒だったと言っても、今の私はただのメイドなのに、偉そうに口
幅ったい事ばかり言って……ハァ……)』
『(何か……妙にネオンの灯りがチカチカして眩しいな…… 気が立ってるせいかしら
……? ううん。そうじゃなくて、この先の建物って、もしかして……?)』
『あ、あの……タカシ様……?』
「何? どうかした? 芽衣」
105 名前:8/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:41:46.77 ID:82FSD45L0 [23/29]
『え…… い、いえその……何でも……』
『(あの建物……どう見ても、ラブホテル……よね? まさか、タカシ様がそんな所に連
れ込むとは思えないけれど…… でも、まさかラブホの前を通るだけなのに拒否したり
したら、却って私が意識してるって教えてるようなものだし……)』
『(でも、万が一タカシ様が…… ううん。タカシ様が乱暴な事を私になさるはずが……
でも、タカシ様も、もう成人なされたし……将来の為にも、女性の事をもっと知ってお
きたいってお考えになられたのかも……)』
『(そ、その可能性は…… そういえば、先程、私が女性のエスコートの仕方を学べと言っ
たから…… 何事にも慎重なタカシ様ですもの。この先、好きになった女性と、その……
ベッドを共にする時にもたついたりしないように、一度経験しておきたいとお考えになっ
ても、おかしくはないかも……)』
『(タカシ様の事だから……ありえなくもないかも…… あくまで練習だから、本当に手
を出したりとかしないって…… でも、タカシ様と二人でラブホテルとか入ったら……
私の方こそ……)』
『(な、何を考えてるのだろう。私ってば、メイドの分際で…… でも、テレビとかでし
か見たことないけど、あんな雰囲気の部屋で……タカシ様と二人きりで……それでも手
を出して貰えなかったら……その方が……辛い……かも……)』
『(どうしよう……我慢……すべきなんだろうか……それとも……実際に試してごらん
にならないと、意味がありませんとか言って……タカシ様に……初めてを……)』
「芽衣」
『は……はい!? な、何でございましょうか。タッ……タカシ様……』
『(く……来るっ…… 心の準備は出来ていたはずだけど……いざとなると……)』
「いや、その…… 信号、渡るぞ」
『タ……タカシ様!! タカシ様は確かにもう成人なされましたけど、いくら何でもそ
のような事を学ぶのは、もう少し時期を置いた方が宜しいかと。他に学ぶべき事がいく
らでもありますし。た……ただ、今後どんどん交友関係も広がりますでしょうし、その
中でこういった機会が確かになくもないかと思われますから……タカシ様が学んで置き
たいというのであれば……って、しん……ごう?』
「ああ。ここ渡ればもうすぐ駅だから。って、点滅し始めた。急ぐぞ、芽衣」
『え、あ……キャッ!!』
106 名前:9/9[] 投稿日:2011/07/09(土) 18:43:46.62 ID:82FSD45L0 [24/29]
「ふぅ……何とか間に合ったな…… と、どうかしたか? 芽衣」
『い……』
「え?」
『いつまで手を握っておられるんですかっ!! いい加減お離し下さいっ!!』
バッ!!
「わっ!! ス、スマン……」
『全くもう。もうすぐ駅でしたら、もうエスコートする必要なんかないじゃないですか。
限度をお考え下さい』
「い、いやその……また、何かボーッとしながら歩いてるようだったし。それと、さっ
き何か言ってたようだったけど……」
『あ、あれは別に何でもありません。タカシ様には関係ありませんから、いちいち詮索
なさらないで下さい。女性に根掘り葉掘り聞くのは失礼ですよ』
「あ……ああ…… 何で怒ってるのか良く分からないけど、とにかく謝っておくよ。悪かった」
『よく分からないとか、そういう所が一番ダメなんです。けど、もういいです。タカシ
様なんて、知りません!!』
「うーん……? ホント、芽衣が一番良く分からないな……?」
『(あああああ…… 私ってば、一人で勝手に妄想して勘違いして……それでタカシ様に
八つ当たりだなんて…… もう……メイドとしてじゃなくて……女の子としても最低か
も……しかも、変な事まで言っちゃって……タカシ様が鈍かったから助かったけど……
本当、もう……恥ずかしくて死にたい……)』
終わり
最終更新:2011年07月11日 01:55