84 名前:1/5[] 投稿日:2011/07/30(土) 17:04:20.40 ID:fC8YQK5J0 [4/17]
  • だらけてるツンデレ

『はぅぅ……気持ち良い……』
「おい、敬子。腹減ったし、そろそろ昼飯にしないか?」
『無理です…… もはや、一歩も動けません……』
「お前、今日はずっと、リビングでゴロゴロしてるじゃんか。そろそろクーラーの魔力か
ら逃れないと、後でますます地獄見るぞ」
『いいんです。どのみちもう、戻れませんから。この気持ち良さを知ってしまうと、とっ
ても暑苦しいキッチンなんかに立てません』
「今日の昼飯当番はお前だろが。ほれ。さっさと立って昼飯作れって。俺が当番の時は、
容赦なく引き摺って台所に立たせるくせに」
『いーじゃないですか。兄さんは炊事以外何にもしないんですから、むしろ昼ごはんくら
い毎日作ったってバチは当たりません』
「でもないだろ。何だかんだ言って、割りとこき使われてる気がするけどな……」
『とにかく、私は今はここから一歩たりとも動く気はありません。ご飯が食べたければ、
兄さんが勝手に何とかして下さい』
「お前な。お袋が昼はパートでいないから、食事の当番はちゃんと決めただろ? 約束事
なんだからちゃんと守れよな」
『でしたら、食事を作る権利も私にあるはずです。じゃあ、今日のお昼はスナック菓子と
いう事で。そうすれば私もほとんど動かず多少はお腹を満たす事が出来ます』
「どうあっても動かない気だな? このサボリ魔め」
『どう言われようと動く気はありません。ましてやそれが兄さんの命令となれば。仮にこ
こで朽ち果てても、私はこの場から動きませんから』
「よし。それならそれで、俺にも考えがある。意地でもお前を台所に立たせてやるからな」
『面白いじゃないですか。やれるものならやってみて下さい。ヘタレの兄さんが、どこま
で出来るか見ものです』
「よし、言ったな。それじゃあ、覚悟しろよ」
『で、何で私の横に座るんですか? 兄さんが隣に来られると、物凄くうっとうしいですが』
「だったら、そこから立てばいいだろ? その代わり、お前の負けだがな」
『フン。たかが隣に座ったくらいで私が動くと思ったら、大間違いですよ?』

86 名前:2/5[] 投稿日:2011/07/30(土) 17:04:53.44 ID:fC8YQK5J0 [5/17]
「分かってるよ。だけど、これならどうだ?」
 ギュッ……
『何で、いきなり私を抱き締めるんですか? 妹に性的いたずらをするとは、やはり兄さ
んは変態ですね。常々から言ってはいましたが』
「別に劣情を抱いてこんな事してるわけじゃねーよ。うっとうしいだろ? 俺にこうやっ
て抱き締められれば」
『ええ。非常に。おまけに汗臭いですし。でも、この程度の事で屈する私じゃありません』
「あ、そう。じゃあ追加攻撃行くぞ?」
 フーッ……
『ひ……ひゃうっ!! く……首筋に息は……反則ですよ? 兄さんの卑怯者……』
「バカ言え。これにルールなんてないしな。ほれほれ。嫌だったらさっさと降参して飯作りに行け」
『それだけは絶対にお断りです。私が兄さんに屈するなど、ありえません』
「なら、この吐息攻撃を受け続けるんだな。首筋だけじゃなく、胸元や脇にも掛けてやるぞ」
『変態っぷりもここに極まれりですね。しかし、私にはその攻撃を封じる秘策がありますから』
「秘策って、何するつもりなんだよ? ただのハッタリとかじゃねーよな?」
『そんな訳ありません。兄さんの吐息攻撃は、これで完璧にシャットアウト出来ます』
「相当な自信だな? なら、やって見せろよ」
『いいんですね? 後悔はしませんね?』
「ああ。だが、この密着状態で一体何を……って、え――?」
 チュッ!!
「ん……んんっ!?」
 チュバッ……チュッ……レロッ……クチュクチュ……クチュ……チュバ……チュッ……
『ぷはっ!! どうです……兄さん……私の……秘策……は……?』
「おまっ……秘策って……何してんだよっ!!」
『ディープキスです。この行為を変態の兄さんが知らない訳無いクセに』
「いや、その……そういう事言ってんじゃなくて……そ、そこまでやるか普通? 兄妹で、
その……キスなんて……」
『別段性行為ではないから禁忌に触れるほどじゃないでしょう。無論、兄さんなんかとキ
スをするという嫌悪感はありますが、この場を動かない為だったら、今の私はたとえ兄さ
んに全身を陵辱されようとも耐え切る自信があります』

87 名前:3/5[] 投稿日:2011/07/30(土) 17:05:28.00 ID:fC8YQK5J0 [6/17]
「変な自信付けんな!! このアホッ!! その……いーのかよ……? お前、今のって、
ファーストキスなんじゃ……」
『それは私に取って大して意味を成しません。たまたま、最初にしたのが兄さんだったっ
てだけです』
「お前、さっきから俺の事を変態変態と言ってるけどな。俺はむしろお前の思考回路を疑うよ」
『至って正常な、普通の女の子ですよ。ただ、少しばかり価値観が違う事は認めますけど』
「違い過ぎだ。全く、どうかしてるぞお前」
『私はここを動きたくないだけです。さあ、どうします兄さん? 一応言っておきますが、
吐息を掛けようとすれば、またキスで口を塞ぐだけですよ?』
「ぐっ…… さすがにそりゃマズイだろ……倫理的に……」
『変なところで兄さんは常識を超えられませんからね。さあ、兄さん。こうして抱き締め
たって、私は動きませんよ? 大人しく、ご飯を作ってきたらどうですか?』
「ちくしょう…… 打つ手なしなのか……?」
 クゥ~~~~~
『――――!?』
「何だ? 今の音は」
『さあ。気のせいじゃないですか? きっと、兄さんの空耳――』
 グゥ~~~~~ キュルル……
「……何か、俺には敬子方面から音がしたように思えたんだが」
『そんな事あり得ません!! い、今のはきっと、兄さんの腹の虫です。そうに決まってます』
「俺のだったら、いちいち聞いたりしないって。大体、俺は腹減ってんだって言ってるん
だから、隠す必要ないだろ」
 グウウウウウウ!!
『ふぁっ!?』
「今のは、間違いなく敬子の腹から聞こえたよな? 体密着させてるんだから、我慢しよ
うとしてる動きまで伝わって来てるぞ?」
『うううううう…… そんな事ありません。私が腹の虫を鳴らすなんて、そんなはしたな
い真似をする訳ないじゃないですか』
「ま、何にせよ、敬子も俺と同じで腹を空かせてるのは事実なんだよな?」
『ぬ…… わ、私は別に、兄さんと違って、この程度は耐えられます』

88 名前:4/5[] 投稿日:2011/07/30(土) 17:05:52.17 ID:fC8YQK5J0 [7/17]
「だよな。じゃあ、仕方ない。俺は打つ手がないし、降参して飯を作ってくるか。俺の分だけな」
『な……っ!? ひ、卑怯です!! 卑劣です!! 兄さんは。自分の分だけ、ご飯の支
度をするなんて』
「卑怯でも卑劣でもねーだろ? もともと当番は敬子なんだ。それサボッてクーラー当たっ
てるから、仕方なく飯作るのに、お前のまで作らなくちゃならない道理なんてないじゃん」
『人の道というのがあるでしょう? 可愛い妹がお腹を空かせているというのに、放置し
て自分の分だけ作るなんて、冷酷にも程があります』
「ん~? 聞こえんな。さてと、何作るかな。香ばしい匂いの漂うソース焼きそばでも作
ろっかなあ」
『ぐっ…… ただでさえすきっ腹なのに、この上もっとも空腹を刺激させる匂いを発する
ご飯を作るなんて、どんだけ鬼畜なんですかっ!!』
「その辺は敬子に散々鍛えられたからなあ。さあ、どうする? お前が飯作らなきゃ、俺
は勝手に一人分だけ作るけど」
『そっ……その笑い方がたまらなくムカつきます…… 分かりましたよっ!! 作ればい
いんでしょう作れば!!』


「で……敬子?」
『何ですか、兄さん。料理の邪魔ですから、話し掛けないで下さい』
「いや、飯作ってくれるのはいいんだけどさ。何だって、俺まで台所に立たされてんの?」
『決まってます。私一人で暑い思いをしている時に、兄さん一人で涼しい部屋にいられる
と、イライラして堪らないからです』
「自分一人が暑い思いをするのは嫌だから、俺にも付き合えって事か。まあ、お前の性格
上、それは分かるけどさ」
『けど、何ですか。そういうもったいつけた言い方は大嫌いです』
「ああ、いや。何で手まで繋ぐ必要があるのかな? それも、指をガッチリ絡み合わせて。
これって恋人繋ぎって奴じゃないか?」
『な……何、バカな事言ってるんですか。これはその……単なるクラッチです。手を繋い
でる訳じゃありませんっ……!!』


89 名前:5/5[] 投稿日:2011/07/30(土) 17:07:41.39 ID:fC8YQK5J0 [8/17]
「いや。プロレスとかで使うのだったら、相手を抱えて自分の両手を組み合わせる奴だろ?
恐らく、根本的に違うから。つか、それはちょっと言い訳にしても無茶過ぎるだろ」
『こ……細かい事はいいんですっ!! とにかく、兄さんを逃がさないように指を絡めて
るだけで、別にその……仲良くしたい訳じゃないですから』
「で、この状態でそうめんを茹でる所まで持って行ったのは褒めてやる。けど、葱とか刻
むのはどうすんだよ? 無しでもいいけど、何か寂しくね?」
『簡単です。兄さんが左手で押さえて、私が右手で包丁使って刻みますから』
「怖い怖い怖い。手とか切るんじゃないだろうな?」
『さあ? やってみなければ分かりません』
「お断りだそんなの。だったら、葱無しでもいいから」
『私が欲しいんです。はい、兄さん。しっかり押さえて下さいね?』
「その笑顔が超怖いんですけど」
『(暑っ苦しいしウザッたいけど…… まあ、兄さんと密着しながら共同作業ですから、帳
消しですね……)』


終わり
最終更新:2011年08月05日 16:45