281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/07/31(日) 15:27:01.70 ID:NUG4wRzK0 [17/43]
「海に行きたい」

 ある夏の暑い昼下がり、梓は突然俺の部屋にやってきてこんな事をおっしゃった。

「…お前もう帰れよ」
「い、今来たばっかだよ!?せめて話くらい聞いてよ!」
「聞かない聞かない。どうせ海に連れてけーとかそんなんだろう」
「う、まあ、端的に言えばそうかもしれないよ?だけどこう、もっとさあ…」
「だいたいそういうのは親父に頼めよ。俺はお前の保護者じゃないんだぞ」
「か、家族旅行じゃないの!ボクはその、タカシと行きたいっていうか…」
「あ?」
「じゃなくて!その、とにかくどうせヒマなんだから、こういう時くらい役に立ってよね!」
「お前は俺をなんだと…」
「もう水着も買ったんだから、タカシに拒否権なんて無いの!」
「買うほど成長して無いクセに」ボソッ
「あー!今こっそりひどい事言った!」
「 買 う ほ ど 成 長 し て 無 い ク セ に ! 」
「堂々とひどい事言った!?」
「そんな貧相な体を海で晒して何になる。やめとけ、やめとけ。お前は山の中シャツ一枚でアホみたいに蝉を取ってるのがお似合いだ」
「ば、馬鹿にすんなー!だいたい、ボクの事いつまでも子供だなんて思ってたら大間違いなんだからねっ!」
「ほう、成長している…と?」
「…ふっふっふ。どうでしょう」
「この余裕…っ!?…仕方ない、明日九時出発な」
「やったーっ!えへへ、タカシのそういう所大好き!」
「利用価値的な意味で好かれてても何も嬉しくないね。…ところで、実際成長してるのか?」
「ふっふーん、このボクのせくしーぼでぃーに掛かればタカシも思わず目を奪われること請け合いだよ」

282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/07/31(日) 15:27:25.75 ID:NUG4wRzK0 [18/43]
「にわかには育ってるように見えんが…」
「え?…うあ、じ、ジロジロ見るな!見えない所が育ってるの!」
「ウエストか」
「…っ!バカ!」
「ぐふっ!?」

 図星だったようです。

「うごごごご、ぼ、ボディーはやめろボディーは…入った…」
「うるさいっ!デリカシーの無い事いうタカシが悪いんだからね!」
「どうせ夏だからってあんみつとか食い過ぎたせいで…イエナンデモアリマセン」
「…もう、ホントにタカシは女心が分かんないんだから…ボクが言うのもなんだけどさ、そんなんだから夏休みの予定がすっかすかなんだよ」
「本当に余計な御世話だなオイ。俺は彼女が出来ないんじゃなくて作らないだけだ」
「…へーえ。どうして彼女作んないのかな?」ニヤニヤ
「……代わりがいるからな」
「…代わり?」
「小うるさくてワガママな女の子が身近に一人いるから、彼女はもう十分だってこった」
「えっ…?わっ、えと、それって…その…」
「言わせんなよ、恥ずかしい」
「は、恥ずかしいのはどっちだよ!なんか急に変な事言いだして…あーもう、今日はもう帰る!明日、遅れたらぶつからね!」

 そう言って梓は台風のように去って行った。

「…追っ払い成功、か。あいつは放っておくといつまでも居座るからな…さあて、明日はどう遊んでやるか…」

 そう言って一人ほくそえみ、いそいそと改造水鉄砲の準備などに勤しむ。
 なんだかんだで、楽しみにしている俺であった。
最終更新:2011年08月05日 16:54