111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/16(火) 22:29:24.06 ID:5bbabvve0 [1/2]
俺の名前は別府タカシ。梓と言うボクっ子を妹に持つ高校生だ。
夏休みも中盤に差し掛かった今日、俺は充実した一日に感謝をしつつリビングで読書などに勤しんでいた。
読んでいるのは洋書で、出版から長きにわたり多くの人から愛される有名な本。
そう、「ウォーリーをさがせ!」だ。

俺が眼球をいじめながら夜を楽しんでいると、リビングに人影が現れた。

梓「…あ、タカ兄。まだ起きてたの?」
タ「おや梓。こんばんは」
梓「え?あ、こんばんは…って、家族なのに何やらせんのさ」
タ「挨拶は大事だ。挨拶を笑う者は友達が少ない」
梓「いや、そういう問題じゃなくて…タカ兄、そろそろ寝れば?」
タ「…明日も明後日も休み、なんと素晴らしい響きだろう。そうは思わないかね、梓君?」
梓「確かに夏休みだけどさ…休みだからって遅寝遅起きはよくないと思うよ?ただでさえタカ兄はぐーたらなんだしさ」
タ「安心しろ、規則正しい生活は心得てるさ」
梓「でももう12時だよ。タカ兄まだお風呂も入ってないでしょ」
タ「休日は遅寝早起きを心がけている。就寝は午前3時、起床は午前6時だ」
梓「まだ遅起きの方が健康的な気がするよ!?」

とその時、不意に梓のパジャマへ俺の疲労した眼球が動いた。

タ「…パジャマ、新しいのか?」
梓「あ、気づいた?」
タ「色は同じだが、柄が変わったな」
梓「ボクが自分で買ってきたんだ。へへっ、可愛いでしょ?」
タ「ああ、似合ってるんじゃないか」
梓「えへへ…そっか。でもタカ兄みたいなセンスない人に褒められたって、ちっとも嬉しくないや」
タ「これは異な事を」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/16(火) 22:29:38.96 ID:5bbabvve0 [2/2]
梓「だってタカ兄、パジャマの柄なんだっけ?」
タ「ウツボカズラだ。食虫植物で、夏の湿った野原によく生える。日本では温室栽培が主で…」
梓「もういいよ。…はぁ。なんでよりにもよってウツボカズラを選ぶのかなあ…」
タ「一般的にウツボカズラのセンスは悪いのか」
梓「もうダメダメのダメだよ。世が世なら「ぎゃふん」って言わされてるレベルだよ」
タ「そんなにか」
梓「そんなに。…あーもう、本当にタカ兄は色々と残念なんだから。ボクは兄がいる事が恥ずかしいよ」
タ「兄だるしむ事なら恥ずかしくないのか」
梓「言葉遊びしてるんじゃないの。…ホントにさ、もう少し何かとセンスのあるタカ兄ならよかったのに」
タ「すまんが、並行世界の話はよく分からんな」
梓「そんな小難しい話はしてないよ!…そうじゃなくて、この世界上でセンスを磨いてくれたらいいのにって話!」
タ「センスを磨け…か。可愛い妹の頼みとあれば是非とも叶えてやりたいが、こればかりはな」
梓「…そーいうと思って、ほら」
タ「っと。…なんだこれ」
梓「中身、見てみなよ」
タ「と言われても…お、新品のパジャマか?」
梓「…ボクのやつ、買うついでに買っといてあげたの。それ着たらちょっとはセンスの事、分かるんじゃないかな」
タ「…なるほど、な。ウツボカズラに未練はあるが、ここは妹の好意に甘えさせてもらうとするか」
梓「べつに、好意なんかじゃないよ…タカ兄がそんなんだと、ボクが恥ずかしいだけだもん」
タ「まあ、なんにせよ着させてもらうよ。あんがとな」
梓「う…うん。それじゃボク、もう寝るからっ!」

そう言って梓は、逃げるように去って行った。

梓「……わ、渡しちゃった、ついに渡しちゃったよ…」
梓「…タカ兄、気づいてくれたかな…」
梓「あのパジャマ、ボクと色違いのおそろだって事……」

完!
最終更新:2011年08月19日 10:13