43 名前:1/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:31:14.52 ID:SOx2NNEU0 [4/12]
『う~ん……』
「どうした、美衣。珍しく真剣に悩んだ顔しちゃって」
『珍しくって、何それ。失礼な。まるでボクに悩みなんて無いみたいな言い草じゃないか』
「実際、美衣が悩んでる姿なんて、あんま見たこと無いからな。ホントに悩み無いかと思ってた」
『君ね。その言い方は失礼だよ。ボクだって十代の思春期の乙女なんだから、悩みなんて
いくらでもあるの。本当に悩みのない君に言われたくないよ』
「まあ、俺があんまり悩まないのは事実だから、それは否定しないけどさ。そう偉そうに
言うからには、美衣にはさぞかし立派な悩みがあるんだろうな?」
『当然でしょ。正直、一度深みに嵌まっちゃうと、ご飯も喉を通らなくなるくらいだよ』
「へえ。そこまで言えるほどの悩みなら、ちょっと俺にも話してみろよ。もしかしたら、
多少は相談に乗ってやれるかも知れないぞ」
『バカを言わないでよね。興味本位で乙女のプライバシーに触れようなんて失礼だよ。大
体、君の浅い知識と経験で相談に乗れるとか、鼻で笑っちゃうね』
「そんな事言って、大した悩みじゃないのについ大きく出ちゃったから、ごまかそうとし
てるんだろ? ホント、お前って分かりやすいよな」
『そんな事無いってば。君はバカだから想像もしないんだろうけど、女子なら別に普通の
事なの。ボクだけ特別って訳でもなくて、みんなそうなんだから。だけど、そういうのは
男の子には話さないの。大体、みっともない事も多いんだから』
『(言える訳ないじゃん。あと2cm胸が大きくなれば、タカシももう少しボクを見てときめ
いてくれるかなとか、タカシと同じ大学に行ける為にはどうすればいいだろうとかなんて)』
「分かった分かった。そう仏頂面すんなって。でも、一つくらいは言えるのあるだろ? そ
れとも全く人には言えない悩みだけなのか?」
『さすがにそんな事はないよ。ただ、ありきたりだけど、もうちょっと痩せたいなんての
は、言ったところでしょうがないしね』
「いや。太ってるならアドバイスのしようもあるけど、お前そもそも痩せてるじゃん。こ
れ以上ダイエットなんてしたら、ガリガリになっちまうぞ」
『そんな事無いよ。腰まわりとか、脚とかもうちょっと細く出来るし。ただ、単に痩せる
よりスタイルを整える方が難しいんだから。けど、そんな事タカシに聞いても分からないでしょ?』
44 名前:2/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:31:37.54 ID:SOx2NNEU0 [5/12]
「まあな。そもそも、俺はあんまり細い子よりは少しくらいなら肉付きいい方が好みだし」
『別にボクだって、モデル体型まで目指してるわけじゃないし。大体、君の好みなんて、
ボクには関係ないじゃない』
「まあ、そう言うなよ。男の中にはそういう考えもあるっていう参考程度にはなるだろ?」
『残念ながら、君みたいなダメ男の意見は全く参考にならないね。速水もこみちや向井理
だったら、喜んで参考にさせて貰うけどね』
「悪かったな。ブサメンで参考にもならなくてよ」
『君の場合は顔の良し悪しより性格の問題が大きいけどね。変態嗜好の君に一般的な意見
なんて求められるわけ無いもの』
「あのさ。美衣は勝手に俺を変態にしたがるけどさ。男ってな、みんなどっか女性に対し
ては変態なんだぜ? 最近は俳優だってぶっちゃけちゃう奴もいるじゃん。だから、別に
変態なんじゃなくて、それが普通なんだって」
『男の人が女の人に興味を持つのは、別に普通だよ。ただ、君の場合はとりわけ変態臭く
見えるだけでね』
「人はそれを偏見というのでは? じゃなければ差別だよ。虐めだよ」
『だって、ボクにはそう思えるんだからどうしようもないじゃない。これを改めろと言う
のは無理だよ』
「ああ……そうっすか…… 要は美衣が俺を変態と認定していてそれは変えられないと……
なまじっか可愛い子だけにショックだぜ……」
『何を今更。懲りずに話しかけて来るから、神経が無いのかと思っていたけど、こんな所
でダメージ受けるんだね』
「俺だって、時には繊細になることはあるんだよ。特に女の子がらみならな」
『まあ、いいけど。君が傷付こうが、ボクは一向に構わないから』
「酷い!! お前には罪悪感とか慈悲の心はないのか!!」
『失礼な。ちゃんと持ってるよ。君に対してだけは、残念ながら持ち合わせてないだけで』
「嘘付け。残念ながらなんて、欠片も思ってないくせに」
『うん♪』
「そこだけ可愛らしく頷くな!! ええい、クソ!! むかつくわ!!」
『で、怒るのは勝手なんだけどさ。それに付き合わされる義務はないから、ボク、もう帰っ
てもいいかな?』
45 名前:3/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:32:00.46 ID:SOx2NNEU0 [6/12]
「ちょっと待て!! このままじゃ収まりつかねえ。せめて、今、何を悩んでいたのだけ
教えてくれよ。それとも、それも俺には言えない悩みなのか?」
『……別に。ちょっと、髪型どうしようかなーって考えてただけだから。悩みなんて程じゃないよ』
「それだけで、そんな難しい顔してたのか?」
『ボク、そんな難しい顔してた? 自分じゃ分かんないから』
「してたしてた。髪いじりながら、眉寄せてむーんって」
『顔真似やめてくれる? タカシに真似されると、自分ってこんな変な顔してたかなって
自己嫌悪に陥るから』
「……安心しろ。俺がやると気持ち悪くても、美衣がやると男ならちょっとドキッとする
ような顔になるから」
『ホント? 良かった。タカシみたいな顔じゃなくて』
「笑顔が見れるのは嬉しいけど、言葉自体は嬉しくないなあ……」
『男なんだから、いつまでもいじいじしない。それより、君はどんな髪型の子が好き?』
「え? 俺の意見を参考にするの? マジで?」
『うん。君が好きって言ったのは対象から外すから』
「ホント、お前って俺の心の傷口に塩を塗りたくるよな。絶対ドSだろ」
『まあ、それは冗談として、ちょっと試しにね。幾つか試してみようかなって』
「ところで、一つ聞くけどさ。何で急に髪型なんて変えようって思ったの? めんどくさ
いからって、ボブカットにしてるだけじゃん。時々結ぶくらいでさ」
『まあ、気分転換? 新学期だしね』
「うーん。新学期だしってのはよく分からんけど、とりあえず気分転換したいってのは分
かった。ところで、何か参考になるものはない? イマイチ女子の髪型ってイメージは掴
めても、上手く口に出せないからさ。写真とかあれば一発で示せるじゃん」
『ちょっと待ってて。持ってるから』
ガサゴソガサゴソ
『はい。とりあえず、ヘアカタログ買ってみたんだ。これで探してみて』
「了解。そうだな……これなんかどう? ゆるふわウェーブって」
『あのさ? もしかして、モデルの子の可愛さで選んでないよね?』
「いやいや、とんでもない。ちゃんと美衣の顔を思い浮かべながら選んでますよ?」
46 名前:4/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:32:24.41 ID:SOx2NNEU0 [7/12]
『ホントかな……? イマイチ信用ならないし。それにこういうパーマかけるのはダメ。
めんどくさいから』
「やっぱめんどくさいんじゃん。だったら何も、変える必要なくね? そのままでも十分
可愛いんだし」
『うるさいな、君は。ボクが変えたいって思ってるんだからいいじゃない。付き合いたく
ないって言うなら、別にいいけど』
「いや。そんな事ないよ。じゃあ、楽に出来そうなのだったら……これとかどう? こう、
丸みを帯びた感じでさ。何かより可愛らしさがにじみ出そう」
『うーん…… もうちょっと代わり映えする感じのは?』
「じゃあ、こんなのはどう? 後ろ髪を切って前だけ長めにして真ん中で分けてるの。何
かちょっと小悪魔的な可愛さがあって良くね?」
『何て言うかさ。自分がそういう髪型した時のイメージが湧かないんだよね。本当に似合
うのかなあって』
「なら、ちょっとやってみればいいじゃん。手鏡くらい持ってるだろ?」
『むっ。何かその言い方、ちょっと小馬鹿にされた感じがする。ボクだって、ちゃんと身
だしなみくらいは気を遣うし』
「何でいちいち突っ掛かる言い方するかな? 普通に聞いただけなのに」
『じゃあ、君の聞き方が悪いんだね。もう少しちゃんと、人付き合いというものを勉強し
た方がいいよ』
「はいはい。まあ、それはともかくとしてさ。自分で鏡見て確認すればいいじゃん」
『うーん……まあ、そうなんだけどさ。どうも片手で鏡持ちながらだと上手く行かないんだよね』
「イメージなんだから、簡単でいいだろ。さすがに巻き髪パーマとかは難しいけど、この
辺とかだったらさ」
『うー……ん……』
「何悩んでるんだよ? そう難しく考える事でもないだろ」
『いや、その…… だ、だったらさ。君……やってよ』
「え? 俺が? 何でまた」
『だって君なら、ボクの顔見ながらセット出来るから、まだまともに出来そうかなって思
って。それに、無駄に手先器用だし。そのボサ頭も、毎日自分でセットしてるんでしょ?
だったらその……ボクよりマシかなって……』
47 名前:5/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:32:48.53 ID:SOx2NNEU0 [8/12]
「別に俺はいいけどさ。その……いいのかよ? 俺なんかが髪触っても」
『……きょ、今日はその……特別だよ。今、この場で選ばなきゃ、何か気分が殺がれちゃ
うかもしれないから……』
「まあ、美衣がいいっつーんなら。じゃあ、まずは簡単にこの辺のボリュームアップして
内巻きになった感じのから行くか」
『君に任せるよ。適当にいくつかやって貰って、気に行ったのがあったらそれにするから』
「分かった。櫛、貸してくれるか?」
『はい。大切に扱ってよ? 本当は君になんて貸したくないんだからね』
「分かってるよ。それじゃあ、ジッとしてて。髪梳かすから」
『……うん』
シュッ……シュッ……
「へぇ……」
『どうしたの? 変な声出して』
「いや。美衣の髪触るの初めてだけど、サラサラしてるなって。それに、いい匂いしてる」
『ひ、人の髪の匂い嗅がないでよ。この変態』
「その変態に髪を弄らせてるのは美衣だろ?」
『あぅ…… そ、それはそうだけどさ……いちいち口に出す事ないじゃん……』
「あ、分かった。もしかしてお前、恥ずかしいんだろ? 褒められてさ」
『バカ言わないでよ。君なんかに褒められたって、その……き……気持ち悪いだけだってば』
「そう言う割に、顔、赤くなってるぞ」
『そ、それはその……怒ってるからだってば。恥ずかしいからなんかじゃない。断じてな
い。決して無い。あり得ない。ないないない』
「そこまでムキになって否定すると、却って本当ですって言ってるものだぞ?」
『違うってば!! 君は本当に、人の話を聞く耳持たないよね。自分の思い込み一直線で』
「まあね。でないと、これだけ毒舌浴びせられてまだ美衣とこうして一緒になんていられないって」
『否定しないんだね。全く、ホント懲りないバカなんだから』
「はい。こんなもんだな。似てる程度にはなったと思う」
『どれどれ……うーん……もうちょっとボリューム出したいから、手で髪をちょっと持ってみてよ』
「こんな感じ?」
48 名前:6/6[] 投稿日:2011/09/04(日) 11:34:44.30 ID:SOx2NNEU0 [9/12]
『うん。っと……大体分かった。じゃあ、次なんか試してみてよ』
「了解。じゃあ、次はこの真ん中分けので」
『ん……』
シュッ……シュッ……
『(こうしてタカシに髪セットして貰ってると……すっごくドキドキする……けど、何か嬉しいな……)』
「ほい。これでどうだ?」
『うーん…… これもどうなんだろって感じ……さっきのが良かったかな。似たようなの
で、これとか行ってみてよ』
「まだやんのかよ。何かだんだん腕が疲れて来たんだけど」
『引き受けてくれたんでしょ? 男なら、最後まで責任持ってやり遂げるの。はい、続けて』
「……何事もやり過ぎは良くないと思うんだけどなぁ」
『何か言った?』
「い、いやその……何でもない。やるよ。やるから」
『(ゴメンね。でも……何かこう、ずっとこうしていたくなっちゃったから、あともう少し
だけ、頑張って……)』
終わり
最終更新:2011年09月08日 16:29