162 名前:1/5[] 投稿日:2011/09/09(金) 00:55:59.06 ID:ui8xn8910 [4/8]
- ツンデレ妹が早起きしてお弁当を作っているのを見かけたら
「ふぁ~あ……」
トントントントン……
「ん? 何の音だ」
『~♪』
「かなみか。どうしたんだよ、朝っぱらから」
『ひやっ!?』
ゴトッ!!
『な、何よお兄ちゃん。後ろからいきなり声掛けないでよね。気持ち悪い。ビックリす
るじゃない』
「わ、悪い。脅かすつもりはなかったんだよ。それにしても、ただ声掛けただけで、気
持ち悪いはねーだろ」
『だ、だってお兄ちゃんの声ってその……変に耳にまとわり付くんだもん』
「そんな事言ったって、生まれつきなんだからしょうがねーだろ。お前だって17年も
声聞いてんだから、いい加減慣れろ」
『無理。絶対慣れない。あー、もう。鬱陶しい』
「ちくしょう。絶対今の、嫌がらせも含んで言ってるだろ」
『さて、どうだかね。で、どうしたのよ? いつも時間ギリギリまで寝てるお兄ちゃん
が、今日に限って早起きだなんて』
「たまたまトイレに起きただけだっつの。それよりお前こそどうしたんだよ? 朝早く
から台所に立つなんて、どういう風の吹き回しだ?」
『……お弁当……』
「え?」
『だからっ!! お弁当、作ってたの。悪い?』
「いや。悪かねーけど、それこそ一体どうしたんだ? 彼氏でも出来たのか?」
『ていっ!!』
ヒュンッ!!
「おわっ!?」
ビィィィィン……
163 名前:2/5[] 投稿日:2011/09/09(金) 00:56:23.03 ID:ui8xn8910 [5/8]
「おまっ……怖い事すんなよな。包丁投げるとか何考えてんだよ。刺さったらどうする
気なんだよ!!」
『ちっ…… 外したか……』
「ちっ、じゃねえよ。ちっ、じゃ!! 当てる気だったのかよ!!」
『冗談よ。冗談。お兄ちゃんがあんまりにもカチンと来る事言ったから、ちょっと殺意
が芽生えただけよ。でも、本気で殺すまでは行かなかったから』
「あともう数センチズレてたら死ぬトコだったぞ。カチンと来る事って、あれか? 彼氏云々か?」
『そうよっ!! 彼氏がいなきゃ、弁当作っちゃいかんのかっ!!』
「そうは言わんけど、でも女の子が急に弁当作り始めるキッカケって、やっぱり一番は
彼氏に手作り弁当作ってあげるっていうのじゃね? 違うか?」
『否定はしないけど、それだけに違う時は心に深い傷を残すのよ。ホント、お兄ちゃんっ
て無神経なんだから』
「わかったわかった。で、彼氏じゃないんなら、どんな理由なんだよ。単なる気まぐれ
なんて事はないよな?」
『それも違うっ!! 大体、何でお兄ちゃんにあれこれ詮索されなくちゃいけないのよ。
別にいいじゃない。どんな理由だって』
「いや。どんな理由だっていいけどさ。隠されると却って気になるもんじゃね? 何か
俺に言いたくない理由なのかなって」
『気にしないでよっ!! べ、別にその……言いたくないってだけで、そこまで隠すほ
どの理由じゃないし……』
「無理。どうしても気になるし。うっかりすると学校でも友達とかにしゃべっちまうか
もしれないし」
『ぎゃあっ!! 止めてよ。絶対に止めて。お兄ちゃんのクラスにもうちの部の先輩と
かいるんだから、変に噂とかになったら困るんだから』
「だろ? だったら、今ここでぶっちゃけちゃった方がよくね? 誰にも言うなって言
うならそうするしさ」
『う~…… お兄ちゃんの言う事なんて当てになんないのよね……』
「そんな事ないぞ。お前がホラー映画でマジビビッて寝れなくなって俺の部屋に来た事
ととか、まだ誰にも言ってないし」
164 名前:3/5[] 投稿日:2011/09/09(金) 00:56:43.79 ID:ui8xn8910 [6/8]
『うぎゃあっ!!(/////////////) そ、そんなの小学校の時じゃない!! 古い話持ち出
さないでよっ!!』
「むしろ6年も胸の内に溜め込んでるんだぜ? これでもまだ信用出来ないか?」
『うー…… じゃ、じゃあその……誰にも言わないでよ?』
「オーケーオーケー。俺の脳内ファイルに極秘事項と記して、キッチリ保管しておくか
らな。だから安心して言ってみろ。ほら」
『うー…… ていうか、別にホントに大したことじゃないんだけど…… 最近お母さん
もパート始めたじゃん。だから朝、忙しくてお弁当作れなくなったって』
「ああ。だから、自分で買えって小遣いとは別に飯代くれるようになったよな」
『けど、どう考えたってお母さんがパート始めたのって、家計を助ける為じゃん。それ
なのに、外でお昼食べるってどう考えても無駄な気がしない? そりゃ確かに、購買の
パンとかだと安いけど、それでもお弁当よりは高くつくと思うんだけど』
「それで弁当ってか。なかなかお前もやるじゃん」
『なっ……!? が、柄にも無く褒めないでよ。べ、別にその……お兄ちゃんに褒めら
れたって、嬉しくなんてないんだからねっ!!』
「何だよ。そのツンデレのテンプレみたいな照れ隠しは」
『うるさいっ!! 誰がツンデレよっ!! 100パーセント、本音だからっ!! あと、
そのニヤニヤ笑い止めてよね気持ち悪い』
「いやあ。何かお前の態度が余りにも可愛くってさ。つい顔が綻んじまうんだよな」
『可愛いとか言うなっ!! お兄ちゃんに言われると、何だか虫酸が走るから』
「だって本心だからしょうがないし。虫酸が走るって言われてもなあ……」
『と、とにかくその笑い方だけは止めてよね。ホントにマジで』
「分かったよ。でもさ。いくら家計を助けるっつったって、お前一人分だけ弁当じゃ意
味なくね? それって下手すりゃ却って金掛けてるだろ」
『分かってるわよ、そんなの。だからその……お父さんと、あとその…………お兄ちゃ
んの分も…………ちゃんと、作るわよっ……』
「え? マジで俺の分も作ってくれんの?」
『しょうがないでしょっ!! 一人分より三人分の方が安く上がるんだから…… あく
まで効率の問題で、作りたくて作るわけじゃないんだから』
165 名前:4/5[] 投稿日:2011/09/09(金) 00:57:05.44 ID:ui8xn8910 [7/8]
「はいはい。ま、それでもかなみが俺の弁当を作ってくれるってだけで嬉しいよ。俺の
為じゃ無くてもな」
『う、嬉しいとかバカじゃないの? 妹に弁当作って貰うくらいで喜ばないでよね。彼
女ならともかく。ていうか、早く彼女作って、そっちに弁当作って貰いなさいよね。そ
うすれば、あたしが弁当作らなくてよくなるんだから』
「そんな簡単に見つからなきゃ、苦労しねーよ。大体、お前だって普段から俺の事散々
貶しててさ。そんな奴に彼女出来るとか思って言ってんのか?」
『うー…… 無理っぽい……かも……』
「だろ。まあ、自分でも言ってて空しくなるだけだから、これ以上触れたくないけどよ」
『全く、ほんっと情けないんだから。そんなお兄ちゃんが、例え妹とはいえ、女の子に
お弁当作って貰えるんだから、ありがたく思いなさいよ』
「お前、さっき俺の為じゃないとか言ってたじゃん。なのに、何でありがたがんなきゃ
いけないんだよ」
『いーのっ!! ついでだろうがおまけだろうが、お兄ちゃんみたいな男にこんな幸せ
が訪れるだけでも感謝しろっての。いい? 分かった?』
「全く……ホント、お前って自分勝手な奴だよな」
『あ、いーの? そういう事言って。明日からお弁当のおかず全部、お兄ちゃんの嫌い
なイカフライにしてやるんだから』
「やめろよな。あれ、固くて噛み切れないでいるうちに、衣が全部取れちゃうのがヤなんだよ」
『だったら、ちゃんと毎日お礼を言ってよね。ありがとう。美味しかったよって』
「何でそこまで強要されんだよ? お礼はともかく、美味しいかどうかなんて分かんないのに」
『うるさいな、もう。とにかく、言わなきゃ毎日、お兄ちゃんの嫌いなものだらけにす
るんだから、イヤだったらちゃんと言う事。分かった』
「やれやれ。分かったよ」
『あと、友達とかに妹が作ってくれたとか自慢しないでよね。噂になったりしたらイヤ
なんだから』
「そんなもん分かってるよ。俺だって、からかわれたくねーし」
『あーあ。全く、何でお兄ちゃんと同じ高校入っちゃったかなー。選択肢少ないとはい
え、もうちょっと考えればよかった』
「知るかよ。お前が選んだんだろが」
166 名前:5/5[] 投稿日:2011/09/09(金) 00:58:37.30 ID:ui8xn8910 [8/8]
『だーって、頑張ったんだけど、どうしてもウチの高校以上の学校無理だったんだもん。
かといって、お兄ちゃんより下の学校なんてプライドが許さないし』
「だったら我慢しろ。全く、俺だって妹が入学してきたってんで、結構からかわれたんだからな」
『それこそ知らないわよ。いい? だからこそ、絶対あたしが作ったっての、秘密だか
らね。もう、愛しのお兄さんだのなんだの言われるのこりごりなんだから』
「はいはい。仰せのとおりに致しますよ」
~お昼~
「(あのアホ……こんな可愛らしい弁当じゃ、どうあってもバレるじゃねーかよ…… し
かも、海苔に一枚だけ、ハートマークを埋もれるようにして入れとくとか、何考えてん
だアイツは……)」
『(エヘヘ……おにーちゃん、今頃美味しく食べてくれてるかなぁ。言えないよね。本当
は、家計の事とかよりも何よりも、お兄ちゃんのためにお弁当作りたかっただけなんて……)』
終わり
最終更新:2011年09月14日 00:59