■中部経典第 1 経 「根本法門経」
〈 和 訳 〉
── このように私は聞きました。
ある時、世尊は、ウッカッターに近い、
スバガ林の、サーラ大樹のもとに住んでおられました。
そこで、世尊は、比丘たちに話しかけられました。
「比丘たちよ」
「尊師よ」
と、── 比丘たちは、世尊に答えました。
そして世尊は、このように言われたのです。
「比丘たちよ、貴方たちに、あらゆる法の根本法門を説くことにする。
それをよく聞き、よく考えなさい。それでは話そう。」
「かしこまりました、尊師よ。」
比丘たちは、世尊に答えました。
世尊は、次のように言われました。
凡夫(の知覚)
「比丘たちよ、ここに凡夫にして、聖者の法〈教え〉を聞かない者たちは、
諸々の聖者を見ず、聖者の法を熟知せず、聖者の法に導かれることが無く、
諸々の善人を見ず、善人の法を熟知せず、善人の法に導かれることが無い。
彼は、地 を 地 と思い、地 を 地 と思って 地 を考え、地 において考え、
地 から考え、〈 私の 地 である 〉と考え、地 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていない〈よく知らない〉からである、と私は言う。
彼は、水 を 水 と思い、水 を 水 と思って 水 を考え、水 において考え、
水 から考え、〈 私の 水 である 〉と考え、水 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、火 を 火 と思い、火 を 火 と思って 火 を考え、火 において考え、
火 から考え、〈 私の 火 である 〉と考え、火 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、風 を 風 と思い、風 を 風 と思って 風 を考え、風 において考え、
風 から考え、〈 私の 風 である 〉と考え、地 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、生けるもの〈有情〉 を 生けるもの と思い、
生けるもの を 生けるもの と思って 生けるもの を考え、生けるもの において考え、
生けるもの から考え、〈 私の 生けるもの である 〉と考え、生けるもの を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、天〈六欲天の神々〉 を 天 と思い、天 を 天 と思って 天 を考え、天 において考え、
天 から考え、〈 私の 天 である 〉と考え、天 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主〈他化自在天に住む魔・マーラ〉 を 生けるものの主 と思い、
生けるものの主 を 生けるものの主 と思って 生けるものの主 を考え、生けるものの主 において考え、
生けるものの主 から考え、〈 私の 生けるものの主 である 〉と考え、生けるものの主 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、梵天 を 梵天〈色界の第一禅天〉 と思い、梵天 を 梵天 と思って 梵天 を考え、梵天 において考え、
梵天 から考え、〈 私の 梵天 である 〉と考え、梵天 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天・色界の第二禅天〉 を アーバッサラ と思い、
アーバッサラ を アーバッサラ と思って アーバッサラ を考え、アーバッサラ において考え、
アーバッサラ から考え、〈 私の アーバッサラ である 〉と考え、アーバッサラ を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天・色界の第三禅天〉 を スバキンハ と思い、
スバキンハ を スバキンハ と思って スバキンハ を考え、スバキンハ において考え、
スバキンハ から考え、〈 私の スバキンハ である 〉と考え、スバキンハ を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天・色界の第四禅天〉 を ヴェーハッパラ と思い、
ヴェーハッパラ を ヴェーハッパラ と思って ヴェーハッパラ を考え、ヴェーハッパラ において考え、
ヴェーハッパラ から考え、〈 私の ヴェーハッパラ である 〉と考え、ヴェーハッパラ を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を 征服者 と思い、
征服者 を 征服者 と思って 征服者 を考え、征服者 において考え、
征服者 から考え、〈 私の 征服者 である 〉と考え、征服者 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を 空無辺処 と思い、
空無辺処 を 空無辺処 と思って 空無辺処 を考え、空無辺処 において考え、
空無辺処 から考え、〈 私の 空無辺処 である 〉と考え、空無辺処 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を 識無辺処 と思い、
識無辺処 を 識無辺処 と思って 識無辺処 を考え、識無辺処 において考え、
識無辺処 から考え、〈 私の 識無辺処 である 〉と考え、識無辺処 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を 無所有処 と思い、
無所有処 を 無所有処 と思って 無所有処 を考え、無所有処 において考え、
無所有処 から考え、〈 私の 無所有処 である 〉と考え、無所有処 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、非想非非想処 を 非想非非想処 と思い、
非想非非想処 を 非想非非想処 と思って 非想非非想処 を考え、非想非非想処 において考え、
非想非非想処 から考え、〈 私の 非想非非想処 である 〉と考え、非想非非想処 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、見られたもの 〈眼識界〉を 見られたもの と思い、
見られたもの を 見られたもの と思って 見られたもの を考え、見られたもの において考え、
見られたもの から考え、〈 私の 見られたもの である 〉と考え、見られたもの を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの〈耳識界〉 を 聞かれたもの と思い、
聞かれたもの を 聞かれたもの と思って 聞かれたもの を考え、聞かれたもの において考え、
聞かれたもの から考え、〈 私の 聞かれたもの である 〉と考え、聞かれたもの を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、知覚されたもの 〈鼻・舌・身識界〉を 知覚されたもの と思い、
知覚されたもの を 知覚されたもの と思って 知覚されたものを考え、知覚されたもの において考え、
知覚されたもの から考え、〈 私の 知覚されたもの である 〉と考え、知覚されたもの を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、知られたもの〈意識界〉 を 知られたもの と思い、
知られたもの を 知られたもの と思って 知られたもの を考え、知られたもの において考え、
知られたもの から考え、〈 私の 知られたもの である 〉と考え、知られたもの を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、単一〈専心・入定〉 を 単一 と思い、単一 を 単一 と思って 単一 を考え、単一 において考え、
単一 から考え、〈 私の 単一 である 〉と考え、単一 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、多様〈散乱・未入定〉 を 多様 と思い、多様 を 多様 と思って 多様 を考え、多様 において考え、
多様 から考え、〈 私の 多様 である 〉と考え、多様 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、全体〈入定と未入定〉 を 全体 と思い、全体 を 全体 と思って 全体 を考え、全体 において考え、
全体 から考え、〈 私の 全体 である 〉と考え、全体 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 と思い、涅槃 を 涅槃 と思って 涅槃 を考え、涅槃 において考え、
涅槃 から考え、〈 私の 涅槃 である 〉と考え、涅槃 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
有学
比丘たちよ、また比丘にして、有学〈修行途中〉であり、意〈阿羅漢果という目的〉に達しておらず、
最上の無碍安穏〈諸々の煩悩の滅尽〉を求めて住む者がいる。
彼は、地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えるべきで無く、地 において考えるべきで無く、
地 から考えるべきで無く、〈 私の 地 である 〉と考えるべきで無く、地 を歓〈よろこ〉ぶべきではない。
それは何故か? 彼には知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を … 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 … 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されなければならないからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って考えるべきで無く、涅槃 において考えるべきで無く、
涅槃 から考えるべきで無く、〈 私の 涅槃 である 〉と考えるべきで無く、涅槃 を歓〈よろこ〉ぶべきではない。
それは何故か? 彼には知悉されなければならないからである、と私は言う。
阿羅漢〈1〉
比丘たちよ、また比丘にして、阿羅漢であり、煩悩が尽き、住み終え〈修行が完成し〉、
為すべきことを為し、負担を下ろし、生存の束縛を断ち、正しく知って解脱している者がいる。
彼は、地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 彼には知悉されているからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 彼には知悉されているからである、と私は言う。
阿羅漢〈2〉
比丘たちよ、また比丘にして、阿羅漢であり、煩悩が尽き、住み終え、
為すべきことを為し、負担を下ろし、生存の束縛を断ち、正しく知って解脱している者がいる。
彼は、地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 貪りの滅尽により、貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 貪りを離れているからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 貪りの滅尽により、貪りを離れているからである。
阿羅漢〈3〉
比丘たちよ、また比丘にして、阿羅漢であり、煩悩が尽き、住み終え、
為すべきことを為し、負担を下ろし、生存の束縛を断ち、正しく知って解脱している者がいる。
彼は、地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 怒りの滅尽により、怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 怒りを離れているからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 怒りの滅尽により、怒りを離れているからである。
阿羅漢〈4〉
比丘たちよ、また比丘にして、阿羅漢であり、煩悩が尽き、住み終え、
為すべきことを為し、負担を下ろし、生存の束縛を断ち、正しく知って解脱している者がいる。
彼は、地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 愚痴の滅尽により、愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 愚痴を離れているからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 愚痴の滅尽により、愚痴を離れているからである。
如来〈1〉
比丘たちよ、また阿羅漢であり正自覚者である如来は、
地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 如来には知悉されているからである、と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 知悉されているからである、と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か? 如来には知悉されているからである、と私は言う。
如来〈2〉
比丘たちよ、また阿羅漢であり正自覚者である如来は、
地 を 地 とよく知り、地 を 地 とよく知って 地 を考えず、地 において考えず、
地 から考えず、〈 私の 地 である 〉と考えず、、地 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か?
〈 歓びは苦の根本である 〉、〈 生存より生まれがある 〉、〈 生けるものには老死がある 〉
── と、このように知ったからである。
それゆえ、比丘たちよ、ここに、
〈 如来は、すべてにわたる煩悩の滅尽により、消滅により、寂滅により、捨棄により、正自覚を得た者である 〉
と私は言う。
彼は、水 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、火 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、風 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、生けるもの を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、天 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、生けるものの主 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、梵天 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、アーバッサラ〈光音天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、スバキンハ〈遍浄天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、ヴェーハッパラ〈広果天〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、征服者〈無想有情〉 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、空無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、識無辺処 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、無所有処 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、見られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、聞かれたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、知られたもの を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、単一 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、多様 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、全体 を …… 〈 中 略 〉 …… 正自覚を得た者である 〉と私は言う。
彼は、涅槃 を 涅槃 とよく知り、涅槃 を 涅槃 とよく知って 涅槃 を考えず、涅槃 において考えず、
涅槃 から考えず、〈 私の 涅槃 である 〉と考えず、涅槃 を歓〈よろこ〉ばない。
それは何故か?
〈 歓びは苦の根本である 〉、〈 生存より生まれがある 〉、〈 生けるものには老死がある 〉
── と、このように知ったからである。
それゆえ、比丘たちよ、ここに、
〈 如来は、すべてにわたる煩悩の滅尽により、消滅により、寂滅により、捨棄により、正自覚を得た者である 〉
と私は言う。」と。
このように世尊は言われました。
かれら比丘たちは喜ばず、世尊が説かれたことに歓喜しませんでした。
〈 和 訳・おわり 〉
● 解 説
── 中部経典の第1経、経名を「根本法門経」と言います。
内容は、凡夫・有学・阿羅漢・如来の、それぞれの違いについて説明しています。
比丘たちよ、ここに凡夫にして、聖者の法を聞く機会を持たず、
諸々の聖者を見ず、聖者の法を熟知せず、聖者の法に導かれることが無く、
諸々の善人を見ず、善人の法を熟知せず、善人の法に導かれることが無い者がいる。
彼は、地 を 地 と思い、地 を 地 と思って 地 を考え、地 において考え、
地 から考え、〈 私の 地 である 〉と考え、地 を歓〈よろこ〉ぶ。
それは何故か? 彼には知悉されていないからである、と私は言う。
彼は、水を水と思い…火を火と思い…風を風と思い…
── と、様々な要素を羅列して、それらを歓ぶのは、知悉されていないからである、と結論付けているのです。
この経典を理解するキーワードは「知悉する」の意味を知ることなのですが、経典内では、そこまでは語られていません。
ですから、他の経典から、その意味を探し見つけるのです。
── すると、第13経「大苦蘊経」の中に、答えが見つかるのです。
ある日比丘が、異教の遊行者から、質問をされます。
友らよ、ゴータマ沙門は「もろもろの欲の知悉」を主張していますが、
われわれもまた「もろもろの欲の知悉」を主張しています。
── つまり、釈尊も異教の遊行者も、同じ「知悉する」と言っているが、何処が違うのか?…というのです。
※ちなみに「知悉」とは、ことごとく知る ── という意味です。
それに対して釈尊は、
比丘たちよ、そのように語る異教の遊行者たちには、このように言うべきです。
「友らよ、いったい、もろもろの欲の、楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。
もろもろの色の、楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。
もろもろの感受の楽味は何でしょうか、危難は何でしょうか、出離は何でしょうか。」と。
比丘たちよ、このように問われて、異教徒の遊行者たちは答えることができず、それ以上に困惑してしまうはずです。
それはなぜか。
比丘たちよ、かれらの埒外(らちがい)にあるからです。
比丘たちよ、如来から、あるいは如来の弟子から、あるいはここから聞く以外、
これらの問いに、答えて心を喜ばせることができる者を、
私は、神々を含む、魔を含む、梵天を含む世界において、
沙門・バラモンを含む、天・人を含む衆において見ることがありません。
── つまり、「知悉する」とは、具体的には、「楽味と危難と出離を知る」ことだったのです。
そこでさらに、〈楽味〉と〈危難〉と〈出離〉を詳しく調べてゆくのです。
※ 〈楽味・危難・出離〉が、実は、四正諦の「別な表現」なのだと解れば、
貴方の理解度は、かなり高いと言えるでしょう。
〈 編集中です 〉
最終更新:2024年03月31日 07:39