旗揚げ~導入部~

372 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 04:33:08 ID:mQM+FZWy
オレが旗揚げするときの、導入部の妄想でも書いてみる。

24時を回り日付が進んだころ、ようやくアパートへと帰宅する。
スーツの内ポケットから携帯電話を取り出し、充電器にセットしようとしたとき、表の液晶画面が
留守電アリのマークを記していた。
そういえばマナーモードにしたままだったな。と、メッセージを聞く。
メッセージには、井上霧子と名乗る女が泣き枯らした声で、親父の死を事を告げていた。
禁煙の誓いを3日で破ってしまう事などお構いなしに、タバコに火を付け、深く肺に吸い込んでから吐き出す。
家を飛び出してから早数年。以来音信不通で血の繋がっただけの他人と化していた父親の死に何の感情も無かった。
ただ、頭の中にあったのは、厄介な事になったなという事だけだった。
誰が言ったか、親という生き物は良し悪しはともかく、最高のタイミングで死ぬ。
確かに最高のタイミングで死んでくれた。もちろん悪い意味でだ。
明日。正確には今日の昼に、何年も準備を掛け、ここ1ヶ月は休日返上で泊り込み、徹夜で仕上げたシステムの
納品行われるというのに、自分の妻や娘の死に目を看取らなかったばかりか、死んでまで息子に迷惑を
かけてくれるとは・・・
感慨に耽っていると携帯電話が鳴る。
番号表示には留守番電話に入っていた番号と、同じ数字が表示されていた。

「葬儀への出席?決まってるだろ、当然”NO”だ」

388 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/04(水) 02:30:06 ID:1PSNRbI4
と、言うことで、>>372のつづき

戻るつもりなど毛頭無く、父の死の知らせを聞いてからは連絡も一切無視を決め込んでいた。
だがそれならば、と、職場に連絡を取られたから堪ったものではなかった。
その話は上司の知るところとなり、結局四十九日法要に参加せざるえない破目になる。
数年ぶりに家の敷居を跨ぎ、姦計をもってそう仕向けた当の本人。井上が出迎えたときに見せた
その笑顔は、女狐以外の何者でもなかった。
長男、喪主でありながら葬式にすら顔を見せなかった親不幸者。法要の参列者からの蔑んだ視線を受けながらも、
式は滞りなく進み、予定通り終了した。ただ井上が仕切った通りのやるだけの楽な式だった。
参列者が全員帰った後、井上から話があると誘われる。
話は事務的な事。取引先との契約、団体資金の整理など、技術畑で生きてきた者にとっては異次元の話。
所属レスラーは現役を望むものは他団体への口利き、コレを機に引退するものは新たな就職先。
フリーとなる者には当面の提携先など、出来うる限りの手は尽くしたらしい。
井上は言う。亡き社長がそう望んだから、と。
本題はココから。家、土地、道場。それら資産を相続するための書類を作成するらしい。
が、それは拒否。ソレは井上が引き継げば良い。売れば退職金程度の金にはなるだろう。
話はコレまで、引き止める井上を振り切って家を出る。コレで本当に最後。だが一瞥の必要も無かった。

「貴方は知らないのです・・・あの人が、アノ事をどれだけ後悔し、どれだけ貴方の事を愛していたか・・・」

552 名前:388のつづき[sage] 投稿日:2006/10/10(火) 05:48:39 ID:vh5syvl6
その日、アパートへ戻ると井上が入り口前で立っていた。
無視して通り過ぎ、部屋のドアを閉る。が、力で遮られた。
お話があります。拒否を許さない強い意志の篭った言葉。
敵に気圧された。その事に苛立ちながら中へと通す。
お茶は出さない、精一杯の嫌がらせのつもりだ。
だが井上は意に介す事も無く、テーブルの上に小さな金庫を差し出す。
あの男の形見だい言う。
欲しくは無いが、あの男がどんな物を貯め込んでいたかは興味がある。
メモに書かれた番号をセットし蓋を開く。
ソコにあったのは、金庫に入れるには似つかわしくない古ボケた紙類。
一枚を手に取り、中を開く。右上に赤く100と書かれた数字。
微かに覚えがある。小学生の時に100点を取った答案だ。
他にも父の日に送った手紙や、家族の事を書いた作文。
そしてソレを見た時、体が震えた。セロテープで繋ぎ合わされた一枚の賞状。
『高等学校総合体育大会 東京都大会 71Kg以下級 2位』
忘れもしない、高校最後の夏。全国への夢が、夢のまま終わった瞬間。
見入ってしまっていたのか、井上に声を掛けられ我に返る。
咄嗟に言葉を返す。人の汚点を後生大事に取って置くとはあの男らしい。
暫し睨み合い。お互い鉄面皮を被ったまま、無言で時が過ぎる。
井上は一つ息を吐くと、バックから一通の封筒を取り出す。差出人は母の名前。
ソコには今まで幸せだったこと。父と不仲な関係を心配していること。
そして、父の意思を継いでくれると嬉しいこと・・・
思わず舌打ち。今まであの男を否定してきた自分一人がバカみたいだ。
こちらを期待する目で見つめる井上の視線が痛い。
とりあえず井上にはまた連絡を入れると約束をして帰した。
この場で出すべき結論じゃない。それに後を継ぐにしても、会社を辞めるのに最低一ヶ月は掛かる。
勿論、あの男への恨みが消える事は未来永劫無い。だが・・・

「家族がそれを望んでるんだ。拒む理由は無い。そうだろ、母さん・・・」

最終更新:2008年01月28日 22:25
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