マッキーSSその1-2

76 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:12:09 ID:r+eMllrU
軽い渋滞に巻き込まれた苛つきを抑える為、俺は煙草に火を付けつつ、ある記憶の一端を頭に巡らせていた。

事の次第は一日前に遡る。
9月恒例のシングルトーナメント、決勝に残ったのは提携先のTWWA所属のトップレスラー、ジェナ・メガライトと
ウチのマッキー上戸だった。
決勝戦前、控え室で上戸と俺はこんなやり取りを交わしていた。

「なあ社長、もしアタシが優勝したらさ、なんかご褒美くれよ!」
「ん?優勝賞金があるだろう」
「たー、ロマンが無いなー!そういうんじゃ無くて、もっとこうさぁ心に残る物がいいんだって!」
「ったく、試合前からそんな調子で、あのメガライトに勝てるのか?」
「なーに言ってんだよ社長、あれあれ、マ○ターベーションってヤツ?」
「・・・それを言うならモチベーションだろ」
「そうだっけ?エッヘヘッ!まあいいや、とにかくさ、アタシが勝ったら社長が何でも一個だけアタシの言う事を
何でも聞くってのはどうよ?」
「ああ、勝ったらな」
「ホント!?おっしゃー!やる気出て来たぁ!!」

77 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:12:55 ID:r+eMllrU
試合は正しく壮絶を極めた。
互いに大型で、投げとパワーファイトが信条の二人の真っ正面からのぶつかり合いは、中盤15分を過ぎた辺りでの
場外乱闘で上戸が出血、その後地力に勝るメガライトが上戸をパワーで押し始める。
上戸も単発で技を返してゆくが、次が続かない。
20分を過ぎた時点でメガライトのベリートゥバックが炸裂するが、カウント2.5で上戸キックアウト。
しかし間髪入れずラリアートからこの試合二発目のベリートゥバック。
が、ロープが近く上戸ロープブレイクに救わわる。
だがメガライトは攻撃の手を緩めず、上戸を引きずり起こしてリング中央での三発目のベリートゥバック。
万事休すと思われたその時、上戸がカウント2.9で必死のキックアウト。
観客のボルテージも最高潮に。
ならばとロープに振りラリアートを狙うメガライトだが、かい潜った上戸がカウンターのラリアート。
ここが勝機とばかりにバックドロップドライバーを放つ上戸だが、フォールには行かず。
額からの流血で顔面を深紅に染めながらメガライトの髪を掴んで引きずり起こし、リング中央で雄叫びを上げる。
「落ーちーろーーーーッ!!」
必殺の完ペキ!ジャーマンSH(上戸命名)がその名の通り完ペキに決まる。
専門誌やファンの下馬評を覆し、30分以上の死闘を上戸まさかの大逆転勝利で制す。
しかし・・・。

78 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:13:21 ID:r+eMllrU
「どぉーら社長!しゃちょーう!!」
「馬鹿!大人しくしてろ!」
上戸は試合後のインタビューも無理な程にダメージが大きく、そのまま担架で病院に運ばれる事になった。
リングドクターの話では、脳震盪の他に額の傷も深く、肋骨にもかなりのダメージがあり、骨折の可能性もある
との事。
そんな状態で担架で運ばれる上戸だったが・・・。
「勝ったー!かったろー!あらひ(アタシ)ってばさいひょー(最強)!!」
「ちょっとマキ(マッキー上戸の本名、真紀から)!暴れないでってば!」
「うるへーろ(うるせーぞ)サッチー(ラッキー内田の本名、幸から)!あらひ(アタシ)はしゃちょーに用が
あるんらー!!」
「ぐ、サッチーって言うなっ!」
「しゃちょー!勝ったからあらひ(アタシ)のいう事聞くって言ったらー!」
「解った解った!何でも聞いてやるから大人しくしろって!」
「やったー!じゃああひた(明日)10時にこうらくえんぷらら(後楽園プラザ)前れまひあわへらろ(待ち合わせ
だぞ)!!約束らからら(だからな)ー!!」
「ああ解った!何でもしてやるから素直に運ばれろ!!」
「れったいらろ(絶対だぞ)!!ちこくするなよらーーー・・・!!」

バタンッ キュキュキュブルルーン ぱーぽーぱーぽーぱーぽー・・・・・・

精密検査の結果、脳には異常は診られなかったが、頭部を10針縫う裂傷に加え、全身10ヶ所を超える打撲と肋軟骨
骨折が2カ所。そのまま入院となった。
少なくとも、麻酔が切れるまで1日2日は動けない筈だったのだが・・・。
「・・・ったく、レスラーってヤツは非常識で困る」
5本目の煙草の吸い殻をタクシーの灰皿に押し込み、誰に聞かせるともなく呟いた。

79 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:14:53 ID:r+eMllrU
AM10:12 水道橋駅付近。

「あ、領収書お願いします」
タクシーを降り、早足に歩を進めながら、腕時計に目をやる。
・・・少し遅れてしまったか。
(いやいや、よく考えろ俺)
(居る筈が無いのだ、昨日のあの状況を考えれば)
(どうせ病院が狭苦しいとかメシが不味いとかそんな理由で、自宅にでも帰って寝ているに違いない)
歩道橋の人混みが、いつも以上に鬱陶しく感じる。
(大体昨日のあの会話、上戸本人が憶えているかどうかも疑わしい)
(興奮と脳震盪が綯い交ぜになってポロッと口から出ただけだ)
(とっとと確認して、事務所に連絡・・・)
気が付くと、殆ど走っていた。
そして。

80 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:15:22 ID:r+eMllrU
・・・居やがった。
プラザの受付け前、ジーンズに白の半袖Yシャツ、やや赤毛の腰まで届くロングヘアー、頭と右腕に包帯を巻き、
大盛りの焼きそばを美味そうに頬張る、身長170cmを超える大女が。

「・・・お!こらぁー!遅いぞ社長ぉー!!ったくレディを待たせんなよなぁ!」
こちらに気が付き、箸を持ったままの右手を大きく振り叫ぶ包帯大女。
その余りにも屈託の無い姿を見て、安堵や怒りを通り越して呆れるしか無かった。
「・・・なにやってんだ?」
「へ?ああこれ?悪りィ悪りィ、朝からなんにも食ってなくってさ」
ずぞぞぞぞと焼きそばを啜る上戸。
「・・・いやそっちじゃなくて、何でこんなところに居るんだ?」
「はぁ?そっちこそ何言ってンだよー!昨日約束したじゃんか!」
やっぱり・・・まさかとは思ったが本当に憶えてるとは。
「で?わざわざ怪我を押して、俺を呼び出して何をお望みですかな、お姫様?」
「・・・社長さ、なんでもアタシの言う事聞くって言ったよな?」
「なんなりと」
半ばヤケクソ気味に言う。
「ホントか?ホントになんでも言う事聞く?」
「・・・出来る範囲でな」
「・・・エッヘヘ~♪」
そう子供の様に笑顔を浮かべると、上戸はいきなり俺の右腕に自分の左腕を絡ませてきた。
「お、おい!何だいきなり!」
「社長!今日はアタシと一日デートしようぜっ!」

81 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:17:07 ID:r+eMllrU
「はぁ?で、でぇと?」
「そ。トーナメント優勝選手へのご褒美ってヤツ。それとも何か?まっさか社長ともあろう人が、約束破ったり
しちゃうわけ~?」
「ぐっ・・・」
「・・・・・・なあ、アタシじゃダメ?」
一瞬、今まで俺の知らなかった、“女性”の顔を見せる上戸。
「い、いや、そういう訳では・・・」
何故か顔が赤くなるのが、自分でも解った。
「おっしゃぁー、じゃあ決定ー!今日は一日遊ぶぞぉー!!」
途端にいつもの調子に戻りやがった。
ったく、これだからレスラーってヤツは・・・。

82 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 04:18:09 ID:r+eMllrU
♪ツナイダテハナサズーニ コーノママ…

「おっと、ちょっと失礼」
不意に鳴った携帯電話をスーツの内ポケットから取り出す。
事務所からという事は、多分井上さんからだろう。
「ああもしもし、俺です。井上さん?」
「むー・・・・・・」
何故か訝しげな表情で俺を睨む上戸。
「(小声で)何だよっ・・・ああ、うん何でも・・・で、上戸の事なんだけど・・・」
「おりゃ!」
「あっ!おい!」
突然俺から携帯を奪った上戸。そして次の瞬間・・・。

バキッ!

「ぽいっ」
目の前で俺の!俺の携帯を真っ二つに!!そしてまるで空き缶でも捨てるかの如くゴミ箱に!!!
「おあああぁぁぁぁぁ!!!な、何やってんだお前えええぇぇぇぇぇ!!!!」
「これからデートすんのに他の女と電話なんかしてるからだって、天罰ってヤツ?」
「天罰ってお前なぁー!・・・ああ~、スポンサーの連絡先とかも入ってたのに」
「アッハハ!まあなんつーの?これで邪魔が入る事は無くなったって訳だし。ほらーいつまでも情けない声出して
んなよ社長!アタシが優勝賞金で新しいの買ってやるからさ!おーし、じゃあまずはジェットコースターから!」

・・・やれやれ、騒がしい一日になりそうだ。

マルチエンディング
A>>83
B>>84-85

最終更新:2008年01月21日 22:57
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